不実証広告規制(景品表示法)を合憲とする最高裁判決
景品表示法の不実証広告制度(商品の広告・表示に関する合理的な根拠を示さない業者に対し、消費者庁が優良誤認表示とみなして措置命令を出せる制度。)が、憲法で保障する営業の自由や表現の自由を侵害するかが争われた訴訟の上告審判決で、昨日(2022年3月8日)、最高裁第3小法廷が、合憲との判断を示して、原告事業者の上告を棄却しました。
→ 最高裁判決
これは、ちょうど5年前の2017年3月9日に、消費者庁が、株式会社だいにち堂(長野県)に対し、同社の商品「アスタキサンチン アイ&アイ」と称する食品の表示について、不当表示(優良誤認表示)であるとして措置命令を出した事案です。当時、当ブログにも以下の通り紹介していますので、事案については、そちらをごらんください。
→ 「健康食品による目の症状改善についての不当表示に対する措置命令」(2017/3/9)
この措置命令に対して、原告事業者が、取消を求めて訴訟を提起していたものです。
原告事業者の主張は、消費者庁長官の判断次第で合理的根拠資料の提出要求をすることができるというのであれば、規制が広範に過ぎ、表現の自由(憲法21条1項)及び営業の自由(憲法22条1項、29条)を侵害するものとなるところ、本件表示は、目に良いということを社会的に許容される範囲で誇張したものにすぎず、健康食品として常識的な表現にとどまり、社会一般に許容される程度を超えて具体的な効能・効果を訴求するものではないから、資料提出要求の要件を充たしていない、とするものです。
この処分取消請求事件につき、一審東京地裁(2020年3月4日)、控訴審東京高裁(同年10月28日)は、原告の主張を認めず、原告事業者が上告していました。
今回の最高裁判決は、不実証広告規制(景品表示法7条2項)は、「優良誤認表示の要件を満たすことが明らかでないとしても,所定の場合に優良誤認表示とみなして直ちに措置命令をすることができるとすることで,事業者との商品等の取引について自主的かつ合理的な選択を阻害されないという一般消費者の利益をより迅速に保護することを目的とするものであると解されるところ,この目的が公共の福祉に合致することは明らかである。」とし、「当該商品等の品質等を示す表示をする事業者は,その裏付けとなる合理的な根拠を有していてしかるべき」で、また、「事業者がした表示が優良誤認表示とみなされるのは,当該事業者が一定の期間内に当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと客観的に評価される資料を提出しない場合に限られると解されるから,同項が適用される範囲は合理的に限定されているということができ」、「同項が適用される場合の措置命令は,当該事業者が裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を備えた上で改めて同様の表示をすることについて,何ら制限するものではないと解される。そうすると,同項に規定する場合において事業者がした表示を措置命令の対象となる優良誤認表示とみなすことは,前記の目的を達成するための手段として必要かつ合理的なものということができ,そのような取扱いを定めたことが立法府の合理的裁量の範囲を超えるものということはできない。」として、不実証広告規制は、憲法21条1項、22条1項に違反するものではない、として、上告を棄却したものです。
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