2021年10月18日 (月)

「弁護士法72条違反で」とは

明日19日が衆議院議員の総選挙の公示(告示は間違いです)ですね。

ということで、なぜか、弁護士法72条を挙げておきます。それだけ(笑)

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第72条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

で、NHKがこれに違反しているというのをメインに主張されている政党があるようです。
弁護士法が注目されるのは悪いことではないのですが。

2021年10月13日 (水)

メルカリなどフリマへの出品と違法行為

 10月に入って、新型コロナの緊急事態宣言が全国的に終了し、その後、ここまで急速に感染者が減少してきて、まだ油断はできないものの、少し明るさが出て来たような気がします。

 さて、フリーマーケットアプリ「メルカリ」にて、ハッシュタグ(「#」)に他社商品名を表示して(#(商品名))、類似の出品物を宣伝する行為が商標権の侵害に当たるとした大阪地裁の判決が9月27日に言い渡されたことが報じられています。

→ 裁判所サイト

 メルカリのようなフリマやオークションに出品する際に、法的な知識なく、売れるためにいろいろと工夫するのは良いのですが、結構法律的な問題が生じます。ここでは詳しくは触れませんが、消費者保護法(特定商取引法、消費者契約法、景品表示法、食品表示法などなど)や今回の商標法のような知的財産法(著作権法や不正競争防止法も含みます)、薬機法、健康増進法、もちろん、一般の民法なども含めて、それなりに理解して出品、特に何度も反復して出品するような人は、特定商取引法などの対象となる「事業者」に該当することになりますので、要注意です。


 ところで、先日、消費者庁は、Webサイト「特定商取引法ガイド」に掲載されている「通信販売広告Q&A」を改定したようです。

 特定商取引法では、通信販売の事業者に義務づけられている「特定商取引法に基づく表記」での「事業者の住所、電話番号」について、「住所」については現に活動している住所、「電話番号」については確実に連絡が取れる番号を表示する必要がありますが、「通信販売広告Q&A」Q18では、以下のような措置が講じられ、住所及び電話番号について上記の要件が満たされる場合においては、通信販売の取引の場を提供するプラットフォーム事業者やバーチャルオフィスの住所及び電話番号を表示することによっても、特定商取引法の要請を満たすものと考えられます。」として、次のような場合は、自己の住所や電話番号を表示しないでよい、としています。ただし、「個人事業者、プラットフォーム事業者又はバーチャルオフィス運営事業者のいずれかが不誠実であり、消費者から連絡が取れないなどの事態が発生する場合には、特定商取引法上の表示義務を果たしたことにはなりません。」としています。

  •  個人事業者がプラットフォーム事業者の住所及び電話番号を表示する場合、当該個人事業者の通信販売に係る取引の活動が、当該プラットフォーム事業者の提供するプラットフォーム上で行われること

  •  個人事業者がプラットフォーム事業者又はバーチャルオフィスの住所及び電話番号を表示する場合、当該プラットフォーム事業者又は当該バーチャルオフィスの住所及び電話番号が、当該個人事業者が通信販売に係る取引を行う際の連絡先としての機能を果たすことについて、当該個人事業者と当該プラットフォーム事業者又は当該バーチャルオフィス運営事業者との間で合意がなされていること

  •  個人事業者がプラットフォーム事業者又はバーチャルオフィスの住所及び電話番号を表示する場合、当該プラットフォーム事業者又は当該バーチャルオフィス運営事業者は、当該個人事業者の現住所及び本人名義の電話番号を把握しており、当該プラットフォーム事業者又は当該バーチャルオフィス運営事業者と当該個人事業者との間で確実に連絡が取れる状態となっていること

 実際には、ハードルは低くはないのですが、こういった条件が満たされない場合は、「事業者」となる出品者(本人が事業者とは思っていなくても)の出品は違法(特定商取引法違反行為)なものとなります。

 一方、出品者が事業のためのオフィスを持っておらず、自宅で内職的に出品する場合は、上記の要件を満たさない限りは、原則として(Q15、Q17参照)、自宅の住所、電話番号を世界中に公開しないといけないわけですので、大変なことになるかもしれません。

 したがって、安易に考えて、反復継続した出品を行うことは、事業者としての各種法律の義務、責任が生じることになってしまいます。つまり、冒頭に書いたように特定商取引法以外でも、消費者契約法景品表示法不正競争防止法商標法などの知的財産法薬機法、独占禁止法などに触れ、犯罪行為ともなることがありますので、メルカリやヤフオクなどで副業的に小遣い稼ぎをしようとする場合には十分な注意が必要ですし、念のためネット通販に関わる専門家に相談されたほうがいい場合もあると思います。


 



 

2021年8月 2日 (月)

「消費者法ニュース」7月号・消費者法白書

 大阪でも、またまた緊急事態宣言(8月末までの予定)が出されました。

 私自身はモデルナ・ワクチンの2回目接種を済ませたものの、安心できるわけでもなく、早く収まってほしいものです。夜に仕事してると、すぐに夕食難民状態になってしまいます。幸い、事務所近くにはスーパーやコンビニもあるのですが、毎回ではね。


  消費者法実務雑誌の「消費者法ニュース」(№218・2021/7)が届きました。「消費者法ニュース」のWebサイトはこちらなんですが、ブログ執筆時点では、7月号の発行の更新はされてないみたいですね(【追記】更新されました。№216のページ)。

 7月号の恒例は「消費者法白書」で、消費者法の各分野の昨年度の裁判例や動きなどを紹介するものです。

 私も長らく「消費者法白書」の「独占禁止法・景品表示法」の部分を担当してきており、今年も執筆しております。興味のある方はご覧ください。大きな図書館なら置いているところも多いかと思います。

 なお、今号の「特集」は、「特商法・書面交付義務の電子化に反対する」と「若者・未成年者の消費者被害への取組み」と、どちらもタイムリーな内容になっています。




2021年7月30日 (金)

新型コロナワクチンの副反応メモ(モデルナ)

 新型コロナについては、陽性判定者が先日から急増して、大阪もまた緊急事態宣言が出ることになり、8月は禁酒令の世界に逆戻りで残念です。

 先日(6月28日)に2回目のワクチン接種を終えました。モデルナ社のワクチン。非常勤講師に行っている神戸大学の職域接種に参加できました。ありがとうございました。

 ということで、第1回と第2回の接種後の状況をメモとして残しておきたいと思います。歳のせいか、大した副反応はなく、皆さんの参考になるかどうかは?ですね。私の聴く範囲では、特に2回目は、人によっては、発熱などの副反応が強く出ている方も多いようですが、どなたも数日すれば、復調されています。私としては、若干の副反応はあるにせよ、多くの皆さんにワクチンの接種を受けていただきたいと思います。大学の接種会場でもたくさんの若い学生さんたちが来られていましたよ。

 以下、私のメモです。今回は、法律とか、裁判とか、全然関係ございません。

第1回接種(6月30日 10:58)

 6月30日

11:47 第1回ワクチン接種終了後約1時間経過したが、異状なし。

15:05 4時間経過。異常なし。腕を肩の上まで挙げたときに接種部位の痛みをちょっとだけ感じる程度。

19:01 8時間経過。特に異常なし。接種部位が少し腫れてるかな?という程度。

 7月1日

9:43 接種部位の軽い痛みはちょっと強くなり、少し腫れてるかな。発熱、倦怠感などの全身症状などはない。

11:06 昨日とあまり変わらず。腕を動かしたときの接種部位付近の痛みが若干強くなったかなぁ、と接種部位が少し腫れ、熱を持っているようだが、特段の支障はなく、その他の全身症状などはなし。

17:28 30時間経過。変わりなし。

21:23  ワクチン接種の跡も触ると少し熱があるが、発赤はなく、もちろんモデルナアームにはなってない。

 7月2日

12:51 50時間経過。接種部位の痛みが少し残っている程度。

15:36 痛みもほとんど消えた。

16:46 接種部位の痛みもかなり少なくなり、他の症状は全くなし。

 7月3日

11:16 まる3日経過。接種部位を触ると、痛みというほどではない感じが残っているだけ。


第2回接種(7月28日 13:44)

 7月28日

14:56 痛みを含めて何もなし。

18:59 全く異常なし。

20:47 接種部位を触らない限りは痛みもなし。今のところは1回目より緩い感じ。

22:00 腕を上げると接種部位に違和感程度の痛みがあるくらい。測ってないが、熱もないと思う。

23:29 腕を上げた時の接種部位の軽い痛みだけ。発熱なし。今のところ前回以上に反応なし。

 7月29日

8:18 昨日より接種部位の痛みが強いが大したことなく、前回と同じ感じ。熱は37度2分、シャワー浴びた後だけど。

13:26 腕を上げた時の痛みは朝よりちょっと増えたか? (この後、体温測ると35度8分の平熱。)

13:46 腕を上げた時の接種部位の痛みは少し強くなった。第1回と同程度か。

17:24 腕を上げると接種部位が痛い程度。発熱もなし。

20:33 帰宅して体温測ると36.6度、平熱。接種部位の痛みは変化なし。

20:41 腕を上げた時の痛みは変化なし、大したことなし。平熱。1回目とほぼ一緒という感じ。

 7月30日

9:26 接種部位の腕の痛みもかなり軽くなった。他には特になし。

11:22 腕の接種部位の痛みもかなり消えてきた。平熱。

22:36 腕を上げるとまだ少し痛み(というか違和感)が残るが、明日には消えそう。

 

【追記】7月31日

11:22 腕を上げた時の痛みは少しだけ。接種部位を触ると少し腫れてる感じ。平熱。ここまで概ね前回通り。

2021年6月 4日 (金)

財産分野における消費者安全法の令和2年度運用状況(消費者庁)

 本日(6/4)、消費者庁から「令和2年度における消費者安全法(財産分野)の運用状況について」が公表されました。

→ 消費者庁公表資料


 消費者安全法の財産分野については、マンションの管理組合の「消費者」性の問題に絡めて、当ブログでも何度か書いています。
 例えば、

→ 「マンション管理組合と消費者安全法についてのメモ」 (2020/7/8)

→ 「消費生活センター、マンション管理組合など昨日記事の補足」 (2019/10/6)

などです。

 今回の公表資料は、この消費者安全法の財産分野の昨年の運用状況をまとめたものです。

 消費者「安全」法といっても、身体的被害に結びつくような製品安全や食品安全だけでなく、財産的被害についてもその対象となっています。そこのところの詳細は上に挙げた以前のブログ記事に書いていますので、興味のある方はクリックして読んでみてください。

 令和2年度は、消費者安全法に基づく注意喚起を単独で実施した事案として、化粧品や医薬部外品のアフィリエイト広告に関する事案、偽の通信販売サイトに関する事案、インターネット接続サービスの勧誘に関する事案などについて、15件の注意喚起が行われています。
ました。

 また、特定商取引法に基づく行政処分と併せて注意喚起を実施した事案は19件とかなり多くありました。

2021年6月 1日 (火)

「洗たくマグちゃん」の効果についての左巻健男先生の記事

 約1ヶ月前の4月27日に、「洗たくマグちゃん」の容器包装やwebサイトの表示について、消費者庁景品表示法違反の優良誤認表示であるとして措置命令を出したことに関連して、以下のようなブログ記事を書きました。

→ 「「洗たくマグちゃん」への措置命令に関連して「根拠資料」と「特許」について」(2021/5/2)

 この記事は、私は科学者ではありませんので、「マグちゃん」の効果の有無とは関係なく、景品表示法違反として措置命令が出される場合の「不実証広告制度」で要求される「根拠資料」のことと、「特許」として認められても特許申請内容の効果が本当にあるかどうかは無関係で特許庁のお墨付きではないですよ、ということを、法律家の立場で書いたものです。

 そして、今般、理科教育の大家であられる左巻健男先生がプレジデントオンラインで、この「マグちゃん」の効果について科学的な立場から詳細な記事を書かれました。
 「「実質的にはただの水洗い」洗たくマグちゃんは無意味だと言える"科学的な理由" 「アルカリで洗う」はウソだった」と、なかなか刺激的なタイトルです(リンクは末尾)。




 左巻健男先生は私も何回かお会いしていますが、ニセ科学問題に鋭く切り込んでおられる先生で、理科教育や一般向け科学啓発の本をたくさん書かれておられます。私も何冊か持っています。また、先生が編集出版されている雑誌「リカタン」に拙文を載せていただいたこともあり、それについては、当ブログ「「RikaTan」2018年4月号(ニセ科学特集)に寄稿しました。」(2018/2/24)に書いています。

今回書かれた記事は以下から読むことができます。同じ記事が、Yahoo!ニュースにも転載されていますので、是非ご一読ください。

→ プレジデントオンライン

→ Yahoo!ニュース

 私も家庭では洗濯担当ですが、子供がドロドロに汚したり、油まみれになっているとかではない、普通に生活して着替える程度の衣服の汚れなら、洗剤もほとんど要らないと思っていますので、洗剤メーカーのド派手な宣伝もどうかとは思っておるのですが(※個人の感想です※)。

2021年5月 2日 (日)

「洗たくマグちゃん」への措置命令に関連して「根拠資料」と「特許」について

 4月27日、株式会社宮本製作所(茨城県古河市)が販売する商品「洗たくマグちゃん」「ベビーマグちゃん」「ランドリーマグちゃん」について、その容器包装、webサイトの表示に関し、景品表示法に違反する不当表示(優良誤認)であるとして、消費者庁措置命令を出しました。

→ 消費者庁公表資料


 この商品は、洗剤を使わなくても洗たくができる、という宣伝でかなり人気の商品のようです。結構売れていたとすれば、今後、課徴金納付命令も高額になる可能性があります。(【追記】10月19日、消費者庁は3606万円の課徴金納付命令を出しました。)

 なお、宮本製作所は自社サイトにおいて、

弊社は、令和3年4月27日付、消費者庁より景品表示法第7条第1項の規定に基づく措置命令を受けました。このような事態に至り、お客様をはじめとする関係者の皆様に多大なご迷惑をおかけすることとなりましたことを、心よりお詫び申し上げます。
今回の措置命令を真摯に受け止め、再発防止に努めてまいりますとともに、対象商品の返品をご希望されるお客様につきましては、以下のとおり返金の対応をさせて頂きます。

として、措置命令内容を認め、消費者に対して返金対応を実施することを表明しています。

 本件の、表示内容としては、例えば、容器包装において、「ご家庭の水道水がアルカリイオンの水素水 に変身!洗剤を使わなくても大丈夫なお洗濯」、「部屋干しのイヤな臭 いをスッキリ解消!」、「菌の抑制」及び「除菌試験により99%以上 の抑制効果が確認されています。」などと、あたかも、この商品を使用して洗濯すれば、 商品の効果により、洗濯用洗剤を使用して洗濯と同程度に洗浄する効果、部屋干し臭の発生を防止する効果及び菌を99%以上除菌する効果が得られるかのように示す表示をしていたところ、消費者庁が、不実証広告制度に基づいて、宮本製作所に対し、期間を定めて、当該表示の根拠資料の提出を求めましたが、同社から提出された資料はいずれも、当該表示の裏付けとな る合理的な根拠を示すものであるとは認められない、とのことで優良誤認表示が認定されたものです(打消し表示に関する認定もされていますが、略)。

 報道などを見る限り(消費者庁は公開してませんので)、同社が裏付けとしている実験資料は、極めて小規模のもので、スタッフなどが行っているようです。不実証広告で求められる「当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料」というのは、それなりの程度が要求されていて、「不当景品類及び不当表示防止法第4条第2項の運用指針-不実証広告規制に関する指針」(平成15年10月28日 公取委・一部改正 平成28年4月1日 消費者庁)で、ガイドラインが示されており、裁判例でもこのガイドラインの内容が妥当である、とされています(オーシロ事件 東京高裁平成22年10月29日)。このガイドラインから見る限り、提出資料が上記のようなものだけであったとすれば、消費者庁が根拠とは認めなかったのも仕方ないかな、と思います。なお、消費者庁が決める提出期限というのは基本的に15日間ですので、広告や表示に見合った根拠資料は事前に用意しておかなければなりません(私は、顧問会社などには注意をしています。)。

 → 消費者庁「不実証広告規制」

 また、SNSなどで、この商品を支持する人たちの投稿を見ると、この商品が洗たく方法などの特許を取得しているのだから、効果があるはずだ、と主張される方も少なくありません。特許が取れているのだから効果があるだろう、というのは、よくある世間の誤解です。その特許の技術が本当に効果があるか、というのは、基本的に、特許庁は審査しません(「永久機関」のように明らかにできない物は別として、要件ではないから)。世の中には、効果のない特許は少なくないのです(もちろん、今回の商品の特許の技術に効果がないということを断ずるものではありません。)。

 本件とは別にいうと、特許を広告材料にして消費者に、良い商品だと思わせるというのは、古くからある広告手法です。私の子供の頃の新聞広告などには、よく「特許出願中」などの言葉を見ましたが、最近はあまり見なくなったような気がします。

 消費者として気をつけないといけないのは、上に書いた、「特許だからといって、本当に効果があるかどうかは別特許庁が保証するものではない)」というのと、「許だからといって、消費者(自分)の役にどう立つのか、考えよう特許であっても消費者の立場からは無関係なものも多い)」というのと、「本当にその特許の技術がその商品に使われているの?」というようなところです。「特許製品」というだけで、すごい!と思い込みがちですが、冷静に考えないといけません。

2021年4月 2日 (金)

消費税総額表示義務について

 4月1日から、消費税の内税表示、総額表示の義務化となった、というニュースはご承知かと思います。
 ただ、この表現は正確に言うと間違いで、消費税法で、総額表示が義務化されたのは、17年前の平成16年(2004年)4月からです(現63条)。したがって、今回、義務化されたというのは不正確ですし、今回の義務化が消費税増税の伏線である、などと現政権の陰謀論的な見方は正しくないと思います(もちろん、政府は消費税増税を望んでいると思いますが、それはそれ。)。

消費税法63条(価格の表示)

 事業者(略)は、不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等(略)を行う場合(略)において、あらかじめ課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の価格を表示するときは、当該資産又は役務に係る消費税額及び地方消費税額の合計額に相当する額を含めた価格を表示しなければならない

 では、なぜ今回、総額表示の義務が問題となっているかというと、消費税の税率が引き上げられた時に、事業者が値札の貼り替えなどの事務負担に考慮して、「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」の10条1項において、平成25年(2013年)10月から平成30年(2018年)9月まで、その後令和3年(今年)3月末日まで延長されましたが、猶予期間が設けられていました。もっとも、この猶予期間においても、無条件に外税表示が許されていたわけではなくて、「現に表示する価格が税込価格であると誤認されないための措置」(誤認防止措置)を講じることが要件になっていました。しかも、同法10条2項においては、この猶予期間の間であっても、できるだけ速やかに、総額表示するよう努めなければならないと規定していたものです。

 この猶予期間がいよいよ到来して、この4月から総額表示の例外が撤廃されたというわけです。

 この総額表示義務については、罰則などはありません。ただし、外税表示をわかりにくくして、消費者に対して、価格が安いと誤認させるような表示の仕方をすれば、景品表示法上の有利誤認に該当し、措置命令課徴金納付命令などの行政処分となる可能性はあります。
 小売店としては、総額表示への書き換え、貼り換えは面倒だし、それなりのコストがかかる話で大変だとは思いますが、上記の通り、これは以前からわかっていた話です。また、先日からの報道番組などを見ていると、小売商店の人がインタビューで「総額にすると、値上げしたような印象を消費者に与えて、売り上げが下がる」と話されているのを何度か見ました。店としての気持ちは良くわかりますが、もし、総額表示にしたために消費者が買い控えするとすれば、逆に言えば、消費者は、これまでの外税表示によって有利誤認させられていたことを実証したことになってしまいますね。
 総額表示の具体的な表記については、国税庁サイトにガイドラインがあります。

  → 「総額表示」の義務付け(国税庁)

 なお、総額表示義務は、全ての商品、役務について問題となりますが、特に、書籍の総額表示については、以前から出版業界は頭を痛めています。これは、出版物(著作物)については、独占禁止法上本来は禁止されている再販売価格拘束が例外的に許されていることから、出版物そのものに価格が記載(印刷)されていることが一般ですし、出版物は、出版社や書店に在庫がかなりの長期間置かれる性質の商品であることなど、消費税率の引き上げなどへの対応の難しさなど他の一般の商品等とは違う特殊な問題があるからですね。

2021年3月26日 (金)

新型コロナ検査キットの販売事業者5社に対する行政指導(消費者庁)

 消費者庁は、本日(3月26日)、新型コロナウイルスの検査キットの表示に関して、景品表示法違反の不当表示(優良誤認)に該当するおそれがあるとして、研究用抗原検査キットの販売事業者2社および抗体検査キットの販売事業者3社に対して、再発防止等の行政指導を行ったことを公表しました(行政指導は令和2年12月25日付)。
 また、FacebookやTwitterなどSNSを通じて一般消費者等への注意喚起を行いました。

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 正式の措置命令ではなくて、行政指導なので、事業者名などは公表されていません。

 → 消費者庁公表資料

 まず、研究用抗原検査キットの販売事業者2社についてです。
 ネット上の通信販売サイトなどで、「研究用」などとして流通している新型コロナウイルスの抗原検査キットについて、「厚生労働省承認済み【国内唯一】」、「厚労省令で定める医療機器届出番号 〇〇〇〇〇」、「ご注意ください!!唯一、認可され輸入が許されている商品です。」等の表示が行われています。
 こうした「研究用」として流通している新型コロナウイルスの抗原検査キットについては、厚生労働省が、「ドラッグストア、インターネット等を通じ、広告・販売されている研究用抗原検査キットは、薬機法(旧・薬事法)に基づく承認を受けたものではなく性能等が確認されたものではないこと、また、新型コロナウイルス感染症の罹患の有無を調べるために必要な検査の種類や検査結果の取扱いは各検査の特性・性能等に基づき医学的に判断する必要があることから、消費者の自己判断により、新型コロナウイルス感染症の罹患の有無を調べる目的で使用すべきではないこと」に留意すべきであるとの考え(令和3年2月25日厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部)が示されています。
 これを踏まえて、今回、消費者庁は、あたかも、当該抗原検査キット厚生労働省によって承認等され、当該事業者と同種若しくは類似の商品を供給している他の事業者のものよりも品質、性能が著しく優良であるかのように示す表示によって、一般消費者が新型コロナウイルスの研究用抗原検査キットの効果について著しく優良であると誤認し、ウイルスの感染予防について誤った対応をしてしまうことを防止する観点から、行政指導の対象となった事例の概要を公表したものです。

 また、抗体検査キットの販売事業者3社については、抗体検査が新型コロナウイルス感染によって産生される抗体の有無を判定する用途に用いられるものであって、使用することによって、現在、新型コロナウイルスに感染しているかどうかを判定できないにもかかわらず、抗体検査キットが、「このキットはIgM + IgGの複合検査により、早期、中期、後期の各期をカバーでき、各期の感染者を正確に発見できます。」や、「新型コロナウイルスに感染しており、現在感染活動期であると考えられます。IgG抗体を産生している可能性があります。」等の表示が行われていることについて、優良誤認の恐れがあるとしたものです。

 抗体検査抗原検査の違いについて、理解できていない人も多いでしょうし、コロナ禍で、感染の不安に乗じて、このような検査キットの販売は、購入した消費者の期待を裏切って損害を与えるだけでなく、検査結果が感染防止にはつながらず、かえって他の人たちへの感染のリスクを増やすかもしれないことから、このように消費者庁が行政指導を行ったことは評価できると思います。最近、大々的にテレビや電車内などでCMを行い、あちこちに検査所を拡大するなどしている民間PCR検査の事業者についても、その信頼度や検査主体などが広告での表示を見ても判然としないので、大変心配になります。

2021年3月14日 (日)

「大崎事件と私 アヤ子と祐美の40年」(鴨志田祐美 LABO刊)

 鴨志田祐美弁護士の書かれた「大崎事件と私 アヤ子と祐美の40年」を発行者のLABOさんからご恵贈いただいたので、早速読みました。大崎事件というのは、1979年に鹿児島県で男性が遺体となって発見され、その身内の数名が殺人、死体遺棄の犯人として逮捕、起訴され、有罪判決を受けて、服役したという事件で、服役した一人で中心人物とされた原口アヤ子さんが、服役後、えん罪であるとして再審の申立を重ねているものです(まだ続いてます。)。この事件の流れについては、本書の冒頭にある「大崎事件の概要」にわかりやすく書かれています。

 刑事裁判の専門家であれば、みな知っている再審事件である大崎事件です。しかし、再審手続とか、えん罪事件とかとなると、かえって、一般の方にはちょっと近寄りがたい印象があるかもしれません。全部で700ページくらいありますし。

 でも、読み始めると単に大崎事件の再審事件の記録というような固い話ではなく、鴨志田弁護士の半生記でもありますし、えん罪の判決がどのように作られ、それを再審手続で覆すことの大変さが平易な言葉で綴られています。

 優秀な厚労省官僚であったときに、虚偽公文書作成などで逮捕起訴され、後に無罪が確定した村木厚子さんが、この本の「推薦の辞」を書いておられ、これはAmazonのサイトで読むことができます。村木さんは、

「およそ700頁という本の分厚さに一瞬たじろいだものの、読み始めると一気に読み終えてしまった。ハラハラ、ドキドキ、そして泣いて、笑って、怒って。読み物としてとにかく面白いのだ。」、「頑なに再審の開始を阻もうとする検察や、再審に対する姿勢が裁判官によってまちまちの裁判所との闘いは、難しいゲームの攻略本のようにも読める。同時に、原口アヤ子と鴨志田祐美の「女の一代記」としても、この二人とともに闘う多くの強く心優しい人たちの人間ドラマとしても読める。」

と書かれていますが、私も全く同感です。

 一度、書店で、本書を手に取られて、最初の数頁の個所、つまり、「はしがき」(一部はAmazonに掲載されてます。)と「大崎事件の概要」を読んでもらうと興味を持たれる人も多いのではないかと思います。それに続く刑事裁判と再審に関する手続用語の基礎知識も一般の人向けにわかりやすく書かれています。はしがきの中で、鴨志田弁護士はこう書いています。

 「弁護士が自ら手がけている事件について書いたものなんて、きっと専門性の高い難解なものだろう、と思われるかもしれません。でも、どうか「食わず嫌い」にならずに読み始めてみてください。ここに書かれているのはすべて実話ですが、「ドラマ」とか「映画」とか「お芝居」と同じように楽しんでいただきたいと思います。」

 この本は、刑事裁判に関わる法律家(弁護士はもちろん、裁判官、検察官を含めてですが)はもちろんのこと、法律、裁判に興味をお持ちの一般の人、特に法律を学んでいる、あるいは、将来学ぼうとする若い人たちに是非読んでいただきたいですね。学生さんには刑事訴訟法の良い勉強にもなりますよ。

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