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2019年7月31日 (水)

消費者法ニュース(7月号・消費者法白書)とモバイルバッテリー発火事故(消費者庁)

 今日は、7月最後の日ですが、ようやく消費者法ニュース7月号(№120)が出たようです(同号の目次。申込は目次の下の説明を見て下さい)。

  100_20190731190401

 7月号は毎年恒例の「消費者法白書」が中心になります。今年の「消費者法白書」でも例年通り、「独占禁止法・景品表示法」を担当して書いています。この1年の消費者問題視点からの独占禁止法景品表示法関連の話題をさらっと概観してもらうにはよいかと思いますので、よろしくお願いします。


 さて、消費者庁が本日、モバイルバッテリー(スマホやタブレットなどの充電に使用するための携帯用の充電池ですね。)の発火事故について注意喚起をしています。

 → 消費者庁「モバイルバッテリーの事故に注意しましょう!」

 「・・・取扱いを誤ると発熱によってやけどを負うこともあり、場合によっては事故につながることもあります。消費者庁には、モバイルバッテリーに関する事故情報が平成25年6月から令和元年6月末までに162件寄せられています。中には、公共交通機関の中で事故が起こり、運行が遅延したり、火災が発生した事例もありました。」とされていますが、詳しい報告内容(PDF)を見てみると、この162件の事故情報の内、昨年から今年6月末までの1年半の件数は、105件と急増していることがわかります。

 また、事故の事例として挙げられているのを見ると、

    1.  電車に乗っていたら、バッグの中で携帯電話の補助バッテリーが突然青っぽい火を噴き、バッグと電車の床のカーペットを焦がした。すぐに火は消えたが、電車は急停車し、近くの消防署が駆けつけた。
    2.  電車に乗っていたら胸ポケットのモバイルバッテリーが急に熱くなった。ホーム停車中だったため、慌てて電車から降りてホームにモバイルバッテリーを投げ出した。直後に火柱が上がり、駅員がバケツの水で消火した。
    3.  新幹線の中でかばんに入れていたスマートフォンのモバイルバッテリーが破裂し、両足にやけどをした。全治2週間と言われたが、1か月経過してもまだ治らず、通院中。
    4.  スマートフォン用のモバイルバッテリーを充電していたら、煙が出て発火した。指もやけどした。

といった、大事故に繋がりかねないものや、身体に重大な傷害を負わせたものなど、深刻かつ危険な例が出ています。

 また、消費者庁からのアドバイスとして、次の点が挙げられています。

    • (1)リコール対象製品でないか、リコール情報を確認しましょう。
    • (2)新規に購入する際は、PSEマークを必ず確認しましょう。
    • (3)製品本体に強い衝撃、圧力を加えない、高温の環境に放置しないようにしましょう。
    • (4)充電中は周囲に可燃物を置かないようにしましょう。
    • (5)膨らんでいる、熱くなっている、変な臭いがするなど、いつもと違って異常を感じたら使用を中止しましょう。
    • (6)充電コネクタの破損や水ぬれに注意しましょう。
    • (7)公共交通機関での事故を避けるため、持込規則を確認して、それに従いましょう。
    • (8)使用済みモバイルバッテリーはリサイクルに出しましょう。やむを得ず廃棄する際には他の家庭ごみと区別して出しましょう。

2019年7月 4日 (木)

「花粉を水に変える」など光触媒マスクに対する措置命令(景表法)

 昨年、当ブログの「花粉を水に変える?」 (2018/3/18)で書きました「花粉を水に変えるマスク」など光触媒の効果をうたうマスクについて、本日、消費者庁は、DR.C医薬株式会社(東京都新宿区)、アイリスオーヤマ株式会社(仙台市青葉区)、大正製薬株式会社(東京都豊島区)、玉川衛材株式会社(東京都千代田区)の4社に対して、景品表示法に違反する不当表示(優良誤認表示)であるとして、措置命令を出しました。後記の通り、不実証広告制度によるものです。

 → 消費者庁公表資料 (PDF)

 この措置命令によると、

    •  DR.C医薬は、あたかも、本件商品を装着すれば、商品に含まれるハイドロ銀チタンの効果によって、商品に付着した花粉、ハウスダスト及びカビのそれぞれに由来するアレルギーの原因となる物質並びに悪臭の原因となる物質を化学的に分解して水に変えることにより、これらの物質が体内に吸入されることを防ぐ効果が得られるかのように示す表示をしていた。
    •  アイリスオーヤマは、あたかも、本件商品を装着すれば、太陽光及び室内光下において、本件商品に含まれる光触媒の効果によって、商品表面に付着した花粉、ウイルス、細菌、ハウスダスト及び悪臭の原因となる物質を化学的に二酸化炭素と水に分解することにより、これらが体内に吸入されることを防ぐ効果が得られるかのように示す表示をしていた。
    •  大正製薬は、あたかも、本件商品を装着すれば、太陽光及び室内光下において、商品に含まれる光触媒の効果によって、3商品表面に付着した花粉由来のアレルギーの原因となる物質、細菌、ウイルス及び悪臭の原因となる物質を化学的に分解することにより、これらが体内に吸入されることを防ぐ効果が得られるかのように示す表示をしていた。

    •  玉川衛材は、あたかも、本件商品を装着すれば、太陽光下において、商品に含まれる光触媒の効果によって、商品表面に付着した花粉由来のアレルギーの原因となる物質、細菌及びウイルスを化学的に二酸化炭素と水に分解することにより、これらが体内に吸入されることを防ぐ効果が得られるかのように示す表示をしていた。

とされており、消費者庁が、景品表示法7条2項(不実証広告)に基づいて、4社に対し、それぞれ、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、4社から資料が提出されたが、提出された資料はいずれも、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められないものであった、とされました。

 この件については、上記の当ブログ記事で、消費者庁不実証広告制度を活用して対応すべきと指摘いたしました。消費者庁が私のブログを見て動いたとは思いませんが、今回妥当な処分が下されたと評価します。今後は課徴金納付命令となると思われます。なお、大正製薬は、同社のプレスリリースにおいて、今回の措置命令に対して、法的な対応を検討する、と表明していますね。

 上記当ブログ記事については、公表後、やまもといちろう氏や科学者の天羽優子先生などにも取り上げて頂きました。

 また、花粉を水に変えるマスクの問題点については、最近も、医師であるNATROM氏が「花粉を水に変えるマスク」の臨床試験の結果は早く公表されるべきというブログ記事(2019/3/29)を書かれていました。

【追記】(2020/06/21)

 その後、大正製薬は審査請求の申立を行って、現在審査中です。

 また、DR.C社に対しては、2020年6月に課徴金納付命令が出されました。

 → 「「花粉を水に変えるマスク」DR.C社に課徴金納付命令(景表法)」 (2020/06/21)

2017年4月21日 (金)

格安スマホ通信サービス(フリーテル)についての不当表示(優良誤認・有利誤認)に対する措置命令

 消費者庁は、本日、プラスワン・マーケティング株式会社(東京都港区)に対し、同社の「FREETEL SIM」(フリーテル)と称する移動体通信役務に係る表示について、景品表示法違反(優良誤認表示および有利誤認表示)として措置命令を行いました。

  → 消費者庁公表資料 (PDF)

 格安スマホ事業者に対する措置命令は初めてですが、報道に拠れば、本日の消費者庁の会見では、同社のみならず他の事業者にも適切な表示に努めるよう求め、格安SIMサービスは料金の安さに加え、通信速度の速さが選ぶ際の1つの大きなポイントであるので通信速度や各種の機能に関して適切な表示の確保にご留意いただきたい、と述べたとのことです。

 今回、不当表示とされたのは、通信速度の優良誤認表示については、プラスワン・マーケティング社の自社ウェブサイトにおいて、遅くとも平成28年11月30日から同年12月22日までの間、あたかも、通信速度が、格安SIM事業者の中で、恒常的に最も速いものであるかのように示す表示をしていた、また、特定の日時及び場所における通信速度の測定結果において、他の格安SIM事業者が提供する移動体通信役務に係る通信速度よりも著しく速く、かつ、NTTドコモが提供する移動体通信役務に係る通信速度に匹敵するものであるかのように示す表示ををしていた、というものです。

 具体的には、「『業界最速』の通信速度」、 「☑ FREETEL SIMなら速度が出にくい都内平日12時台でもこんなに速い!」、「※東京都港区新橋での通信速度観測の測定結果(某日12時台)」及び「※定点で3回測定を行った平均の数値です。」と付記された「I社 SIM」、「O社 SIM」、「フリーテル」又は「NTT docomo」とする移動体通信役務に係る通信速度の特定の日時及び場所における測定結果が、それぞれ、0.3Mbps強程度、0.2Mbps程度、5.8Mbps強程度又は6.1Mbps弱程度であったことを示すグラフを掲載するなどの表示をしていたものです。

 SIMカード販売シェアの優良誤認表示については、同じく自社ウェブサイトにおいて、遅くとも平成28年11月30日から同年12月13日までの間、「SIM販売シェアNo.1」、「シェアNo.1!」と記載することにより、あたかも、移動体通信役務の提供を受けるために必要なSIMカードの販売数量に係る自社のシェアが格安SIM事業者の中で第1位であるかのように示す表示をしていました。

 しかし、上記の各表示について、消費者庁が、同社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社から資料が提出されたものの、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められず、不実証広告規定により、優良誤認表示とみなされました。

 有利誤認表示については、同じく自社ウェブサイトにおいて、遅くとも平成28年11月30日から同年12月13日までの間、「LINEのデータ通信料無料!」と記載するとともに、「AppStore」、「LINE」、「WeChat」、「WhatsApp」などのアプリケーションのアイコン画像を付記しつつ「FREETELなら各種SNS利用時のデータ通信料が無料!!」と記載するなど、あたかも、これらのアプリケーションの利用時に生じるデータ通信量が通信利用容量の対象外となるかのように表示していましたが、実際には、当該データ通信量の一部は通信利用容量の対象となるものであったというものです。

 なお、国民生活センターは4月13日にこんなはずじゃなかったのに!“格安スマホ”のトラブル-料金だけではなく、サービス内容や手続き方法も確認しましょう-」という格安スマホのトラブル相談が増えていることについて、報告書を公表しています。

2015年10月 6日 (火)

『アプリ法務ハンドブック』(レクシスネクシス・ジャパン)

 レクシスネクシス・ジャパン「アプリ法務ハンドブック」を共著者のおひとり橋詰卓司さんから送っていただきました。スマホ・アプリではなく、書籍です。
 橋詰さんのブログ「企業法務マンサバイバル」では、私のこのブログも紹介していただいたりして、お世話になっています ( なお、本書の395頁脚注には、当ブログの記事「ステマ行為と不正競争防止法による偽装表示防止規定(13号)の適用について」を引用していただいてます。光栄です。)。

 『アプリ法務ハンドブック』(小野斉大・鎌田真理雄・東條岳・橋詰卓司・平林健吾 共著/レクシスネクシス・ジャパン発行) 

Photo

    

 実は、この本については、既に橋詰さんがTwitterで発売予告をされていて、私自身、内容に大変興味を覚えましたので、すぐにAmazonで購入の予約をしていたくらいですので、大変ありがたいです(amazonさん、すみません、予約キャンセルしましたm(_ _)m)。 

 この本は、スマートフォンやタブレットで動くアプリサービスの企画、開発、運営などに関する法的問題について、主にアプリサービス関連企業の管理部門の方向けに広く解説をした本です(目次は下に貼り付けました。)。   
 私自身は今の所アプリサービスに関する事業についての業務はありませんが、利用者側、つまり消費者サイドからアプリがいろいろと問題になる場面もあり、電子商取引、個人情報、広告表示といった分野は私の関心のあるところでもあります。そして、この本がアプリという側面から、こういった分野を含めた法的問題を解説して、関連企業が健全なアプリサービスを開発、提供することを目的として書かれていることはとても重要なことだと思います。 

 アプリサービスに関する消費者トラブルも増加していますので、関連企業の方だけでなく、消費者問題に携わる法律家、相談員の方々にも役立つものと思います。   

【目 次】   

はしがき   
Introduction アプリサービスチェックリスト   
第1部 アプリ開発フェーズの法律知識   
第1章 アプリ開発前に知っておくべき法律   
Ⅰ 知的財産の保護に関する法律   
Ⅱ 情報セキュリティ・プライバシーに関する法律   
Ⅲ 特定商取引法   
Ⅳ 資金決済法   
第2章 アプリ開発にあたり確認・締結が必要な文書とルール   
Ⅰ デベロッパー規約   
Ⅱ OSS利用規約   
第2部 アプリ提供フェーズの法律知識   
第3章 アプリ利用規約   
Ⅰ アプリ利用規約作成時に考慮すべきアプリサービスの特徴   
Ⅱ アプリ利用規約のトレンド   
Ⅲ 民法(債権法)改正および約款規制議論の影響   
Ⅳ アプリ利用規約サンプルと逐条解説   
第4章 アプリプライバシーポリシー    
Ⅰ アプリプライバシーポリシーに記載する事項   
Ⅱ アプリプライバシーポリシー共通部分のサンプルと逐条解説   
Ⅲ アプリプライバシーポリシー個別部分のサンプルと逐条解説   
第5章 特定商取引法に基づく表示   
Ⅰ 表示内容   
Ⅱ 表示方法   
第6章 資金決済法に基づく表示   
Ⅰ 表示内容   
Ⅱ 表示方法   
Ⅲ 表示時期   
第7章 OSSライセンス表示   
Ⅰ 表示内容   
Ⅱ 表示方法   
第3部 アプリ運用フェーズの法律知識   
第8章 安全性・健全性に関する法律    
Ⅰ 未成年者の契約と取消権   
Ⅱ プロバイダ責任制限法   
Ⅲ デーティング・出会い系に関する規制   
Ⅳ アダルトコンテンツに関する規制   
Ⅴ EC(モール・フリマ・オークション)アプリに関する規制   
Ⅵ ゲームアプリに関する規制   
第9章 広告・キャンペーン・マーケティングに関する法律   
Ⅰ 広告表示に関する規制   
Ⅱ キャンペーンに関する規制   
Ⅲ リワード広告に関する規制   
Ⅳ 友達招待に関する規制   
Ⅴ フリーライドマーケティングに関する規制   
Ⅵ ステルスマーケティングに関する規制   
事項索引   
裁判例索引

2013年5月22日 (水)

KDDIの不当表示事件の対応に関して、イーモバの同種事案もご紹介

 昨日(5月21日)、消費者庁が、KDDIの「au」のLTEサービスについての広告に関し、景品表示法違反(優良誤認)として措置命令を出したことが報道されています。LTEサービスのエリアの拡大予定されているエリアを実際よりもかなり広く広告したことに対するものです。その程度がかなりひどいものであったために、KDDIの対応が注目されています。これについては、消費者問題としていろいろ考えなければならないところです。

 私の見た限りでは、今回のニュース報道で触れられていないのが不思議なのですが、実は他社の同様の事案で、昨年11月16日、同様に消費者庁から景品表示法違反の措置命令が出されています。

 これは、イー・アクセスが提供している「EMOBILE LTE」サービスの広告(AKB48の板野友美の写真と共に)において、「速っ!通信速度最大75Mbps」「[EMOBILE LTEエリア]東名阪主要都市人口カバー率99%(2012年6月予定)」などと表示していたのに、実際には、当時は、平成24年6月末日までに、下り最大の通信速度が75Mbpsとなる基地局を東名阪主要都市における人口カバー率が99パーセントになるように開設する計画はなかったなどの事実について、措置命令が出されたもので、当時、当ブログでも取り上げています。

→ 「イーモバイルのLTE通信サービスについての不当表示(消費者庁)」(12/11/16)

 つまり、今回のKDDIの不当表示と非常に良く似た事案が、昨年11月半ばに明らかになったわけですが、今回のKDDIの広告はwebサイトの表示が昨年9月14日から11月30日まで、カタログの表示が昨年11月1日頃から12月31日頃までとなっています。この点から見ても、他社の事案発覚後から現在に至るまでのKDDIの対応には大きな疑問符がつきますね。


 ところで、最近は「LINE」がいろいろと話題になりますが、LINE@というビジネス向けサービスが始まっているので、試しに事務所アカウントをとってみました。

 特にクーポンを出すわけでなく、こちらから頻繁にメッセージを出すのもどうかと思いますので、果たして意味があるのかどうかわかりません。ただ、登録しておいていただければ、LINEの友だち欄にアカウントが残るので、名刺代わりというかスマフォからのアクセスには便利かなという感じです。

 @shun-you で、LINEの友だちのID検索して追加いただけると幸いです。

 

2012年12月15日 (土)

消費者安全法による財産被害防止のための注意喚起(SIMフリー携帯通販や投資・利殖商法など)

 昨日、消費者庁は、SIMフリーのスマートフォンの通信販売を申し込んで代金を支払っても、商品が届かないというトラブルについて、消費者安全法に基づいて、業者名(SKS Telecom)などを公表しています。サイト上の表記では香港の業者となっているようです。SIMフリーというのは、SIMカードを差し替えれば、どこの携帯事業者にも対応できるもので、日本国内では一般には販売されていません。

 → 消費者庁公表資料(PDF)

 → ITメディア記事

 最近の法改正で消費者安全調査委員会が設置された消費者安全法ですが、「消費者安全」というと何となく商品によって怪我をしたり健康を害したりなど、生命・身体に対する危害をイメージします。しかし、消費者安全法が対象としているのは、こればかりでなく、経済的な財産被害も対象になっています。

 もっとも、新設の消費者安全調査委員会が調査の対象とするのは、生命・身体被害に関する事故に限られるのですが、消費者安全法全体が対象としている「消費者事故等」には、生命・身体事故の他に、「虚偽の又は誇大な広告その他の消費者の利益を不当に害し、又は消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある行為であって政令の定めるもの」が事業者によって行われた事態(同法2条5項3号)も含まれています。

 そして、この「消費者事故等」については、これによって被害が拡大したり、同種、類似の消費者被害の発生が生じることを防止するため必要な場合には、内閣総理大臣(この場合は要するに消費者庁ですが)が、その「消費者事故等」の態様や被害状況などの被害発生、拡大のための情報を地方自治体に提供したり、一般に公表できることになっています(同法38条1項。なお、先般の法改正以前は15条なので注意。)。
 冒頭の今回のSIMフリー通販業者の件も、この規定に基づいて公表がなされています。今回のような、外国との通信販売の被害に関して公表されたのは初めてではないかと思われます(間違ってたらご指摘ください。)。

 この件は別にして、最近、この消費者安全法の規定(旧15条含む)で公表された事案は、以下のように、利殖・投資詐欺商法に関するものがずらっと並んでいます。

  • 「鉱山の採掘、鉱物に関する権利」(株式会社ABAなど)23.10.21
  • 「医療機関債」(医療法人社団真匡会など)24.1.20
  • 「風力発電に関する土地の権利」(エコエネルギー開発合同会社など)24.2.14.
  • 「太陽光発電事業に関する加盟店募集」(サンパワー株式会社など)24.2.17.
  • 「外国通貨の両替」(株式会社EXパートナーなど)24.3.13.
  • 「天然ガス施設運用権」(大京産業株式会社)24.7.13.
  • 「透析装置製造事業に関する信託受益権」(株式会社ケアテック)24.8.22.
  • 「iPS細胞に関する知的財産分与譲渡権」(株式会社三栄)24.11.2.

 いろんな「権利」を考えるものだと感心してしまいますが、この手の輩は常に新手の材料を探し出して、高齢者など資産のある人を狙ってきますので、ご家族を含め充分にご注意ください。

2012年8月 8日 (水)

釣りゲームのデザイン著作権控訴審判決(グリーvsDeNA:知財高裁判決)

 立秋を過ぎましたが、政局はバタバタとしており、消費者問題の関連法案もどうなるのやら、というところですが、昨日までの状況は、参議院を既に通過している、特定商取引法改正案消費者教育推進法案消費者基本法改正案は、昨日に衆議院の消費者問題特別委員会審査を終えたようで、後は衆議院本会議での可決のみとなっています(本日の状況は把握していません。)。そして、消費者安全法の改正法案は、衆議院を通過して、現在参議院の消費者問題特別委員会の審査中です(一昨日、委員会開催予定でしたが中止になっていますね)。

  また、今国会に提出されるはずであった集団的消費者被害救済制度の立法については、昨日、消費者庁から「『集団的消費者被害回復に係る訴訟制度案』についての意見募集及び説明会について 」と「『集団的消費者被害回復に係る訴訟制度の骨子』についての意見募集に対する主な意見の概要及び意見に対する消費者庁の考え方について」というのが公表されました。この意見募集(パブコメ)は9月6日までとなっており、今国会中の法案提出はこれで完全に無理になりましたね。

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  さて、速報的になりますが、魚釣りを題材にしたゲームのデザインの著作権侵害が問題となっていたグリーDeNAの裁判の控訴審(知的財産高裁)の判決が本日出たようです。この一審(東京地裁)判決については、当ブログでも触れましたが、原告のグリーが一部勝訴し、被告のDeNAに対してゲームの配信停止等と約2億3400万円の損害賠償の支払が命じられました。  → 「携帯ゲームの「魚の引き寄せ画面」の著作権(グリーvsDeNA著作権侵害事件東京地裁判決)」 (3/14) 

 ところが、本日の知的財産高裁判決では覆り、グリーの逆転敗訴となってしまいました。要するに、著作権侵害が認められなかったということです。

   まだ、判決文が公表されていませんので詳細はわかりませんが、一部報道では、両ゲームの共通部分は抽象的で著作権侵害に当たらないと判断されたとのことです。判決の公表は近日中になされると思いますので、取り上げてみたいと思います。 

 私は知的財産専門弁護士でないわりには著作権に関する裁判や相談などは比較的関与しているほうだと思いますが、実際に二つのデザインを見比べて著作権侵害か否かを判断するのは結構難しいです。東京地裁と知的財産高裁でも全く逆の結論が出されるのですから、当然といえば当然なのですが。

 なお、グリーは、自社のWEBサイトで、上告する方針であることを公表しています。

2012年7月19日 (木)

抗シワ効果を標榜する化粧品の不当表示(消費者庁)

本日、京都地裁で、NPO法人「京都消費者契約ネットワーク」KDDIを被告として提起していた消費者契約法に基づく消費者団体訴訟の判決があったことが報じられています。   
これはKDDI(au)が携帯電話契約の割引プランの中途解約金条項が消費者契約法に違反して無効だとして起こされていたもので、京都地裁は消費者契約法違反として条項の使用差し止めを命じ、解約金の一部についても返還を認めたようです。   
詳しくは、判決文を読んでからご紹介できればと思いますが、京都消費者契約ネットワークは、同様の訴訟をNTTドコモソフトバンクモバイルに対しても提起しており、そのうち、ドコモについては今年3月に請求を棄却する判決を出しています(現在、控訴審)。同じ京都地裁で違った結論が出た理由が興味のあるところですね(もちろん、裁判官は別です。)

 

 


 

さて、本日、消費者庁は、景品表示法に基づく措置命令を出しています。

 

消費者庁報道発表資料(PDF)

 

これは、サニーヘルス株式会社(長野市)が販売する抗シワ効果を標榜する化粧品につき、ウェブサイトや新聞広告、新聞チラシに、商品を使用することにより、肌の内部に浸透した液体ガスが気体となり、肌の内部からシワを押し上げるというメカニズムによって、直ちに抗シワ効果が得られると認識される表示をしていた、というものです。

 

消費者庁は、サニーヘルスに、この表示の裏付けとなる合理的な根拠資料の提出を求めましたが(景品表示法4条2項)、同社が提出した資料は合理的な根拠とは認められず、優良誤認表示(景品表示法4条1項1号)として措置命令が出されたものです。

 

なお、同様の抗シワ効果を標榜する化粧品に関しては、6月28日に福岡市の2社(株式会社クリスタルジャポン、株式会社コアクエスト)に対して、ウェブサイトにおける表示が、やはり優良誤認として措置命令が出されています。表示内容はちょっと違いますが。

 

消費者庁発表資料(PDF)

2012年6月29日 (金)

スマートフォン・クラウドセキュリティ研究会 最終報告(総務省)

 ちょっと忙しくしていてブログ更新ができていません。今日もちょっと簡単に雑感的なものですみません。

 この1週間でも、消費者庁からは、景品表示法違反措置命令事件(抗シワ効果を標ぼうする化粧品)とか、例のコンプガチャに関する「カード合わせ」運用基準の公表がありました。

 この景品表示法違反の件でちょっと面白いな、と思ったのは、消費者庁だけでなく、公正取引委員会のサイトでも公表されていた点でした。この事件が公取委の調査結果によるものだからですが、これまでも同様の事件はあったのに、公取委サイトには出てなかったと思います。積極的に公取委の活動を公表していこうということでしょうか。

 また、総務省から、本日、「スマートフォン・クラウドセキュリティ研究会 最終報告~スマートフォンを安心して利用するために実施されるべき方策~」という報告書が公表されています。スマートフォンのセキュリティの問題などが分析されていますね。

 → 「スマートフォン・クラウドセキュリティ研究会 最終報告」(PDF)

 スマートフォンをめぐるセキュリティの現時点でのまとめとしては大変参考になります。

 なお同時に総務省から、「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会提言「スマートフォン プライバシー イニシアティブ -利用者情報の適正な取扱いとリテラシー向上による新時代イノベーション-」(案)に対する意見募集」がなされています。

2012年3月 1日 (木)

通信料金高額化に対する注意喚起・情報提供義務違反を認めた京都地裁判決(ソフトバンクモバイル)

 1月の判決で、どうやら報道もされたようですが、見逃していました。原告代理人は京都の長野浩三弁護士のようです。先週、長野弁護士の別の判決(セレマに対する消費者団体訴訟判決)についての研究会に参加し、その後、食事も一緒にしましたので、知っておれば、この判決についてもお聞きできたのに残念です。

 携帯電話をパソコンにつないでインターネット通信をするサービス「アクセスインターネット」を利用して約20万円のパケット通信料を請求され支払ったとして、ソフトバンクモバイル社に返還を求めた訴訟ですが、京都地裁は、約10万7千円の返還を命じる判決を言い渡したというものです(裁判所サイトの下級裁判所判例集に掲載。)。
 結論的には、通信契約に基づく料金高額化への注意喚起のための情報提供義務の不履行による損害賠償請求部分の損害(原告の過失相殺3割有り)が認められています。通信事業者に対して、このような注意喚起義務を認めた点で大変重要な判決であろうと思います。

 京都地方裁判所平成24年1月12日判決 通信料金返還請求事件

 この裁判で、原告は、下記1または2を理由として、通信料金のうち1万円を超える部分に相当する19万6571円と法定の遅延損害金の請求を行っています。

  1.  通信契約における通信料金を定める契約条項のうち、一般消費者がサービスを利用する際に通信料金として通常予測する額である1万円を超える部分は、消費者契約法10条若しくは公序良俗に反し無効であることによる不当利得返還請求権。

  2.  サービスを利用する際の通信料金を具体的に説明する義務若しくは同サービスの利用により通信料金が高額化することを防止するための措置を採るべき義務の履行を怠ったとする、通信契約の債務不履行による損害賠償請求権。

 この原告の主張に対し、判決は、1の消費者契約法違反、公序良俗違反は認めませんでした。

 しかし、2に関して、判決は、契約時点での説明、情報提供義務は果たしており、義務違反はないとしたものの、料金が高額化した段階での情報提供義務に関して、ソフトバンクモバイルは、「遅くとも,原告のアクセスインターネットの利用によるパケット通信料金が5万円を超過した(略)段階において,原告が,誤解や不注意に基づきアクセスインターネットを利用し,通信料金が予測外に高額化したことを容易に認識し得たといえる。」とし、「被告は,原告に対し,パケット通信料金が5万円を超過していることをメールその他の方法により通知することにより,原告に通信料金の高額化に関する注意喚起をする義務があったというべきである。」として、原告への注意喚起義務を認めました。ソフトバンクモバイルが実際に警告メールを発したのは通信料金が10万円を超過した翌日だったようです。

 そして、ソフトバンクモバイルが、通信料金が5万円を超過した旨の電子メールを送信するなどして注意喚起義務を果たしていれば、原告は直ちにアクセスインターネットの利用を中止したものと認められるとして、15万3055円の通信料金相当額は債務不履行と相当因果関係のある損害と認めています。

 ただし、原告が、アクセスインターネットを利用した場合の通信料金について問い合わせをしたり、パケット通信料金の確認をすることなく、アクセスインターネットの利用を継続しており、パケット通信量に従って通信料金が発生することは知悉し、携帯サイトの閲覧よりアクセスインターネットによるPCサイト等の閲覧の方が画面に表示される情報量が大きいことも認識していたのであるから、通信料金の高額化については十分な注意を払うべきであったから、累積パケット通信料金額を把握するなど一切行わなかった点で過失があるとして、原告の過失相殺(3割)を認定しています。

 そのため、上記損害額約15万円の7割、10万7138円が、この判決の認容額となりました。

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