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2022年6月の記事

2022年6月16日 (木)

「食べログ」東京地裁判決と公取委実態調査報告書

 ご承知の通り、「食べログ」評価に関して、本日、東京地裁の判決が出ました。

 焼肉チェーンを運営する会社が、「食べログ」の飲食店の評価点数を算出するシステム(アルゴリズム)を一方的に変更したため、売り上げが大幅に減ったとして、「食べログ」を運営する株式会社カカクコムに対して、損害賠償などを請求していたものです。

 判決文は今のところ公表されていませんので、内容は詳しくはわかりませんが、報道によれば、飲食店側は、上記の「食べログ」のシステム変更が、独占禁止法違反(「優越的地位濫用」、「差別的取扱」)であるとして、損害賠償(約6億4000万円)上記システムの使用差止を求めて、一昨年に提訴していました。この訴訟に関して、本日、東京地裁が判決を言い渡したものです。東京地裁判決は、損害賠償として3840万円の請求を認め、システム差止は認めませんでした。理由としては、優越的地位の濫用に該当し、独占禁止法に違反するとしたようです。(※今日の判決の中身については、判決文を読むことができれば、記事を追加するかもしれません。)

 実は、公正取引委員会は、2019年から、「食べログ」のような飲食店ポータルサイトについて実態調査を行って、2020年3月に「飲食店ポータルサイトに関する取引実態調査報告書」を公表しています。当時、このブログにも記事を書いています。

 →  公取委サイト「飲食店ポータルサイトに関する取引実態調査について」

 → 当ブログ「飲食店口コミサイトの取引実態調査(公正取引委員会)」(2020/3/22)

 この調査では、ポータルサイト事業者や飲食店、消費者にアンケートやヒアリングを実施したもので、内容については、報告書(本文で79頁あります。)あるいは報告書概要をお読みいただきたいのですが、今日の判決と関連する内容についてのみ、簡単にご紹介いたします。

 まず、報告書では、飲食店ポータルサイトの取引上の地位に関して、調査によれば、「飲食店ポータルサイトの中には、飲食店に対して取引上、優越的地位にあるといえる飲食店ポータルサイトが存在する可能性は高い。」(P29)としています。

 そして、今日の判決と密接に関係するのは、「3 飲食店ポータルサイトに掲載される情報について」(P42~)、その中でも、特に「(3)店舗の評価(評点)について」(P54~58)のところかと思います。

 そこを、無理矢理に要約しますと、以下のようになります。今日の東京地裁判決が、独占禁止法違反を認定するにあたり、どのように判断したのは興味深いところですね。

 一般的に店舗の評価が、飲食店の比較を容易にし、消費者の飲食店の選択に資するものであって、飲食店にとっても店舗の評価が高いことは消費者への訴求手段として大きな効果を有していると考えられる。
 一方、飲食店にとって、店舗の評価の水準で、閲覧者数や売上が左右されるなど、重要な競争手段となっていると考えられる。
 このような状況の中で、ポータルサイトが店舗の評価を落とすことが、直ちに独禁法上問題にはならないが、例えば、市場において有力な地位を占めるポータルサイトが、合理的な理由なく、恣意的にアルゴリズムを設定・運用することなどにより、特定の飲食店の店舗の評価を落とすなど、他の飲食店と異なる取扱いをする場合で、それによって、特定の飲食店が競争上著しく不利になり、その飲食店の競争機能に直接かつ重大な影響を及ぼし、飲食店間の公正な競争秩序に悪影響を及ぼす場合等には、独禁法上問題(差別取扱い)となるおそれがある。
 また、飲食店に対して優越的地位にあるポータルサイトが、正当な理由なく、通常のアルゴリズムの設定・運用を超えて、特定の飲食店にのみ適用されるようなアルゴリズムを恣意的に設定・運用等し、その飲食店の店舗の評価を落とすことにより、その飲食店に対し、例えば、自らに都合のよい料金プランに変更させるなど、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合、当該行為は独占禁止法上問題(優越的地位の濫用)となるおそれがある。
 店舗の評価の決定について、このような恣意的な設定・運用を行う場合には、独禁法上問題となるおそれがあるため、このような設定・運用を行わないことが公正かつ自由な競争環境を確保する観点から必要である。

 店舗の評価を決定する際の重要な要素が明らかでないなど、その取扱いが著しく不透明な状況で運用を行う場合には、飲食店に対して優越的地位にあるポータルサイトからみれば、自らにとって都合のよい契約プランに変更させるなど、自己の販売施策に従わせやすくなるという効果が生じやすくなると考えられる。加えて、飲食店からみれば、ポータルサイトにとって都合のよい契約内容に変更しなければ店舗の評価を落とされるかもしれないとの懸念を生じさせる。このような不透明な状況を改善させることは、かかる効果や懸念を減少させることになると考えられるため、不透明な状況を改善することが公正かつ自由な競争環境を確保する観点から望ましい。
 しかし、実際に店舗の評価を決めるルール等は、ポータルサイトの特徴を直接的に表す重要な競争手段である中で、特定のポータルサイトが全てを公開することは,そのポータルサイトの競争事業者に対する競争力を弱めることとなる可能性がある。
 このため、ポータルサイトは、店舗の評価に関係する重要な要素について、飲食店及び消費者に対して、可能な限り明らかにするなど、店舗の評価の取扱いについて、透明性を確保することが公正かつ自由な競争環境を確保する観点から望ましい。
 また、ポータルサイトは、その透明性を確保することに加え、店舗の評価の取扱いについて、飲食店間で公平に扱われるなどの公正さを確保するための手続・プロセスの整備も必要となる。例えば、第三者がチェックするなどの手続きや体制を構築するなどによって公正性を確保することが公正かつ自由な競争環境を確保する観点から望ましい。


 

 

2022年6月12日 (日)

ドライヤーの広告に関する差止訴訟(ダイソンvsパナソニック)

 先日(6月9日)、電気機器メーカーのダイソン(シンガポール)が、パナソニックのヘアドライヤーの広告が違法であるとして、東京地方裁判所に、広告の差止等を請求する訴訟を提起したと公表したことが報じられています。ダイソンというとサイクロン方式の掃除機が有名ですが、ドライヤーも製造販売していて、パナソニックとはドライヤーに関しても競業関係の事業者になります。

 報道によると、問題とされているのは、パナソニックのドライヤーの広告で、除菌・消臭効果などがあるイオンを放出する技術「ナノイー」が髪の潤いや保護に与える影響に関する表示が不正確で、公正な競争を阻害するとのことで、「髪へのうるおい、1.9倍」、「枝毛の発生率を低減」などの表現が消費者に誤解を与えるとして、不正競争防止法違反で訴えを提起したようです。

 不正競争防止法は、コピー商品や営業秘密漏洩など、いろいろな不正競争行為を禁止していて、競争事業者は、そのような行為を差し止めたり、損害賠償を請求することができます(今回は報道によれば、損害賠償請求はしていないようですが。)。
 この不正競争防止法上の差止請求権等を行使できるのは、「不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者」(同法3条)とされていて、消費者消費者団体が行使することはできません。もちろん、不正競争防止法を根拠とせず、当該表示行為が景品表示法違反であるならば、適格消費者団体差止請求はできますし、民法上の不法行為に該当して消費者が損害を受けておれば、民法709条に基づく損害賠償請求は可能です。
 なお、違反については、場合によっては、刑事罰の対象ともなります。

 今回の事案では、不正競争行為の内、品質等誤認惹起行為(同法2条1項20号)に該当するとしていると思われます(条文は下記参照)。食肉などの原産地偽装事件の刑事事件などの時に良く使われていますね。民事訴訟の公表判決はそんなに数はありませんが、氷見うどん事件などが有名です。なお、この条文の「20号」という番号については、改正により、不正競争行為が追加されていっており(特に営業秘密関連)、その都度、番号がずれています。以前の事件の資料とか論文とかをご覧になるときは、当時の番号で書かれていますので、検索や引用の際には注意が必要です。前記の氷見うどん事件のときは、「13号」だったと思います。

【不正競争防止法2条1項20号】
商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為」

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2022年6月 9日 (木)

スシロー「おとり広告」で措置命令(景表法)

 本日、消費者庁は、株式会社あきんどスシロー(大阪府吹田市)が同社の店舗「スシロー」において提供される「新物!濃厚うに包み」、「とやま鮨し人考案 新物うに 鮨し人流3種盛り」、「冬の味覚!豪華かにづくし」の表示について、それぞれ、景品表示法に違反する行為(同法5条3号に基づく「おとり広告告示」に該当)するとして措置命令を出しました。

→ 消費者庁公表資料


 景品表示法違反の不当表示でよくあるのは、優良誤認表示(同法5条1号)や有利誤認表示(同条2号)ですが、今回は、3号の告示で指定された表示の内、「おとり広告」に該当するとされたものです。
この告示(「おとり広告に関する表示」平成5年公正取引委員会告示第17号)は、次のような表示を禁止しています。

  1.  取引の申出に係る商品又は役務について、取引を行うための準備がなされていない場合その他実際には取引に応じることができない場合のその商品又は役務についての表示
  2.  取引の申出に係る商品又は役務の供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品又は役務についての表示
  3.  取引の申出に係る商品又は役務の供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量が限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品又は役務についての表示
  4.  取引の申出に係る商品又は役務について、合理的理由がないのに取引の成立を妨げる行為が行われる場合その他実際には取引する意思がない場合のその商品又は役務についての表示

 今回は、スシロー店舗において、キャンペーン期間に、上記の3種の商品を含むキャンペーン対象商品を提供すると、自社のWebサイトやTVCMで宣伝していたのですが、途中で商品が足りなくなる可能性があることが判明したため店舗で提供しない期間を決めたり、そもそも提供の準備をしなかった日があったりなどしたものです。



 そして、これらの行為が、上記告示の1及び4に該当するとして、措置命令が出されました。宣伝していたキャンペーン中に、提供できない期間が生じたのに、WebサイトやTVCMではそのことを明示せずに流しつづけていたのだろうと思われます。

20220609-170659

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