2021年8月 8日 (日)

「Web相談始めました」

 今回は、昨今の弁護士業務でのWeb会議システムの利用状況など(あくまでも私の周囲の話ですが)。

 新型コロナ感染問題もあって、いろいろな研修だとか学会だとかがZOOMなどのWeb会議システムを利用することがここ1年ちょっとで一気に一般化して、リアル講演だとかリアルセミナーというこれまで当たり前だったものが、ほとんど消えてしまった感があります。

 弁護士会のいろいろな委員会などもWeb会議が原則になり、裁判の期日もWebが珍しいものではなくなりました。

 私の場合は、法科大学院(ロースクール)の非常勤講師を務めており、昨年、今年と全部の授業がWebになり、学生さんとは一度も顔を合わせることなく終わるというような状態になっています。また、顧問先の企業も東京と大阪の拠点での会合がテレビ会議が原則となって、私も参加することが増えています。

 リアルに顔を合わせてコミュニケーションを行ったり、会合の後の懇親会での雑談を含めた情報交換などの交流はとても重要なものだと思いますが、そういうものが無くなってしまったことは残念であり、早く新型コロナ禍が去ってほしいものです。

 ただ、離れた人とお互いに移動することなく話ができるのは、移動時間が不要ですし、お互いの日程の都合を合わせやすくなります。また、以前のような高価なテレビ会議システムを導入しなくても、一般の個人や小さな会社であっても、それぞれパソコン(又はスマホでも)と通信環境があれば特段の費用もかからずにコミュニケーションができるようになったことは素晴らしいことだと思います。可能な状況であれば、出張先とか休暇旅行先からでもコンタクトできるわけです(あまり追いかけられるのも困ってしまいますけどね。)。

 各地の弁護士会でも、一般向けの法律相談をZOOMなどで始めたところもあるようですし、各弁護士、法律事務所もネット相談を始めているようです。

 私も、リアルの対面を原則とはしていますが、もちろん、これまでもメールでの打合せや相談のやりとりは普通のことになっていました。しかし、メール交換では時間がかかりますし、書面資料などの確認が十分にできない、ということがありました。また、文章での表現が苦手な相談者の方もおられます。そんな中、最近は、依頼者との打合せや相談をZOOMで行うことも増えてきました。今までのところは、従来の依頼者が中心ですが、今後は新規の相談者の法律相談でも取り入れていこうと思っております(本人確認の必要がありますので、住所、氏名の明示および免許証等の身分証明書の提示はお願いすることになります。)。

 既に各種の講演などでの講師の仕事もWeb化してきているのは冒頭に書いたとおりで、私も何度か経験していますが、今後は顧問先企業などに対する社員向け研修とか法律相談なども同様の形になっていくと思いますので、対応するつもりです。

 我々の業務に限らず、どの分野でもそうだと思いますが、従来のやり方がそのまま通用しない時代になったことは間違いなく、変えていかねば、ということですね。Web講演、相談のご要望がありましたら、ご連絡ください。

2021年8月 2日 (月)

「消費者法ニュース」7月号・消費者法白書

 大阪でも、またまた緊急事態宣言(8月末までの予定)が出されました。

 私自身はモデルナ・ワクチンの2回目接種を済ませたものの、安心できるわけでもなく、早く収まってほしいものです。夜に仕事してると、すぐに夕食難民状態になってしまいます。幸い、事務所近くにはスーパーやコンビニもあるのですが、毎回ではね。


  消費者法実務雑誌の「消費者法ニュース」(№218・2021/7)が届きました。「消費者法ニュース」のWebサイトはこちらなんですが、ブログ執筆時点では、7月号の発行の更新はされてないみたいですね(【追記】更新されました。№216のページ)。

 7月号の恒例は「消費者法白書」で、消費者法の各分野の昨年度の裁判例や動きなどを紹介するものです。

 私も長らく「消費者法白書」の「独占禁止法・景品表示法」の部分を担当してきており、今年も執筆しております。興味のある方はご覧ください。大きな図書館なら置いているところも多いかと思います。

 なお、今号の「特集」は、「特商法・書面交付義務の電子化に反対する」と「若者・未成年者の消費者被害への取組み」と、どちらもタイムリーな内容になっています。




2021年5月31日 (月)

独占禁止法・下請法関係の書籍2題

 大阪は、医療従事者や飲食業関係者をはじめとして、多くの方々が大変な状況を強いられ続けている緊急事態宣言が明けない状態が続いていますが、ワクチン接種が拡大して、少しでも良い方向に進むことを祈るばかりです。


 さて、独占禁止法など経済法実務がご専門の大江橋法律事務所長澤哲也弁護士から、立て続けに、編著書のご恵贈を賜りました。

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 ひとつが、「Q&Aでわかる 業種別 下請法の実務」(学陽書房)、もうひとつが、「類型別 独禁民事訴訟の実務」(有斐閣)です。

 「Q&Aでわかる 業種別 下請法の実務」のほうは、最初に、独占禁止法の特別法である下請法の全体像(総論)の説明がなされ、その後に、繊維産業、金属産業から、アニメーション産業、広告産業までの17業種に分けて、それぞれの業種の実態に即してQ&A方式で解説されています。

 「類型別 独禁民事訴訟の実務」は、第1章において、独禁法に基づく差止請求(24条訴訟)、民法709条に基づく損害賠償請求、独禁法に基づく損害賠償請求(25条訴訟)、不当利得返還請求、という訴訟類型の解説があり、続いて、反競争的行為の私法上の効力、独禁民事訴訟特有の証拠収集方法についてと訴訟上重要な点について書き進められています。第2章以降は、独禁法違反行為類型に分けて、違反の要件や民事上の請求についての解説や裁判例の紹介がなされています。

 「下請法の実務」は、法律専門家以外にも、各業界の経営者など関係者(下請事業者に限らず、親事業者側も)が自分の事業分野における下請法関係の問題を理解し、活用するために理解しやすいものとなっています。一方、「独禁民事訴訟の実務」は、独占禁止法関係の訴訟を行う弁護士(これまで、独占禁止法事件をあまり担当したことのない弁護士は特に)など法律実務家向けの書籍です。

 昔は、独占禁止法下請法の書籍というと、理論的な体系書か公正取引委員会の運用状況に関するものがほとんどでしたが、最近は、こういった実務に直結した、法律実務家や企業の経営者、法務担当者が活用できるものが増えてきたことはありがたいですね。

 私自身も今現在、独占禁止法違反関係の訴訟の真っ最中ですので、ありがたく活用させていただきたいと思います。

2021年3月14日 (日)

「大崎事件と私 アヤ子と祐美の40年」(鴨志田祐美 LABO刊)

 鴨志田祐美弁護士の書かれた「大崎事件と私 アヤ子と祐美の40年」を発行者のLABOさんからご恵贈いただいたので、早速読みました。大崎事件というのは、1979年に鹿児島県で男性が遺体となって発見され、その身内の数名が殺人、死体遺棄の犯人として逮捕、起訴され、有罪判決を受けて、服役したという事件で、服役した一人で中心人物とされた原口アヤ子さんが、服役後、えん罪であるとして再審の申立を重ねているものです(まだ続いてます。)。この事件の流れについては、本書の冒頭にある「大崎事件の概要」にわかりやすく書かれています。

 刑事裁判の専門家であれば、みな知っている再審事件である大崎事件です。しかし、再審手続とか、えん罪事件とかとなると、かえって、一般の方にはちょっと近寄りがたい印象があるかもしれません。全部で700ページくらいありますし。

 でも、読み始めると単に大崎事件の再審事件の記録というような固い話ではなく、鴨志田弁護士の半生記でもありますし、えん罪の判決がどのように作られ、それを再審手続で覆すことの大変さが平易な言葉で綴られています。

 優秀な厚労省官僚であったときに、虚偽公文書作成などで逮捕起訴され、後に無罪が確定した村木厚子さんが、この本の「推薦の辞」を書いておられ、これはAmazonのサイトで読むことができます。村木さんは、

「およそ700頁という本の分厚さに一瞬たじろいだものの、読み始めると一気に読み終えてしまった。ハラハラ、ドキドキ、そして泣いて、笑って、怒って。読み物としてとにかく面白いのだ。」、「頑なに再審の開始を阻もうとする検察や、再審に対する姿勢が裁判官によってまちまちの裁判所との闘いは、難しいゲームの攻略本のようにも読める。同時に、原口アヤ子と鴨志田祐美の「女の一代記」としても、この二人とともに闘う多くの強く心優しい人たちの人間ドラマとしても読める。」

と書かれていますが、私も全く同感です。

 一度、書店で、本書を手に取られて、最初の数頁の個所、つまり、「はしがき」(一部はAmazonに掲載されてます。)と「大崎事件の概要」を読んでもらうと興味を持たれる人も多いのではないかと思います。それに続く刑事裁判と再審に関する手続用語の基礎知識も一般の人向けにわかりやすく書かれています。はしがきの中で、鴨志田弁護士はこう書いています。

 「弁護士が自ら手がけている事件について書いたものなんて、きっと専門性の高い難解なものだろう、と思われるかもしれません。でも、どうか「食わず嫌い」にならずに読み始めてみてください。ここに書かれているのはすべて実話ですが、「ドラマ」とか「映画」とか「お芝居」と同じように楽しんでいただきたいと思います。」

 この本は、刑事裁判に関わる法律家(弁護士はもちろん、裁判官、検察官を含めてですが)はもちろんのこと、法律、裁判に興味をお持ちの一般の人、特に法律を学んでいる、あるいは、将来学ぼうとする若い人たちに是非読んでいただきたいですね。学生さんには刑事訴訟法の良い勉強にもなりますよ。

2020年9月 9日 (水)

「京都芸術大学」名称差止訴訟判決を引き続き考える。

 前回のブログ記事で、「京都芸術大学」名称差止訴訟判決をご紹介しました。

 その中でもちょっとだけ触れましたが、最後の「京都市立芸術大学」「京都芸術大学」の表示の類似についての判断よりも、市立芸大が主張していた「京都芸術大学」周知性が否定された点が一番の分岐点ではないか、と思うのです。

 ちょっと意地悪に考えてみると、これが、青山学院事件のように、京都から離れた広島の呉あたりで、「京都芸術大学」が設置されたとすれば、さて、どうなったかな、というと結構面白い思考実験になるのかな、と思います。今回の判決の判断からすれば、今回よりも離れているので、もっと「京都芸術大学」周知性は認められなかったことに当然なるのですが、実際にそう考えられただろうか、あるいは、その場合でも「京都市立芸術大学」との類似が認められなかったか。いや、私も現時点でよくわからんのですが。

 さて、この判決について、昨日(9/8)、知的財産権がご専門の島並良神戸大学教授がTwitterで次のように投稿されておりました。

「京都芸術大学事件の大阪地判を読む。同判決は、「京都市立芸術大学」の著名性を否定。周知性は肯定しつつ、その構成要素のうち「市立」部分のみ自他識別機能が高いとして、要部「京都市立芸術大学」全体と認定、結論として「京都芸術大学」とは非類似と判断。」

「たしかに静的にはあり得る判断だが、被告が「京都造形芸術大学」から「京都芸術大学」に改称したという経緯は、結論に影響を与えていないように見える。こうした意図的な「擦り寄り」行為等、動的な側面を標識法がどのように捉えるべきかを考えていく必要がある。」

「特に本件では、原告側が「市立」という誤認防止要素を含むばっかりに、それを欠く一般的な「京都芸術大学」を、「造形」を削除するという「擦り寄り」によって許す結果となった。最初から「市立」を含まなければ良かったというのでは、誤認防止に努めた者に却って不利益を与える結果とならないか。」

「本判決は、「混同のおそれ」ではなく、それ以上に規範的な「類似性」非充足で請求を棄却した。何をもって類似と捉えるかは標識法の永遠のテーマだが、「市立」「造形」でせっかく識別されていた状況を造形を除くことでより悪化させた、という経緯をも類似性判断に取り込むことはあって良いのでは。」

 島並教授が指摘されている「擦り寄り」行為等の動的側面を考慮すべきではないか、というのは、大変興味深い考え方に思えます。

 そして、これは、大阪公立大学の英語表記問題にもつながるところかもしれませんね。そちらの問題についての当ブログの記事はこちら。

 → 「大阪公立大学の英語名称「University of Osaka」」 (6/30)

2020年9月 7日 (月)

「京都芸術大学」の名称の差止訴訟判決(請求棄却・不競法)

既に、報道でご存じの通り、公立大学法人「京都市立芸術大学」(以下、市立芸大)が、学校法人「瓜生山学園」が設置する「京都造形芸術大学」「京都芸術大学」に改称することについて(令和2年4月1日に改称を実施)、不正競争防止法違反であるとして、「京都芸術大学」の名称の差止を求めていた裁判で、大阪地方裁判所は、8月27日、差止を認めない判決(請求棄却)を言い渡しました。

 判決が裁判所サイトで公表されましたので、ちょっと概要を見ていきたいと思います。なお、学校名で同様の紛争になったものとしては、「青山学院事件」(東京地裁平成13年7月19日判決)がありますので、興味のある方は調べてみてください。こっちは差止が認められています。

 → 判決文はこちらから(裁判所サイト)

 原告の市立芸大が差止の請求の根拠としたのは、不正競争防止法2条1項1号(周知表示混同惹起行為)2条1項2号(著名表示冒用行為)です(商標権や著作権は無関係です。)。どちらも、有名な商品(サービスを含みます)などの名称や包装、容器のデザインなどのコピー商品を製造したり販売したりする行為を禁止するものです。

 1号の周知表示混同惹起行為は、他人の商品・営業の表示(商品等表示)として需要者の間に広く認識されているものと同一又は類似の表示を使用し、その他人の商品・営業と混同を生じさせる行為であり、2号の著名表示冒用行為は、他人の商品・営業の表示(商品等表示)として著名なものを、自己の商品・営業の表示として使用する行為、で、似ているのですが、違いは、

 2号の著名表示冒用行為では、その商品等の表示が「著名」であることが必要で、これは、全国的に一般に知られている、というかなり有名ブランドという感じです。一方、1号の周知表示混同惹起行為では、「周知性」が要件となっていて、これは、「著名」ほど有名でなくてもいいが、商品等の取引の相手方(需要者)には広く知られているという要件で、全国的でなくても、一地域での周知性でも足りるとされます。
 この点では2号より、1号のほうが緩い(広い)ことになりますが、1号では、その表示を行うことにより本家と「混同」を生じさせる、という要件が加わります。2号では、この要件は必要ないので、その点では2号にメリットがあることになります。
 つまり、「著名」な商品表示に類似した表示を使用すれば、それだけでアウトで、「周知性」のある表示(「著名」まではいかない)に類似した表示を使用した場合については、その表示で「混同」が生じた、ということが必要になります。どちらで差し止めてもらっても、効果は変わりませんので、市立芸大は、両方とも主張ということになります。

 さて、芸大の事案については、裁判所はどう判断したでしょうか。

 市立芸大が差止を求めているのは「京都芸術大学」ですが、これに類似する市立芸大側が使用している表示(原告表示)として次の5つの表示を挙げました。

1 京都市立芸術大学
2 京都芸術大学
3 京都芸大
4 京芸
5 Kyoto City University of Arts

 本件裁判の争点は、以下の通りです。

  1. 不正競争防止法2条1項2号該当性(争点1)
    ア 原告表示1~5の「著名」性の有無等(争点1-1)
    イ 原告表示1~5と本件表示との類似性の有無(争点1-2)
  2. 不正競争防止法2条1項1号該当性(争点2
    ア 原告表示1~5の周知性(需要者の間に広く認識されていること)の有無(争点2-1)
    イ 原告表示1~5と本件表示との類似性の有無(争点2-2)
    ウ 本件表示の被告の使用による原告の営業との混同惹起の有無(争点2-3)
  3. 本件表示の被告の使用による原告の営業上の利益の侵害又は侵害のおそれの有無(争点3)

 判決は、まず、原告表示1~5全部について「著名」とはいえない(争点1-1)、として、2号の著名表示冒用行為を否定しました。

 そして、「周知性」に関しては(争点2-1)、原告表示1の「京都市立芸術大学」については、原告大学を表示するものとして需要者に広く認識されており,周知が認められる、としましたが、その他の原告表示2~5については、周知とはいえない、としました。ここで、特に、原告表示2の周知性が認められなかった点は、結論にひびいていますね。

 ここまでの判断により、原告表示1「京都市立芸術大学」と被告の「京都芸術大学」が類似するか、が問題になります(争点2-2)。

 判例上、ある商品等表示が不正競争防止法2条1項1号にいう他人の商品等表示と類似のものか否かを判断するに当たっては、取引の実情のもとにおいて、取引者などが、両者の外観、称呼又は観念に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断する、とされています。今回の判決もこの基準に拠っています。

 そして、「京都」「芸術」「大学」の各部分は、自他識別機能又は出所表示機能はいずれも乏しいとしましたが、「(京都)市立」の部分の自他識別機能又は出所表示機能は高いとしました。そうすると、「原告表示1の要部は、その全体である「京都市立芸術大学」と把握するのが相当であり、殊更に「京都」「芸術」の間にある「市立」の文言を無視して「京都芸術大学」部分を要部とすることは相当ではない。」としました。

 続けて、判決は、「京都市立芸術大学」「京都芸術大学」は、その要部を中心に離隔的に観察すると、「市立」の有無によりその外観及び称呼を異にすることは明らかであり、観念についても、「市立」の部分により設置主体が京都市であることを想起させるか否かという点で異なる。取引の実情としても、需要者は、複数の大学の名称が一部でも異なる場合、これらを異なる大学として識別するために、当該相違部分を特徴的な部分と捉えてこれを軽視しない。そうすると、取引の実情のもとにおいて、取引者又は需要者が、両者の外観,称呼又は観念に基づく印象,記憶,連想等から全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるとはいえず、そうである以上、「京都市立芸術大学」と「京都芸術大学」とは、類似するものということはできない、と判断しました。

 要約すると、「京都市立芸術大学」の名称は、周知性はあるが、著名ではなく、両者は、「市立」の有無により、外観、称呼、観念が異なるから類似とはいえない、ということになります。

 なお、今回の判決とは直接の関係はありませんが、商標権に関連して、8月12日付で、昨年7月11日に市立芸大が出願していた「京都市立芸術大学」商標権特許庁が認めて登録しています。また、これと別に、同じく昨年7月、瓜生山学園(17日)と市立芸大(18日)は、「京都芸術大学」商標権をそれぞれ出願していますが、こちらは両方ともまだ「審査中」になっています。

【追記】(9/8)

 京都市立芸大が控訴したとのことです。

 → 京都市立芸大「控訴についての理事長コメント」

【追記】(9/9)

 続編を書きました。

 → 「「京都芸術大学」名称差止訴訟判決を引き続き考える。」 (9/9)

 

2020年6月30日 (火)

大阪公立大学の英語名称「University of Osaka」

 先日、大阪府立大学大阪市立大学を統合して2022年春に開学する大学名が「大阪公立大学」と発表されました。それ自体は問題は少ないと思うのですが(個人的には、もっといい名前にしたらいいのに、と強く思うのですが、それはそれとして)、この大阪公立大学の英語名を「University of Osaka」とするとされたことが、国立の大阪大学英語の正式名である「OSAKA UNIVERSITY」と混乱するのではないかと、問題になっています。

 この問題について、大阪大学は6月26日に、総長名で、大変驚いている、と表明し、大阪公立大学の英語名称は、大阪大学の英語名称と酷似しており、「今後、受験生や本学の学生・卒業生をはじめ、一般市民の皆様、特に海外の研究者、学生に大きな混乱を招き、世界にはばたく両大学の未来にとって非常に大きな障害となることは必至です。そのような事態にならないよう憂慮しておりましたが、結果として、双方の間で意見交換が行われないまま決定がなされたことは誠に残念でなりません。」として、配慮をお願いしたい、としました。

→ 大阪大学「公立大学法人大阪が設置する新大学の英語名称について」

 そして、大阪大学は、6月29日、「大阪公立大学の英語名称とされる「University of Osaka」は、すでに海外等で大阪大学の名称として広く使用されている実態があり、本学を表すものとして一般的です。今後も、英語名称の「University of Osaka」大阪公立大学を示すものとしてではなく、大阪大学と認識されると思われますので、多くの関係者の皆様に無用の混乱を招くことのないよう、引き続き、改めて大阪公立大学の英語名称を再考いただくことを強く申し入れる所存です。」と、海外での従来の使用事例を掲げたうえで、重ねて表明しています。

→ 大阪大学「「University of Osaka」が大阪大学の英語名称として使用されている実態」

 これに対して、大阪府の吉村知事は、混乱は招かない、として英語名称は変更しないとコメントしている模様です。

 私は大阪大学の出身ですが、身びいきとかでなくて、この英語名称は、特に国内外の外国人の皆さんに混乱を招くことが明らかであり、これから名称を決める大阪公立大学側が、この英語名称に固執する理由はよくわかりません。

 なお、このような学校名称の類似についての裁判例としては、青山学院大学の事件があります(東京地判平成13年7月19日)。これは、不正競争防止法に基づいて、「呉青山学院中学校」の名称の差止と損害賠償を求めた裁判で、判決では名称の差止を認めました。

 また、同様の紛争としては、京都造形芸術大学(私立)が名称を京都芸術大学に変更したことに対し、京都市立芸術大学が混乱を招くとして名称差止を求めて提訴しており、現在、大阪地裁で審理がなされています。

 大阪公立大学側が方針を変えないのであれば、大阪大学としては、同様に不正競争防止法に基づいて訴訟を提起すべきだと私は思います。大学の威信とかどうとかではなく、今後、多くの人たちに混乱を招く結果となるからです。

2020年5月19日 (火)

「判例による不貞慰謝料請求の実務 最新判例編vol.1」(中里和伸弁護士著)

 新型コロナ自粛で、かえってバタバタしているような感じで、ブログ更新も途切れております。

 私が担当している法科大学院の講義も今年はZOOMによる遠隔web授業となり、教室でのリアルな講義とは違った難しさやら面白さがありますが、試行錯誤で学生さんたちに助けられながら進めております(昨日、第3回をやりました)。また、弁護士会関係の会議や消費者団体の理事会などもweb会議の利用が当たり前になり、先日の某研究会でも、大阪の研究会なのに九州など遠隔地の皆さんが地元から参加され、終了後にはweb呑み会に移行するという「新しい生活様式」が始まっていたりもします。


 さて、先日発行されました「判例による不貞慰謝料請求の実務 最新判例編vol.1」(中里和伸弁護士著・LABO刊)を編集者からご恵贈いただきました。

この本は、同著者による「判例による不貞慰謝料請求の実務」「判例による不定慰謝料請求の実務 主張・立証編」2冊の続編です。この以前の本についても、当ブログでご紹介しています。

 → 「書籍の紹介:「判例による不貞慰謝料請求の実務」(中里和伸著)」 2015/8/5)

 → 「「判例による不貞慰謝料請求の実務〔主張・立証編〕」(LABO刊)」2017/3/ 3)

今回の3冊目は、上記の本の出版からそれぞれ5年、3年を経過し、その後も多くの裁判例が出ているため、その続編として、最新裁判例を集積し、分類して、解説を加えたものということになります。本の帯によれば、「平成28129.から令和元918までの最新判例全290例を新規に掲載」とのことで、不貞に関する慰謝料請求という狭い範囲のテーマで争われた裁判で、しかも、(和解などで終わらずに)判決にまで至っているものが、これだけの数があるのだ、ということに、一般の方は驚かれるかもしれません(おそらく公表されず、著者が入手できなかった判決も相当数存在すると思いますが)。

ということで、前2書より分厚くなっていて、ちょっとお高いですが、実務家、研究者、マニアの方には重要な資料かと思います。是非。

2019年12月23日 (月)

口コミ代行業者に関する記事にコメント載りました。

 ネットニュースのJ-CASTニュースの12月22日の記事「口コミ代行が横行?「1件6000円~」も 弁護士が指摘する問題点」にコメントが掲載されました(一番最後のところです。)。

 ご興味のある方は是非お読みいただきたいのですが、私のコメント関連のところをちょっと補足したいと思います。

 景品表示法に関して、「処分対象は依頼側となる可能性が高く」というのは、景品表示法に基づく措置命令課徴金納付命令のような正式な法的処分については、その対象となる事業者は、「自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項」の表示をした者となっていますので、広告会社や広告媒体者(新聞、雑誌、テレビなど)は対象とならず、「依頼側」(=広告主)に対する処分に限られることになるからです。ただし、広告会社などにも、正式な法的処分ではありませんが、違反行為が起こらないように必要な措置を採るように消費者庁が「要請」を行うようなことは考えられます。例としては、2010年末のおせちで問題になった、いわゆる「スカスカおせち事件」では、消費者庁は、2011年2月に、おせちを販売していた会社に措置命令を出すと同時に、そのおせち商品を掲載していたグルーポンに対して、必要な措置(二重価格表示に関して)を要請したことがあります。

 → 「バードカフェおせち事件に関する措置命令及び要請(景品表示法・消費者庁)」 (2011/2/22)

 ただ、この要請は、法的処分ではなく、法的な拘束力があるわけでもありません。不当表示に関係した広告会社や広告媒体者については、上記の通り、景品表示法の行政処分の対象にはなりませんので、何らかの立法対応が必要ではないかと思います。なお、もちろん、詐欺的な宣伝に荷担したような場合は、詐欺や不法行為ということで、広告会社などに法的責任が追及される可能性はあります。

 また、記事にある「消費者庁の景表法ガイドライン」というのは、「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」(PDF)のことです。該当個所は、これの4~5頁ですね。

 最後に、不正競争防止法(品質等誤認惹起行為)の判決(ライバル業者からの損害賠償請求訴訟)の紹介がありますが、これについては、当ブログの「自社開設を隠した口コミサイトの操作が誤認惹起行為とされた判決(不競法)」(2019/4/19)で取り上げています。

2019年11月12日 (火)

「判例から学ぶ消費者法〔第3版〕」(民事法研究会)が発行されました。

 「判例から学ぶ消費者法」の第3版(島川勝・坂東俊矢編)が発行されました。

民事法研究会サイト

 この本の初版から、「情報化社会と消費者」の章を書いており、今回も引き続き担当しています(第19章)。

 担当部分の裁判例2つの中身についてはあまり変わっていませんが、冒頭の「問題の所在」については、第2版(平成25年発行)以降の情報化社会の進展も激しく、それにまつわる事象の変化もありますので、アップデートのために加筆修正を行っています。

 私の担当個所以外でも、集団的被害回復制度の導入消費者契約法や民法(債権法)の改正など大きな動きがあり、それらをカバーする改訂内容となっています。

 本書の内容について、出版社サイトから以下に引用いたします。ご興味のある方は是非ご一読いただければと思います。


本書の特色と狙い

 約款、集団的消費者被害回復制度について新たに章を設け、民法(債権関係)、消費者契約法、特定商取引法、割賦販売法等の改正、消費者裁判手続特例法の立法から最新の重要判例も織り込んで約6年ぶりに改訂!

 訪問販売、クレジット取引、多重債務、金融商品取引、欠陥住宅、ネットオークションなど、消費者問題の各分野について重要な裁判例をもとに、消費者問題の理論と実務を解説!

 各分野の概説とともに、判決の概要・争点・判旨を紹介したうえで、判決の意義や社会に与えた影響などをわかりやすく示す!

 消費者法を学ぶ学生はもとより、消費者相談にあたる消費生活センター関係者、消費者事件を担当している弁護士・司法書士等の実務家にも必携となる1冊!

本書の主要内容

第1章 消費者問題総論

第2章 民法と消費者法

第3章 消費者契約法(1)─不当勧誘規制

第4章 消費者契約法(2)─不当条項規制

第5章 消費者団体訴訟制度

第6章 集団的消費者被害回復制度

第7章 約款と民法、消費者法

第8章 特定商取引法(1)─訪問販売、クーリング・オフ

第9章 特定商取引法(2)─継続的役務

第10章 特定商取引法(3)─マルチ商法とネズミ講

第11章 割賦販売法(1)─平成20年改正法とクレジット取引

第12章 割賦販売法(2)─クレジットカードの不正使用

第13章 多重債務と消費者

第14章 金融商品取引と消費者

第15章 保険と消費者

第16章 製造物責任と消費者

第17章 欠陥住宅と消費者

第18章 独占禁止法・景品表示法と消費者

第19章 情報化社会と消費者

第20章 宗教被害と消費者

第21章 医療サービスと消費者

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