2020年7月20日 (月)

SNSなど無償取引に対する景品表示法の適用

 任期付き公務員として消費者庁景品表示法実務に携わっておられた染谷隆明弁護士が、公正取引4月号(№834)「景品表示法の「取引」概念の再検討 -無償契約は「取引」かー」を書かれています。
 無償契約、つまり、ネットでよくある、消費者側からは対価を支払っていないような無料サービスなどは、景品表示法上の取引に該当せず景品表示法の規制対象とはならないと扱われているように見えることについての疑問を呈する立場からの論稿です。

 Googleのような検索サービスやfacebook、twitter、Instagram、LINEのようなSNSサービスは、基本的に利用者は無料で使えて便利なのですが、一方で、程度の差はあれ、個人情報を運営事業者に提供しています。ここで、仮に、そういった運営事業者に対して、不当表示や不当景品などの景品表示法での規制が可能なのか、という問題ですね。もちろん、場合によっては、個人情報保護法による規制対象となることがあるかもしれませんが、それとは別の話です。

 景品表示法(に限らないのですが)は、今のようなインターネット社会や個人情報などのデータの価値が極めて重要な状況を想定して作られた規制ではありません。したがって、IT社会において、これらの法規制の解釈について、変更すべきなのか、変更すべきであるとすれば、解釈上あるいは運用上の変更で可能なのか、法改正といった立法的な解決をしなければならないのか、ということを考えなければなりません。

 ところで、公正取引委員会は、昨年12月17日に、「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」を公表しています。また、案の段階ですが、当ブログでも書いています。

 → 公取委報道発表資料

 → 「プラットフォームと消費者個人情報提供に関する独禁法ガイドライン案」 (2019/9/25) 

 ここでは、「取引の相手方(取引する相手方)」の考え方として、独禁法2条9項5号は、「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に」、「継続して取引する相手方」(同号イ及びロ)や「取引の相手方」(同号ハ)に対して,不利益を与える行為を優越的地位の濫用とし、「取引の相手方(取引する相手方)」には消費者も含まれる、ということを明確にしました。
 そして、個人情報等は、「消費者の属性、行動等、当該消費者個人と関係する全ての情報を含み、デジタル・プラットフォーム事業者の事業活動に利用されており、経済的価値を有する。消費者が、デジタル・プラットフォーム事業者が提供するサービスを利用する際に、その対価として自己の個人情報等を提供していると認められる場合は当然、消費者はデジタル・プラットフォーム事業者の「取引の相手方(取引する相手方)」に該当する、としました。つまり、法改正などの必要はなく、消費者も取引の相手方に含まれるし、金銭的には無償であっても、個人情報の提供は対価として経済的価値を有するという解釈を示したものです。

 これは、独禁法の規制する不公正な取引方法の中の「優越的地位濫用」についての考え方を公取委が示したものですが、景品表示法は、そもそも、独禁法上の不公正な取引方法規制の特例法として立法されたものであり、この問題について、これと異別に解釈する必要はないように思います。

 したがって、例えば、Twitterで、企業が、何らかの特典を与える条件として、フォローさせるなどの場合は、景品表示法上の規制、すなわち、不当表示規制や不当景品規制の適用があると解してもおかしくはないと思われます。ただ、不当景品の場合の取引対価の額とか、課徴金算定など(ここは上記の染谷論稿でも指摘されているところですが)、よくわからん問題は残りますが。

2020年7月 8日 (水)

マンション管理組合と消費者安全法についてのメモ

昨日、マンション向けの製品の問題について、あるメディア関係者と話をする機会があり、いつものようにマンション管理組合(以下、管理組合)消費者法の適用についてご説明をし、また、私なりの考えを述べていました。そういった問題については、このブログで何度か書いており、最近では、以下の記事になります。

→ 「消費生活センター、マンション管理組合など昨日記事の補足」 (2019/10/6

 要するに、そのマンションが個人の居住用マンション(分譲)であっても、管理組合は団体だから、消費者安全法の対象にならない、というのはおかしいでしょ、という内容です。これは、景品表示法についても同じような議論で、管理組合向けのセールスが、消費者(個人)向けの表示とは解釈できないのか、という話になるかと思います。

 で、昨日のメディア関係者にも、そういう話をしていたので、さきほどちょっと考えてたら、ん?と思ったので、メモ書きするつもりで、この記事を書いています。なので、文章を整理する余裕がないので、箇条書きですみません。間違ってたりする点が多々あるかもしれません。法律家等各位のご指導がいただければ幸いです。


  •  管理組合が法人でない場合、管理組合が契約当事者になるとしても、共有部分に関して、物品を購入したり、何かの工事をして設備が付加されたりした場合、その物品や設備は管理組合が所有するのではなく、区分所有者個人の共有になる。
  •  だとすれば、管理組合が形式的に介在するとしても、消費者問題を考えるうえでは、区分所有者個人が契約当事者と考えてよいのではないか。
  •  消費者契約法特定商取引法の文言を厳しく解するかどうかは置いておいて、上記のブログ記事にも書いたように、消費者安全法、さらに景品表示法の対象を考えるうえでは、そのほうが法律の趣旨から考えても適当なのではないか。
  •  実際に、消費者安全法に基づいて設置されている消費者安全調査委員会は、平成26年7月18日に、居住用マンションの機械式立体駐車場で発生した事故に関する事故等原因調査報告書を公表している。


  •  もちろん、管理組合が設置工事の契約をした立体駐車場(管理組合法人所有であろうと、区分所有者個人共有であろうと)を除外するわけではなかろうし、利用者が消費者個人であるため当然。
  •  もっとも、この消費者安全調査委員会の調査は、消費者安全法「生命身体事故等」を対象とするものであり、財産的被害(同法の「多数消費者財産被害事態」)は対象とはなっていない(ですよね)。
  •  「消費者事故等」の定義の同法2条5項3号は「虚偽の又は誇大な広告その他の消費者の利益を不当に害し、又は消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある行為であって、政令で定めるものが事業者により行われた事態 」である。
  •  消費者安全法施行令3条には、政令で定める行為の1号として「商品等又は役務について、虚偽の又は誇大な広告又は表示をすること。」とする。2号以下は、消費者契約に関するものであることが明記されているが、1号には、その限定文言がない。
  •  同法2条8項は、「多数消費者財産被害事態」の定義として、2条5項3号の事態のうち、「同号に定める行為に係る取引であって次の各号のいずれかに該当するものが事業者により行われることにより、多数の消費者の財産に被害を生じ、又は生じさせるおそれのあるものをいう」とし、1号が、「消費者の財産上の利益を侵害することとなる不当な取引であって、事業者が消費者に対して示す商品、役務、権利その他の取引の対象となるものの内容又は取引条件が実際のものと著しく異なるもの」、2号が「前号に掲げる取引のほか、消費者の財産上の利益を侵害することとなる不当な取引であって、政令で定めるもの」である(2号は未指定ですかね?)。
  •  すなわち、「多数消費者財産被害事態」とは、「商品等又は役務について、虚偽の又は誇大な広告その他の消費者の利益を不当に害し、又は消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある行為であって」、「商品等又は役務について、虚偽の又は誇大な広告又は表示をする」行為のうち、「消費者の財産上の利益を侵害することとなる不当な取引であって、事業者が消費者に対して示す商品、役務、権利その他の取引の対象となるものの内容又は取引条件が実際のものと著しく異なるものに該当する」行為が「事業者により行われることにより、多数の消費者の財産に被害を生じ、又は生じさせるおそれのあるもの」ということになる。
  •  「消費者の財産上の利益を侵害することとなる不当な取引」というのは、文言からしても、厳密にその「取引」にかかる契約の当事者が個人かどうかによるものである必要はない。
  •  とすれば、「多数の消費者の財産に被害(おそれを含む)を生じ」れば、対象となることとなる。実際に購入したマンションが複数あり、かつ、広く広告宣伝を繰り広げているというような事情があるのであれば、この多数要件は満たすのではないか。
  •  したがって、生命身体には影響を及ぼさないが、財産的被害が生じる物品をマンションに売りつける行為、たとえば、この装置を取り付ければ節電効果が高く、購入代金は数年で元が取れる、というセールストークで高価な節電器(照明器具でも、空調装置でも、通信設備でも、配管工事でもいい。)を売りつける行為を続けている業者がいたとすれば、個人である区分所有者もしくは居住者の財産的被害につながるのであるから、管理組合が契約当事者であったとしても、消費者安全法の規定(40条4項勧告、5項命令、38条1、3項公表等)による対応は可能ではないか。
  •  そして、景品表示法における消費者向けの表示というのも同様に考えればいいのではないか。

 なお、蛇足ですが(前にも書いたような気もします)、区分所有者ではなくて、ライバル(競業)業者が、不正競争防止法に基づいて、差止とか損害賠償を求めるような場合は、この議論は不要なんで、悪い業者が虚偽の広告で管理組合と契約をするため、自社の営業に影響がある、というまともな業者さんが闘おうという話があればよろしいんですが。

2020年7月 7日 (火)

消費者庁長官記者会見(次亜塩素酸水の空間噴霧などについて)

(本文の記者会見の翌週の7月8日の会見でも、次亜塩素酸水に関する質疑応答が出たので、後ろに追記を加えました。)

新型コロナウイルス対策にアルコールが不足していたため、次亜塩素酸水が有効か否かについて話題になっていたことについて、先日、当ブログで、関係省庁、機関(経済産業省、厚生労働省、消費者庁および製品評価技術基盤機構(NITE))による公表内容をご紹介しました。

→ 「次亜塩素酸水の新型コロナへの有効性についての関係省庁の公表」 (2020/6/27)

 これに関して、7月1日、伊藤消費者庁長官が記者会見で説明されており、メディアの記者からも質問が出て回答されたのですが、この内容が消費者庁サイトに公表されました。

→ 「伊藤消費者庁長官記者会見要旨(2020年7月1日)」 

 それほど、長い内容でもないので、(ほかのテーマのところも含めてね)興味のある皆さんには是非読んでいただきたいですが、いくつか紹介しておきます。

 読売新聞記者からの「次亜塩素酸水についてですが・・・事故情報データバンクを見ていると、3月末くらいからちらほら、噴霧したら目が痛くなったとか、そういった情報が挙がってきています。6月に入ってから、文部科学省は噴霧しないでくれというふうなことを各教育委員会に通知を出されたと思いますが、事故情報データバンクを見ると、噴霧しないでくれとか、手指に使ったとかっていうのもあったりするので、消費者庁としてそういった注意喚起ができなかったというか、しなかった理由があれば教えていただければと思います。」という質問に対して、
 長官は、「
次亜塩素酸水に限らず、空中噴霧自体は、もともとWHOを始めとして空間噴霧についてはお勧めしないということを言われておりましたので、それについては早いうちに幅広く申し上げた方が良かったかなという思いはありますが、一方で、次亜塩素酸水を含めて、その有効性等々について、ちょうどその検証が進められているところでしたので、それも併せて情報提供しないとやや分かりにくいところがあるのではないかということで、その結論を待って、併せて情報提供させていただいたということであります。できるだけ分かっていることについては早めに、正確にお伝えするように努めていきたいと思っております。」と答えており、本当は、もっと早く空間噴霧について問題を指摘したほうが良かったが、NITEの検証を待った、というような感じの回答になっています。

 また、フジテレビ記者から「次亜塩素酸水についてですが、一部の業界団体は空間噴霧について、NITEで実験していないのにお勧めしないと表記していることについて批判をしておりますが、それについての受け止めがあればよろしくお願いします。」との質問に対して、
 長官は、「空間噴霧については、WHO新型コロナウイルスに対する消毒に関する見解の中で、室内空間で日常的に物品等の表面に対する消毒剤の空間噴霧や、燻煙をすることは推奨されないと。また、消毒剤を人体に対して空間噴霧することは、いかなる状況であっても推奨されないと言っております。これは次亜塩素酸水ということに限らず、ほかのアルコールも含めて、消毒・除菌に係るもの一般に言われていることでございますので、そうした国際的な知見を踏まえて、厚生労働省では、消毒剤やその他ウイルスの量を減少させる物質について、目や皮膚に付着し吸い込むおそれのある場所での空間噴霧はお勧めしないというふうにしているところでありますので、私どもとしても3省庁連名でそういったチラシについて書かせていただいているということだと思っております。」と答えています。

 この6月の政府からの公表について、次亜塩素酸水について有効性が示された、と解釈するようなSNSなどでの投稿も見られますが(業者さんのステマかもしれませんけども)、前回の(上記)ブログで書いたように、あくまでも、(空間噴霧や手指消毒ではなく)ドアノブなど物の消毒に関して、適正濃度での適正な使い方を限定しているもので、家庭や学校、一般の事業所で使うことは困難な方法に限定して書かれており、もちろん、空間噴霧の有効性は全く認められていないものですので、ご注意ください。

 なお、医薬品等として承認されていない商品について、(空間噴霧を含め)人体に吹きかけて新型コロナを殺す、などという効能効果をうたって、セールスを行うことは薬機法(旧・薬事法)にも違反し、そういった販売行為をすることは犯罪に該当する可能性が高いです。もちろん、根拠のない広告、セールストークなどは、優良誤認表示として景品表示法に違反するものとして、措置命令課徴金納付命令の対象ともなります。消費者庁も、コロナ関連の商品についての不当表示などには目を光らしておられるようですので、製造、販売する事業者の方々も、くれぐれもご注意ください。加えて言えば、事業者としては、独占禁止法(欺まん的顧客誘引)やら不正競争防止法健康増進法などの問題もありますので、ちゃんとそういった方面の専門の弁護士に相談されたうえで営業されたほうがいいと思いますよ。

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2020年6月30日 (火)

大阪公立大学の英語名称「University of Osaka」

 先日、大阪府立大学大阪市立大学を統合して2022年春に開学する大学名が「大阪公立大学」と発表されました。それ自体は問題は少ないと思うのですが(個人的には、もっといい名前にしたらいいのに、と強く思うのですが、それはそれとして)、この大阪公立大学の英語名を「University of Osaka」とするとされたことが、国立の大阪大学英語の正式名である「OSAKA UNIVERSITY」と混乱するのではないかと、問題になっています。

 この問題について、大阪大学は6月26日に、総長名で、大変驚いている、と表明し、大阪公立大学の英語名称は、大阪大学の英語名称と酷似しており、「今後、受験生や本学の学生・卒業生をはじめ、一般市民の皆様、特に海外の研究者、学生に大きな混乱を招き、世界にはばたく両大学の未来にとって非常に大きな障害となることは必至です。そのような事態にならないよう憂慮しておりましたが、結果として、双方の間で意見交換が行われないまま決定がなされたことは誠に残念でなりません。」として、配慮をお願いしたい、としました。

→ 大阪大学「公立大学法人大阪が設置する新大学の英語名称について」

 そして、大阪大学は、6月29日、「大阪公立大学の英語名称とされる「University of Osaka」は、すでに海外等で大阪大学の名称として広く使用されている実態があり、本学を表すものとして一般的です。今後も、英語名称の「University of Osaka」大阪公立大学を示すものとしてではなく、大阪大学と認識されると思われますので、多くの関係者の皆様に無用の混乱を招くことのないよう、引き続き、改めて大阪公立大学の英語名称を再考いただくことを強く申し入れる所存です。」と、海外での従来の使用事例を掲げたうえで、重ねて表明しています。

→ 大阪大学「「University of Osaka」が大阪大学の英語名称として使用されている実態」

 これに対して、大阪府の吉村知事は、混乱は招かない、として英語名称は変更しないとコメントしている模様です。

 私は大阪大学の出身ですが、身びいきとかでなくて、この英語名称は、特に国内外の外国人の皆さんに混乱を招くことが明らかであり、これから名称を決める大阪公立大学側が、この英語名称に固執する理由はよくわかりません。

 なお、このような学校名称の類似についての裁判例としては、青山学院大学の事件があります(東京地判平成13年7月19日)。これは、不正競争防止法に基づいて、「呉青山学院中学校」の名称の差止と損害賠償を求めた裁判で、判決では名称の差止を認めました。

 また、同様の紛争としては、京都造形芸術大学(私立)が名称を京都芸術大学に変更したことに対し、京都市立芸術大学が混乱を招くとして名称差止を求めて提訴しており、現在、大阪地裁で審理がなされています。

 大阪公立大学側が方針を変えないのであれば、大阪大学としては、同様に不正競争防止法に基づいて訴訟を提起すべきだと私は思います。大学の威信とかどうとかではなく、今後、多くの人たちに混乱を招く結果となるからです。

2020年6月25日 (木)

「独禁法務の実践知」(長澤哲也著 有斐閣)

 長澤哲也弁護士から近刊のご著書「独禁法務の実践知」(有斐閣)をご恵贈いただきました。ありがとうございます。
 長澤弁護士は、独占禁止法などの企業法務を専門とする企業法務実務家として著名な弁護士で、独占禁止法に関する著書、論文も多くかかれています。

 この本は、独占禁止法に関する実務的な解説書なのですが、はしがきに「独禁法に定められた違反類型ごとに解説するのではなく,戦略を立案する企業の視点から,問題となる行為を再構築している。」と書かれているように、独占禁止法について、私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法などといった体系を順番に解説するのではなく、競争者との協調的取引、取引先間の競争阻害、競合的活動の一方的制限、第三者に対する排他的拘束、競争者に対する取引拒絶等、有利な取引条件による顧客の獲得、顧客による合理的選択の阻害、取引先に対する不利益行為という企業の行為の面に着目した体系になっています。

 これは、当ブログでも紹介したことのある長澤弁護士の「優越的地位濫用規制と下請法の解説と分析(第3版)」(商事法務)が、独占禁止法優越的地位濫用規制下請法の規制を横断的に行為類型ごとに解説するという構成であったものを、独占禁止法全体に拡げた書物ということができると思います。

 消費者問題的視点からすると、「顧客による合理的選択の阻害」の章が気になるので、そこから見てみたのですが、独占禁止法欺まん的顧客誘引とともに、景品表示法不正競争防止法による規制についても、もちろん触れられております。また、最近大きな問題となっているデジタル・プラットフォームに関しても各所で取り上げられており、最新の独占禁止法の状況を反映しているという点でも魅力的な本になっています。

 広く企業法務に携われる実務家の方にはお勧めできる1冊です。

 まったく蛇足ですが、「じっせんち」って、かな漢変換すると、「十センチ」になりますね(笑)

2020年6月21日 (日)

「花粉を水に変えるマスク」DR.C社に課徴金納付命令(景表法)

 最近の新型コロナウイルス感染問題でのマスク騒動で、すっかり忘れられていたかもしれませんが、昨年7月に消費者庁から不当表示(優良誤認)として景品表示法に基づいて措置命令が出されていた「花粉を水に変えるマスク」について、このマスクを宣伝・販売していたDR.C医薬株式会社に対して、一昨日(6/19)、消費者庁課徴金納付命令を出し、857万円課徴金の支払いを命じました。

 → 消費者庁公表資料

 昨年の措置命令は、DR.C社を含む計4社のマスクの表示について出されたものですが、詳しくは、その当時に書いた次のブログ記事やそのリンク先をご覧下さい。

 → 「「花粉を水に変える」など光触媒マスクに対する措置命令(景表法)」 (2019/7/4)

 景品表示法課徴金は、対象期間の各商品の売上高に3%をかけた金額になりますので、857万円の課徴金ということは、計算すると、対象期間である平成30年1月1日から令和元年10月12日までの約1年9ヶ月間の売上高は約2億8600万円になるのではないかと思います(計算違いがあればお教え下さい。)。著名な人気歌舞伎役者を使ったあれだけの規模の宣伝広告をしていた割には少ないような気がしました(マスク市場の規模については、全くの素人なんで、単なる個人の感想です。)。

 なお、昨年の措置命令が出された4社のうち、大正製薬については、消費者庁に対して、この措置命令が不当だとして、現在係争中(審査請求)です。大正製薬は、DR.C社の宣伝とは異なり、「花粉を水に変える」とは表現していませんので、ご注意ください(各社の表示の概要は上記の昨年のブログに書いています。)。

 他の2社について、今回、課徴金納付命令が出されなかった理由は公表されていませんが、課徴金は、計算した結果150万円未満となった場合には課せられませんので、売上が低かったのかもしれません。



2020年5月19日 (火)

「判例による不貞慰謝料請求の実務 最新判例編vol.1」(中里和伸弁護士著)

 新型コロナ自粛で、かえってバタバタしているような感じで、ブログ更新も途切れております。

 私が担当している法科大学院の講義も今年はZOOMによる遠隔web授業となり、教室でのリアルな講義とは違った難しさやら面白さがありますが、試行錯誤で学生さんたちに助けられながら進めております(昨日、第3回をやりました)。また、弁護士会関係の会議や消費者団体の理事会などもweb会議の利用が当たり前になり、先日の某研究会でも、大阪の研究会なのに九州など遠隔地の皆さんが地元から参加され、終了後にはweb呑み会に移行するという「新しい生活様式」が始まっていたりもします。


 さて、先日発行されました「判例による不貞慰謝料請求の実務 最新判例編vol.1」(中里和伸弁護士著・LABO刊)を編集者からご恵贈いただきました。

この本は、同著者による「判例による不貞慰謝料請求の実務」「判例による不定慰謝料請求の実務 主張・立証編」2冊の続編です。この以前の本についても、当ブログでご紹介しています。

 → 「書籍の紹介:「判例による不貞慰謝料請求の実務」(中里和伸著)」 2015/8/5)

 → 「「判例による不貞慰謝料請求の実務〔主張・立証編〕」(LABO刊)」2017/3/ 3)

今回の3冊目は、上記の本の出版からそれぞれ5年、3年を経過し、その後も多くの裁判例が出ているため、その続編として、最新裁判例を集積し、分類して、解説を加えたものということになります。本の帯によれば、「平成28129.から令和元918までの最新判例全290例を新規に掲載」とのことで、不貞に関する慰謝料請求という狭い範囲のテーマで争われた裁判で、しかも、(和解などで終わらずに)判決にまで至っているものが、これだけの数があるのだ、ということに、一般の方は驚かれるかもしれません(おそらく公表されず、著者が入手できなかった判決も相当数存在すると思いますが)。

ということで、前2書より分厚くなっていて、ちょっとお高いですが、実務家、研究者、マニアの方には重要な資料かと思います。是非。

2020年4月24日 (金)

マスクの上限価格指示行為(独占禁止法)

 ブログの更新が1ヶ月ほど停まってしまいました。この1ヶ月で、我々の周りの世界はガラッと変わってしまったようですね。

新型コロナウイルス感染対策のため、マスクの買い占め、品不足、が問題となっています。なるべく必要な人、特に医療や福祉、子育てに携わる方々に優先していただきたいと思いますので、私は、不織布マスク(本来は使い捨てマスク)を洗って何度か使い回しています。

 このマスク再利用につき、京都女子大名誉教授小波秀雄先生が説明してくださっています。私もこれを参考にして、洗剤を溶かした水(湯)に付け置いてます(その後の熱湯かけはしておりません。)

→ 「使い捨てマスクを安全に再利用しよう」

 また、小波先生は、これに関連して、アルコールがなくても、一般的な石けんや洗剤による手洗いで、新型コロナウイルスは死ぬ(正確には不活化)、ということも書かれています。ご参考にしてください。

→ 「「コロナウイルス」はなぜ石けんや洗剤で殺されるのか—高校化学のレベルで解説」

 


 さて、品不足のマスクの価格が上がっていることについて、公正取引委員会は、昨日(4月23日)、webサイトにおいて、新型コロナウイルスの感染拡大が進む中で小売価格が暴騰しているマスクのような商品について、こういった状況の中、メーカーなどが小売業者に対して一定の価格以下で販売するよう指示する行為は、独占禁止法上の問題とはならない、という見解を公表しました。

→ 公取委webサイト

 独占禁止法の規制する「不公正な取引方法」の中に、「再販売価格の拘束」(再販売価格維持行為)というのがあり、一般的に、メーカーなどが、商品を販売する取引先に対して、一定の値段より安く売ってはいけない、というような強制行為を行うことは禁止されています。普通は、ブランドイメージ維持などの安売り規制が問題となるので、価格の拘束としては、下限価格が問題となることがほとんどですが、上限価格以上で売るな、という拘束も、小売業者など取引先に対して、自由な価格決定を拘束することになり、同じく、「再販売価格の拘束」に該当することになってしまいます。

 今回の公表は、現在の特殊な状況下でマスクの高額販売が問題となっている折りから、公正取引委員会が、今の状況の下で、メーカー等が小売業者に対して一定の価格以下で販売するよう指示する行為は、通常、当該商品の購入に関して消費者の利益となり、正当な理由があると認められるので、独占禁止法上問題とはならない、と表明したものです。

 なお、公正取引委員会は、一定の価格以下で販売するよう指示することによって、かえって商品の小売価格の上昇を招くような場合には、正当な理由があるとは認められない、ことも付言しています。現行の小売価格より、高い価格を上限価格とすることによって、小売価格の上昇を誘導する場合でしょうね。

 いずれにしろ、こういう特別な状況というのは、早く終わってほしいですね。

2020年2月18日 (火)

東京マラソン(一般参加)中止と参加料の不返金

 先日発行された「消費者法ニュース」1月号(№122)に、「海賊版ダウンロード対策問題の現状」という記事を書きました。もっとも、書いたのが12月初旬ですので、それ以降の改正作業動向は反映されていないのが残念ですが。


 ところで、昨日(2/17)、新型コロナウィルスの関係で、3月1日開催予定の東京マラソンが一般参加のレースについては中止となりました公式サイトのニュース。これによる参加料やチャリティ寄付金の返還がされないことが、話題になっています。

 私自身、参加予定だったマラソン大会が中止になったことが3回あります。台風で大会のちょっと前に由良川氾濫となった2004年と2013年の福知山マラソンと、当日の台風接近に伴う2017年の丹後ウルトラマラソンの3回です。一般に、台風などでマラソン大会などが中止になる場合は参加料の返金がされないことは普通ですが、大会により規約は異なるので、それを見ないといけません。2004年の時の記憶はないですが(返金なしじゃなかったかな。)、2013年の時は、送金料を引いて全額返金されました。このときの規約は「地震・風水害・降雪・事件・事故・疫病等による中止の場合 参加料返金の有無、額等についてはその都度主催者が判断し、決定します。」となっていて、9月の台風による洪水だったので(大会は1123日)、早めに判断できたからかな、と思います。2004年は10月の台風でしたね。2017年の丹後ウルトラは返金はなしで、特産品が送られてきました。

 今回の東京マラソンの規約は、「13. 積雪、大雨による増水、強風による建物等の損壊の発生、落雷や竜巻、コース周辺の建物から火災発生等によりコースが通行不能になった結果の中止の場合、関係当局より中止要請を受けた場合、日本国内における地震による中止の場合、Jアラート発令による中止の場合(戦争・テロを除く)は、参加料のみ返金いたします。なお、それ以外の大会中止の場合、返金はいたしません。」となっていて、今回の中止は「それ以外」とされて返金しないこととなったと思います。あくまでも想像ですが、返金となっている条件の場合は、イベント保険などの対象になっているのかな、とも思います(知らんけど)。

 だとすると、返金なしもやむを得ないのですが、こういった条項が有効か?ということも考えないといけません。

 消費者契約法8条とか10条の適用によって、規約の条項が無効となるか、という点を検討することになりますね。ただ、大会の直前の中止であって、大会に必要となる各種の経費の支出や契約は済んでいること、こういったマラソン大会では、参加料の収入は一部であって、スポンサーからの収入や税金などの公費の負担も大きいことも十分に考慮しなければならないので、単純ではありません。

 なお、判決例はないのではないかと思いますが、これまでにも、適格消費者団体などの消費者団体が、マラソンの参加規約の同種の条項について、消費者契約法違反ではないか、として申入活動をした事例がいくつかありますので、参考のために挙げておきます。

【追記】(2/18)

 申入事例(福岡マラソン)をひとつ追加しました。

【追記】(2/21)

 実は、私が抽選で当選して走るはずだった、2月23日開催予定の姫路城マラソンも中止になりました。記念Tシャツとかもろもろは送っていただけるようですが、参加料の返金はやはりありませんね。
 もう30年くらい前からの古手の市民ランナーとしては、別にそれでいいと思うのですよ。そう思わない方もたくさんおられることは理解してますが。

【追記】(3/18)

 東京オリンピックの中止の場合の返金問題について、次の記事に書きました。

 → 「オリンピック中止とチケット代金返金問題」 (3/18)

【追記】(5/27)

 申入事例(金沢マラソン、富山マラソン)を追加しました。

2020年2月11日 (火)

楽天への公取委立入検査(優越的地位濫用)

 しばらくブログの更新ができず、これが今年最初の更新となってしまいました。

 例のパイプテクターに関しては、最近になって東京メトロの車両(他社乗り入れ車両は除く)から広告が消えた、との報告がTwitterなどで見かけますね。東京メトロの広告媒体者としての責任について、昨年、ちらっと書いたことがありますが、同社もいろいろと考えたのでしょうか。

 → 「赤さび防止効果に関する日本技術士会千葉県支部の見解書」(2019/8/20)


 さて、昨日(2/10)、通販サイト国内大手の「楽天市場」を運営する楽天の本社に公正取引委員会が立入検査に入った、と報道されました。

 これは、楽天市場において、3980円以上を購入すれば送料を出店者負担で無料にする新制度を3月から導入するとしていることに関して、独占禁止法違反(優越的地位の濫用)の疑いがあるという理由のものです。

 以下、ちょっと長くなりますが、これまでの経過をまとめてみました。

 この立入調査の3日前の2月7日には、楽天が、「公正取引委員会からの調査開始及び調査への協力について」として、公正取引委員会から、送料無料制度について調査を開始した旨の連絡を正式に受領したことを公表しており、その中で、「・・法令上の問題はないものと考えていますが、公正取引委員会からの調査につきましては、全面的に協力してまいります。」としていました。

 そもそも、楽天は1年前の2019年1月に、この新しい送料無料制度を導入することを公表していました。ただ、この時点では、送料の負担を楽天と出店者のどちらが負担するかについては明確にしていなかったのですが、8月になって、送料無料ラインを3980円以上(税込)とすることを発表し、これが出店者負担となることが明らかになり、この規約の変更について、出店者の中から不満が出ていたものです。

 なお、昨年1月から、公正取引委員会は、「デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査」として、オンラインモール運営事業者の取引実態に関するアンケート調査などを実施しており、楽天を含むオンラインモールも調査対象となっていました。この調査については、4月に中間報告がまとめられ、10月には実態調査報告書として、公表されています。この中でも、運営事業者によって、規約が一方的に変更されたことがある、と回答した出店者がかなり多く(楽天は93.2%の高率)、規約の変更の中に不利益な内容があったとする回答も多くありました。

 このような楽天の送料無料の強行に対し、不満を持つ出店者の一部が、10月に「楽天ユニオン」という組合を結成し、反対署名を集めたり、「優越的地位の濫用」だとして公正取引委員会に調査を求めるなどの活動を行っていました。また、12月19日の朝日新聞では、楽天の送料無料の方針について、公正取引委員会楽天に「独占禁止法違反のおそれがある」と伝えていたことがわかった、と報じられています。

 しかし、楽天は、12月に、出店者に対して、当初予定通り送料無料を今年3月から実施することを通告しました。

 このように双方が対立した状況の中、今年1月22日、「楽天ユニオン」が、公正取引委員会に対し、独占禁止法に基づく排除措置命令を求める措置請求書と、店舗の署名を提出したようです。

 この日の記者会見において、記者からの質問に対し、公正取引委員会事務総長は、個別の案件については答えられないとしつつ、「自己の取引上の地位が、例えば、オンラインモール運営業者が出店者に対して優越していて、そういう場合に、不当に不利益を与えるようなやり方で取引条件を変更するという場合には、独占禁止法でいえば優越的地位の濫用に当たる可能性はある。」と答えています。

 また、報道によれば、2月5日の記者会見において、公正取引委員会杉本委員長は、この問題に関連し、一般論と断った上で「独占禁止法違反の疑いがあれば調査し、違反であれば厳正に対処する」と述べた、とのことです。

 こういった流れの中での昨日の立入検査ですが、これに対し、楽天は、立入検査があったことを認めたうえで、今後も調査に対して全面的に協力する、としつつ、送料見直しについては、現時点で予定通り実施する、としていると報じられています。

 立入検査があったばかりで、公正取引委員会が結論を出すのは、まだまだ先になると思います。けれども、GAFAをはじめとするプラットフォーム事業者については、プラットフォーム事業者の取引透明化法案など、国内外で、その問題点や規制の在り方についての検討が行われており、今回のような出店者との関係のほか、消費者との関係においても、さまざまな議論がなされているところですので、この案件は各方面から注目を集めることになりますね。

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