2020年6月30日 (火)

大阪公立大学の英語名称「University of Osaka」

 先日、大阪府立大学大阪市立大学を統合して2022年春に開学する大学名が「大阪公立大学」と発表されました。それ自体は問題は少ないと思うのですが(個人的には、もっといい名前にしたらいいのに、と強く思うのですが、それはそれとして)、この大阪公立大学の英語名を「University of Osaka」とするとされたことが、国立の大阪大学英語の正式名である「OSAKA UNIVERSITY」と混乱するのではないかと、問題になっています。

 この問題について、大阪大学は6月26日に、総長名で、大変驚いている、と表明し、大阪公立大学の英語名称は、大阪大学の英語名称と酷似しており、「今後、受験生や本学の学生・卒業生をはじめ、一般市民の皆様、特に海外の研究者、学生に大きな混乱を招き、世界にはばたく両大学の未来にとって非常に大きな障害となることは必至です。そのような事態にならないよう憂慮しておりましたが、結果として、双方の間で意見交換が行われないまま決定がなされたことは誠に残念でなりません。」として、配慮をお願いしたい、としました。

→ 大阪大学「公立大学法人大阪が設置する新大学の英語名称について」

 そして、大阪大学は、6月29日、「大阪公立大学の英語名称とされる「University of Osaka」は、すでに海外等で大阪大学の名称として広く使用されている実態があり、本学を表すものとして一般的です。今後も、英語名称の「University of Osaka」大阪公立大学を示すものとしてではなく、大阪大学と認識されると思われますので、多くの関係者の皆様に無用の混乱を招くことのないよう、引き続き、改めて大阪公立大学の英語名称を再考いただくことを強く申し入れる所存です。」と、海外での従来の使用事例を掲げたうえで、重ねて表明しています。

→ 大阪大学「「University of Osaka」が大阪大学の英語名称として使用されている実態」

 これに対して、大阪府の吉村知事は、混乱は招かない、として英語名称は変更しないとコメントしている模様です。

 私は大阪大学の出身ですが、身びいきとかでなくて、この英語名称は、特に国内外の外国人の皆さんに混乱を招くことが明らかであり、これから名称を決める大阪公立大学側が、この英語名称に固執する理由はよくわかりません。

 なお、このような学校名称の類似についての裁判例としては、青山学院大学の事件があります(東京地判平成13年7月19日)。これは、不正競争防止法に基づいて、「呉青山学院中学校」の名称の差止と損害賠償を求めた裁判で、判決では名称の差止を認めました。

 また、同様の紛争としては、京都造形芸術大学(私立)が名称を京都芸術大学に変更したことに対し、京都市立芸術大学が混乱を招くとして名称差止を求めて提訴しており、現在、大阪地裁で審理がなされています。

 大阪公立大学側が方針を変えないのであれば、大阪大学としては、同様に不正競争防止法に基づいて訴訟を提起すべきだと私は思います。大学の威信とかどうとかではなく、今後、多くの人たちに混乱を招く結果となるからです。

2020年5月19日 (火)

「判例による不貞慰謝料請求の実務 最新判例編vol.1」(中里和伸弁護士著)

 新型コロナ自粛で、かえってバタバタしているような感じで、ブログ更新も途切れております。

 私が担当している法科大学院の講義も今年はZOOMによる遠隔web授業となり、教室でのリアルな講義とは違った難しさやら面白さがありますが、試行錯誤で学生さんたちに助けられながら進めております(昨日、第3回をやりました)。また、弁護士会関係の会議や消費者団体の理事会などもweb会議の利用が当たり前になり、先日の某研究会でも、大阪の研究会なのに九州など遠隔地の皆さんが地元から参加され、終了後にはweb呑み会に移行するという「新しい生活様式」が始まっていたりもします。


 さて、先日発行されました「判例による不貞慰謝料請求の実務 最新判例編vol.1」(中里和伸弁護士著・LABO刊)を編集者からご恵贈いただきました。

この本は、同著者による「判例による不貞慰謝料請求の実務」「判例による不定慰謝料請求の実務 主張・立証編」2冊の続編です。この以前の本についても、当ブログでご紹介しています。

 → 「書籍の紹介:「判例による不貞慰謝料請求の実務」(中里和伸著)」 2015/8/5)

 → 「「判例による不貞慰謝料請求の実務〔主張・立証編〕」(LABO刊)」2017/3/ 3)

今回の3冊目は、上記の本の出版からそれぞれ5年、3年を経過し、その後も多くの裁判例が出ているため、その続編として、最新裁判例を集積し、分類して、解説を加えたものということになります。本の帯によれば、「平成28129.から令和元918までの最新判例全290例を新規に掲載」とのことで、不貞に関する慰謝料請求という狭い範囲のテーマで争われた裁判で、しかも、(和解などで終わらずに)判決にまで至っているものが、これだけの数があるのだ、ということに、一般の方は驚かれるかもしれません(おそらく公表されず、著者が入手できなかった判決も相当数存在すると思いますが)。

ということで、前2書より分厚くなっていて、ちょっとお高いですが、実務家、研究者、マニアの方には重要な資料かと思います。是非。

2019年7月 4日 (木)

「花粉を水に変える」など光触媒マスクに対する措置命令(景表法)

 昨年、当ブログの「花粉を水に変える?」 (2018/3/18)で書きました「花粉を水に変えるマスク」など光触媒の効果をうたうマスクについて、本日、消費者庁は、DR.C医薬株式会社(東京都新宿区)、アイリスオーヤマ株式会社(仙台市青葉区)、大正製薬株式会社(東京都豊島区)、玉川衛材株式会社(東京都千代田区)の4社に対して、景品表示法に違反する不当表示(優良誤認表示)であるとして、措置命令を出しました。後記の通り、不実証広告制度によるものです。

 → 消費者庁公表資料 (PDF)

 この措置命令によると、

    •  DR.C医薬は、あたかも、本件商品を装着すれば、商品に含まれるハイドロ銀チタンの効果によって、商品に付着した花粉、ハウスダスト及びカビのそれぞれに由来するアレルギーの原因となる物質並びに悪臭の原因となる物質を化学的に分解して水に変えることにより、これらの物質が体内に吸入されることを防ぐ効果が得られるかのように示す表示をしていた。
    •  アイリスオーヤマは、あたかも、本件商品を装着すれば、太陽光及び室内光下において、本件商品に含まれる光触媒の効果によって、商品表面に付着した花粉、ウイルス、細菌、ハウスダスト及び悪臭の原因となる物質を化学的に二酸化炭素と水に分解することにより、これらが体内に吸入されることを防ぐ効果が得られるかのように示す表示をしていた。
    •  大正製薬は、あたかも、本件商品を装着すれば、太陽光及び室内光下において、商品に含まれる光触媒の効果によって、3商品表面に付着した花粉由来のアレルギーの原因となる物質、細菌、ウイルス及び悪臭の原因となる物質を化学的に分解することにより、これらが体内に吸入されることを防ぐ効果が得られるかのように示す表示をしていた。

    •  玉川衛材は、あたかも、本件商品を装着すれば、太陽光下において、商品に含まれる光触媒の効果によって、商品表面に付着した花粉由来のアレルギーの原因となる物質、細菌及びウイルスを化学的に二酸化炭素と水に分解することにより、これらが体内に吸入されることを防ぐ効果が得られるかのように示す表示をしていた。

とされており、消費者庁が、景品表示法7条2項(不実証広告)に基づいて、4社に対し、それぞれ、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、4社から資料が提出されたが、提出された資料はいずれも、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められないものであった、とされました。

 この件については、上記の当ブログ記事で、消費者庁不実証広告制度を活用して対応すべきと指摘いたしました。消費者庁が私のブログを見て動いたとは思いませんが、今回妥当な処分が下されたと評価します。今後は課徴金納付命令となると思われます。なお、大正製薬は、同社のプレスリリースにおいて、今回の措置命令に対して、法的な対応を検討する、と表明していますね。

 上記当ブログ記事については、公表後、やまもといちろう氏や科学者の天羽優子先生などにも取り上げて頂きました。

 また、花粉を水に変えるマスクの問題点については、最近も、医師であるNATROM氏が「花粉を水に変えるマスク」の臨床試験の結果は早く公表されるべきというブログ記事(2019/3/29)を書かれていました。

【追記】(2020/06/21)

 その後、大正製薬は審査請求の申立を行って、現在審査中です。

 また、DR.C社に対しては、2020年6月に課徴金納付命令が出されました。

 → 「「花粉を水に変えるマスク」DR.C社に課徴金納付命令(景表法)」 (2020/06/21)

2018年12月17日 (月)

「経済法入門」(泉水文雄著・有斐閣)

 ブログの更新ができないまま、12月も後半になってきました。

 最近は、AI技術と法律・責任などという研究イベントが続いており、大変刺激を受けています。


 さて、お世話になっている神戸大学泉水文雄教授から、新著をご恵贈いただきました。ありがとうございます。

 有斐閣の法学教室LIBRARY「経済法入門」です。

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 書名の通り、学生など入門者向けに書かれていますが、独占禁止法だけでなく、下請法景品表示法を含めた最新の経済法の情報がコンパクトにまとめられていますので、初学者でなくても有用な本だと思います。

 特徴といえば、100を超える多くの説例を用いて具体的に解説されており、イメージのつかみにくい独占禁止法の理解がしやすいものになっています。また、途中にコラム記事もたくさん挿入されていますが、コラムといいながら、かなり高レベルの内容に触れられています。

 泉水教授は、芸能人やプロスポーツ選手などと独占禁止法ということで話題になった公正取引委員会「人材と競争政策検討会」の座長を務められておられましたが、今年7月に設置された「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」(経済産業省、総務省、公正取引委員会)の座長も務められており、同検討会の中間論点整理が、この12月12日に公表されたばかりです。いわゆるGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)を代表とするインターネット上のプラットフォーム事業者に関する独占禁止法その他の問題を検討するという最先端の議論がなされていますので、興味のある方はご覧ください。

 → 検討会中間論点整理(経済産業省)

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2018年4月11日 (水)

ロースクール平成30年度講義の開始

 先日(4/9)から、神戸大学ロースクール(法科大学院)の今年度の「消費者法」の講義が始まりました。

 神戸大学での「消費者法」は、平成26年度から担当していますので、今年度で5年目を迎えます。

 10年以上前から担当してきた京都産業大学ロースクールの「情報法」講義は秋学期、こちらの神戸大学「消費者法」は春学期と半期ずつ担当してきたのですが、京産大のほうは、既に募集停止となり、学生が残り少なくなりましたので、昨年度をもって私の講義は終了しました。ですので、今年度からは、神戸大学で春学期のみの講義担当ということになります。

 先日、行きますと、場所が昨年までの大きな教室から、普通の教室のロの字型の机の配置になっていて、来てくれていた学生さんでほぼ満員となっていました。昨年までより、距離が近くお話ができるように思います。

 指定の教科書は「基本講義 消費者法(第3版)」 (中田邦博・鹿野菜穂子 編著 日本評論社)です。

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 昨年はこれの第2版を使っていたのですが、3月に第3版が出ました。最近の消費者契約法や民法(債権法)の改正なども織り込まれていて、使いやすそうですね。

2018年3月28日 (水)

ガンホーなどに対する課徴金納付命令(景表法)

 景品表示法関連のネタが続いていて恐縮なのですが、本日も、課徴金納付命令が2件、消費者庁から出されました。

 ひとつは、ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社(東京都千代田区)の人気オンラインゲーム「パズル&ドラゴンズ」(パズドラ)のガチャに係る表示(優良誤認表示)に関するもので、この件の昨年7月に出された措置命令の際には、当ブログでも記事にしていますので、興味のある方は参考にしてください。

 → 消費者庁公表資料(ガンホー課徴金納付命令) (PDF)

 → 「ガンホーとグリーに対する景表法の措置命令(消費者庁)」 (2017/7/19)

 課徴金額は、5020万円となっていますが、本件では、ガンホーが自主申告したものであるため、景品表示法9条により、2分の1の減額を受けた結果、この金額となっています。

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 「パズドラ」と同時に措置命令の対象となった「ディズニーマジックキングダムズ」 有利誤認表示は今回は対象となっていませんね。また、ガンホーと同時に措置命令を受けたグリーに関しても今回は出ていません。   


 もうひとつは、これも措置命令の際には当ブログで取り上げました研修サービスの株式会日本教育クリエイト(東京都新宿区)の研修受講料についての二重価格表示有利誤認表示に関するものです。

 → 消費者庁公表資料(日本教育クリエイト課徴金納付命令) (PDF)

 → 「研修サービス等に関する有利誤認表示(二重価格表示事案)に対する措置命令など」
                            (2017/5/19)

 こちらの課徴金額は合計5105万円となっています。

2018年2月10日 (土)

新しい「医療広告ガイドライン」と従来の「医療機関ホームページガイドライン」との関係

 前回、前々回と、今般、厚生労働省の検討会で承認された「医療広告ガイドライン(案)」について書いてきました。

 → 「医療広告ガイドライン案が承認される(厚生労働省検討会)」 (2/5)

 → 「医療広告ガイドライン(案)における「広告」」 (2/6)

 これまで厚生労働省は、医療機関のホームページなどについては、当該医療機関の情報を得ようとする目的を有する者が検索等を行った上で閲覧するものであるとして、原則として、医療法の対象となる広告とは見なしていませんでした。
 しかし、現実には、美容医療サービスなど自由診療を行う医療機関について、ホームページなど掲載の治療内容や費用と、医療機関からの説明・対応とが異なるなど、ホームページ掲載情報によるトラブルなども多く発生していました。そこで、これに対応するために、医療法の広告規制対象には含まれないとしながらも、インターネット上の医療機関のホームページ全般の内容に関する規範を定めて、関係団体等による自主的な取組を促す、として、 「医療機関のホームページの内容の適切なあり方に関する指針」(医療機関ホームページガイドライン 平成24年9月)を定めていたものです。

 しかし、今般、医療法規制対象の「広告」に、ホームページなどのwebサイトも含まれることとなったため、従前の「医療機関ホームページガイドライン」の内容も、新しい「医療広告ガイドライン」に取り込まれることとなりました。つまり、従来の「医療広告ガイドライン」「医療機関ホームページガイドライン」が廃止されて、新しい「医療広告ガイドライン」に一本化されることとなったものです(本年6月1日施行予定)。   
 これによって、新しい「医療広告ガイドライン」には、従来の「医療広告ガイドライン」よりも、法律上禁止される広告の例示が増加しています。単に形式的に一本化されたというだけではなく、これまでの自主規制、行政指導の対象ではなく、違法な「広告」としての法律上の規制対象になったものですから、実質的にも厳しい規制になったわけです。

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 たとえば、虚偽広告の禁止(医療法6条の5第1項)については、加工・修正した術前術後写真等の掲載や、治療後の定期的な処置等が必要であるのに「一日で全ての治療が終了します」、 根拠の提示もなく「○%の満足度」などというものは虚偽広告として取り扱うべきとし、また、非常に限られた患者等を対象に実施された調査や謝金を支払うことにより意図的に誘導された調査の結果など、公正なデータといえないものについても、同様としています。

 比較優良広告の禁止(医療法6条の5第2項第1号)は、事実であったとしても、「優秀性について、著しく誤認を与えるおそれがあるために禁止されるものであり、例えば、「日本一」、「№1」、「最高」等の最上級の表現その他優秀性について著しく誤認を与える表現は、客観的な事実であったとしても、禁止される表現に該当する」とされています。ただし、このような表現を除けば、必ずしも客観的な事実の記載は妨げないが、裏付けとなる合理的な根拠により客観的に実証できる必要がある、とされ、また、著名人との関連性を強調するなど、患者等に対して他の医療機関より著しく優れているとの誤認を与えるおそれがある表現も、患者等を不当に誘引するおそれがあることから、比較優良広告として取り扱うとしています。
 具体例としては、「肝臓がんの治療では、日本有数の実績を有する病院です。」、「当院は県内一の医師数を誇ります。」、「本グループは全国に展開し、最高の医療を広く国民に提供しております。」、「芸能プロダクションと提携しています」、「著名人も○○医師を推薦しています」、「著名人も当院で治療を受けております」が挙げられています。

 また、誇大広告の禁止(医療法6条の5第2項第2号)については、「○○学会認定医」や「○○協会認定施設」などは、その学会や協会が活動実態のない団体の場合には、国民・患者を不当に誘引するおそれがあるとして、誇大広告として扱うべき、とされています。
 また、「○○の症状のある二人に一人が○○のリスクがあります。」、「こんな症状が出ていれば命に関わりますので、今すぐ受診ください。」、「○○手術は効果が高くおすすめです。」、「○○手術は効果が乏しく、リスクも高いですので、新たに開発された○○手術をおすすめします。」といったような表示は、科学的な根拠が乏しい情報であるにもかかわらず、特定の症状に関するリスクを強調したり、特定の手術や処置等の有効性を強調することにより、医療機関に誘導するものであり、誇大広告として取り扱うべき、としています。

 そして、前々回にも紹介しましたが、個人の主観的な体験談などや術前術後のいわゆるビフォーアフター写真などの広告も原則として禁止されること(省令)については、もちろん新しい「医療広告ガイドライン」に記載されています。

2018年2月 6日 (火)

医療広告ガイドライン(案)における「広告」

 昨日の記事「医療広告ガイドライン案が承認される(厚生労働省検討会)」で紹介した改正医療法の医療広告ガイドライン(案)ですが、規制対象となる「広告」について少しご紹介したいと思います。(注:従来のガイドラインでも示されていた内容も含まれており、必ずしも改正部分だけではありません。)

 「広告」については、   

  1. 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)
  2.    
  3. 医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可       
    能であること(特定性)

の両方を満たした場合に「広告」に該当するものと判断するとしています(従来の「認知性」の要件は削除されました。)。

※追記(2/6) ここにいう「広告」は狭義のものではなく「広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示」をいいます。詳しくは、「医療機関の広告規制強化(医療法改正)」 (2017/6/14)をご覧下さい。

 1の「誘引性」は、例えば新聞記事については、特定の病院等を推薦している内容であったとしても、この「誘引性」の要件を満たさないものとして取り扱うけれども、当該病    
院等が自らのwebサイト等に掲載する体験談については広告に該当するとしています(そして、個人の体験談は、前回記事に書いたように禁止)。

 広告規制の対象となることを避けるために、外形的に上記1、2の要件に該当することを回避するための表現を行うこと考えられますが、例えば、 「これは広告ではありません。」、「これは、取材に基づく記事であり、患者を誘引するものではありません。」との記述があるけれども病院名等が記載されていたり、 「医療法の広告規制のため、具体的な病院名は記載できません。」といった表示をしているけれども住所、電話番号やwebブサイトのアドレスなどから特定が可能であったりする場合には、実質的に上記1、2の要件をいずれも満たすものとして、「広告」に該当するものとして取り扱うことが適当である、としています。

 また、新しい治療法等に関する書籍等に「当該治療法に関するお問い合わせは、○○研究会へ」などと掲載されている場合のように、直接には病院等を特定しないで、規制対象となることを回避しようとする場合もありますが(いわゆるバイブル商法、タイアップ本など)、連絡先の「○○研究会」や出版社に問い合わせると特定の医療機関をあっせんしていることが認められる場合などは、実質的には、上記1、2の要件を満たし、広告として取り扱うことが適当な場合がある、としています。

 今回の案では、新たにステルスマーケティング(ステマ)についても触れられており、患者などに広告と気付かれないように行われる、いわゆるステルスマーケティング等についても、医療機関が広告料等の費用を負担するなどの便宜を図って掲載を依頼しているなど、実質的には上記1、2の要件も満たし広告として取り扱うことが適当な場合がある、としました。

 広告規制の対象者としては、改正医療法6条の5第1項に「何人も、医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して、文書その他いかなる方法によるを問わず、広告その他の医療を受ける者を誘引する為の手段としての表示(以下この節において単に「広告」という。)をする場合には、虚偽の広告をしてはならない」とされています。   
 したがって、医療機関などだけではなく、マスコミ、広告代理店、アフィリエイター、患者又は一般人などなど、何人であっても広告規制の対象となります。

 このガイドラインについては、もう一回書くつもりです。関係者の皆様、研修セミナーなどのお仕事のご依頼お待ち申し上げております(笑)

2018年2月 5日 (月)

医療広告ガイドライン案が承認される(厚生労働省検討会)

 「医療に関する広告」(医業、歯科医業、病院、診療所に関する広告)については、医療法により制限されています。しかし、従前、webサイト(ホームページなど)については、原則として、法律上の規制対象とはなっていませんでした(業界の自主取組や行政指導の対象)。

 しかし、特に美容医療(美容整形)に関する相談件数が増加するなど、問題が指摘され、消費者委員会からも、医療機関のwebサイトに対する法的規制が必要である旨の建議がなされ、昨年(平成29年)、医療法の改正により、他の広告媒体と同様に規制の対象とし、虚偽又は誇大等の表示を禁止し、是正命令や罰則等の対象とすることとされました。
 なお、今回の改正は、美容医療における行き過ぎた広告の問題がきっかけとなっていますが、規制対象は美容医療だけでなく、全ての医療機関に関する広告全般が対象となっていますので、医師、歯科医、病院等の関係者は、webサイトやブログなどでの表現について改めてチェックしておく必要があります。また、医療法だけではなく、景品表示法、医薬品医療機器等法(旧・薬事法)、健康増進法、不正競争防止法などの他の広告・表示の規定が適用されていることも要注意です。

 この医療法改正に伴って、省令、ガイドラインの内容を検討してきた厚生労働省「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」(1月24日開催)で、省令案、医療広告ガイドライン案(仮称「医療若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して広告し得る事項等及び広告適正化のための指導等に関する指針」)が先日、承認されています。このまま正式決定を経て、本年6月1日から施行される予定になっています。

 改正医療法は、その6条の5第1項において、何人も、医業、歯科医業、病院、診療所に関して、文書その他いかなる方法によるを問わず、広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示(以下、単に「広告」)をする場合には、虚偽の広告をしてはならない、として虚偽広告を禁止しています(従前も虚偽広告自体は禁止されていました。)。

 そして、さらに同条2項において、医療を受ける者による医療に関する適切な選択を阻害しないように、広告の内容及び方法の基準が定められています。   
それは、   

  1. 他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告をしないこと。
  2. 誇大な広告をしないこと。
     
  3. 公の秩序又は善良の風俗に反する内容の広告をしないこと。
     
  4. その他医療に関する適切な選択に関し必要な基準として厚生労働省令で定める基準

となっており、比較広告、誇大広告、公序良俗に反する広告を禁止しています。4番目の省令で定める基準について、上記の検討会の省令案では、   

  1. 患者その他の者の主観又は伝聞に基づく体験談の広告をしてはならないことはならないこと
     
  2. 治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告をしてはならないこと

とされていて、個人体験談による広告の禁止及びいわゆるビフォーアフター広告の禁止が規定されています。

 医療広告ガイドライン案のほうは、さらに具体的に詳しく書かれており、実務的には興味深いところですが、長くなりますので、改めて別の記事にしたいと思います。

【追記】(2/6)

 昨年の医療法改正については、当ブログで書いていますので、興味のある方はご覧下さい。
 → 「医療機関の広告規制強化(医療法改正)」 (2017/6/14)

2017年7月18日 (火)

民法(債権法)の大改正と条文

 この前の第189回国会で債権法の大改正がなされました。平成29年6月2日(公布日)から起算して3年を超えない日に施行されることになっています(具体的には後日政令で指定。)。

 ただし、「債権法」という法律があるわけではなく、民法が定めている、総則、物権、債権、親族、相続の内の債権の個所を債権法と言っており、この部分の大改正ということなのですが、実際には、債権に関わる他の部分、総則、物権のところも結構改正部分があります。親族、相続については、直接の改正部分はほとんどありませんが、総則などの改正部分に関係するところもありますので、要注意です。

 この改正に関しては既に多くの本が出されており、また、これからもいろいろなものが出版されると思いますが、今回、知り合いの編集者を介してですが、ご恵贈いただいたのは、改正についての解説書ではなく、改正前後の条文を整理したもので、 「民法の全条文」(三省堂編集所 編) という本です。

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 ちらっと中身を見ますと、こんな感じです(時効の所ですが、ちょっと見にくいかな)。

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 改正後の民法全条文(親族、相続を含む)に、改正前(現行)の民法の条文が灰色地に印刷されており、改正前後の関係がよくわかります。国会で審議される「改正法案」というのは、改正後の全条文が整理されて並んでいるわけではなく、改正される部分だけが載っており、それを見ただけでは、専門家であってもとてもわかりにくいという形式になっていますので、こういった整理された条文が出されるのは、我々にとっても大変ありがたいことなのです。

 また、民法や今回の改正の大枠についてある程度理解をしている人にとっては、改正前後の条文が見やすく並んでおれば、これだけでも、かなり改正法の理解ができると思います。全部で200ページほどですし、持ち歩きにも良さそうですね。

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