2020年9月 1日 (火)

経産省「電子商取引等準則」改訂(債権法改正関係)

 昨日は、情報ネットワーク法学会ネット社会法務研究会にて、「デジタル・プラットフォーム事業者に関する法的問題の現状」というタイトルで、ZOOMを使ってお話しました。大層なタイトルですが、要は、プラットフォーム事業に関するいろんな法律的な動きなどを俯瞰して、ちょっと消費者法視点に寄せての話にしました。お聴きいただいた皆様ありがとうございました。
 元々、小規模なリアルの勉強会で基本的なことを話せばいい、ということで引き受けたところ、当初予定の研究会がコロナで延期となり、結局ZOOM開催ということになったため、大御所の先生方を含め、全国から予想外の人に参加いただき、私には肩の荷が重すぎる状況でしたが、何とか終えることができました。

 さて、この研究会でも少し話題にしましたが、8月28日に、経済産業省「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」の改訂が公表されました。

 → 経産省ニュースリリース

 この「電子商取引及び情報材取引等に関する準則」は、経済産業省が、電子商取引・情報財取引等に係る市場の予見可能性を高める観点から、民法等の解釈を整理して、平成14年から公表し、改訂を重ねているもので、今回は、民法(債権法)の大改正(令和2年4月1日施行)があったため、それを踏まえた改訂が主なものです。
 改訂内容については、以下の通り。

(1)民法(債権法)改正に伴う所要の見直し

  • 意思表示の効力発生時期関係

Ⅰ-1-1 契約の成立時期 等

  • 錯誤関係

Ⅰ-1-2 消費者の操作ミスによる錯誤
Ⅰ-1-3 ワンクリック請求と契約の履行義務
Ⅰ-2-4 価格誤表示と表意者の法的責任(旧Ⅰ-2-2)
Ⅰ-8-2 取引当事者間の法的関係(旧Ⅰ-7-2)
Ⅰ-11-2 AIスピーカーに対して発注者が言い間違いをした場合(旧Ⅰ-10-2) 等

  • 定型約款関係

Ⅰ-2-1-1 利用規約の定型約款としての契約への組入れ(新規)
Ⅰ-2-1-2 定型約款となる利用規約の開示(新規)
Ⅰ-2-1-3 定型約款となる利用規約の契約締結後の変更(新規)
Ⅰ-2-2 事業者間契約と定型約款(新規)
Ⅰ-2-3 定型約款の規定が適用されない利用規約の契約への組入れと契約締結後の規約変更(旧Ⅰ-2-1) 等

  • 売主の担保責任関係

Ⅰ-8-2 取引当事者間の法的関係(旧Ⅰ-7-2)
Ⅰ-8-4 「ノークレーム・ノーリターン」特約の効力(旧Ⅰ-7-4)
Ⅲ-5 ソフトウェアの契約不適合責任

  • 原状回復義務関係

Ⅲ-4 ライセンス契約終了時におけるユーザーが負う義務の内容(旧Ⅲ-4-1)
Ⅲ-12-2 デジタルコンテンツ利用契約終了後のデジタルコンテンツの利用 等

(2)設問の新設、見直し、削除

  • 旧Ⅰ-3-3
     なりすましを生じた場合の認証機関の責任(削除)
  • Ⅰ-8-3
     インターネット・オークション及びフリマサービスにおける売買契約の成立時期(旧Ⅰ-7-3。設問の対象にいわゆるオンラインフリーマーケットサービスを追加)
  • Ⅲ-1-3
     重要事項不提供の効果(設例をパッケージソフトウェアの購入からオンラインでのダウンロード購入に変更)
  • 旧Ⅲ-4-2
     契約終了の担保措置の効力(削除。Ⅲ-12-2に統合)
  • Ⅳ-4
     インターネット上の国境を越えた名誉・信用の毀損、プライバシー侵害(旧Ⅳ-4-1と旧Ⅳ-4-2を統合)
  • Ⅳ-5
     インターネット上の国境を越えた著作権侵害(新規)
  • Ⅳ-8
     国境を越えた取引に関する公法規制の適用範囲(旧Ⅳ-7。設問の対象を製品安全法を中心とする公法規制に変更) 等

 その他、全体にわたって、消費者契約法、景品表示法、著作権法等の関係諸法令の改正や解釈の積み重ねに伴う所要の改訂、構成・表現の見直し、表現ぶりの統一・調整等を行った。

2020年8月13日 (木)

ステマ規制の厳格化(韓国公取委)

 ステルス・マーケティング(ステマ)の問題については、当ブログで何度も取り上げてきておりますが、スポーツソウル日本語版本日付ニュース「多発する有名インフルエンサーの“裏広告”問題…韓国では最大5億ウォンの課徴金に」や、情報サイトもっとコリ8月7日付「SANDBOX、裏広告を謝罪「有料広告表記が欠落、管理不足に責任」」などで、韓国でステマ(裏広告と表現しているようですね)問題が炎上しているとのことです。


 これらの記事によれば、韓国では、9月1日からステマの規制を厳しくした「推薦・保証などに関する表示・広告審査指針」の改正が施行されるとされています。ちょっと検索してみましたが、これのようです(ハングルですので、機械翻訳等でご覧下さい)。

 → 韓国公正取引委員会サイト

 上の記事などを見ると、要するに、経済的な対価を得ているのに、それを明記せずに自分の体験談などとして宣伝行為を行うことは禁止され、そういった不当な広告の刑罰などが重罰化されるようです。

 実は、今回改正されたこの「推薦・保証などに関する表示・広告審査指針」に関しては、今回と同じくステマに関して2011年に改正された時に取り上げたことがあります。

 → ブロガーの商品推奨記事に関する韓国の動き(韓国公取委)」(2011/7/14)

 日本では、この同じ年に、消費者庁が「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」を策定しました。ステマ行為についても触れられているものですが、詳しくは以下をご覧下さい。

 → 「「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の 問題点及び留意事項」の公表(消費者庁)」 (2011/10/28)

 ただ、これ以後、日本では法律やガイドラインなどについて特段の整備はされていません(2012年に上記「留意事項」の改定が少しありましたが)。ブログやSNSなどにおいて、ステマ自体がなくなっているとも思えませんので、実効性のある対策が必要かと思います。

【追記】
 ちょっと、勘違いをして当初以前のブログについて誤った紹介をしてしまいました。修正しましたが、ご了承ください。

2020年8月 8日 (土)

「定期購入」商法への業務停止命令(特商法)および措置命令(景表法)のご紹介

 昨日(8/7)、消費者庁は、いわゆる「定期購入」商法を行っていた通信販売業者wonder(ワンダー)(栃木県宇都宮市)および主導的な役割を果たしている個人に対し、特定商取引法違反であるとして業務停止命令(6か月)などを出しました。

 → 消費者庁公表資料

 この商法の問題点は、「初回無料」とか「お試し価格」などといったうたい文句で消費者に注文をさせて、実は、それが定期購入、つまりその後も購入を継続しなければならない契約になっているのですが、そういった条件が分かりにくい表示になっていて、消費者は1回だけの購入と誤認して契約をしてしまうというものです。

 このような定期購入については数年前から大きな問題となっており、令和2年版消費者白書(消費者庁)によれば、いわゆる定期購入に関する相談は2018年の2万1977件から2019年には4万4370件と倍増しており、若い女性からのダイエットサプリなどの健康食品や化粧品を「お試し価格」で注文したが定期購入と気付かず申し込んでしまったというような相談が多いようです。

 今回、処分対象となったのは、契約の最終段階の画面上において、購入者から解約通知がない限り契約が継続する無期限の契約である旨を明記しなかったり、解約条件をわかりやすく表示しなかったりなどの行為が、顧客の意に反して通信販売に係る売買契約の申込みをさせようとする行為(特商法14条1項2号に基づく施行規則16条1項2号)に該当するとされたものです。

 なお、このような苦情が急増しているため、消費者庁では特定商取引法を改正して定期購入であることを明示しない行為については刑罰化するという規制強化などを検討しています。

 ところで、定期購入の案件について、昨年、埼玉県から景品表示法に基づく措置命令が出された事案(2019/8/20)がありました。

 → 「女性向け育毛剤の通信販売事業者に対する措置命令について」

 この事案では、育毛剤の効果についての表示が優良誤認表示であることとあわせて、「いつでも好きな時に1ステップで解約できます」などと表示して、あたかも、契約を容易に解約できるかのように表示していたけれども、実際には、解約の手段は電話に限られ、平日午前10~午後5時までに申出しなければならず、その電話もつながりにくく、契約を容易に解約できないものであったことが、有利誤認表示にあたるとされたものです。定期購入事案に限らず、解約容易性についての表示が有利誤認表示とされたのは初めてだと思われますし、注目される措置命令ですね。



2020年7月20日 (月)

SNSなど無償取引に対する景品表示法の適用

 任期付き公務員として消費者庁景品表示法実務に携わっておられた染谷隆明弁護士が、公正取引4月号(№834)「景品表示法の「取引」概念の再検討 -無償契約は「取引」かー」を書かれています。
 無償契約、つまり、ネットでよくある、消費者側からは対価を支払っていないような無料サービスなどは、景品表示法上の取引に該当せず景品表示法の規制対象とはならないと扱われているように見えることについての疑問を呈する立場からの論稿です。

 Googleのような検索サービスやfacebook、twitter、Instagram、LINEのようなSNSサービスは、基本的に利用者は無料で使えて便利なのですが、一方で、程度の差はあれ、個人情報を運営事業者に提供しています。ここで、仮に、そういった運営事業者に対して、不当表示や不当景品などの景品表示法での規制が可能なのか、という問題ですね。もちろん、場合によっては、個人情報保護法による規制対象となることがあるかもしれませんが、それとは別の話です。

 景品表示法(に限らないのですが)は、今のようなインターネット社会や個人情報などのデータの価値が極めて重要な状況を想定して作られた規制ではありません。したがって、IT社会において、これらの法規制の解釈について、変更すべきなのか、変更すべきであるとすれば、解釈上あるいは運用上の変更で可能なのか、法改正といった立法的な解決をしなければならないのか、ということを考えなければなりません。

 ところで、公正取引委員会は、昨年12月17日に、「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」を公表しています。また、案の段階ですが、当ブログでも書いています。

 → 公取委報道発表資料

 → 「プラットフォームと消費者個人情報提供に関する独禁法ガイドライン案」 (2019/9/25) 

 ここでは、「取引の相手方(取引する相手方)」の考え方として、独禁法2条9項5号は、「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に」、「継続して取引する相手方」(同号イ及びロ)や「取引の相手方」(同号ハ)に対して,不利益を与える行為を優越的地位の濫用とし、「取引の相手方(取引する相手方)」には消費者も含まれる、ということを明確にしました。
 そして、個人情報等は、「消費者の属性、行動等、当該消費者個人と関係する全ての情報を含み、デジタル・プラットフォーム事業者の事業活動に利用されており、経済的価値を有する。消費者が、デジタル・プラットフォーム事業者が提供するサービスを利用する際に、その対価として自己の個人情報等を提供していると認められる場合は当然、消費者はデジタル・プラットフォーム事業者の「取引の相手方(取引する相手方)」に該当する、としました。つまり、法改正などの必要はなく、消費者も取引の相手方に含まれるし、金銭的には無償であっても、個人情報の提供は対価として経済的価値を有するという解釈を示したものです。

 これは、独禁法の規制する不公正な取引方法の中の「優越的地位濫用」についての考え方を公取委が示したものですが、景品表示法は、そもそも、独禁法上の不公正な取引方法規制の特例法として立法されたものであり、この問題について、これと異別に解釈する必要はないように思います。

 したがって、例えば、Twitterで、企業が、何らかの特典を与える条件として、フォローさせるなどの場合は、景品表示法上の規制、すなわち、不当表示規制や不当景品規制の適用があると解してもおかしくはないと思われます。ただ、不当景品の場合の取引対価の額とか、課徴金算定など(ここは上記の染谷論稿でも指摘されているところですが)、よくわからん問題は残りますが。

2020年2月11日 (火)

楽天への公取委立入検査(優越的地位濫用)

 しばらくブログの更新ができず、これが今年最初の更新となってしまいました。

 例のパイプテクターに関しては、最近になって東京メトロの車両(他社乗り入れ車両は除く)から広告が消えた、との報告がTwitterなどで見かけますね。東京メトロの広告媒体者としての責任について、昨年、ちらっと書いたことがありますが、同社もいろいろと考えたのでしょうか。

 → 「赤さび防止効果に関する日本技術士会千葉県支部の見解書」(2019/8/20)


 さて、昨日(2/10)、通販サイト国内大手の「楽天市場」を運営する楽天の本社に公正取引委員会が立入検査に入った、と報道されました。

 これは、楽天市場において、3980円以上を購入すれば送料を出店者負担で無料にする新制度を3月から導入するとしていることに関して、独占禁止法違反(優越的地位の濫用)の疑いがあるという理由のものです。

 以下、ちょっと長くなりますが、これまでの経過をまとめてみました。

 この立入調査の3日前の2月7日には、楽天が、「公正取引委員会からの調査開始及び調査への協力について」として、公正取引委員会から、送料無料制度について調査を開始した旨の連絡を正式に受領したことを公表しており、その中で、「・・法令上の問題はないものと考えていますが、公正取引委員会からの調査につきましては、全面的に協力してまいります。」としていました。

 そもそも、楽天は1年前の2019年1月に、この新しい送料無料制度を導入することを公表していました。ただ、この時点では、送料の負担を楽天と出店者のどちらが負担するかについては明確にしていなかったのですが、8月になって、送料無料ラインを3980円以上(税込)とすることを発表し、これが出店者負担となることが明らかになり、この規約の変更について、出店者の中から不満が出ていたものです。

 なお、昨年1月から、公正取引委員会は、「デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査」として、オンラインモール運営事業者の取引実態に関するアンケート調査などを実施しており、楽天を含むオンラインモールも調査対象となっていました。この調査については、4月に中間報告がまとめられ、10月には実態調査報告書として、公表されています。この中でも、運営事業者によって、規約が一方的に変更されたことがある、と回答した出店者がかなり多く(楽天は93.2%の高率)、規約の変更の中に不利益な内容があったとする回答も多くありました。

 このような楽天の送料無料の強行に対し、不満を持つ出店者の一部が、10月に「楽天ユニオン」という組合を結成し、反対署名を集めたり、「優越的地位の濫用」だとして公正取引委員会に調査を求めるなどの活動を行っていました。また、12月19日の朝日新聞では、楽天の送料無料の方針について、公正取引委員会楽天に「独占禁止法違反のおそれがある」と伝えていたことがわかった、と報じられています。

 しかし、楽天は、12月に、出店者に対して、当初予定通り送料無料を今年3月から実施することを通告しました。

 このように双方が対立した状況の中、今年1月22日、「楽天ユニオン」が、公正取引委員会に対し、独占禁止法に基づく排除措置命令を求める措置請求書と、店舗の署名を提出したようです。

 この日の記者会見において、記者からの質問に対し、公正取引委員会事務総長は、個別の案件については答えられないとしつつ、「自己の取引上の地位が、例えば、オンラインモール運営業者が出店者に対して優越していて、そういう場合に、不当に不利益を与えるようなやり方で取引条件を変更するという場合には、独占禁止法でいえば優越的地位の濫用に当たる可能性はある。」と答えています。

 また、報道によれば、2月5日の記者会見において、公正取引委員会杉本委員長は、この問題に関連し、一般論と断った上で「独占禁止法違反の疑いがあれば調査し、違反であれば厳正に対処する」と述べた、とのことです。

 こういった流れの中での昨日の立入検査ですが、これに対し、楽天は、立入検査があったことを認めたうえで、今後も調査に対して全面的に協力する、としつつ、送料見直しについては、現時点で予定通り実施する、としていると報じられています。

 立入検査があったばかりで、公正取引委員会が結論を出すのは、まだまだ先になると思います。けれども、GAFAをはじめとするプラットフォーム事業者については、プラットフォーム事業者の取引透明化法案など、国内外で、その問題点や規制の在り方についての検討が行われており、今回のような出店者との関係のほか、消費者との関係においても、さまざまな議論がなされているところですので、この案件は各方面から注目を集めることになりますね。

2019年12月23日 (月)

口コミ代行業者に関する記事にコメント載りました。

 ネットニュースのJ-CASTニュースの12月22日の記事「口コミ代行が横行?「1件6000円~」も 弁護士が指摘する問題点」にコメントが掲載されました(一番最後のところです。)。

 ご興味のある方は是非お読みいただきたいのですが、私のコメント関連のところをちょっと補足したいと思います。

 景品表示法に関して、「処分対象は依頼側となる可能性が高く」というのは、景品表示法に基づく措置命令課徴金納付命令のような正式な法的処分については、その対象となる事業者は、「自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項」の表示をした者となっていますので、広告会社や広告媒体者(新聞、雑誌、テレビなど)は対象とならず、「依頼側」(=広告主)に対する処分に限られることになるからです。ただし、広告会社などにも、正式な法的処分ではありませんが、違反行為が起こらないように必要な措置を採るように消費者庁が「要請」を行うようなことは考えられます。例としては、2010年末のおせちで問題になった、いわゆる「スカスカおせち事件」では、消費者庁は、2011年2月に、おせちを販売していた会社に措置命令を出すと同時に、そのおせち商品を掲載していたグルーポンに対して、必要な措置(二重価格表示に関して)を要請したことがあります。

 → 「バードカフェおせち事件に関する措置命令及び要請(景品表示法・消費者庁)」 (2011/2/22)

 ただ、この要請は、法的処分ではなく、法的な拘束力があるわけでもありません。不当表示に関係した広告会社や広告媒体者については、上記の通り、景品表示法の行政処分の対象にはなりませんので、何らかの立法対応が必要ではないかと思います。なお、もちろん、詐欺的な宣伝に荷担したような場合は、詐欺や不法行為ということで、広告会社などに法的責任が追及される可能性はあります。

 また、記事にある「消費者庁の景表法ガイドライン」というのは、「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」(PDF)のことです。該当個所は、これの4~5頁ですね。

 最後に、不正競争防止法(品質等誤認惹起行為)の判決(ライバル業者からの損害賠償請求訴訟)の紹介がありますが、これについては、当ブログの「自社開設を隠した口コミサイトの操作が誤認惹起行為とされた判決(不競法)」(2019/4/19)で取り上げています。

2019年10月31日 (木)

デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査(公取委)

 本日、公正取引委員会「デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査(オンラインモール・アプリストアにおける事業者間取引)」を公表しました。

 これは、公正取引委員会、経済産業省、総務省が立ち上げた「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」中間論点整理(平成30年12月12日)を踏まえて策定された「プラットフォーマー型ビジネスの台頭に対応したルール整備の基本原則」(平成30年12月18日)に基づいて、特に問題点の指摘が多いオンラインモール及びアプリストアにおける取引にかかる独占禁止法・競争政策上問題となるおそれのある取引慣行等の有無を明らかにするために実施されたものです。

 調査の対象は、オンラインモール運営事業者又はアプリストア運営事業者がオンラインモール又はアプリストアを利用して出品する事業者(利用事業者)との間で行う取引です。これに関して、公正取引委員会サイトに設置された情報提供窓口に寄せられた情報(計914件)と、利用事業者や消費者に対するアンケート調査の結果、および、運営事業者8名、利用事業者85名からのヒアリングを行うことにより実態調査が行われました。

 → 公正取引委員会報道発表資料
  (報告書本体および報告書概要のPDFへのリンクがあります。)

 報告書本体は99頁あり、まだちゃんと目を通していませんが、報告書概要のほうは16頁にまとめてあります。


 独占禁止法の基本がわかる人なら、概要を読むだけでも、デジタルプラットフォームに関する現在の競争政策上の問題点が整理されているので、良い資料ではないかと思います。

 特に取引に関するデータの問題について、ネット上では、本来、個人情報保護法の問題であり、公正取引委員会ではなく、個人情報保護委員会の所管ではないか、などといった意見もよく見るのですが、もちろん、個人情報保護法の問題も重なる部分があるのは当然ですが、競争政策上の観点からの規制は個人情報保護委員会の仕事ではありませんし、問題となるデータも、個人情報保護法が対象とする「個人情報」に限りませんので(例えば、BtoBの取引情報は個人情報ではありません。)、報告書に示された個々の考え方の当否は別に検討すべきは当然として、ここで公正取引委員会がこの問題を取り上げていること自体は全く不思議ではないですね。

 参考までに報告書本体の目次構成を以下に示しておきます。

第1部 デジタル市場と競争政策
 第1 経済のデジタル化とデジタル・プラットフォームの浸透
 第2 デジタル・プラットフォームの特徴
  1 両面市場とネットワーク効果
  2 低い限界費用と規模の経済性
  3 デジタル・プラットフォームがもたらす便益
  4 集中化・スイッチングコスト・ロックイン
 第3 デジタル・プラットフォームに関する懸念とその対応
  1 競争政策上の懸念
  2 公正取引委員会の対応
 第4 デジタル・プラットフォームの競争環境の整備
  1 取引条件等の透明化
  2 データの移転・開放

第2部 オンラインモール・アプリストアに係る実態調査
 第1 調査趣旨等
  1 調査対象
  2 調査方法
 第2 市場の概要
  1 オンラインモール市場の概要
  2 アプリストア市場の概要
 第3 運営事業者の取引上の地位
  1 市場における有力な地位
  2 独占・寡占的な地位
  3 優越的地位
  4 運営事業者の取引上の地位に係る利用事業者の認識
 第4 取引実態と評価
  1 取引先に不利益を与え得る行為
  2 競合事業者を排除し得る行為
  3 取引先の事業活動を制限し得る行為
  4 公正性・透明性に欠けるおそれのある行為

第3部 結語
 第1 本実態調査の要点
  1 独占禁止法上の考え方
  2 競争政策上の考え方
 第2 今後の取組

2019年10月 5日 (土)

「「バッキンガム宮殿採用」装置にダメ出し続々」(論座の記事)

 先日、「パイプテクター」なる商品について取り上げました。

 → 「赤さび防止効果に関する日本技術士会千葉県支部の見解書」8/20

 → 「NMRパイプテクターはどうかな♡の話。続編。」9/3

 この中に紹介した山本一郎氏の「謎水事件」日本システム企画社のNMRパイプテクター事案が熱い!」もよく読まれたようですが、本日になって、朝日新聞「論座」サイトに、

 「「バッキンガム宮殿採用」装置にダメ出し続々 ネット注目の#謎水装置 開発者を直撃」

という朝日新聞長野剛記者による記事が掲載されました。

 当該業者の社長を含め、いろいろと関係者に取材されている記事ですので、是非読まれることをお勧めします。

 

 

 「実は対応可能な消費者行政」以下の内容に関連して、もう少し書いておきたいことはあるのですが、長くなりますので、また別稿にて。

2019年9月25日 (水)

プラットフォームと消費者個人情報提供に関する独禁法ガイドライン案

 正式には「デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(案)」(以下、単に「ガイドライン案」)となりますが、現在、公正取引委員会が意見募集(パブコメ)中です(9/30締切)。

 実は、昨夜も某消費者団体の会議で話題になりましたので、ガイドライン案について、独占禁止法優越的地位濫用規制に詳しくない一般の方向けの簡単な解説です。概説ですし、重要な注記も略していますので、内容を正確に詳しく検討されたい方は上にリンクした公正取引委員会サイトからガイドライン案をご覧下さい。
 なお、優越的地位の濫用というのは、独占禁止法の規制する「不公正な取引方法」の一つで、これに該当する行為を行った事業者は、公正取引委員会から、排除措置命令課徴金納付命令を受ける場合があります。

 まず、ガイドライン案は、「はじめに」として、いわゆるデジタル・プラットフォーマー(以下、単に「プラットフォーマー」)がイノベーションの担い手となり、事業者にとっては市場へのアクセスの可能性を飛躍的に高め、消費者にとっては便益向上につながるなど、我が国の経済や社会にとって重要な存在となっている、とし、一方で、 個人情報等の取得・利用と引換えにサービスなどを無料提供するというビジネスモデルが採られることがあるため、プラットフォーマーがサービスを提供する際に消費者の個人情報等を取得・利用することに対して懸念する声もある、としています。そして、プラットフォーマーが不公正な手段により個人情報等を取得などすることによって消費者に不利益を与えるとともに、独占禁止法上の問題が生じる、と指摘しています。
 そのため、独占禁止法の運用における透明性、プラットフォーマーの予見可能性を向上させる観点からこの問題において、どのような行為が優越的地位の濫用として問題となるかについて整理したのがガイドライン案、ということです。
 したがって、今回の意見募集は、消費者の個人情報等をプラットフォーマーに提供させる行為が優越的地位濫用に該当するのか、という観点から整理されたものですので、独占禁止法改正や新たな立法などによる新しい規制強化についてのものではありません。

 そして、「1 優越的地位の濫用規制についての基本的考え方」として、 まず、事業者と消費者との取引においては、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差があり、取引条件が一方的に不利になりやすいことを指摘し、消費者に優越しているプラットフォーマーが消費者に対して、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは、消費者の自由かつ自主的な判断による取引を阻害する一方、プラットフォーマーはその競争者との関係において競争上有利となるおそれがあり、このような行為は優越的地位の濫用として規制される、として、プラットフォーマーが消費者の個人情報等の提供を受ける行為も優越的地位の濫用の規制対象となり得ると、しました。そして、以下で、優越的地位の濫用の要件ごとに整理しています。

 まず、「2 「取引の相手方(取引する相手方)」の考え方」において、個人情報等はプラットフォーマーの事業活動に利用され経済的価値を有することから、消費者がプラットフォーマーが提供するサービスを利用する際、対価として個人情報等を提供していると認められる場合は当然、消費者はプラットフォーマー「取引の相手方(取引する相手方)」に該当することを明確にしました。

 そして、「3 「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して」の考え方」において、プラットフォーマーが消費者に対して優越的地位にあるとは、消費者がプラットフォーマーから不利益な取扱いを受けても、消費者がプラットフォーマーのサービスを利用するためにはこれを受け入れざるを得ないような場合である、としました。
 消費者がプラットフォーマーのサービスを利用するためにはこれを受け入れざるを得ないような場合であるかの判断については、消費者の「取引することの必要性」を考慮することとし、
①消費者にとって、代替可能なサービスが存在しない場合
②代替可能なサービスが存在していたとしてもプラットフォーマーのサービスの利用を止めることが事実上困難な場合
プラットフォーマーが、その意思で、ある程度自由に、価格、品質その他の取引条件を左右することができる地位にある場合には、通常、プラットフォーマーは取引上の地位が優越していると認められる
とし、優越的地位にあるプラットフォーマーが消費者に対して不当に不利益を課して取引を行えば、通常、「利用して」行われた行為であると認められる、としました。 そして、これらの判断に当たっては、両者間の情報の質及び量並びに交渉力の格差が存在することを考慮する必要がある、としています。

 さらに、「4 「正常な商慣習に照らして不当に」の考え方」において、この要件は、公正な競争秩序の維持・促進の観点から個別の事案ごとに判断されることを示すものであるとしたうえで、「正常な商慣習」とは、公正な競争秩序の維持・促進の立場から是認されるものをいうのであって、現に存在する商慣習に合致しているからといって、直ちにその行為が正当化されることにはならない、としています。

 ガイドライン案は、以上のような優越的地位の濫用の要件ごとの整理をしたうえで、プラットフォーマーによる個人情報等の取得などにおけるどのような行為が優越的地位の濫用に該当するのかについての考え方を明らかにするために、「5 優越的地位の濫用となる行為類型」として、以下の類型を示しています。ただし、これらに限定されるものではなく、また、他の法令に違反しない場合であっても優越的地位の濫用として問題となり得ることも指摘されています。 なお、ガイドライン案では、「個人情報」と「個人情報等」を意識して書き分けていますが、本記事では、そこの区別には言及しませんので、ご注意ください。

⑴ 個人情報等の不当な取得
ア 利用目的を消費者に知らせずに個人情報を取得すること。
【想定例①】
 
プラットフォーマーが、個人情報を取得するに当たり、その利用目的を自社のウェブサイト等で知らせることなく、消費者に個人情報を提供させた(※注記略)。

イ 利用目的の達成に必要な範囲を超えて、消費者の意に反して個人情報を取得すること。
【想定例②】
 プラットフォーマー
が、個人情報を取得するに当たり、その利用目的を「商品の販売」と特定し消費者に示していたところ、商品の販売に必要な範囲を超えて、消費者の性別・職業に関する情報を、消費者の同意を得ることなく提供させた(※注記略)。

ウ 個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに、個人情報を取得すること。
【想定例③】
 プラットフォーマー
が、個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに、サービスを利用させ、個人情報を提供させた。

エ 自己の提供するサービスを継続して利用する消費者に対し、消費者がサービスを利用するための対価として提供している個人情報等とは別に、個人情報等の経済上の利益を提供させること。
【想定例④】
 プラットフォーマー
が、提供するサービスを継続して利用する消費者から対価として取得する個人情報等とは別に、追加的に個人情報等を提供させた(※注記略)。

⑵ 個人情報等の不当な利用
ア 利用目的の達成に必要な範囲を超えて、消費者の意に反して個人情報を利用すること。
【想定例⑤】
 プラットフォーマー
が、利用目的を「商品の販売」と特定し、当該利用目的を消費者に示して取得した個人情報を、消費者の同意を得ることなく「ターゲッティング広告」に利用した(※注記略)。

【想定例⑥】
 プラットフォーマー
が、サービスを利用する消費者から取得した個人情報を、消費者の同意を得ることなく第三者に提供した(※注記略)。

イ 個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに、個人情報を利用すること。
【想定例⑦】
 プラットフォーマー
が、個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じずに、サービスを利用させ、個人情報を利用した。

2019年9月19日 (木)

昨日の杉本委員長発言と「潜入ルポamazon帝国」(横田増生著)

 昨日の当ブログ記事にも追記しましたが、杉本和行公正取引委員会委員長が、昨日の記者会見にで、「フェイクニュース」問題にも言及したということが報じられています。短い記事なので、どのような射程での発言なのかなどは現時点ではわかりません。ただ、先日も書いたような、ニセ科学的な宣伝で利益をあげているような事業者には、厳しく「欺まん的顧客誘引」を適用していただきたいと思うところです。

 ところで、過去にアマゾンユニクロの社内潜入ルポを書かれているフリージャーナリストの横田増生氏の新刊書「潜入ルポ amazon帝国」(小学館)が出ました。私もちょっと取材に協力したということで、著者からご恵贈いただき、拝読しました。

 本書や以前の著書のタイトルなどから、横田氏がまたアマゾンに潜入した内容なのか、と思われるのではないか、と思います。しかし、この本では、潜入の直接のルポは第1章だけで、第2章から第10章にわたって、社員からの告発や、宅配問題、海外取材、創業者の人物像、amazonマーケットプレイスの問題点(ここらには独占禁止法問題が書かれています。)、フェイクレビュー、AWS、書店流通といったアマゾン全体に関する幅広い問題について、関係者への取材を交えて書かれています。したがって、アマゾンに関する最新の各種の問題について考えるにはいい本だと思います。

 私はフェイクレビューの第7章でちょっとだけコメントしていますが、短く圧縮されたコメントのため、わかりにくいかもしれません(申し訳ございません)。ただ、フェイクレビュー(出品者から対価を得て、商品に好意的に書かれているレビュー。ステマの一種ですね。)に関して、この本では、関係者への直接の取材がなされ、生々しい報告になっています。これまで以上に、アマゾン(だけじゃないでしょうが)のレビューは注意してみたいと思います。

 フェイクレビューというのは、まさに、冒頭に書いたような「欺まん的顧客誘引」行為なわけですので、プラットフォーム事業者フェイクニュースについて言及された杉本委員長の発言は、少なくともその範囲では応援したいと思います。

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