2020年9月18日 (金)

「NMRパイプテクタ-」(日本システム企画)についての記事(週刊新潮)

 昨日発売の週刊新潮(2020年9月24日号)に、小さな記事ですが、「自治体が続々採用 防錆装置にインチキの声」という記事が載っていました。記事では、この防錆装置が日本システム企画「NMRパイプテクタ-」を指すことが明記されています。

 当ブログでも「パイプテクタ-」に関しては何度も取り上げてきましたので(少し,次にリンク貼っておきます。)、新潮のこの記事を読んでみました。

 → 「「「バッキンガム宮殿採用」装置にダメ出し続々」(論座の記事)」 (2019/10/5)

 → 「パイプテクター問題「田村淳の訊きたい放題!」で生討論」 (2019/11/29) 

 この新潮の記事では、日本システム企画は、パイプテクタ-を導水管に設置すると赤錆を防ぎ、赤錆も黒錆に変えることで寿命を10年以上延ばせるなどといった効果やこれまでの設置の実績をうたっているけれども、千葉県浦安市で、導入を巡って紛糾していることを紹介しています。

 そして、浦安市の市議のお一人は、浦安市パイプテクタ-を市民施設で2018年に既に試験導入しており、今度は、新たに競争入札なしに1700万円以上をかけて、2件目の導入を進めているが、科学的根拠に疑いの声が噴出している現状でもあって、憤慨している、ということのようです。たぶん、市議会でも取り上げるんでしょうね。こういった批判に対しての浦安市がどのように対応するのかが非常に注目されます。浦安市民の税金を使うわけですから、当然、市の責任問題とならないためにも批判に対抗できるような技術的な評価をきちんとしていかなければいけませんですね。

 また、続けて、この記事は、20年近く前から、研究者などからのインチキではないかという指摘が相次いでいるとしていて、天羽優子山形大学准教授のコメントとして、2001年に原理的にあり得ないと指摘したところ、日本システム企画は、東大宇宙研の先生も認めている理論だと抗議したため、その研究者の名前を聞いたが教えてくれなかった、結局、訴えると通知してきただけで、訴状は届いていない、とのことです。

 このような報道に対して、日本システム企画の反論も聞きたいところなのですが、記事によると、日本システム企画に聞いても「担当者から返事させる」と言ったきりで、期限までに回答はなかった模様です。浦安市はこういった企業の対応について、どう考えるのでしょうか。

 商品の技術の効果の真偽についての会社側からの反論が、批判者の発言などへの個人攻撃のような内容を自社サイトなどに掲載するばかりで、自社の技術が正しいものであることの科学的な説明を社会に向かって行わない、という同社のこれまでの一貫した態度は大変不思議としか言いようがないですね。

2020年9月 9日 (水)

「京都芸術大学」名称差止訴訟判決を引き続き考える。

 前回のブログ記事で、「京都芸術大学」名称差止訴訟判決をご紹介しました。

 その中でもちょっとだけ触れましたが、最後の「京都市立芸術大学」「京都芸術大学」の表示の類似についての判断よりも、市立芸大が主張していた「京都芸術大学」周知性が否定された点が一番の分岐点ではないか、と思うのです。

 ちょっと意地悪に考えてみると、これが、青山学院事件のように、京都から離れた広島の呉あたりで、「京都芸術大学」が設置されたとすれば、さて、どうなったかな、というと結構面白い思考実験になるのかな、と思います。今回の判決の判断からすれば、今回よりも離れているので、もっと「京都芸術大学」周知性は認められなかったことに当然なるのですが、実際にそう考えられただろうか、あるいは、その場合でも「京都市立芸術大学」との類似が認められなかったか。いや、私も現時点でよくわからんのですが。

 さて、この判決について、昨日(9/8)、知的財産権がご専門の島並良神戸大学教授がTwitterで次のように投稿されておりました。

「京都芸術大学事件の大阪地判を読む。同判決は、「京都市立芸術大学」の著名性を否定。周知性は肯定しつつ、その構成要素のうち「市立」部分のみ自他識別機能が高いとして、要部「京都市立芸術大学」全体と認定、結論として「京都芸術大学」とは非類似と判断。」

「たしかに静的にはあり得る判断だが、被告が「京都造形芸術大学」から「京都芸術大学」に改称したという経緯は、結論に影響を与えていないように見える。こうした意図的な「擦り寄り」行為等、動的な側面を標識法がどのように捉えるべきかを考えていく必要がある。」

「特に本件では、原告側が「市立」という誤認防止要素を含むばっかりに、それを欠く一般的な「京都芸術大学」を、「造形」を削除するという「擦り寄り」によって許す結果となった。最初から「市立」を含まなければ良かったというのでは、誤認防止に努めた者に却って不利益を与える結果とならないか。」

「本判決は、「混同のおそれ」ではなく、それ以上に規範的な「類似性」非充足で請求を棄却した。何をもって類似と捉えるかは標識法の永遠のテーマだが、「市立」「造形」でせっかく識別されていた状況を造形を除くことでより悪化させた、という経緯をも類似性判断に取り込むことはあって良いのでは。」

 島並教授が指摘されている「擦り寄り」行為等の動的側面を考慮すべきではないか、というのは、大変興味深い考え方に思えます。

 そして、これは、大阪公立大学の英語表記問題にもつながるところかもしれませんね。そちらの問題についての当ブログの記事はこちら。

 → 「大阪公立大学の英語名称「University of Osaka」」 (6/30)

2020年9月 7日 (月)

「京都芸術大学」の名称の差止訴訟判決(請求棄却・不競法)

既に、報道でご存じの通り、公立大学法人「京都市立芸術大学」(以下、市立芸大)が、学校法人「瓜生山学園」が設置する「京都造形芸術大学」「京都芸術大学」に改称することについて(令和2年4月1日に改称を実施)、不正競争防止法違反であるとして、「京都芸術大学」の名称の差止を求めていた裁判で、大阪地方裁判所は、8月27日、差止を認めない判決(請求棄却)を言い渡しました。

 判決が裁判所サイトで公表されましたので、ちょっと概要を見ていきたいと思います。なお、学校名で同様の紛争になったものとしては、「青山学院事件」(東京地裁平成13年7月19日判決)がありますので、興味のある方は調べてみてください。こっちは差止が認められています。

 → 判決文はこちらから(裁判所サイト)

 原告の市立芸大が差止の請求の根拠としたのは、不正競争防止法2条1項1号(周知表示混同惹起行為)2条1項2号(著名表示冒用行為)です(商標権や著作権は無関係です。)。どちらも、有名な商品(サービスを含みます)などの名称や包装、容器のデザインなどのコピー商品を製造したり販売したりする行為を禁止するものです。

 1号の周知表示混同惹起行為は、他人の商品・営業の表示(商品等表示)として需要者の間に広く認識されているものと同一又は類似の表示を使用し、その他人の商品・営業と混同を生じさせる行為であり、2号の著名表示冒用行為は、他人の商品・営業の表示(商品等表示)として著名なものを、自己の商品・営業の表示として使用する行為、で、似ているのですが、違いは、

 2号の著名表示冒用行為では、その商品等の表示が「著名」であることが必要で、これは、全国的に一般に知られている、というかなり有名ブランドという感じです。一方、1号の周知表示混同惹起行為では、「周知性」が要件となっていて、これは、「著名」ほど有名でなくてもいいが、商品等の取引の相手方(需要者)には広く知られているという要件で、全国的でなくても、一地域での周知性でも足りるとされます。
 この点では2号より、1号のほうが緩い(広い)ことになりますが、1号では、その表示を行うことにより本家と「混同」を生じさせる、という要件が加わります。2号では、この要件は必要ないので、その点では2号にメリットがあることになります。
 つまり、「著名」な商品表示に類似した表示を使用すれば、それだけでアウトで、「周知性」のある表示(「著名」まではいかない)に類似した表示を使用した場合については、その表示で「混同」が生じた、ということが必要になります。どちらで差し止めてもらっても、効果は変わりませんので、市立芸大は、両方とも主張ということになります。

 さて、芸大の事案については、裁判所はどう判断したでしょうか。

 市立芸大が差止を求めているのは「京都芸術大学」ですが、これに類似する市立芸大側が使用している表示(原告表示)として次の5つの表示を挙げました。

1 京都市立芸術大学
2 京都芸術大学
3 京都芸大
4 京芸
5 Kyoto City University of Arts

 本件裁判の争点は、以下の通りです。

  1. 不正競争防止法2条1項2号該当性(争点1)
    ア 原告表示1~5の「著名」性の有無等(争点1-1)
    イ 原告表示1~5と本件表示との類似性の有無(争点1-2)
  2. 不正競争防止法2条1項1号該当性(争点2
    ア 原告表示1~5の周知性(需要者の間に広く認識されていること)の有無(争点2-1)
    イ 原告表示1~5と本件表示との類似性の有無(争点2-2)
    ウ 本件表示の被告の使用による原告の営業との混同惹起の有無(争点2-3)
  3. 本件表示の被告の使用による原告の営業上の利益の侵害又は侵害のおそれの有無(争点3)

 判決は、まず、原告表示1~5全部について「著名」とはいえない(争点1-1)、として、2号の著名表示冒用行為を否定しました。

 そして、「周知性」に関しては(争点2-1)、原告表示1の「京都市立芸術大学」については、原告大学を表示するものとして需要者に広く認識されており,周知が認められる、としましたが、その他の原告表示2~5については、周知とはいえない、としました。ここで、特に、原告表示2の周知性が認められなかった点は、結論にひびいていますね。

 ここまでの判断により、原告表示1「京都市立芸術大学」と被告の「京都芸術大学」が類似するか、が問題になります(争点2-2)。

 判例上、ある商品等表示が不正競争防止法2条1項1号にいう他人の商品等表示と類似のものか否かを判断するに当たっては、取引の実情のもとにおいて、取引者などが、両者の外観、称呼又は観念に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断する、とされています。今回の判決もこの基準に拠っています。

 そして、「京都」「芸術」「大学」の各部分は、自他識別機能又は出所表示機能はいずれも乏しいとしましたが、「(京都)市立」の部分の自他識別機能又は出所表示機能は高いとしました。そうすると、「原告表示1の要部は、その全体である「京都市立芸術大学」と把握するのが相当であり、殊更に「京都」「芸術」の間にある「市立」の文言を無視して「京都芸術大学」部分を要部とすることは相当ではない。」としました。

 続けて、判決は、「京都市立芸術大学」「京都芸術大学」は、その要部を中心に離隔的に観察すると、「市立」の有無によりその外観及び称呼を異にすることは明らかであり、観念についても、「市立」の部分により設置主体が京都市であることを想起させるか否かという点で異なる。取引の実情としても、需要者は、複数の大学の名称が一部でも異なる場合、これらを異なる大学として識別するために、当該相違部分を特徴的な部分と捉えてこれを軽視しない。そうすると、取引の実情のもとにおいて、取引者又は需要者が、両者の外観,称呼又は観念に基づく印象,記憶,連想等から全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるとはいえず、そうである以上、「京都市立芸術大学」と「京都芸術大学」とは、類似するものということはできない、と判断しました。

 要約すると、「京都市立芸術大学」の名称は、周知性はあるが、著名ではなく、両者は、「市立」の有無により、外観、称呼、観念が異なるから類似とはいえない、ということになります。

 なお、今回の判決とは直接の関係はありませんが、商標権に関連して、8月12日付で、昨年7月11日に市立芸大が出願していた「京都市立芸術大学」商標権特許庁が認めて登録しています。また、これと別に、同じく昨年7月、瓜生山学園(17日)と市立芸大(18日)は、「京都芸術大学」商標権をそれぞれ出願していますが、こちらは両方ともまだ「審査中」になっています。

【追記】(9/8)

 京都市立芸大が控訴したとのことです。

 → 京都市立芸大「控訴についての理事長コメント」

【追記】(9/9)

 続編を書きました。

 → 「「京都芸術大学」名称差止訴訟判決を引き続き考える。」 (9/9)

 

2020年9月 2日 (水)

コンビニ本部と加盟店との取引に関する実態調査報告書(公取委)

本日、公正取引委員会が、「コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査」の報告書を公表しています。

 → 公取委方法発表資料

 コンビニエンスストア本部と加盟店との取引につき、24時間営業をはじめ、従来の本部と加盟店との在り方を見直すような動きが生じており、前回の調査(平成23年)からも期間が経過していることから、大手コンビニエンスストアチェーンの全ての加盟店(57,5244店)を対象とした初めての大規模実態調査を行ったものです。

 調査(令和元年10月~令和2年8月)は、書面による加盟店へのアンケート調査(回答率21.0%)と、大手コンビニエンスストア8社、オーナー、コンビニエンスストア以外のフランチャイズ本部等及び業界団体に対する聞取り調査の形式で実施されたとのことです。全体で200ページを超える報告書になっています。

 詳しくは、上記リンク先にある、報告書本体、ポイント、概要などをご覧いただきたいですが、

 加盟店オーナーの勤務実態として、
 ①1週間当たりの平均店頭業務⽇数は6.3⽇
 ②年間の平均休暇⽇数は21.3⽇(⽉に約1.8⽇)
 ③1週間当たりの平均店頭業務時間は44.4時間
 ④年間の平均深夜勤務⽇数は84.7⽇
 ⑤現在の業務時間については,「どちらかといえば⾟い」と「⾮常に⾟い」で62.7%

(注)業務⽇数は,3時間以上働いている場合に1⽇とカウント。深夜勤務⽇数は,22時から翌5時までの間に1時間以上働いている場合に1⽇とカウント。

と出ており、平均して厳しい勤務環境にあるといえますね。

 報告書では、本部による加盟店募集時の説明状況、本部の加盟者に対する取引上の地位、仕⼊数量の強制・無断発注、⾒切り販売の制限、年中無休・24時間営業、ドミナント出店などについて、調査結果と独占禁止法上の問題点をあげています。

 そして、公正取引委員会の対応としては、以下の通りとなっています。

  1. 本部に対する改善要請
     各本部に対し,本部ごとのアンケート結果を伝えるとともに,仕⼊数量の強制をはじめとした独占禁⽌法上の問題となり得
    る点等を指摘し,本報告書に基づき,直ちに⾃主的に点検及び改善を⾏い,点検結果と改善内容を公正取引委員会に報告す
    ることを要請した。また,点検結果と改善内容については公表することが望ましい旨を伝えた。

  2. 業界団体に対する要請
     ⼤⼿8チェーンのほか,多くのフランチャイズ本部が加盟する⼀般社団法⼈⽇本フランチャイズチェーン協会に対して、会員各社に本報告書の内容を周知するよう要請した。

  3. フランチャイズ・ガイドラインの改正
     独占禁⽌法上の考え⽅の明確化と問題⾏為の未然防⽌を図る観点から、今回の調査結果を踏まえ、無断発注の問題、年中無休・24時間営業及びドミナント出店等についてフランチャイズ・ガイドラインの改正を⾏う。
  4. 報告書等の周知
     今回の調査により様々な問題が明らかとなったことから、本報告書等の内容について広く周知を⾏う。
  5. 違反⾏為に対する厳正な対処
    今後ともコンビニエンスストア本部と加盟店との取引を対象とした独占禁⽌法上の問題について情報収集に努めるとともに、違反⾏為に対しては厳正に対処する。

2020年9月 1日 (火)

経産省「電子商取引等準則」改訂(債権法改正関係)

 昨日は、情報ネットワーク法学会ネット社会法務研究会にて、「デジタル・プラットフォーム事業者に関する法的問題の現状」というタイトルで、ZOOMを使ってお話しました。大層なタイトルですが、要は、プラットフォーム事業に関するいろんな法律的な動きなどを俯瞰して、ちょっと消費者法視点に寄せての話にしました。お聴きいただいた皆様ありがとうございました。
 元々、小規模なリアルの勉強会で基本的なことを話せばいい、ということで引き受けたところ、当初予定の研究会がコロナで延期となり、結局ZOOM開催ということになったため、大御所の先生方を含め、全国から予想外の人に参加いただき、私には肩の荷が重すぎる状況でしたが、何とか終えることができました。

 さて、この研究会でも少し話題にしましたが、8月28日に、経済産業省「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の改訂が公表されました。

 → 経産省ニュースリリース

 この「電子商取引及び情報材取引等に関する準則」は、経済産業省が、電子商取引・情報財取引等に係る市場の予見可能性を高める観点から、民法等の解釈を整理して、平成14年から公表し、改訂を重ねているもので、今回は、民法(債権法)の大改正(令和2年4月1日施行)があったため、それを踏まえた改訂が主なものです。
 改訂内容については、以下の通り。

(1)民法(債権法)改正に伴う所要の見直し

  • 意思表示の効力発生時期関係

Ⅰ-1-1 契約の成立時期 等

  • 錯誤関係

Ⅰ-1-2 消費者の操作ミスによる錯誤
Ⅰ-1-3 ワンクリック請求と契約の履行義務
Ⅰ-2-4 価格誤表示と表意者の法的責任(旧Ⅰ-2-2)
Ⅰ-8-2 取引当事者間の法的関係(旧Ⅰ-7-2)
Ⅰ-11-2 AIスピーカーに対して発注者が言い間違いをした場合(旧Ⅰ-10-2) 等

  • 定型約款関係

Ⅰ-2-1-1 利用規約の定型約款としての契約への組入れ(新規)
Ⅰ-2-1-2 定型約款となる利用規約の開示(新規)
Ⅰ-2-1-3 定型約款となる利用規約の契約締結後の変更(新規)
Ⅰ-2-2 事業者間契約と定型約款(新規)
Ⅰ-2-3 定型約款の規定が適用されない利用規約の契約への組入れと契約締結後の規約変更(旧Ⅰ-2-1) 等

  • 売主の担保責任関係

Ⅰ-8-2 取引当事者間の法的関係(旧Ⅰ-7-2)
Ⅰ-8-4 「ノークレーム・ノーリターン」特約の効力(旧Ⅰ-7-4)
Ⅲ-5 ソフトウェアの契約不適合責任

  • 原状回復義務関係

Ⅲ-4 ライセンス契約終了時におけるユーザーが負う義務の内容(旧Ⅲ-4-1)
Ⅲ-12-2 デジタルコンテンツ利用契約終了後のデジタルコンテンツの利用 等

(2)設問の新設、見直し、削除

  • 旧Ⅰ-3-3
     なりすましを生じた場合の認証機関の責任(削除)
  • Ⅰ-8-3
     インターネット・オークション及びフリマサービスにおける売買契約の成立時期(旧Ⅰ-7-3。設問の対象にいわゆるオンラインフリーマーケットサービスを追加)
  • Ⅲ-1-3
     重要事項不提供の効果(設例をパッケージソフトウェアの購入からオンラインでのダウンロード購入に変更)
  • 旧Ⅲ-4-2
     契約終了の担保措置の効力(削除。Ⅲ-12-2に統合)
  • Ⅳ-4
     インターネット上の国境を越えた名誉・信用の毀損、プライバシー侵害(旧Ⅳ-4-1と旧Ⅳ-4-2を統合)
  • Ⅳ-5
     インターネット上の国境を越えた著作権侵害(新規)
  • Ⅳ-8
     国境を越えた取引に関する公法規制の適用範囲(旧Ⅳ-7。設問の対象を製品安全法を中心とする公法規制に変更) 等

 その他、全体にわたって、消費者契約法、景品表示法、著作権法等の関係諸法令の改正や解釈の積み重ねに伴う所要の改訂、構成・表現の見直し、表現ぶりの統一・調整等を行った。

2020年8月28日 (金)

首から吊り下げるウイルス除去商品の広告に対する措置命令(不当表示)

本日、消費者庁は、株式会社東亜産業(東京都千代田区)に対して、同社の販売するの広告・表示について、景品表示法違反行為(優良誤認)であるとして、措置命令を行っています。

→ 消費者庁公表資料(PDF)

 なお、今年5月15日に、消費者庁は、同様の商品に関して、「携帯型の空間除菌用品の販売事業者5社に対する行政指導について」を公表しています。

 → 消費者庁公表資料

 今回は、東亜産業が「楽天市場」に開設した自社webサイトに、商品及びその周囲に浮遊するウイルス・菌のイメージ画像や、商品の容器包装の画像と共に、「緊急ウイルス対策!!」、「流行性ウィルスからあなたを守ります!」、「二酸化塩素配合の除去・除菌成分が周囲に浮遊するウイルスや菌を除去します。」、「この時期・この季節に必携!ウイルスの気になる場所でご使用ください。」、「首にかけるだけで空間のウイルスを除去!」等と、表示することにより、あたかも、本件商品を身につければ、身の回りの空間におけるウイルスや菌を除去又は除菌する効果が得られるかのように示す表示をしていたものです。

 この表示について、消費者庁が、景品表示法7条2項(不実証広告)に基づいて、同社に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社から資料が提出されたものの、当該資料は、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないものであったため、優良誤認表示とみなされたものです。

 なお、この表示に、「※使用環境によって効果が異なります。」と表示はありましたが、消費者庁は、当該表示は、一般消費者が上記の表示から受ける本件商品の効果に関する認識を打ち消すものではないとしています。

2020年8月13日 (木)

ステマ規制の厳格化(韓国公取委)

 ステルス・マーケティング(ステマ)の問題については、当ブログで何度も取り上げてきておりますが、スポーツソウル日本語版本日付ニュース「多発する有名インフルエンサーの“裏広告”問題…韓国では最大5億ウォンの課徴金に」や、情報サイトもっとコリ8月7日付「SANDBOX、裏広告を謝罪「有料広告表記が欠落、管理不足に責任」」などで、韓国でステマ(裏広告と表現しているようですね)問題が炎上しているとのことです。


 これらの記事によれば、韓国では、9月1日からステマの規制を厳しくした「推薦・保証などに関する表示・広告審査指針」の改正が施行されるとされています。ちょっと検索してみましたが、これのようです(ハングルですので、機械翻訳等でご覧下さい)。

 → 韓国公正取引委員会サイト

 上の記事などを見ると、要するに、経済的な対価を得ているのに、それを明記せずに自分の体験談などとして宣伝行為を行うことは禁止され、そういった不当な広告の刑罰などが重罰化されるようです。

 実は、今回改正されたこの「推薦・保証などに関する表示・広告審査指針」に関しては、今回と同じくステマに関して2011年に改正された時に取り上げたことがあります。

 → ブロガーの商品推奨記事に関する韓国の動き(韓国公取委)」(2011/7/14)

 日本では、この同じ年に、消費者庁が「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」を策定しました。ステマ行為についても触れられているものですが、詳しくは以下をご覧下さい。

 → 「「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の 問題点及び留意事項」の公表(消費者庁)」 (2011/10/28)

 ただ、これ以後、日本では法律やガイドラインなどについて特段の整備はされていません(2012年に上記「留意事項」の改定が少しありましたが)。ブログやSNSなどにおいて、ステマ自体がなくなっているとも思えませんので、実効性のある対策が必要かと思います。

【追記】
 ちょっと、勘違いをして当初以前のブログについて誤った紹介をしてしまいました。修正しましたが、ご了承ください。

2020年8月 8日 (土)

「定期購入」商法への業務停止命令(特商法)および措置命令(景表法)のご紹介

 昨日(8/7)、消費者庁は、いわゆる「定期購入」商法を行っていた通信販売業者wonder(ワンダー)(栃木県宇都宮市)および主導的な役割を果たしている個人に対し、特定商取引法違反であるとして業務停止命令(6か月)などを出しました。

 → 消費者庁公表資料

 この商法の問題点は、「初回無料」とか「お試し価格」などといったうたい文句で消費者に注文をさせて、実は、それが定期購入、つまりその後も購入を継続しなければならない契約になっているのですが、そういった条件が分かりにくい表示になっていて、消費者は1回だけの購入と誤認して契約をしてしまうというものです。

 このような定期購入については数年前から大きな問題となっており、令和2年版消費者白書(消費者庁)によれば、いわゆる定期購入に関する相談は2018年の2万1977件から2019年には4万4370件と倍増しており、若い女性からのダイエットサプリなどの健康食品や化粧品を「お試し価格」で注文したが定期購入と気付かず申し込んでしまったというような相談が多いようです。

 今回、処分対象となったのは、契約の最終段階の画面上において、購入者から解約通知がない限り契約が継続する無期限の契約である旨を明記しなかったり、解約条件をわかりやすく表示しなかったりなどの行為が、顧客の意に反して通信販売に係る売買契約の申込みをさせようとする行為(特商法14条1項2号に基づく施行規則16条1項2号)に該当するとされたものです。

 なお、このような苦情が急増しているため、消費者庁では特定商取引法を改正して定期購入であることを明示しない行為については刑罰化するという規制強化などを検討しています。

 ところで、定期購入の案件について、昨年、埼玉県から景品表示法に基づく措置命令が出された事案(2019/8/20)がありました。

 → 「女性向け育毛剤の通信販売事業者に対する措置命令について」

 この事案では、育毛剤の効果についての表示が優良誤認表示であることとあわせて、「いつでも好きな時に1ステップで解約できます」などと表示して、あたかも、契約を容易に解約できるかのように表示していたけれども、実際には、解約の手段は電話に限られ、平日午前10~午後5時までに申出しなければならず、その電話もつながりにくく、契約を容易に解約できないものであったことが、有利誤認表示にあたるとされたものです。定期購入事案に限らず、解約容易性についての表示が有利誤認表示とされたのは初めてだと思われますし、注目される措置命令ですね。



2020年7月20日 (月)

SNSなど無償取引に対する景品表示法の適用

 任期付き公務員として消費者庁景品表示法実務に携わっておられた染谷隆明弁護士が、公正取引4月号(№834)「景品表示法の「取引」概念の再検討 -無償契約は「取引」かー」を書かれています。
 無償契約、つまり、ネットでよくある、消費者側からは対価を支払っていないような無料サービスなどは、景品表示法上の取引に該当せず景品表示法の規制対象とはならないと扱われているように見えることについての疑問を呈する立場からの論稿です。

 Googleのような検索サービスやfacebook、twitter、Instagram、LINEのようなSNSサービスは、基本的に利用者は無料で使えて便利なのですが、一方で、程度の差はあれ、個人情報を運営事業者に提供しています。ここで、仮に、そういった運営事業者に対して、不当表示や不当景品などの景品表示法での規制が可能なのか、という問題ですね。もちろん、場合によっては、個人情報保護法による規制対象となることがあるかもしれませんが、それとは別の話です。

 景品表示法(に限らないのですが)は、今のようなインターネット社会や個人情報などのデータの価値が極めて重要な状況を想定して作られた規制ではありません。したがって、IT社会において、これらの法規制の解釈について、変更すべきなのか、変更すべきであるとすれば、解釈上あるいは運用上の変更で可能なのか、法改正といった立法的な解決をしなければならないのか、ということを考えなければなりません。

 ところで、公正取引委員会は、昨年12月17日に、「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」を公表しています。また、案の段階ですが、当ブログでも書いています。

 → 公取委報道発表資料

 → 「プラットフォームと消費者個人情報提供に関する独禁法ガイドライン案」 (2019/9/25) 

 ここでは、「取引の相手方(取引する相手方)」の考え方として、独禁法2条9項5号は、「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に」、「継続して取引する相手方」(同号イ及びロ)や「取引の相手方」(同号ハ)に対して,不利益を与える行為を優越的地位の濫用とし、「取引の相手方(取引する相手方)」には消費者も含まれる、ということを明確にしました。
 そして、個人情報等は、「消費者の属性、行動等、当該消費者個人と関係する全ての情報を含み、デジタル・プラットフォーム事業者の事業活動に利用されており、経済的価値を有する。消費者が、デジタル・プラットフォーム事業者が提供するサービスを利用する際に、その対価として自己の個人情報等を提供していると認められる場合は当然、消費者はデジタル・プラットフォーム事業者の「取引の相手方(取引する相手方)」に該当する、としました。つまり、法改正などの必要はなく、消費者も取引の相手方に含まれるし、金銭的には無償であっても、個人情報の提供は対価として経済的価値を有するという解釈を示したものです。

 これは、独禁法の規制する不公正な取引方法の中の「優越的地位濫用」についての考え方を公取委が示したものですが、景品表示法は、そもそも、独禁法上の不公正な取引方法規制の特例法として立法されたものであり、この問題について、これと異別に解釈する必要はないように思います。

 したがって、例えば、Twitterで、企業が、何らかの特典を与える条件として、フォローさせるなどの場合は、景品表示法上の規制、すなわち、不当表示規制や不当景品規制の適用があると解してもおかしくはないと思われます。ただ、不当景品の場合の取引対価の額とか、課徴金算定など(ここは上記の染谷論稿でも指摘されているところですが)、よくわからん問題は残りますが。

2020年7月 8日 (水)

マンション管理組合と消費者安全法についてのメモ

昨日、マンション向けの製品の問題について、あるメディア関係者と話をする機会があり、いつものようにマンション管理組合(以下、管理組合)消費者法の適用についてご説明をし、また、私なりの考えを述べていました。そういった問題については、このブログで何度か書いており、最近では、以下の記事になります。

→ 「消費生活センター、マンション管理組合など昨日記事の補足」 (2019/10/6

 要するに、そのマンションが個人の居住用マンション(分譲)であっても、管理組合は団体だから、消費者安全法の対象にならない、というのはおかしいでしょ、という内容です。これは、景品表示法についても同じような議論で、管理組合向けのセールスが、消費者(個人)向けの表示とは解釈できないのか、という話になるかと思います。

 で、昨日のメディア関係者にも、そういう話をしていたので、さきほどちょっと考えてたら、ん?と思ったので、メモ書きするつもりで、この記事を書いています。なので、文章を整理する余裕がないので、箇条書きですみません。間違ってたりする点が多々あるかもしれません。法律家等各位のご指導がいただければ幸いです。


  •  管理組合が法人でない場合、管理組合が契約当事者になるとしても、共有部分に関して、物品を購入したり、何かの工事をして設備が付加されたりした場合、その物品や設備は管理組合が所有するのではなく、区分所有者個人の共有になる。
  •  だとすれば、管理組合が形式的に介在するとしても、消費者問題を考えるうえでは、区分所有者個人が契約当事者と考えてよいのではないか。
  •  消費者契約法特定商取引法の文言を厳しく解するかどうかは置いておいて、上記のブログ記事にも書いたように、消費者安全法、さらに景品表示法の対象を考えるうえでは、そのほうが法律の趣旨から考えても適当なのではないか。
  •  実際に、消費者安全法に基づいて設置されている消費者安全調査委員会は、平成26年7月18日に、居住用マンションの機械式立体駐車場で発生した事故に関する事故等原因調査報告書を公表している。


  •  もちろん、管理組合が設置工事の契約をした立体駐車場(管理組合法人所有であろうと、区分所有者個人共有であろうと)を除外するわけではなかろうし、利用者が消費者個人であるため当然。
  •  もっとも、この消費者安全調査委員会の調査は、消費者安全法「生命身体事故等」を対象とするものであり、財産的被害(同法の「多数消費者財産被害事態」)は対象とはなっていない(ですよね)。
  •  「消費者事故等」の定義の同法2条5項3号は「虚偽の又は誇大な広告その他の消費者の利益を不当に害し、又は消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある行為であって、政令で定めるものが事業者により行われた事態 」である。
  •  消費者安全法施行令3条には、政令で定める行為の1号として「商品等又は役務について、虚偽の又は誇大な広告又は表示をすること。」とする。2号以下は、消費者契約に関するものであることが明記されているが、1号には、その限定文言がない。
  •  同法2条8項は、「多数消費者財産被害事態」の定義として、2条5項3号の事態のうち、「同号に定める行為に係る取引であって次の各号のいずれかに該当するものが事業者により行われることにより、多数の消費者の財産に被害を生じ、又は生じさせるおそれのあるものをいう」とし、1号が、「消費者の財産上の利益を侵害することとなる不当な取引であって、事業者が消費者に対して示す商品、役務、権利その他の取引の対象となるものの内容又は取引条件が実際のものと著しく異なるもの」、2号が「前号に掲げる取引のほか、消費者の財産上の利益を侵害することとなる不当な取引であって、政令で定めるもの」である(2号は未指定ですかね?)。
  •  すなわち、「多数消費者財産被害事態」とは、「商品等又は役務について、虚偽の又は誇大な広告その他の消費者の利益を不当に害し、又は消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある行為であって」、「商品等又は役務について、虚偽の又は誇大な広告又は表示をする」行為のうち、「消費者の財産上の利益を侵害することとなる不当な取引であって、事業者が消費者に対して示す商品、役務、権利その他の取引の対象となるものの内容又は取引条件が実際のものと著しく異なるものに該当する」行為が「事業者により行われることにより、多数の消費者の財産に被害を生じ、又は生じさせるおそれのあるもの」ということになる。
  •  「消費者の財産上の利益を侵害することとなる不当な取引」というのは、文言からしても、厳密にその「取引」にかかる契約の当事者が個人かどうかによるものである必要はない。
  •  とすれば、「多数の消費者の財産に被害(おそれを含む)を生じ」れば、対象となることとなる。実際に購入したマンションが複数あり、かつ、広く広告宣伝を繰り広げているというような事情があるのであれば、この多数要件は満たすのではないか。
  •  したがって、生命身体には影響を及ぼさないが、財産的被害が生じる物品をマンションに売りつける行為、たとえば、この装置を取り付ければ節電効果が高く、購入代金は数年で元が取れる、というセールストークで高価な節電器(照明器具でも、空調装置でも、通信設備でも、配管工事でもいい。)を売りつける行為を続けている業者がいたとすれば、個人である区分所有者もしくは居住者の財産的被害につながるのであるから、管理組合が契約当事者であったとしても、消費者安全法の規定(40条4項勧告、5項命令、38条1、3項公表等)による対応は可能ではないか。
  •  そして、景品表示法における消費者向けの表示というのも同様に考えればいいのではないか。

 なお、蛇足ですが(前にも書いたような気もします)、区分所有者ではなくて、ライバル(競業)業者が、不正競争防止法に基づいて、差止とか損害賠償を求めるような場合は、この議論は不要なんで、悪い業者が虚偽の広告で管理組合と契約をするため、自社の営業に影響がある、というまともな業者さんが闘おうという話があればよろしいんですが。

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