ドライヤーの広告に関する差止訴訟(ダイソンvsパナソニック)
先日(6月9日)、電気機器メーカーのダイソン(シンガポール)が、パナソニックのヘアドライヤーの広告が違法であるとして、東京地方裁判所に、広告の差止等を請求する訴訟を提起したと公表したことが報じられています。ダイソンというとサイクロン方式の掃除機が有名ですが、ドライヤーも製造販売していて、パナソニックとはドライヤーに関しても競業関係の事業者になります。
報道によると、問題とされているのは、パナソニックのドライヤーの広告で、除菌・消臭効果などがあるイオンを放出する技術「ナノイー」が髪の潤いや保護に与える影響に関する表示が不正確で、公正な競争を阻害するとのことで、「髪へのうるおい、1.9倍」、「枝毛の発生率を低減」などの表現が消費者に誤解を与えるとして、不正競争防止法違反で訴えを提起したようです。
不正競争防止法は、コピー商品や営業秘密漏洩など、いろいろな不正競争行為を禁止していて、競争事業者は、そのような行為を差し止めたり、損害賠償を請求することができます(今回は報道によれば、損害賠償請求はしていないようですが。)。
この不正競争防止法上の差止請求権等を行使できるのは、「不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者」(同法3条)とされていて、消費者や消費者団体が行使することはできません。もちろん、不正競争防止法を根拠とせず、当該表示行為が景品表示法違反であるならば、適格消費者団体の差止請求はできますし、民法上の不法行為に該当して消費者が損害を受けておれば、民法709条に基づく損害賠償請求は可能です。
なお、違反については、場合によっては、刑事罰の対象ともなります。
今回の事案では、不正競争行為の内、品質等誤認惹起行為(同法2条1項20号)に該当するとしていると思われます(条文は下記参照)。食肉などの原産地偽装事件の刑事事件などの時に良く使われていますね。民事訴訟の公表判決はそんなに数はありませんが、氷見うどん事件などが有名です。なお、この条文の「20号」という番号については、改正により、不正競争行為が追加されていっており(特に営業秘密関連)、その都度、番号がずれています。以前の事件の資料とか論文とかをご覧になるときは、当時の番号で書かれていますので、検索や引用の際には注意が必要です。前記の氷見うどん事件のときは、「13号」だったと思います。
【不正競争防止法2条1項20号】
「商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為」
ダイソンのプレスリリース記事が見つかりました。
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