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2023年7月 7日 (金)

「判例による不貞慰謝料請求の実務 最新判例編vol.2」(中里和伸弁護士著・LABO)

 ブログ更新が昨年9月以降できてなくて申し訳ございません。

 新型コロナ禍も落ち着いてきたようですが、沖縄県などでも感染者が激増しているようで、日本中でこでも、まだまだ油断もできませんので、皆さんご自愛ください。

  幸いにして、私はこれまで新型コロナに罹患しておりません。


 といういことで、久しぶりに、新刊書のご紹介です。

 「判例による不貞慰謝料請求の実務 最新判例編vol.2」(中里和伸弁護士著・LABO)

です。

 以前、当ブログ(2020519日)で紹介した「『判例による不貞慰謝料請求の実務 最新判例編vol.1』(中里和伸弁護士著)」の続編で、最新の関連裁判例を新規に掲載しておられます。

 この著者の書籍については、以下のように当ブログで紹介しておりますが、今回の新刊書も我々の実務に大変役立つものだと思います。

  → 「書籍の紹介:「判例による不貞慰謝料請求の実務」(中里和伸)」 2015/8/5)

  → 「「判例による不貞慰謝料請求の実務〔主張・立証編〕」(LABO刊)」 2017/3/3)

  → 「判例による離婚原因の実務」中里和伸著(LABO)」2022/1/ 8)

 

 今回も、編集者様より、ご恵贈いただきました。ありがとうございます

2022年6月16日 (木)

「食べログ」東京地裁判決と公取委実態調査報告書

 ご承知の通り、「食べログ」評価に関して、本日、東京地裁の判決が出ました。

 焼肉チェーンを運営する会社が、「食べログ」の飲食店の評価点数を算出するシステム(アルゴリズム)を一方的に変更したため、売り上げが大幅に減ったとして、「食べログ」を運営する株式会社カカクコムに対して、損害賠償などを請求していたものです。

 判決文は今のところ公表されていませんので、内容は詳しくはわかりませんが、報道によれば、飲食店側は、上記の「食べログ」のシステム変更が、独占禁止法違反(「優越的地位濫用」、「差別的取扱」)であるとして、損害賠償(約6億4000万円)上記システムの使用差止を求めて、一昨年に提訴していました。この訴訟に関して、本日、東京地裁が判決を言い渡したものです。東京地裁判決は、損害賠償として3840万円の請求を認め、システム差止は認めませんでした。理由としては、優越的地位の濫用に該当し、独占禁止法に違反するとしたようです。(※今日の判決の中身については、判決文を読むことができれば、記事を追加するかもしれません。)

 実は、公正取引委員会は、2019年から、「食べログ」のような飲食店ポータルサイトについて実態調査を行って、2020年3月に「飲食店ポータルサイトに関する取引実態調査報告書」を公表しています。当時、このブログにも記事を書いています。

 →  公取委サイト「飲食店ポータルサイトに関する取引実態調査について」

 → 当ブログ「飲食店口コミサイトの取引実態調査(公正取引委員会)」(2020/3/22)

 この調査では、ポータルサイト事業者や飲食店、消費者にアンケートやヒアリングを実施したもので、内容については、報告書(本文で79頁あります。)あるいは報告書概要をお読みいただきたいのですが、今日の判決と関連する内容についてのみ、簡単にご紹介いたします。

 まず、報告書では、飲食店ポータルサイトの取引上の地位に関して、調査によれば、「飲食店ポータルサイトの中には、飲食店に対して取引上、優越的地位にあるといえる飲食店ポータルサイトが存在する可能性は高い。」(P29)としています。

 そして、今日の判決と密接に関係するのは、「3 飲食店ポータルサイトに掲載される情報について」(P42~)、その中でも、特に「(3)店舗の評価(評点)について」(P54~58)のところかと思います。

 そこを、無理矢理に要約しますと、以下のようになります。今日の東京地裁判決が、独占禁止法違反を認定するにあたり、どのように判断したのは興味深いところですね。

 一般的に店舗の評価が、飲食店の比較を容易にし、消費者の飲食店の選択に資するものであって、飲食店にとっても店舗の評価が高いことは消費者への訴求手段として大きな効果を有していると考えられる。
 一方、飲食店にとって、店舗の評価の水準で、閲覧者数や売上が左右されるなど、重要な競争手段となっていると考えられる。
 このような状況の中で、ポータルサイトが店舗の評価を落とすことが、直ちに独禁法上問題にはならないが、例えば、市場において有力な地位を占めるポータルサイトが、合理的な理由なく、恣意的にアルゴリズムを設定・運用することなどにより、特定の飲食店の店舗の評価を落とすなど、他の飲食店と異なる取扱いをする場合で、それによって、特定の飲食店が競争上著しく不利になり、その飲食店の競争機能に直接かつ重大な影響を及ぼし、飲食店間の公正な競争秩序に悪影響を及ぼす場合等には、独禁法上問題(差別取扱い)となるおそれがある。
 また、飲食店に対して優越的地位にあるポータルサイトが、正当な理由なく、通常のアルゴリズムの設定・運用を超えて、特定の飲食店にのみ適用されるようなアルゴリズムを恣意的に設定・運用等し、その飲食店の店舗の評価を落とすことにより、その飲食店に対し、例えば、自らに都合のよい料金プランに変更させるなど、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合、当該行為は独占禁止法上問題(優越的地位の濫用)となるおそれがある。
 店舗の評価の決定について、このような恣意的な設定・運用を行う場合には、独禁法上問題となるおそれがあるため、このような設定・運用を行わないことが公正かつ自由な競争環境を確保する観点から必要である。

 店舗の評価を決定する際の重要な要素が明らかでないなど、その取扱いが著しく不透明な状況で運用を行う場合には、飲食店に対して優越的地位にあるポータルサイトからみれば、自らにとって都合のよい契約プランに変更させるなど、自己の販売施策に従わせやすくなるという効果が生じやすくなると考えられる。加えて、飲食店からみれば、ポータルサイトにとって都合のよい契約内容に変更しなければ店舗の評価を落とされるかもしれないとの懸念を生じさせる。このような不透明な状況を改善させることは、かかる効果や懸念を減少させることになると考えられるため、不透明な状況を改善することが公正かつ自由な競争環境を確保する観点から望ましい。
 しかし、実際に店舗の評価を決めるルール等は、ポータルサイトの特徴を直接的に表す重要な競争手段である中で、特定のポータルサイトが全てを公開することは,そのポータルサイトの競争事業者に対する競争力を弱めることとなる可能性がある。
 このため、ポータルサイトは、店舗の評価に関係する重要な要素について、飲食店及び消費者に対して、可能な限り明らかにするなど、店舗の評価の取扱いについて、透明性を確保することが公正かつ自由な競争環境を確保する観点から望ましい。
 また、ポータルサイトは、その透明性を確保することに加え、店舗の評価の取扱いについて、飲食店間で公平に扱われるなどの公正さを確保するための手続・プロセスの整備も必要となる。例えば、第三者がチェックするなどの手続きや体制を構築するなどによって公正性を確保することが公正かつ自由な競争環境を確保する観点から望ましい。


 

 

2022年6月12日 (日)

ドライヤーの広告に関する差止訴訟(ダイソンvsパナソニック)

 先日(6月9日)、電気機器メーカーのダイソン(シンガポール)が、パナソニックのヘアドライヤーの広告が違法であるとして、東京地方裁判所に、広告の差止等を請求する訴訟を提起したと公表したことが報じられています。ダイソンというとサイクロン方式の掃除機が有名ですが、ドライヤーも製造販売していて、パナソニックとはドライヤーに関しても競業関係の事業者になります。

 報道によると、問題とされているのは、パナソニックのドライヤーの広告で、除菌・消臭効果などがあるイオンを放出する技術「ナノイー」が髪の潤いや保護に与える影響に関する表示が不正確で、公正な競争を阻害するとのことで、「髪へのうるおい、1.9倍」、「枝毛の発生率を低減」などの表現が消費者に誤解を与えるとして、不正競争防止法違反で訴えを提起したようです。

 不正競争防止法は、コピー商品や営業秘密漏洩など、いろいろな不正競争行為を禁止していて、競争事業者は、そのような行為を差し止めたり、損害賠償を請求することができます(今回は報道によれば、損害賠償請求はしていないようですが。)。
 この不正競争防止法上の差止請求権等を行使できるのは、「不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者」(同法3条)とされていて、消費者消費者団体が行使することはできません。もちろん、不正競争防止法を根拠とせず、当該表示行為が景品表示法違反であるならば、適格消費者団体差止請求はできますし、民法上の不法行為に該当して消費者が損害を受けておれば、民法709条に基づく損害賠償請求は可能です。
 なお、違反については、場合によっては、刑事罰の対象ともなります。

 今回の事案では、不正競争行為の内、品質等誤認惹起行為(同法2条1項20号)に該当するとしていると思われます(条文は下記参照)。食肉などの原産地偽装事件の刑事事件などの時に良く使われていますね。民事訴訟の公表判決はそんなに数はありませんが、氷見うどん事件などが有名です。なお、この条文の「20号」という番号については、改正により、不正競争行為が追加されていっており(特に営業秘密関連)、その都度、番号がずれています。以前の事件の資料とか論文とかをご覧になるときは、当時の番号で書かれていますので、検索や引用の際には注意が必要です。前記の氷見うどん事件のときは、「13号」だったと思います。

【不正競争防止法2条1項20号】
商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為」

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2022年5月13日 (金)

台風被害によるマラソン大会の中止と参加費の返金

 以前、新型コロナ関連で、マラソン大会の中止の場合の返金の問題について、書いたことがありました。

→ 「東京マラソン(一般参加)中止と参加料の不返金」(2020/2/18)

 先日、ケースは違いますが、市民マラソン大会の中止と返金についての判決を見つけたので、ご紹介します。

 判決によれば、事案は、以下のようなものです。

 原告(控訴人)は大会にエントリーしていた個人X、被告(被控訴人)は大会の主催者である一般社団法人Yです。

 Yは、マラソン大会(2020年2月1日開催予定)参加者の募集を、前年の2019年9月頃から開始しました。

 ところが、2019年10月の台風で、会場予定の公園が冠水し、園内に土砂が堆積したため、市は、2020年2月末までの期間で、業者に復旧業務を委託しました。そして、公園管理者は、2019年10月に、公園全域の閉鎖を決定し、利用予定者(Yを含む)に、利用再開日時は未定である旨を連絡しました。

 2019年11月頃、市は、公園開放時期として、2019年12月の一部開放、2020年3月の全面開放を目標として公表しました。

 公園管理者は、2019年12月中旬頃、本件公園の一部開園を決定しましたが、この頃、Yを含む公園利用予定者に対し、復旧業務の進捗等を説明し、マラソン大会の実施の可否については未定である旨案内しました。

 Xは、2019年12月17日、本件大会への参加を申し込んで、Yに対して、参加費1万4000円を支払いました。

 Yは、2020年1月10日までに、大会当月に本件大会のコース予定地に工事車両が往来する予定が組まれたことを知ったため、同日、大会の中止をメールでXを含む参加予定者に知らせました。

 なお、大会利用規約第1項には「地震・台風・降雪・事件・疾病等の主催者の責によらない事由で、大会の開催が短縮・縮小・中止となった場合、参加費の返金は一切行いません」と定められていました(これについて、Xは、参加にあたって、この規約に同意していないし、消費者契約法10条に違反し無効である、と主張しています。)。

 Xは、参加費1万4000円と、電話料金や法律相談料など本件対応に必要となった費用5万9995円の合計7万3995円の支払を求めて、簡易裁判所に訴訟を提起しました(代理人弁護士の付かない本人訴訟のようです。)。

 この訴訟の主位的請求は、Yが、公園がマラソンコースとして使用できない状態であることを認識しながら、参加者の募集を継続し、Xから参加費の支払を受けたのが債務不履行にあたるとする損害賠償請求で、、予備的請求が、危険負担により参加費は不当利得となるとしたものです。しかし、一審の簡易裁判所は、Xの請求を全て認めなかったため、Xは東京地裁に控訴しました。

 控訴審の東京地裁は、参加費1万4000円の請求を認め、その他は認めませんでした(東地判2021.2.17)。

 控訴審判決は、Yは、公園利用再開日時や大会の実施可否については未定である旨の説明しか受けていなかったのであるから、Xの大会申込を受けた2019年12月17日の時点において、復旧業務の進捗によっては本件大会が開催できない可能性があることを容易に認識し得たものというべきであり、上記の本件規約第1項のような条項があることに照らせば、Xが返金を受けられない不利益を被るおそれがあったといえる、そうだとすれば、Yは大会の中止を認識し得た以上、信義則上、参加申込者の申込に先立ち、申込者に対して、大会開催は未定であり、復旧業務の進捗によっては中止もあり得る旨を告知すべき義務を負っていたものと解するのが相当である、としました。そして、Yがそのような告知をしていないので、告知義務の違反について、控訴人に対する損害賠償責任を負うものと認められる、としたものです。

 ただし、損害賠償の範囲について、参加費は認めたものの、他の費用については相当因果関係が認められない、として、請求を認めませんでした。

 つまり、主催者側の参加者に対する告知義務違反という債務不履行があったという判断ですね。損害の判断も思うところはありますが、今の裁判所だと、こういう判断になるだろうなぁという感じですね。



2022年5月 5日 (木)

「クレベリン」(大幸薬品)措置命令まとめ

 本年5月3日、大幸薬品は、同社サイトで、同社の空間除菌商品「クレベリン」の表示に関し、消費者庁から出された2回の景品表示法違反に基づく措置命令に従うことを公表しました。

 → 同社サイト『弊社商品の表示に関するお知らせ』

 1回目の措置命令は、今年1月20日、同社の「クレベリン スティック ペンタイプ」、「クレベリン スティック フックタイプ」、「クレベリン スプレー」、「クレベリン ミニスプレー」の商品パッケージや自社サイトでの表示について出されました。あたかも、商品から発生する二酸化塩素の作用により、表示記載の場所において、身の回りの空間に浮遊するウイルス又は菌が除去又は除菌されるなどの効果が得られるかのように示す表示をしていたため、消費者庁景品表示法の規定(不実証広告)に基づいて、同社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求め、同社から資料が提出されたが、当該資料はいずれも当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないとして優良誤認表示であると見なされたものです。

 → 消費者庁サイト

 2回目の措置命令は、今年4月15日、同社の「クレベリン 置き型 60g」、「クレベリン 置き型 150g」の同社サイト、テレビCM、Youtube動画広告での表示を対象とするもので、あたかも、商品をリビング等の室内に設置すれば、同様に二酸化塩素の作用により、リビング等において、室内空間に浮遊するウイルス又は菌が除去又は除菌されるなどの効果が得られるかのように示す表示をしていたもので、上記同様に不実証広告制度により、優良誤認表示と見なされました。

 → 消費者庁サイト

 実は、大幸薬品の「クレベリン」について、景品表示法違反として消費者庁から措置命令が出されたことは初めてではありません。新型コロナが問題になるずっと以前の平成26年(2014年)3月27日、消費者庁は、二酸化塩素を発生させる商品を販売する17業者に対して、部屋に置いたり首に掛けたりするだけで、空間に浮遊するウイルスや菌の除去ができる旨の広告表示が不当表示であるとして措置命令を出していますが、この中に「クレベリン」商品が含まれていました。この時は、同社は表示の文言の修正を行って対応しています。

 最近になって、新型コロナの感染が世界中の問題となり、抗菌、抗ウイルス商品が爆発的に売れるようになったわけですが、表示された効果に疑問のある商品も多く、消費者庁景品表示法健康増進法に基づいて監視を強め、不当表示の疑いのある業者に対する改善指導や、消費者向け注意喚起を行っています。そして、今回の大幸薬品以外にも、同様の商品の表示について措置命令が出されています。

 冒頭の同社サイト公表は、今回の消費者庁による2回の措置命令に従う旨の会社見解が示されたものです。
 しかし、ここまで、同社は、消費者庁に対抗する姿勢を見せていました。

 同社サイトでの公表内容に基づけば、
 昨年11月26日、商品の表示が不当表示に当たるとして、消費者庁から、措置命令案についての弁明の機会を付与されたことから、同社は、昨年12月14日、措置命令の差止訴訟を提起し、併せて仮の差止の申立を行っています。

 この仮の差止事件について、東京地裁は、本年1月12日、対象とされた商品6点の内、置き型商品2点につき、同社提出資料が効果の裏付けとなる合理的根拠に当たることを認め、措置命令の仮の差止めの決定をしました。ただし、その他の4商品表示については、措置命令の差止を認めませんでした(同社は東京高裁に即時抗告)。
 この地裁決定の直後の本年1月20日に、差止対象外となった4商品について消費者庁措置命令を出したのが、1回目の措置命令です。

 そして、本年4月13日、東京高裁は、東京地裁の決定を覆し、対象商品6点全部について、同社の主張を認めない決定を行いました。
 そのため、高裁決定の2日後の4月15日、消費者庁は、残る置き型の商品2点に対しても、措置命令を出したのが、2回目の措置命令となります。

 この高裁決定に対して同社が最高裁の判断を仰ぐのかが注目されましたが、結局断念し、措置命令に従うことを表明したのが冒頭のサイト公表です。

 ということで、措置命令をめぐる今回の一連の動きはひとまず終わったわけですが、報道によれば、同社は「表現は行きすぎていたが、商品そのものには問題がなく、利用者からの返品は受け付けない。」との対応のようです。今後、同社がこれらの商品の販売を継続するとすれば、どのような広告表現に変更するのか、また、返金対応が全くないということで購入者の納得が得られるのか、といった点が注目されます。

2022年3月 9日 (水)

不実証広告規制(景品表示法)を合憲とする最高裁判決

 景品表示法不実証広告制度(商品の広告・表示に関する合理的な根拠を示さない業者に対し、消費者庁優良誤認表示とみなして措置命令を出せる制度。)が、憲法で保障する営業の自由表現の自由を侵害するかが争われた訴訟の上告審判決で、昨日(2022年3月8日)、最高裁第3小法廷が、合憲との判断を示して、原告事業者の上告を棄却しました。

 → 最高裁判決

 これは、ちょうど5年前の2017年3月9日に、消費者庁が、株式会社だいにち堂(長野県)に対し、同社の商品「アスタキサンチン アイ&アイ」と称する食品の表示について、不当表示(優良誤認表示)であるとして措置命令を出した事案です。当時、当ブログにも以下の通り紹介していますので、事案については、そちらをごらんください。

 → 「健康食品による目の症状改善についての不当表示に対する措置命令」(2017/3/9)

 この措置命令に対して、原告事業者が、取消を求めて訴訟を提起していたものです。



 原告事業者の主張は、消費者庁長官の判断次第で合理的根拠資料の提出要求をすることができるというのであれば、規制が広範に過ぎ、表現の自由(憲法21条1項)及び営業の自由(憲法22条1項、29条)を侵害するものとなるところ、本件表示は、目に良いということを社会的に許容される範囲で誇張したものにすぎず、健康食品として常識的な表現にとどまり、社会一般に許容される程度を超えて具体的な効能・効果を訴求するものではないから、資料提出要求の要件を充たしていない、とするものです。

 この処分取消請求事件につき、一審東京地裁(2020年3月4日)、控訴審東京高裁(同年10月28日)は、原告の主張を認めず、原告事業者が上告していました。

 今回の最高裁判決は、不実証広告規制(景品表示法7条2項)は、「優良誤認表示の要件を満たすことが明らかでないとしても,所定の場合に優良誤認表示とみなして直ちに措置命令をすることができるとすることで,事業者との商品等の取引について自主的かつ合理的な選択を阻害されないという一般消費者の利益をより迅速に保護することを目的とするものであると解されるところ,この目的が公共の福祉に合致することは明らかである。」とし、「当該商品等の品質等を示す表示をする事業者は,その裏付けとなる合理的な根拠を有していてしかるべき」で、また、「事業者がした表示が優良誤認表示とみなされるのは,当該事業者が一定の期間内に当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと客観的に評価される資料を提出しない場合に限られると解されるから,同項が適用される範囲は合理的に限定されているということができ」、「同項が適用される場合の措置命令は,当該事業者が裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を備えた上で改めて同様の表示をすることについて,何ら制限するものではないと解される。そうすると,同項に規定する場合において事業者がした表示を措置命令の対象となる優良誤認表示とみなすことは,前記の目的を達成するための手段として必要かつ合理的なものということができ,そのような取扱いを定めたことが立法府の合理的裁量の範囲を超えるものということはできない。」として、不実証広告規制は、憲法21条1項22条1項に違反するものではない、として、上告を棄却したものです。

2022年1月 8日 (土)

「判例による離婚原因の実務」中里和伸著(LABO)」

新年明けましておめでとうございます。
 事務所が3階から4階に移転したばかりで、いまだに片付け切れておりませんが、本年もよろしくお願い申し上げます。


 さて、新年最初のブログ記事は、昨年出版されました(奥付によると今年発行ですが)「判例による離婚原因の実務」のご紹介です。離婚原因というのが新年最初にふさわしいかどうかはご判断をまかせるとして。今回もご恵贈賜ったものですし。

 この本は、あの不貞慰謝料シリーズ(?)の中里和伸弁護士が出されたものです。このシリーズの3冊の本については、当ブログで既にご紹介しているところですので、このシリーズに興味がお有りの方はこの記事末尾のリンク先をご覧ください。

 さて、新刊の「判例による離婚原因の実務」ですが、なにしろ分厚い、そして、高い(税抜6600円)。

 しかし、離婚事件というのは世の中に沢山存在し、その内のある程度の数が調停や裁判といった法的な手続に乗るわけで、そこまでに行かなくても交渉案件として、我々弁護士が業務として取り扱うことになるわけです。したがって、離婚の法律や手続に関する実務書はこれまでにもたくさんあったのですが、実際に裁判例になった事案を網羅して整理した本書のようなものはほとんどなかったと言っていいかと思います(これは上記の「不貞慰謝料」についても同じなんですが)。
 ここでいう「離婚原因」というのは、一般的な話としての離婚の原因となった行為というのではなくて、民法上の裁判による離婚(つまり片方が離婚に応じない場合ですね)が、どのような場合に裁判所が認め、あるいは、認めなかったか、という事例の集積です。前著同様に、大変な作業でしょうねぇ。

 本書は全体で600ページ強の分量の内、半分以上の300数十ページが後半の「離婚原因裁判例一覧表」で、占められていて、これは法律実務家としては必携の書籍と言わざるを得ません。
 もうひとつの特徴としては、裁判による離婚手続において、大きな法的論点である「有責配偶者からの離婚請求の可否」について、かなりの紙幅をさいているところかと思います。これは、要するに、例えば、不貞(浮気)をした側といったような、婚姻を破綻させた原因を作った側(有責配偶者)からの離婚請求が認められるか否かというもので、以前から重要な論点で、私も同様の事件を取り扱ったことがあります。この部分だけでも1冊の本ができたのではないか、と思うくらいです。 

→ 「判例による不貞慰謝料請求の実務 最新判例編vol.1」(中里和伸弁護士著)」
                              (2020/5/19)

→ 「「判例による不貞慰謝料請求の実務〔主張・立証編〕」(LABO刊)」
                                (2017/3/3)

→ 「書籍の紹介:「判例による不貞慰謝料請求の実務」(中里和伸著)」
                                (2015/8/5)

 

 

2021年8月 8日 (日)

「Web相談始めました」

 今回は、昨今の弁護士業務でのWeb会議システムの利用状況など(あくまでも私の周囲の話ですが)。

 新型コロナ感染問題もあって、いろいろな研修だとか学会だとかがZOOMなどのWeb会議システムを利用することがここ1年ちょっとで一気に一般化して、リアル講演だとかリアルセミナーというこれまで当たり前だったものが、ほとんど消えてしまった感があります。

 弁護士会のいろいろな委員会などもWeb会議が原則になり、裁判の期日もWebが珍しいものではなくなりました。

 私の場合は、法科大学院(ロースクール)の非常勤講師を務めており、昨年、今年と全部の授業がWebになり、学生さんとは一度も顔を合わせることなく終わるというような状態になっています。また、顧問先の企業も東京と大阪の拠点での会合がテレビ会議が原則となって、私も参加することが増えています。

 リアルに顔を合わせてコミュニケーションを行ったり、会合の後の懇親会での雑談を含めた情報交換などの交流はとても重要なものだと思いますが、そういうものが無くなってしまったことは残念であり、早く新型コロナ禍が去ってほしいものです。

 ただ、離れた人とお互いに移動することなく話ができるのは、移動時間が不要ですし、お互いの日程の都合を合わせやすくなります。また、以前のような高価なテレビ会議システムを導入しなくても、一般の個人や小さな会社であっても、それぞれパソコン(又はスマホでも)と通信環境があれば特段の費用もかからずにコミュニケーションができるようになったことは素晴らしいことだと思います。可能な状況であれば、出張先とか休暇旅行先からでもコンタクトできるわけです(あまり追いかけられるのも困ってしまいますけどね。)。

 各地の弁護士会でも、一般向けの法律相談をZOOMなどで始めたところもあるようですし、各弁護士、法律事務所もネット相談を始めているようです。

 私も、リアルの対面を原則とはしていますが、もちろん、これまでもメールでの打合せや相談のやりとりは普通のことになっていました。しかし、メール交換では時間がかかりますし、書面資料などの確認が十分にできない、ということがありました。また、文章での表現が苦手な相談者の方もおられます。そんな中、最近は、依頼者との打合せや相談をZOOMで行うことも増えてきました。今までのところは、従来の依頼者が中心ですが、今後は新規の相談者の法律相談でも取り入れていこうと思っております(本人確認の必要がありますので、住所、氏名の明示および免許証等の身分証明書の提示はお願いすることになります。)。

 既に各種の講演などでの講師の仕事もWeb化してきているのは冒頭に書いたとおりで、私も何度か経験していますが、今後は顧問先企業などに対する社員向け研修とか法律相談なども同様の形になっていくと思いますので、対応するつもりです。

 我々の業務に限らず、どの分野でもそうだと思いますが、従来のやり方がそのまま通用しない時代になったことは間違いなく、変えていかねば、ということですね。Web講演、相談のご要望がありましたら、ご連絡ください。

2021年8月 2日 (月)

「消費者法ニュース」7月号・消費者法白書

 大阪でも、またまた緊急事態宣言(8月末までの予定)が出されました。

 私自身はモデルナ・ワクチンの2回目接種を済ませたものの、安心できるわけでもなく、早く収まってほしいものです。夜に仕事してると、すぐに夕食難民状態になってしまいます。幸い、事務所近くにはスーパーやコンビニもあるのですが、毎回ではね。


  消費者法実務雑誌の「消費者法ニュース」(№218・2021/7)が届きました。「消費者法ニュース」のWebサイトはこちらなんですが、ブログ執筆時点では、7月号の発行の更新はされてないみたいですね(【追記】更新されました。№216のページ)。

 7月号の恒例は「消費者法白書」で、消費者法の各分野の昨年度の裁判例や動きなどを紹介するものです。

 私も長らく「消費者法白書」の「独占禁止法・景品表示法」の部分を担当してきており、今年も執筆しております。興味のある方はご覧ください。大きな図書館なら置いているところも多いかと思います。

 なお、今号の「特集」は、「特商法・書面交付義務の電子化に反対する」と「若者・未成年者の消費者被害への取組み」と、どちらもタイムリーな内容になっています。




2021年5月31日 (月)

独占禁止法・下請法関係の書籍2題

 大阪は、医療従事者や飲食業関係者をはじめとして、多くの方々が大変な状況を強いられ続けている緊急事態宣言が明けない状態が続いていますが、ワクチン接種が拡大して、少しでも良い方向に進むことを祈るばかりです。


 さて、独占禁止法など経済法実務がご専門の大江橋法律事務所長澤哲也弁護士から、立て続けに、編著書のご恵贈を賜りました。

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 ひとつが、「Q&Aでわかる 業種別 下請法の実務」(学陽書房)、もうひとつが、「類型別 独禁民事訴訟の実務」(有斐閣)です。

 「Q&Aでわかる 業種別 下請法の実務」のほうは、最初に、独占禁止法の特別法である下請法の全体像(総論)の説明がなされ、その後に、繊維産業、金属産業から、アニメーション産業、広告産業までの17業種に分けて、それぞれの業種の実態に即してQ&A方式で解説されています。

 「類型別 独禁民事訴訟の実務」は、第1章において、独禁法に基づく差止請求(24条訴訟)、民法709条に基づく損害賠償請求、独禁法に基づく損害賠償請求(25条訴訟)、不当利得返還請求、という訴訟類型の解説があり、続いて、反競争的行為の私法上の効力、独禁民事訴訟特有の証拠収集方法についてと訴訟上重要な点について書き進められています。第2章以降は、独禁法違反行為類型に分けて、違反の要件や民事上の請求についての解説や裁判例の紹介がなされています。

 「下請法の実務」は、法律専門家以外にも、各業界の経営者など関係者(下請事業者に限らず、親事業者側も)が自分の事業分野における下請法関係の問題を理解し、活用するために理解しやすいものとなっています。一方、「独禁民事訴訟の実務」は、独占禁止法関係の訴訟を行う弁護士(これまで、独占禁止法事件をあまり担当したことのない弁護士は特に)など法律実務家向けの書籍です。

 昔は、独占禁止法下請法の書籍というと、理論的な体系書か公正取引委員会の運用状況に関するものがほとんどでしたが、最近は、こういった実務に直結した、法律実務家や企業の経営者、法務担当者が活用できるものが増えてきたことはありがたいですね。

 私自身も今現在、独占禁止法違反関係の訴訟の真っ最中ですので、ありがたく活用させていただきたいと思います。

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