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2022年9月 6日 (火)

トロビカーナ「メロン テイスト」に対する措置命令(消費者庁)

 久しぶりのブログ更新です。

 本日(9月6日)、消費者庁キリンビバレッジ株式会社(東京都千代田区)に対し、同社の販売する果実ミックスジュース「トロピカーナ 100% まるごと果実感 メロンテイスト」に関する表示について、景品表示法に違反する不当表示(優良誤認表示)であるとして措置命令を行いました。

 → 消費者庁公表資料

 大手飲料会社の商品ですので、すでに報道もされてますが、一部の見出しでは「100%メロン」というような書き方がされています。しかし、これは不正確で、この商品について、「100%メロン」という表示はされていません。この件に限りませんが、メディアの見出しだけを見て脊髄反射してはいけません。

 消費者庁の資料を見ると、問題とされた表示は(別紙など包装のデザインは上記の消費者庁資料リンク先をご覧ください)、

  • 「Tropicana® メロンテイスト」
  • 注ぎ口に別紙の枠囲み⑴のイラストと共に、「厳選マスクメロン」
  • 「Tropicana® REAL FRUIT EXPERIENCE まるごと果実感」
  • 別紙の枠囲み⑵のイラスト
  • 「100% MELON TASTE」
  • 「900ml まるごと果実感 濃縮還元 メロンテイスト果汁100%」
  • 別紙の枠囲み⑶のイラストと共に、「厳選マスクメロン」
  • 「果汁でいい準備! 100%でHAPPY MORNING 眠っているカラダを目覚めさせ、スタートアップに必要なエネルギーを補給するのが『朝食』の大切な役目。だからこそ、必要なものをちゃんとしっかりと。100%ジュースならコップ1杯で簡単&おいしく、ヘルシーな朝食をサポートできます。」との記載と共に、別紙の枠囲み⑷のイラスト
  • 「100% メロンテイスト」
  • 別紙の枠囲み⑸のイラストと共に、「ぶどう、りんご、バナナ、メロンの4種をブレンド。メロンの芳醇な香りが口に広がる、贅沢な味わいのジュースです。」
  • 「厳選マスクメロン使用」との記載と共に、別紙の枠囲み⑹のイラスト
  • 別紙の枠囲み⑺のイラスト
  • 「Tropicana® REAL FRUIT EXPERIENCE まるごと果実感」との記載と共に、別紙の枠囲み⑻のイラスト
  • 別紙の枠囲み⑼のイラスト

というものであって、これらの表示が、あたかも、この商品の原材料の大部分がメロンの果汁であるかのように示す表示をしていたのだけれども、実際には、原材料の98パーセント程度はぶどう、りんご及びバナナの果汁を用いていて、メロンの果汁は2パーセント程度しか用いていないものであったということで、それらが全体として、優良誤認表示とされたものです。

 本件は、メロンテイスト、つまり、メロン風味という、よくある逃げ方をしていました。そこで大丈夫だとキリンビバレッジは思ったのかもしれませんが、包装のデザインを含めて、しかし、総合的に見ると、メロン果汁100%というように消費者には認識される、ということで、消費者庁優良誤認表示としたものです。

 トロピカーナは私もよく飲みますが、確かに、この表示の仕方はかなり問題だと思います。私も顧問会社などから広告表示などについて、事前に相談を受けるのですが、このような表示についての相談を受ければ、躊躇なく完全にアウトの判定をすると思います。キリンビバレッジの広告法務の対応がどうなっていたのかな、と思いますね。

 

2022年6月16日 (木)

「食べログ」東京地裁判決と公取委実態調査報告書

 ご承知の通り、「食べログ」評価に関して、本日、東京地裁の判決が出ました。

 焼肉チェーンを運営する会社が、「食べログ」の飲食店の評価点数を算出するシステム(アルゴリズム)を一方的に変更したため、売り上げが大幅に減ったとして、「食べログ」を運営する株式会社カカクコムに対して、損害賠償などを請求していたものです。

 判決文は今のところ公表されていませんので、内容は詳しくはわかりませんが、報道によれば、飲食店側は、上記の「食べログ」のシステム変更が、独占禁止法違反(「優越的地位濫用」、「差別的取扱」)であるとして、損害賠償(約6億4000万円)上記システムの使用差止を求めて、一昨年に提訴していました。この訴訟に関して、本日、東京地裁が判決を言い渡したものです。東京地裁判決は、損害賠償として3840万円の請求を認め、システム差止は認めませんでした。理由としては、優越的地位の濫用に該当し、独占禁止法に違反するとしたようです。(※今日の判決の中身については、判決文を読むことができれば、記事を追加するかもしれません。)

 実は、公正取引委員会は、2019年から、「食べログ」のような飲食店ポータルサイトについて実態調査を行って、2020年3月に「飲食店ポータルサイトに関する取引実態調査報告書」を公表しています。当時、このブログにも記事を書いています。

 →  公取委サイト「飲食店ポータルサイトに関する取引実態調査について」

 → 当ブログ「飲食店口コミサイトの取引実態調査(公正取引委員会)」(2020/3/22)

 この調査では、ポータルサイト事業者や飲食店、消費者にアンケートやヒアリングを実施したもので、内容については、報告書(本文で79頁あります。)あるいは報告書概要をお読みいただきたいのですが、今日の判決と関連する内容についてのみ、簡単にご紹介いたします。

 まず、報告書では、飲食店ポータルサイトの取引上の地位に関して、調査によれば、「飲食店ポータルサイトの中には、飲食店に対して取引上、優越的地位にあるといえる飲食店ポータルサイトが存在する可能性は高い。」(P29)としています。

 そして、今日の判決と密接に関係するのは、「3 飲食店ポータルサイトに掲載される情報について」(P42~)、その中でも、特に「(3)店舗の評価(評点)について」(P54~58)のところかと思います。

 そこを、無理矢理に要約しますと、以下のようになります。今日の東京地裁判決が、独占禁止法違反を認定するにあたり、どのように判断したのは興味深いところですね。

 一般的に店舗の評価が、飲食店の比較を容易にし、消費者の飲食店の選択に資するものであって、飲食店にとっても店舗の評価が高いことは消費者への訴求手段として大きな効果を有していると考えられる。
 一方、飲食店にとって、店舗の評価の水準で、閲覧者数や売上が左右されるなど、重要な競争手段となっていると考えられる。
 このような状況の中で、ポータルサイトが店舗の評価を落とすことが、直ちに独禁法上問題にはならないが、例えば、市場において有力な地位を占めるポータルサイトが、合理的な理由なく、恣意的にアルゴリズムを設定・運用することなどにより、特定の飲食店の店舗の評価を落とすなど、他の飲食店と異なる取扱いをする場合で、それによって、特定の飲食店が競争上著しく不利になり、その飲食店の競争機能に直接かつ重大な影響を及ぼし、飲食店間の公正な競争秩序に悪影響を及ぼす場合等には、独禁法上問題(差別取扱い)となるおそれがある。
 また、飲食店に対して優越的地位にあるポータルサイトが、正当な理由なく、通常のアルゴリズムの設定・運用を超えて、特定の飲食店にのみ適用されるようなアルゴリズムを恣意的に設定・運用等し、その飲食店の店舗の評価を落とすことにより、その飲食店に対し、例えば、自らに都合のよい料金プランに変更させるなど、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合、当該行為は独占禁止法上問題(優越的地位の濫用)となるおそれがある。
 店舗の評価の決定について、このような恣意的な設定・運用を行う場合には、独禁法上問題となるおそれがあるため、このような設定・運用を行わないことが公正かつ自由な競争環境を確保する観点から必要である。

 店舗の評価を決定する際の重要な要素が明らかでないなど、その取扱いが著しく不透明な状況で運用を行う場合には、飲食店に対して優越的地位にあるポータルサイトからみれば、自らにとって都合のよい契約プランに変更させるなど、自己の販売施策に従わせやすくなるという効果が生じやすくなると考えられる。加えて、飲食店からみれば、ポータルサイトにとって都合のよい契約内容に変更しなければ店舗の評価を落とされるかもしれないとの懸念を生じさせる。このような不透明な状況を改善させることは、かかる効果や懸念を減少させることになると考えられるため、不透明な状況を改善することが公正かつ自由な競争環境を確保する観点から望ましい。
 しかし、実際に店舗の評価を決めるルール等は、ポータルサイトの特徴を直接的に表す重要な競争手段である中で、特定のポータルサイトが全てを公開することは,そのポータルサイトの競争事業者に対する競争力を弱めることとなる可能性がある。
 このため、ポータルサイトは、店舗の評価に関係する重要な要素について、飲食店及び消費者に対して、可能な限り明らかにするなど、店舗の評価の取扱いについて、透明性を確保することが公正かつ自由な競争環境を確保する観点から望ましい。
 また、ポータルサイトは、その透明性を確保することに加え、店舗の評価の取扱いについて、飲食店間で公平に扱われるなどの公正さを確保するための手続・プロセスの整備も必要となる。例えば、第三者がチェックするなどの手続きや体制を構築するなどによって公正性を確保することが公正かつ自由な競争環境を確保する観点から望ましい。


 

 

2022年6月 9日 (木)

スシロー「おとり広告」で措置命令(景表法)

 本日、消費者庁は、株式会社あきんどスシロー(大阪府吹田市)が同社の店舗「スシロー」において提供される「新物!濃厚うに包み」、「とやま鮨し人考案 新物うに 鮨し人流3種盛り」、「冬の味覚!豪華かにづくし」の表示について、それぞれ、景品表示法に違反する行為(同法5条3号に基づく「おとり広告告示」に該当)するとして措置命令を出しました。

→ 消費者庁公表資料


 景品表示法違反の不当表示でよくあるのは、優良誤認表示(同法5条1号)や有利誤認表示(同条2号)ですが、今回は、3号の告示で指定された表示の内、「おとり広告」に該当するとされたものです。
この告示(「おとり広告に関する表示」平成5年公正取引委員会告示第17号)は、次のような表示を禁止しています。

  1.  取引の申出に係る商品又は役務について、取引を行うための準備がなされていない場合その他実際には取引に応じることができない場合のその商品又は役務についての表示
  2.  取引の申出に係る商品又は役務の供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品又は役務についての表示
  3.  取引の申出に係る商品又は役務の供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量が限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品又は役務についての表示
  4.  取引の申出に係る商品又は役務について、合理的理由がないのに取引の成立を妨げる行為が行われる場合その他実際には取引する意思がない場合のその商品又は役務についての表示

 今回は、スシロー店舗において、キャンペーン期間に、上記の3種の商品を含むキャンペーン対象商品を提供すると、自社のWebサイトやTVCMで宣伝していたのですが、途中で商品が足りなくなる可能性があることが判明したため店舗で提供しない期間を決めたり、そもそも提供の準備をしなかった日があったりなどしたものです。



 そして、これらの行為が、上記告示の1及び4に該当するとして、措置命令が出されました。宣伝していたキャンペーン中に、提供できない期間が生じたのに、WebサイトやTVCMではそのことを明示せずに流しつづけていたのだろうと思われます。

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2019年12月23日 (月)

口コミ代行業者に関する記事にコメント載りました。

 ネットニュースのJ-CASTニュースの12月22日の記事「口コミ代行が横行?「1件6000円~」も 弁護士が指摘する問題点」にコメントが掲載されました(一番最後のところです。)。

 ご興味のある方は是非お読みいただきたいのですが、私のコメント関連のところをちょっと補足したいと思います。

 景品表示法に関して、「処分対象は依頼側となる可能性が高く」というのは、景品表示法に基づく措置命令課徴金納付命令のような正式な法的処分については、その対象となる事業者は、「自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項」の表示をした者となっていますので、広告会社や広告媒体者(新聞、雑誌、テレビなど)は対象とならず、「依頼側」(=広告主)に対する処分に限られることになるからです。ただし、広告会社などにも、正式な法的処分ではありませんが、違反行為が起こらないように必要な措置を採るように消費者庁が「要請」を行うようなことは考えられます。例としては、2010年末のおせちで問題になった、いわゆる「スカスカおせち事件」では、消費者庁は、2011年2月に、おせちを販売していた会社に措置命令を出すと同時に、そのおせち商品を掲載していたグルーポンに対して、必要な措置(二重価格表示に関して)を要請したことがあります。

 → 「バードカフェおせち事件に関する措置命令及び要請(景品表示法・消費者庁)」 (2011/2/22)

 ただ、この要請は、法的処分ではなく、法的な拘束力があるわけでもありません。不当表示に関係した広告会社や広告媒体者については、上記の通り、景品表示法の行政処分の対象にはなりませんので、何らかの立法対応が必要ではないかと思います。なお、もちろん、詐欺的な宣伝に荷担したような場合は、詐欺や不法行為ということで、広告会社などに法的責任が追及される可能性はあります。

 また、記事にある「消費者庁の景表法ガイドライン」というのは、「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」(PDF)のことです。該当個所は、これの4~5頁ですね。

 最後に、不正競争防止法(品質等誤認惹起行為)の判決(ライバル業者からの損害賠償請求訴訟)の紹介がありますが、これについては、当ブログの「自社開設を隠した口コミサイトの操作が誤認惹起行為とされた判決(不競法)」(2019/4/19)で取り上げています。

2019年10月16日 (水)

唐揚げ専門店による産地不当表示(景表法)

消費者庁は、本日、株式会社プラスワン(神戸市兵庫区)に対し、同社が運営する「からあげ専門店こがね」の店舗において、鶏の「もも」と称する部位を使用した唐揚げ及び当該唐揚げを含む商品に係る表示について、景品表示法に違反する不当表示(優良誤認)に該当するとして、措置命令を行っています。消費者庁公正取引委員会(公正取引委員会事務総局近畿中国四国事務所)の調査の結果を踏まえたものです。

 → 公正取引委員会報道発表資料

 店舗の看板又は軒先テントの表示に関するもので、例えば、塚本店の看板において、「からあげ専門店 こがね」及び「国産若鶏使用 絶品あげたて」と表示するなどして、あたかも、対象商品には、国産の鶏もも肉を使用しているかのように示す表示をしていたものですが、実際には、全部~一部(3割程度)、ブラジル産の鶏もも肉を使用していたというものです。

 景品表示法違反として消費者庁措置命令を受けたものですが、このような食肉の原産地偽装は、不正競争防止法の対象(誤認惹起行為。同法2条1項20号。)ともなります。景品表示法違反の不当表示行為自体には刑罰はありませんが、不正競争防止法違反行為は刑罰の対象です。

 これまでにも、今回の件と同様に、ブラジル産輸入鶏肉を国産と偽って自治体に対して学校給食用に販売したケースで、不正競争防止法違反で有罪判決を受けたものは複数あります。外国産の鶏や豚を国産と偽ったり、鶏や豚などを混ぜて製造したミンチ肉を牛100%と表示したりしたミートホープ(北海道)事件では、社長に懲役4年の実刑判決が出ています。

 今回の件は店舗での表示であり、学校給食用に偽装し大量に販売するようなケースとは、規模や悪質性などの状況が異なるため、こういった刑事事件に発展するのかどうかはわかりませんが、報道によれば故意にやっていたようですので、形式的には不正競争防止法違反罪に該当するのではないかと思われます。

2019年5月24日 (金)

日本マクドナルドに対する課徴金納付命令(景品表示法)

 本日は、消費者庁景品表示法違反事案に対する課徴金納付命令を2件出しています。

 1件は、一昨年(2017年)12月に措置命令が出されていた株式会社e-chanceのカーケア用品の不当表示(優良誤認表示)に関する課徴金納付命令(2845万円、消費者庁公表資料〔PDF〕)です。


 そして、もう1件は、日本マクドナルドに対するもので、昨年(2018年)7月に措置命令が出されていた事案に関する課徴金納付命令です。課徴金の金額は、2171万円。全国の大規模なチェーン店なのに金額がこれくらいにとどまっているのは、対象の不当表示をしていた期間が約1ヶ月と短かく、直ちに商品の販売もやめたからですね。課徴金は対象商品の売上額の3%が基準になります。

 → 消費者庁公表資料 (PDF)

 本件は、ブロック肉ではなく、成形肉を使用していたのにもかかわらず、「ローストビーフ」と表示していたことが問題となっています。なお、措置命令の際にも、この事案について当ブログで取り上げておりますので、詳しくはそちらをご覧下さい。

 → 「マクドナルドの「ローストビーフバーガー」に措置命令(消費者庁)」 (2018/7/25)

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2019年4月16日 (火)

焼き肉「黒毛和牛」の不当表示など(景品表示法)

 昨日(4/15)、消費者庁から流通大手イオンの子会社であるイオンライフ株式会社(千葉県美浜区)に対し、197万円の課徴金納付命令が出されました。同社が提供する葬儀サービス「イオンのお葬式」の表示について、不当表示(有利誤認)であるとされたもので、この件については、2017年12月に措置命令が出されていたものです。

 → 消費者庁公表資料 (PDF)

 これは、葬儀の追加サービスの追加料金が不要とした表示が問題となったものですが、ほぼ同様の葬儀サービスの不当表示事案については、別の会社に対して、昨年末にも措置命令が出されており、そちらは当ブログでも紹介しています。

 → 「「小さなお葬式」の料金表示についての措置命令(消費者庁)」 (2018/12/22)


 
さて、本日、消費者庁は、株式会社ロイヤルダイニング(東京都国分寺市)に対し、同社が運営する飲食店「焼肉レストランROINS」2店舗において出される「タン」、「ハラミ」、「シマチョウ」と称する牛肉の部位を使用した料理に係る表示について、景品表示法に違反する不当表示(優良誤認)に該当するとして、措置命令を行っています。

 → 消費者庁公表資料 (PDF)

 これは、自社webサイトにおいて、「沖縄県産の食材と日本全国選りすぐりの黒毛和牛専門店」、「『心のこもったお料理を』をモットーに 料理長が厳選した黒毛和牛のみを使用した、ROINS自慢の新鮮でクオリティの高い料理をお楽しみください。」、「【厚切りの黒毛和牛を使用した上タン塩】お客様が必ず驚く当店の上タン塩は、黒毛和牛の舌を丸ごと一本使用仕入れております。」などと記載するなどして、あたかも、対象の料理には、黒毛和牛の部位を使用しているかのように示す表示をしていましたが、実際には、黒毛和牛ではなく、外国産牛のものを使用していた、というものです。

 蛇足ですが、この行為は、前回記事で触れました不正競争防止法違反行為(品質(原産地等)誤認惹起行為)でもありますね。

2019年3月29日 (金)

酵素食品の痩身効果の不当表示など(景品表示法)

 年度末押し詰まった3月下旬になって、ばたばたと、消費者庁から景品表示法措置命令課徴金納付命令が連発されています(苦笑)

 本日も措置命令2件、課徴金納付命令1件が出ました。

 課徴金納付命令は昨年(2018年)3月にジュピターショップチャンネル社に出された措置命令に関するもので、テレビショッピングの番組で提供商品(テレビとずわいがに)の価格について、不当な二重価格表示(有利誤認)を行っていたという事案に対するもので、本日、同社に対して、合計1534万円課徴金の納付が命ぜられました。

 → 消費者庁公表資料 (PDF)


 措置命令は2件で、1つは、株式会社アルトルイズム(福岡市中央区)が販売する食品「黒フサ習慣 ブラックマックスS」の、あたかも、この商品を摂取することで、白髪が艶のある黒髪となる効果が得られるかのように自社webサイトにおける表示をしていたことが、景品表示法に違反する不当表示(優良誤認)とされたものです(不実証広告制度による)。

 本件では、「体験談は個人の感想で、実感を保証するものではありません。」と記載や、「1.艶のある深い黒さに※1」及び「2.フサフサボリュームも※2」との表示について、「※1:サプリメントの粒の色のことです。」及び「※2:ボリュームのある内容量のことです。」との記載(文字と背景との区別が付きにくくかったり、小さな文字での記載だったりした)がありましたが、いずれも一般消費者が表示から受ける本件商品の効果に関する認識を打ち消すものではない、とされました。

 → 消費者庁公表資料 (PDF)


 もう1件の措置命令は、酵素等の成分の作用による痩身効果を標ぼうする食品の販売事販売事業者5社が、折込チラシや自社webサイトなどで行った不当表示(優良誤認)に対するものです。

 5社は、ジェイフロンティア株式会社(東京都渋谷区「酵水素328選生サプリメント」)、株式会社ビーボ(東京都港区、商品「ベルタ酵素ドリンク」)、株式会社ユニヴァ・フュージョン(東京都港区、商品「コンブチャクレンズ」)、株式会社ジプソフィラ(東京都新宿区、商品「生酵素」)、株式会社モイスト(東京都江東区、商品「雑穀麹の生酵素」)です。

 たとえば、「・『まだまだ間に合います!酵水素328選でダイエットに成功した人続々と!こんな酵素エキス 見たこと無い!』と題し、『BEFORE』と付記された肥満気味の腹部を露出した人物の写真及び『なかなか落ちなかった脇腹の贅肉・・・』と付記された脇腹の肉を両手でつまんだ写真及び左手でガッツポーズを作り、右手でズボンのウエストを引っ張っている同人の写真と共に、『たるみ腹がスッキリしたから体型だけじゃなくて見た目も若く!』及び『約2カ月で52.7kgから45.4kgへ -7.3kg ●● ● ●さん(57歳)』と記載するなど記載して、あたかも、商品を摂取するだけで、商品に含まれる成分の作用により、容易に痩身効果が得られるかのように示す表示をしていましたが、これも不実証広告制度により、消費者庁が、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、5社から資料が提出されたが、いずれも、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められないものであった、というものです。

 → 消費者庁公表資料 (PDF)

 なお、こういった「酵素食品」の広告に対する消費者庁の措置命令は、昨年7月、10月、今年1月にも出されています。ご参考まで。

→ 「「太る」サプリについての優良誤認表示(消費者庁)」 (2018/7/26)

→ 「酵素飲料の新聞広告に対する措置命令・課徴金納付命令(消費者庁)」 (2018/10/30)

→ 「酵素健康食品のダイエット効果の不当表示(消費者庁)」 (2019/1/18)

【追記】(3/29)
 上記のうち、7月の「太る」サプリについては、記事中では書いてませんが、表示の中に「 『痩せ菌ブロック酵素』」、「太るためにいちばん大切なのは『食事』です。そこで『ファティーボ』は栄養の効率的な消化吸収を目指し、5種の酵素と3種の麹菌が作る生酵素を厳選しました。」などと書かれていて、これも酵素の効果を標榜する表示でした。

2019年3月28日 (木)

東京都の健康食品表示調査結果と消費者庁の痩身等の表示に対する措置命令

 東京都が、3月26日付で、平成30年度健康食品試買調査結果を公表しています。健康食品による健康被害を未然に防止するため、東京都が、法令違反(食品表示法、食品衛生法、健康増進法、医薬品医療機器等法、景品表示法、特定商取引法の各広告・表示規制)の可能性が高いと思われる健康食品を販売店やインターネット通信販売などで購入し、調査を行った結果のとりまとめです。

 東京都が、3月26日付で、平成30年度健康食品試買調査結果を公表しています。健康食品による健康被害を未然に防止するため、東京都が、法令違反(食品表示法、食品衛生法、健康増進法、医薬品医療機器等法、景品表示法、特定商取引法の各広告・表示規制)の可能性が高いと思われる健康食品を販売店やインターネット通信販売などで購入し、調査を行った結果のとりまとめです。

 → 「健康食品の不適正な表示・広告にご注意!」(東京都)

 → 「平成30年度健康食品試買調査結果(平成31年3月26日現在)」 (PDF)

  この調査の結果、販売店で購入した製品では、44品目中29品目(65%)、インターネット等の通信販売で購入した製品では、86品目中79品目(91%)に不適正な表示・広告がみられました。

 また、9製品には、医薬品成分が含まれていたとのことです。


 そして、本日も、健康食品等を販売する業者に対して、消費者庁措置命令を出しています。

 消費者庁は、株式会社Growas(大阪市淀川区)に対して、同社の販売する「アルバニアSPホワイトニングクリーム」という商品(①)、「クレンズスプラッシュ」という食品(②)、「バブリアボディ」という商品(③)、「ノンファットタイム」という食品(④)、「ウルトラシックス」というシャツ(⑤)について、景品表示法に違反する不当表示(優良誤認、有利誤認)に該当するとして措置命令を行っています。

 まず、優良誤認表示に関しては、同社は、自社webサイトにおいて、あたかも、①については、商品を使用するだけで短期間に容易にシミを解消、軽減し、肌を白くするかのような表示を、②~③については、商品を使用、または、摂取するだけで容易に著しい痩身効果があるかのような表示を、⑤については、痩身のほか、著しい筋肉の増強効果があるかのような表示を、それぞれ行っていたものです。

 これらについて、消費者庁景品表示法に基づいて、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的案資料の提出を求めましたが、期間内に資料の提出はなかったため、優良誤認表示と認定されたものです(不実証広告)。

 なお、一部の商品については、「※使用感の感想です。」「※効果には個人差があります。」との記載がなされていたようですが、消費者庁は、これらは、上記の表示から消費者が受ける認識を打ち消すものではない、としています。

 次に、有利誤認表示に関しては、それぞれの商品について、自社webサイトにおいて、通常販売価格やメーカー希望小売価格などとした比較対照価格を記載して、それよりも実際の販売価格が安いかのように表示していましたが、実際には、そのような比較対照価格は存在しなかった、というものです。不当な二重価格表示の類型ですね。

 

2019年3月15日 (金)

シュークリームの不当表示(原材料の産地)

 先日、静岡県措置命令を出したという記事を書いたばかりですが、その当日(3/13)、大阪府不当表示に対する措置命令を出していました。

 景品表示法の改正により、平成26年12月から都道府県による措置命令が出せるようになって、4年を経過しましたが、本年1月末現在で都道府県による措置命令は、わずかに14件です。大阪府は、これでようやく3件目(3件とも食品ですね。)のはずですが、それでも多いほうで、ほとんどの都道府県では、まだ1回も措置命令が出ておらず(宮城、神奈川、愛知など大都市を抱えているところを含む)、出したところも、東京を含めて1回だけのところがほとんどです。一番多いのは、静岡で、先日のを含めて4件となっています。

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 今回の事案は、大阪府が、株式会社ヤムヤムクリエイツ(大阪府東大阪市)に対し、同社が販売する「プチリッチシュー」、「焦がしシュークリーム」の表示について、不当表示(優良誤認)に該当するとして、措置命令を行ったものです。

 → 大阪府報道発表資料

 これは、同社が運営する菓子販売店「Baby Magic」、「BAKED MAGIC」およびという「楽天市場」に出店している「焦がしシュークリーム専門店 ベイクドマジック/Baked Magicにおいて「プチリッチシュー」、「焦がしシュークリーム」という商品を販売していたが、例えば、商品の持ち帰り箱やwebサイトにおいて、「食べて幸せな笑顔になってもらうため、安心安全素材を徹底的に厳選しました。材料には、新鮮な卵に北海道産生クリーム、北海道産小麦をたっぷり使用し、熟練した職人技術により、従来のプチシューのイメージを大幅に覆す、焼きたてサクサク食感の風味豊かなプチリッチシューが完成しました。」と記載したり、、「こだわり厳選した素材を使用 シュー生地は国産の小麦粉を使用し、パイ生地を合わせたオリジナルブレンド」と記載し、あたかもの材料に国産の小麦粉を使用するかのように表示して、あたかも菓子の材料に北海道産の小麦を多量に使用するかのように表示していました。   

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 しかし、実際には、材料として使用された小麦粉は、アメリカ産及びカナダ産の小麦を原料とする小麦粉とアメリカ産の小麦を原料の大半とする小麦粉の2種類であり、国産小麦(北海道産には限定されない)はアメリカ産小麦を原料の大半とする小麦粉のみに一部ブレンドされているに過ぎず、また、国産小麦も北海道産に限定されたものではなかったというものです。

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