「クレベリン」(大幸薬品)措置命令まとめ
本年5月3日、大幸薬品は、同社サイトで、同社の空間除菌商品「クレベリン」の表示に関し、消費者庁から出された2回の景品表示法違反に基づく措置命令に従うことを公表しました。
1回目の措置命令は、今年1月20日、同社の「クレベリン スティック ペンタイプ」、「クレベリン スティック フックタイプ」、「クレベリン スプレー」、「クレベリン ミニスプレー」の商品パッケージや自社サイトでの表示について出されました。あたかも、商品から発生する二酸化塩素の作用により、表示記載の場所において、身の回りの空間に浮遊するウイルス又は菌が除去又は除菌されるなどの効果が得られるかのように示す表示をしていたため、消費者庁が景品表示法の規定(不実証広告)に基づいて、同社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求め、同社から資料が提出されたが、当該資料はいずれも当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないとして優良誤認表示であると見なされたものです。
→ 消費者庁サイト
2回目の措置命令は、今年4月15日、同社の「クレベリン 置き型 60g」、「クレベリン 置き型 150g」の同社サイト、テレビCM、Youtube動画広告での表示を対象とするもので、あたかも、商品をリビング等の室内に設置すれば、同様に二酸化塩素の作用により、リビング等において、室内空間に浮遊するウイルス又は菌が除去又は除菌されるなどの効果が得られるかのように示す表示をしていたもので、上記同様に不実証広告制度により、優良誤認表示と見なされました。
→ 消費者庁サイト
実は、大幸薬品の「クレベリン」について、景品表示法違反として消費者庁から措置命令が出されたことは初めてではありません。新型コロナが問題になるずっと以前の平成26年(2014年)3月27日、消費者庁は、二酸化塩素を発生させる商品を販売する17業者に対して、部屋に置いたり首に掛けたりするだけで、空間に浮遊するウイルスや菌の除去ができる旨の広告表示が不当表示であるとして措置命令を出していますが、この中に「クレベリン」商品が含まれていました。この時は、同社は表示の文言の修正を行って対応しています。
最近になって、新型コロナの感染が世界中の問題となり、抗菌、抗ウイルス商品が爆発的に売れるようになったわけですが、表示された効果に疑問のある商品も多く、消費者庁は景品表示法や健康増進法に基づいて監視を強め、不当表示の疑いのある業者に対する改善指導や、消費者向け注意喚起を行っています。そして、今回の大幸薬品以外にも、同様の商品の表示について措置命令が出されています。
冒頭の同社サイト公表は、今回の消費者庁による2回の措置命令に従う旨の会社見解が示されたものです。
しかし、ここまで、同社は、消費者庁に対抗する姿勢を見せていました。
同社サイトでの公表内容に基づけば、
昨年11月26日、商品の表示が不当表示に当たるとして、消費者庁から、措置命令案についての弁明の機会を付与されたことから、同社は、昨年12月14日、措置命令の差止訴訟を提起し、併せて仮の差止の申立を行っています。
この仮の差止事件について、東京地裁は、本年1月12日、対象とされた商品6点の内、置き型商品2点につき、同社提出資料が効果の裏付けとなる合理的根拠に当たることを認め、措置命令の仮の差止めの決定をしました。ただし、その他の4商品表示については、措置命令の差止を認めませんでした(同社は東京高裁に即時抗告)。
この地裁決定の直後の本年1月20日に、差止対象外となった4商品について消費者庁が措置命令を出したのが、1回目の措置命令です。
そして、本年4月13日、東京高裁は、東京地裁の決定を覆し、対象商品6点全部について、同社の主張を認めない決定を行いました。
そのため、高裁決定の2日後の4月15日、消費者庁は、残る置き型の商品2点に対しても、措置命令を出したのが、2回目の措置命令となります。
この高裁決定に対して同社が最高裁の判断を仰ぐのかが注目されましたが、結局断念し、措置命令に従うことを表明したのが冒頭のサイト公表です。
ということで、措置命令をめぐる今回の一連の動きはひとまず終わったわけですが、報道によれば、同社は「表現は行きすぎていたが、商品そのものには問題がなく、利用者からの返品は受け付けない。」との対応のようです。今後、同社がこれらの商品の販売を継続するとすれば、どのような広告表現に変更するのか、また、返金対応が全くないということで購入者の納得が得られるのか、といった点が注目されます。
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