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2022年5月13日 (金)

台風被害によるマラソン大会の中止と参加費の返金

 以前、新型コロナ関連で、マラソン大会の中止の場合の返金の問題について、書いたことがありました。

→ 「東京マラソン(一般参加)中止と参加料の不返金」(2020/2/18)

 先日、ケースは違いますが、市民マラソン大会の中止と返金についての判決を見つけたので、ご紹介します。

 判決によれば、事案は、以下のようなものです。

 原告(控訴人)は大会にエントリーしていた個人X、被告(被控訴人)は大会の主催者である一般社団法人Yです。

 Yは、マラソン大会(2020年2月1日開催予定)参加者の募集を、前年の2019年9月頃から開始しました。

 ところが、2019年10月の台風で、会場予定の公園が冠水し、園内に土砂が堆積したため、市は、2020年2月末までの期間で、業者に復旧業務を委託しました。そして、公園管理者は、2019年10月に、公園全域の閉鎖を決定し、利用予定者(Yを含む)に、利用再開日時は未定である旨を連絡しました。

 2019年11月頃、市は、公園開放時期として、2019年12月の一部開放、2020年3月の全面開放を目標として公表しました。

 公園管理者は、2019年12月中旬頃、本件公園の一部開園を決定しましたが、この頃、Yを含む公園利用予定者に対し、復旧業務の進捗等を説明し、マラソン大会の実施の可否については未定である旨案内しました。

 Xは、2019年12月17日、本件大会への参加を申し込んで、Yに対して、参加費1万4000円を支払いました。

 Yは、2020年1月10日までに、大会当月に本件大会のコース予定地に工事車両が往来する予定が組まれたことを知ったため、同日、大会の中止をメールでXを含む参加予定者に知らせました。

 なお、大会利用規約第1項には「地震・台風・降雪・事件・疾病等の主催者の責によらない事由で、大会の開催が短縮・縮小・中止となった場合、参加費の返金は一切行いません」と定められていました(これについて、Xは、参加にあたって、この規約に同意していないし、消費者契約法10条に違反し無効である、と主張しています。)。

 Xは、参加費1万4000円と、電話料金や法律相談料など本件対応に必要となった費用5万9995円の合計7万3995円の支払を求めて、簡易裁判所に訴訟を提起しました(代理人弁護士の付かない本人訴訟のようです。)。

 この訴訟の主位的請求は、Yが、公園がマラソンコースとして使用できない状態であることを認識しながら、参加者の募集を継続し、Xから参加費の支払を受けたのが債務不履行にあたるとする損害賠償請求で、、予備的請求が、危険負担により参加費は不当利得となるとしたものです。しかし、一審の簡易裁判所は、Xの請求を全て認めなかったため、Xは東京地裁に控訴しました。

 控訴審の東京地裁は、参加費1万4000円の請求を認め、その他は認めませんでした(東地判2021.2.17)。

 控訴審判決は、Yは、公園利用再開日時や大会の実施可否については未定である旨の説明しか受けていなかったのであるから、Xの大会申込を受けた2019年12月17日の時点において、復旧業務の進捗によっては本件大会が開催できない可能性があることを容易に認識し得たものというべきであり、上記の本件規約第1項のような条項があることに照らせば、Xが返金を受けられない不利益を被るおそれがあったといえる、そうだとすれば、Yは大会の中止を認識し得た以上、信義則上、参加申込者の申込に先立ち、申込者に対して、大会開催は未定であり、復旧業務の進捗によっては中止もあり得る旨を告知すべき義務を負っていたものと解するのが相当である、としました。そして、Yがそのような告知をしていないので、告知義務の違反について、控訴人に対する損害賠償責任を負うものと認められる、としたものです。

 ただし、損害賠償の範囲について、参加費は認めたものの、他の費用については相当因果関係が認められない、として、請求を認めませんでした。

 つまり、主催者側の参加者に対する告知義務違反という債務不履行があったという判断ですね。損害の判断も思うところはありますが、今の裁判所だと、こういう判断になるだろうなぁという感じですね。



2022年5月 5日 (木)

「クレベリン」(大幸薬品)措置命令まとめ

 本年5月3日、大幸薬品は、同社サイトで、同社の空間除菌商品「クレベリン」の表示に関し、消費者庁から出された2回の景品表示法違反に基づく措置命令に従うことを公表しました。

 → 同社サイト『弊社商品の表示に関するお知らせ』

 1回目の措置命令は、今年1月20日、同社の「クレベリン スティック ペンタイプ」、「クレベリン スティック フックタイプ」、「クレベリン スプレー」、「クレベリン ミニスプレー」の商品パッケージや自社サイトでの表示について出されました。あたかも、商品から発生する二酸化塩素の作用により、表示記載の場所において、身の回りの空間に浮遊するウイルス又は菌が除去又は除菌されるなどの効果が得られるかのように示す表示をしていたため、消費者庁景品表示法の規定(不実証広告)に基づいて、同社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求め、同社から資料が提出されたが、当該資料はいずれも当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないとして優良誤認表示であると見なされたものです。

 → 消費者庁サイト

 2回目の措置命令は、今年4月15日、同社の「クレベリン 置き型 60g」、「クレベリン 置き型 150g」の同社サイト、テレビCM、Youtube動画広告での表示を対象とするもので、あたかも、商品をリビング等の室内に設置すれば、同様に二酸化塩素の作用により、リビング等において、室内空間に浮遊するウイルス又は菌が除去又は除菌されるなどの効果が得られるかのように示す表示をしていたもので、上記同様に不実証広告制度により、優良誤認表示と見なされました。

 → 消費者庁サイト

 実は、大幸薬品の「クレベリン」について、景品表示法違反として消費者庁から措置命令が出されたことは初めてではありません。新型コロナが問題になるずっと以前の平成26年(2014年)3月27日、消費者庁は、二酸化塩素を発生させる商品を販売する17業者に対して、部屋に置いたり首に掛けたりするだけで、空間に浮遊するウイルスや菌の除去ができる旨の広告表示が不当表示であるとして措置命令を出していますが、この中に「クレベリン」商品が含まれていました。この時は、同社は表示の文言の修正を行って対応しています。

 最近になって、新型コロナの感染が世界中の問題となり、抗菌、抗ウイルス商品が爆発的に売れるようになったわけですが、表示された効果に疑問のある商品も多く、消費者庁景品表示法健康増進法に基づいて監視を強め、不当表示の疑いのある業者に対する改善指導や、消費者向け注意喚起を行っています。そして、今回の大幸薬品以外にも、同様の商品の表示について措置命令が出されています。

 冒頭の同社サイト公表は、今回の消費者庁による2回の措置命令に従う旨の会社見解が示されたものです。
 しかし、ここまで、同社は、消費者庁に対抗する姿勢を見せていました。

 同社サイトでの公表内容に基づけば、
 昨年11月26日、商品の表示が不当表示に当たるとして、消費者庁から、措置命令案についての弁明の機会を付与されたことから、同社は、昨年12月14日、措置命令の差止訴訟を提起し、併せて仮の差止の申立を行っています。

 この仮の差止事件について、東京地裁は、本年1月12日、対象とされた商品6点の内、置き型商品2点につき、同社提出資料が効果の裏付けとなる合理的根拠に当たることを認め、措置命令の仮の差止めの決定をしました。ただし、その他の4商品表示については、措置命令の差止を認めませんでした(同社は東京高裁に即時抗告)。
 この地裁決定の直後の本年1月20日に、差止対象外となった4商品について消費者庁措置命令を出したのが、1回目の措置命令です。

 そして、本年4月13日、東京高裁は、東京地裁の決定を覆し、対象商品6点全部について、同社の主張を認めない決定を行いました。
 そのため、高裁決定の2日後の4月15日、消費者庁は、残る置き型の商品2点に対しても、措置命令を出したのが、2回目の措置命令となります。

 この高裁決定に対して同社が最高裁の判断を仰ぐのかが注目されましたが、結局断念し、措置命令に従うことを表明したのが冒頭のサイト公表です。

 ということで、措置命令をめぐる今回の一連の動きはひとまず終わったわけですが、報道によれば、同社は「表現は行きすぎていたが、商品そのものには問題がなく、利用者からの返品は受け付けない。」との対応のようです。今後、同社がこれらの商品の販売を継続するとすれば、どのような広告表現に変更するのか、また、返金対応が全くないということで購入者の納得が得られるのか、といった点が注目されます。

2022年3月 9日 (水)

不実証広告規制(景品表示法)を合憲とする最高裁判決

 景品表示法不実証広告制度(商品の広告・表示に関する合理的な根拠を示さない業者に対し、消費者庁優良誤認表示とみなして措置命令を出せる制度。)が、憲法で保障する営業の自由表現の自由を侵害するかが争われた訴訟の上告審判決で、昨日(2022年3月8日)、最高裁第3小法廷が、合憲との判断を示して、原告事業者の上告を棄却しました。

 → 最高裁判決

 これは、ちょうど5年前の2017年3月9日に、消費者庁が、株式会社だいにち堂(長野県)に対し、同社の商品「アスタキサンチン アイ&アイ」と称する食品の表示について、不当表示(優良誤認表示)であるとして措置命令を出した事案です。当時、当ブログにも以下の通り紹介していますので、事案については、そちらをごらんください。

 → 「健康食品による目の症状改善についての不当表示に対する措置命令」(2017/3/9)

 この措置命令に対して、原告事業者が、取消を求めて訴訟を提起していたものです。



 原告事業者の主張は、消費者庁長官の判断次第で合理的根拠資料の提出要求をすることができるというのであれば、規制が広範に過ぎ、表現の自由(憲法21条1項)及び営業の自由(憲法22条1項、29条)を侵害するものとなるところ、本件表示は、目に良いということを社会的に許容される範囲で誇張したものにすぎず、健康食品として常識的な表現にとどまり、社会一般に許容される程度を超えて具体的な効能・効果を訴求するものではないから、資料提出要求の要件を充たしていない、とするものです。

 この処分取消請求事件につき、一審東京地裁(2020年3月4日)、控訴審東京高裁(同年10月28日)は、原告の主張を認めず、原告事業者が上告していました。

 今回の最高裁判決は、不実証広告規制(景品表示法7条2項)は、「優良誤認表示の要件を満たすことが明らかでないとしても,所定の場合に優良誤認表示とみなして直ちに措置命令をすることができるとすることで,事業者との商品等の取引について自主的かつ合理的な選択を阻害されないという一般消費者の利益をより迅速に保護することを目的とするものであると解されるところ,この目的が公共の福祉に合致することは明らかである。」とし、「当該商品等の品質等を示す表示をする事業者は,その裏付けとなる合理的な根拠を有していてしかるべき」で、また、「事業者がした表示が優良誤認表示とみなされるのは,当該事業者が一定の期間内に当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと客観的に評価される資料を提出しない場合に限られると解されるから,同項が適用される範囲は合理的に限定されているということができ」、「同項が適用される場合の措置命令は,当該事業者が裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を備えた上で改めて同様の表示をすることについて,何ら制限するものではないと解される。そうすると,同項に規定する場合において事業者がした表示を措置命令の対象となる優良誤認表示とみなすことは,前記の目的を達成するための手段として必要かつ合理的なものということができ,そのような取扱いを定めたことが立法府の合理的裁量の範囲を超えるものということはできない。」として、不実証広告規制は、憲法21条1項22条1項に違反するものではない、として、上告を棄却したものです。

2022年1月 8日 (土)

「判例による離婚原因の実務」中里和伸著(LABO)」

新年明けましておめでとうございます。
 事務所が3階から4階に移転したばかりで、いまだに片付け切れておりませんが、本年もよろしくお願い申し上げます。


 さて、新年最初のブログ記事は、昨年出版されました(奥付によると今年発行ですが)「判例による離婚原因の実務」のご紹介です。離婚原因というのが新年最初にふさわしいかどうかはご判断をまかせるとして。今回もご恵贈賜ったものですし。

 この本は、あの不貞慰謝料シリーズ(?)の中里和伸弁護士が出されたものです。このシリーズの3冊の本については、当ブログで既にご紹介しているところですので、このシリーズに興味がお有りの方はこの記事末尾のリンク先をご覧ください。

 さて、新刊の「判例による離婚原因の実務」ですが、なにしろ分厚い、そして、高い(税抜6600円)。

 しかし、離婚事件というのは世の中に沢山存在し、その内のある程度の数が調停や裁判といった法的な手続に乗るわけで、そこまでに行かなくても交渉案件として、我々弁護士が業務として取り扱うことになるわけです。したがって、離婚の法律や手続に関する実務書はこれまでにもたくさんあったのですが、実際に裁判例になった事案を網羅して整理した本書のようなものはほとんどなかったと言っていいかと思います(これは上記の「不貞慰謝料」についても同じなんですが)。
 ここでいう「離婚原因」というのは、一般的な話としての離婚の原因となった行為というのではなくて、民法上の裁判による離婚(つまり片方が離婚に応じない場合ですね)が、どのような場合に裁判所が認め、あるいは、認めなかったか、という事例の集積です。前著同様に、大変な作業でしょうねぇ。

 本書は全体で600ページ強の分量の内、半分以上の300数十ページが後半の「離婚原因裁判例一覧表」で、占められていて、これは法律実務家としては必携の書籍と言わざるを得ません。
 もうひとつの特徴としては、裁判による離婚手続において、大きな法的論点である「有責配偶者からの離婚請求の可否」について、かなりの紙幅をさいているところかと思います。これは、要するに、例えば、不貞(浮気)をした側といったような、婚姻を破綻させた原因を作った側(有責配偶者)からの離婚請求が認められるか否かというもので、以前から重要な論点で、私も同様の事件を取り扱ったことがあります。この部分だけでも1冊の本ができたのではないか、と思うくらいです。 

→ 「判例による不貞慰謝料請求の実務 最新判例編vol.1」(中里和伸弁護士著)」
                              (2020/5/19)

→ 「「判例による不貞慰謝料請求の実務〔主張・立証編〕」(LABO刊)」
                                (2017/3/3)

→ 「書籍の紹介:「判例による不貞慰謝料請求の実務」(中里和伸著)」
                                (2015/8/5)

 

 

2021年10月18日 (月)

「弁護士法72条違反で」とは

明日19日が衆議院議員の総選挙の公示(告示は間違いです)ですね。

ということで、なぜか、弁護士法72条を挙げておきます。それだけ(笑)

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第72条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

で、NHKがこれに違反しているというのをメインに主張されている政党があるようです。
弁護士法が注目されるのは悪いことではないのですが。

2021年10月13日 (水)

メルカリなどフリマへの出品と違法行為

 10月に入って、新型コロナの緊急事態宣言が全国的に終了し、その後、ここまで急速に感染者が減少してきて、まだ油断はできないものの、少し明るさが出て来たような気がします。

 さて、フリーマーケットアプリ「メルカリ」にて、ハッシュタグ(「#」)に他社商品名を表示して(#(商品名))、類似の出品物を宣伝する行為が商標権の侵害に当たるとした大阪地裁の判決が9月27日に言い渡されたことが報じられています。

→ 裁判所サイト

 メルカリのようなフリマやオークションに出品する際に、法的な知識なく、売れるためにいろいろと工夫するのは良いのですが、結構法律的な問題が生じます。ここでは詳しくは触れませんが、消費者保護法(特定商取引法、消費者契約法、景品表示法、食品表示法などなど)や今回の商標法のような知的財産法(著作権法や不正競争防止法も含みます)、薬機法、健康増進法、もちろん、一般の民法なども含めて、それなりに理解して出品、特に何度も反復して出品するような人は、特定商取引法などの対象となる「事業者」に該当することになりますので、要注意です。


 ところで、先日、消費者庁は、Webサイト「特定商取引法ガイド」に掲載されている「通信販売広告Q&A」を改定したようです。

 特定商取引法では、通信販売の事業者に義務づけられている「特定商取引法に基づく表記」での「事業者の住所、電話番号」について、「住所」については現に活動している住所、「電話番号」については確実に連絡が取れる番号を表示する必要がありますが、「通信販売広告Q&A」Q18では、以下のような措置が講じられ、住所及び電話番号について上記の要件が満たされる場合においては、通信販売の取引の場を提供するプラットフォーム事業者やバーチャルオフィスの住所及び電話番号を表示することによっても、特定商取引法の要請を満たすものと考えられます。」として、次のような場合は、自己の住所や電話番号を表示しないでよい、としています。ただし、「個人事業者、プラットフォーム事業者又はバーチャルオフィス運営事業者のいずれかが不誠実であり、消費者から連絡が取れないなどの事態が発生する場合には、特定商取引法上の表示義務を果たしたことにはなりません。」としています。

  •  個人事業者がプラットフォーム事業者の住所及び電話番号を表示する場合、当該個人事業者の通信販売に係る取引の活動が、当該プラットフォーム事業者の提供するプラットフォーム上で行われること

  •  個人事業者がプラットフォーム事業者又はバーチャルオフィスの住所及び電話番号を表示する場合、当該プラットフォーム事業者又は当該バーチャルオフィスの住所及び電話番号が、当該個人事業者が通信販売に係る取引を行う際の連絡先としての機能を果たすことについて、当該個人事業者と当該プラットフォーム事業者又は当該バーチャルオフィス運営事業者との間で合意がなされていること

  •  個人事業者がプラットフォーム事業者又はバーチャルオフィスの住所及び電話番号を表示する場合、当該プラットフォーム事業者又は当該バーチャルオフィス運営事業者は、当該個人事業者の現住所及び本人名義の電話番号を把握しており、当該プラットフォーム事業者又は当該バーチャルオフィス運営事業者と当該個人事業者との間で確実に連絡が取れる状態となっていること

 実際には、ハードルは低くはないのですが、こういった条件が満たされない場合は、「事業者」となる出品者(本人が事業者とは思っていなくても)の出品は違法(特定商取引法違反行為)なものとなります。

 一方、出品者が事業のためのオフィスを持っておらず、自宅で内職的に出品する場合は、上記の要件を満たさない限りは、原則として(Q15、Q17参照)、自宅の住所、電話番号を世界中に公開しないといけないわけですので、大変なことになるかもしれません。

 したがって、安易に考えて、反復継続した出品を行うことは、事業者としての各種法律の義務、責任が生じることになってしまいます。つまり、冒頭に書いたように特定商取引法以外でも、消費者契約法景品表示法不正競争防止法商標法などの知的財産法薬機法、独占禁止法などに触れ、犯罪行為ともなることがありますので、メルカリやヤフオクなどで副業的に小遣い稼ぎをしようとする場合には十分な注意が必要ですし、念のためネット通販に関わる専門家に相談されたほうがいい場合もあると思います。


 



 

2021年8月 8日 (日)

「Web相談始めました」

 今回は、昨今の弁護士業務でのWeb会議システムの利用状況など(あくまでも私の周囲の話ですが)。

 新型コロナ感染問題もあって、いろいろな研修だとか学会だとかがZOOMなどのWeb会議システムを利用することがここ1年ちょっとで一気に一般化して、リアル講演だとかリアルセミナーというこれまで当たり前だったものが、ほとんど消えてしまった感があります。

 弁護士会のいろいろな委員会などもWeb会議が原則になり、裁判の期日もWebが珍しいものではなくなりました。

 私の場合は、法科大学院(ロースクール)の非常勤講師を務めており、昨年、今年と全部の授業がWebになり、学生さんとは一度も顔を合わせることなく終わるというような状態になっています。また、顧問先の企業も東京と大阪の拠点での会合がテレビ会議が原則となって、私も参加することが増えています。

 リアルに顔を合わせてコミュニケーションを行ったり、会合の後の懇親会での雑談を含めた情報交換などの交流はとても重要なものだと思いますが、そういうものが無くなってしまったことは残念であり、早く新型コロナ禍が去ってほしいものです。

 ただ、離れた人とお互いに移動することなく話ができるのは、移動時間が不要ですし、お互いの日程の都合を合わせやすくなります。また、以前のような高価なテレビ会議システムを導入しなくても、一般の個人や小さな会社であっても、それぞれパソコン(又はスマホでも)と通信環境があれば特段の費用もかからずにコミュニケーションができるようになったことは素晴らしいことだと思います。可能な状況であれば、出張先とか休暇旅行先からでもコンタクトできるわけです(あまり追いかけられるのも困ってしまいますけどね。)。

 各地の弁護士会でも、一般向けの法律相談をZOOMなどで始めたところもあるようですし、各弁護士、法律事務所もネット相談を始めているようです。

 私も、リアルの対面を原則とはしていますが、もちろん、これまでもメールでの打合せや相談のやりとりは普通のことになっていました。しかし、メール交換では時間がかかりますし、書面資料などの確認が十分にできない、ということがありました。また、文章での表現が苦手な相談者の方もおられます。そんな中、最近は、依頼者との打合せや相談をZOOMで行うことも増えてきました。今までのところは、従来の依頼者が中心ですが、今後は新規の相談者の法律相談でも取り入れていこうと思っております(本人確認の必要がありますので、住所、氏名の明示および免許証等の身分証明書の提示はお願いすることになります。)。

 既に各種の講演などでの講師の仕事もWeb化してきているのは冒頭に書いたとおりで、私も何度か経験していますが、今後は顧問先企業などに対する社員向け研修とか法律相談なども同様の形になっていくと思いますので、対応するつもりです。

 我々の業務に限らず、どの分野でもそうだと思いますが、従来のやり方がそのまま通用しない時代になったことは間違いなく、変えていかねば、ということですね。Web講演、相談のご要望がありましたら、ご連絡ください。

2021年8月 3日 (火)

個人情報保護法(令和2年改正法)新ガイドラインの公表

 8月2日に、個人情報保護法の令和2年改正に関し、個人情報保護法ガイドラインの改正についての、意見募集結果および新ガイドラインが公表されました。この個人情報保護法の令和2年改正法については、一部(刑罰など)を除き、令和4年4月1日が施行日となっています。

→ 令和2年 改正個人情報保護法について

→ 意見募集結果

→ 新ガイドライン

 なお、この令和2年改正とは別に、令和3年改正というのもあって、こちらも、いわゆる2000個問題の解消などを図る個人情報保護法一本化を中心とする重要な改正ですが、今回は、それには触れません。興味のある方は次のリンク先をご覧下さい。

→ 令和3年 改正個人情報保護法について

 さて、今回、ガイドラインが改定された令和2年改正では、

  • 利用停止・消去等の個人の請求権についての要件の緩和
  • 短期保存データを開示、利用停止等の対象に追加 
  • 再度のオプトアウトによる第三者提供の禁止
  • 「仮名加工情報」の創設
  • 法定刑の引き上げ

 などが内容となっています。ここで、これらを概説することはできませんが、かなり重要な改正となっていますので、個人情報を含むデータを取り扱う事業者は、新ガイドラインだけではなく、今回の意見募集結果に記載されている個人情報保護委員会の意見についても、十分な検討をしておく必要があります。かなりの分量ですけども。

 例えば、企業データベース事業者などは、法人の情報だけでなく、そこに個人経営企業の情報や法人の役員個人の情報などもデータベースに含まれていることも多いですので、これまで、オプトアウト制度を利用することによって本人の同意をとらずにデータベースの利用や販売が可能であったものでも、場合によっては、上記の「再度のオプトアウト」による第三者提供が禁止されたことにより、今後同様の事業活動の継続が難しくなることも考えられます。

 今後も施行までにいろいろと動きがあろうかと思いますので、注目です。


2021年8月 2日 (月)

「消費者法ニュース」7月号・消費者法白書

 大阪でも、またまた緊急事態宣言(8月末までの予定)が出されました。

 私自身はモデルナ・ワクチンの2回目接種を済ませたものの、安心できるわけでもなく、早く収まってほしいものです。夜に仕事してると、すぐに夕食難民状態になってしまいます。幸い、事務所近くにはスーパーやコンビニもあるのですが、毎回ではね。


  消費者法実務雑誌の「消費者法ニュース」(№218・2021/7)が届きました。「消費者法ニュース」のWebサイトはこちらなんですが、ブログ執筆時点では、7月号の発行の更新はされてないみたいですね(【追記】更新されました。№216のページ)。

 7月号の恒例は「消費者法白書」で、消費者法の各分野の昨年度の裁判例や動きなどを紹介するものです。

 私も長らく「消費者法白書」の「独占禁止法・景品表示法」の部分を担当してきており、今年も執筆しております。興味のある方はご覧ください。大きな図書館なら置いているところも多いかと思います。

 なお、今号の「特集」は、「特商法・書面交付義務の電子化に反対する」と「若者・未成年者の消費者被害への取組み」と、どちらもタイムリーな内容になっています。




2021年7月22日 (木)

「特定なんたら」の話

 オリンピックは、明日の開会式を前にしながらバタバタしていますが、それでもソフトボールやサッカーはゲームが始まりました。いろんな事情はともかく、各国の選手の皆さんは新型コロナの感染と熱中症には気をつけて実力を発揮していただきたい、と思います。


さて、消費者法の中心主力選手である「特定商取引法」(正式名称は「特定商取引に関する法律」)ですが、昭和51年(1976年)にできたベテラン選手でもあります。ただし、できた時には「訪問販売法」(正式名称は「訪問販売等に関する法律」)で、この法律が、平成12年(2000年)の改正で「特定商取引法」という名称に変わったものです。

 当初の「訪問販売法」は、「訪問販売」、「通信販売」、「連鎖販売取引」を対象としていたところ、その後、「電話勧誘販売」、「特定継続的役務取引」が加わり、平成12年改正で、「業務提供誘引販売」が追加されるにあたり、対象取引類型も広範囲となることから、もはや、「訪問販売等」でもあるまいというようなことで、「特定商取引法」と改称されたものです。

 したがって、この時に、「特定商取引」とは、「訪問販売」、「通信販売」、「電話勧誘販売」、「連鎖販売取引」、「特定継続的役務取引」、「業務提供誘引販売」の6つを指すこととなったものです。なお、最近の改正で、これに「訪問購入」が加わって、現在7つになっています。

 ここでは、一般的な用語である「商取引」「特定」を加えて、ある一部の狭い範囲の「商取引」に限定した特別な用語にしているわけです。

 このように、法律上、「特定」を加えて限定する例は、最近よく目立ちます。

 e-Gov 法令検索で「特定」の付く法律名を検索すると、74件出ました。いろんな分野の法律にわたりますが、私の主な観測範囲で絞っても、上記の「特定商取引法」のほかに、「特定商品等の預託等取引契約に関する法律」(預託法)、「特定非営利活動促進法」(NPO法)、「特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律」(特定調停法)、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(プロバイダ責任制限法)、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」(迷惑メール防止法)、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(マイナンバー法)、「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」(巨大IT規制法)などなどとたくさんあります。

 法律名以外にも、各法律の中で、対象を限定するために「特定」を頭に付ける場合もあります。例えば、上記の「特定商取引法」の中の「特定継続的役務提供」であるとか、「マイナンバー法」の中の「特定個人情報」などです。消費者関連では、集団的な消費者被害を救済する手続を定めた「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」では、この手続の担い手となる消費者団体を、「特定適格消費者団体」という名称にしています。消費者契約法上の「適格消費者団体」をさらに限定する名称として作られた用語ですね。

 そうなると、今後、「特定・・・・・」をさらに限定して法規制などの対象にする必要がある場合、どういう言葉を持ち出すのかな、と思ったりしますね。まさか、「シン・特定・・・・・」というようなことはないでしょうが。

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