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2021年5月の記事

2021年5月31日 (月)

独占禁止法・下請法関係の書籍2題

 大阪は、医療従事者や飲食業関係者をはじめとして、多くの方々が大変な状況を強いられ続けている緊急事態宣言が明けない状態が続いていますが、ワクチン接種が拡大して、少しでも良い方向に進むことを祈るばかりです。


 さて、独占禁止法など経済法実務がご専門の大江橋法律事務所長澤哲也弁護士から、立て続けに、編著書のご恵贈を賜りました。

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 ひとつが、「Q&Aでわかる 業種別 下請法の実務」(学陽書房)、もうひとつが、「類型別 独禁民事訴訟の実務」(有斐閣)です。

 「Q&Aでわかる 業種別 下請法の実務」のほうは、最初に、独占禁止法の特別法である下請法の全体像(総論)の説明がなされ、その後に、繊維産業、金属産業から、アニメーション産業、広告産業までの17業種に分けて、それぞれの業種の実態に即してQ&A方式で解説されています。

 「類型別 独禁民事訴訟の実務」は、第1章において、独禁法に基づく差止請求(24条訴訟)、民法709条に基づく損害賠償請求、独禁法に基づく損害賠償請求(25条訴訟)、不当利得返還請求、という訴訟類型の解説があり、続いて、反競争的行為の私法上の効力、独禁民事訴訟特有の証拠収集方法についてと訴訟上重要な点について書き進められています。第2章以降は、独禁法違反行為類型に分けて、違反の要件や民事上の請求についての解説や裁判例の紹介がなされています。

 「下請法の実務」は、法律専門家以外にも、各業界の経営者など関係者(下請事業者に限らず、親事業者側も)が自分の事業分野における下請法関係の問題を理解し、活用するために理解しやすいものとなっています。一方、「独禁民事訴訟の実務」は、独占禁止法関係の訴訟を行う弁護士(これまで、独占禁止法事件をあまり担当したことのない弁護士は特に)など法律実務家向けの書籍です。

 昔は、独占禁止法下請法の書籍というと、理論的な体系書か公正取引委員会の運用状況に関するものがほとんどでしたが、最近は、こういった実務に直結した、法律実務家や企業の経営者、法務担当者が活用できるものが増えてきたことはありがたいですね。

 私自身も今現在、独占禁止法違反関係の訴訟の真っ最中ですので、ありがたく活用させていただきたいと思います。

2021年5月 2日 (日)

「洗たくマグちゃん」への措置命令に関連して「根拠資料」と「特許」について

 4月27日、株式会社宮本製作所(茨城県古河市)が販売する商品「洗たくマグちゃん」「ベビーマグちゃん」「ランドリーマグちゃん」について、その容器包装、webサイトの表示に関し、景品表示法に違反する不当表示(優良誤認)であるとして、消費者庁措置命令を出しました。

→ 消費者庁公表資料


 この商品は、洗剤を使わなくても洗たくができる、という宣伝でかなり人気の商品のようです。結構売れていたとすれば、今後、課徴金納付命令も高額になる可能性があります。(【追記】10月19日、消費者庁は3606万円の課徴金納付命令を出しました。)

 なお、宮本製作所は自社サイトにおいて、

弊社は、令和3年4月27日付、消費者庁より景品表示法第7条第1項の規定に基づく措置命令を受けました。このような事態に至り、お客様をはじめとする関係者の皆様に多大なご迷惑をおかけすることとなりましたことを、心よりお詫び申し上げます。
今回の措置命令を真摯に受け止め、再発防止に努めてまいりますとともに、対象商品の返品をご希望されるお客様につきましては、以下のとおり返金の対応をさせて頂きます。

として、措置命令内容を認め、消費者に対して返金対応を実施することを表明しています。

 本件の、表示内容としては、例えば、容器包装において、「ご家庭の水道水がアルカリイオンの水素水 に変身!洗剤を使わなくても大丈夫なお洗濯」、「部屋干しのイヤな臭 いをスッキリ解消!」、「菌の抑制」及び「除菌試験により99%以上 の抑制効果が確認されています。」などと、あたかも、この商品を使用して洗濯すれば、 商品の効果により、洗濯用洗剤を使用して洗濯と同程度に洗浄する効果、部屋干し臭の発生を防止する効果及び菌を99%以上除菌する効果が得られるかのように示す表示をしていたところ、消費者庁が、不実証広告制度に基づいて、宮本製作所に対し、期間を定めて、当該表示の根拠資料の提出を求めましたが、同社から提出された資料はいずれも、当該表示の裏付けとな る合理的な根拠を示すものであるとは認められない、とのことで優良誤認表示が認定されたものです(打消し表示に関する認定もされていますが、略)。

 報道などを見る限り(消費者庁は公開してませんので)、同社が裏付けとしている実験資料は、極めて小規模のもので、スタッフなどが行っているようです。不実証広告で求められる「当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料」というのは、それなりの程度が要求されていて、「不当景品類及び不当表示防止法第4条第2項の運用指針-不実証広告規制に関する指針」(平成15年10月28日 公取委・一部改正 平成28年4月1日 消費者庁)で、ガイドラインが示されており、裁判例でもこのガイドラインの内容が妥当である、とされています(オーシロ事件 東京高裁平成22年10月29日)。このガイドラインから見る限り、提出資料が上記のようなものだけであったとすれば、消費者庁が根拠とは認めなかったのも仕方ないかな、と思います。なお、消費者庁が決める提出期限というのは基本的に15日間ですので、広告や表示に見合った根拠資料は事前に用意しておかなければなりません(私は、顧問会社などには注意をしています。)。

 → 消費者庁「不実証広告規制」

 また、SNSなどで、この商品を支持する人たちの投稿を見ると、この商品が洗たく方法などの特許を取得しているのだから、効果があるはずだ、と主張される方も少なくありません。特許が取れているのだから効果があるだろう、というのは、よくある世間の誤解です。その特許の技術が本当に効果があるか、というのは、基本的に、特許庁は審査しません(「永久機関」のように明らかにできない物は別として、要件ではないから)。世の中には、効果のない特許は少なくないのです(もちろん、今回の商品の特許の技術に効果がないということを断ずるものではありません。)。

 本件とは別にいうと、特許を広告材料にして消費者に、良い商品だと思わせるというのは、古くからある広告手法です。私の子供の頃の新聞広告などには、よく「特許出願中」などの言葉を見ましたが、最近はあまり見なくなったような気がします。

 消費者として気をつけないといけないのは、上に書いた、「特許だからといって、本当に効果があるかどうかは別特許庁が保証するものではない)」というのと、「許だからといって、消費者(自分)の役にどう立つのか、考えよう特許であっても消費者の立場からは無関係なものも多い)」というのと、「本当にその特許の技術がその商品に使われているの?」というようなところです。「特許製品」というだけで、すごい!と思い込みがちですが、冷静に考えないといけません。

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