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2020年7月の記事

2020年7月20日 (月)

SNSなど無償取引に対する景品表示法の適用

 任期付き公務員として消費者庁景品表示法実務に携わっておられた染谷隆明弁護士が、公正取引4月号(№834)「景品表示法の「取引」概念の再検討 -無償契約は「取引」かー」を書かれています。
 無償契約、つまり、ネットでよくある、消費者側からは対価を支払っていないような無料サービスなどは、景品表示法上の取引に該当せず景品表示法の規制対象とはならないと扱われているように見えることについての疑問を呈する立場からの論稿です。

 Googleのような検索サービスやfacebook、twitter、Instagram、LINEのようなSNSサービスは、基本的に利用者は無料で使えて便利なのですが、一方で、程度の差はあれ、個人情報を運営事業者に提供しています。ここで、仮に、そういった運営事業者に対して、不当表示や不当景品などの景品表示法での規制が可能なのか、という問題ですね。もちろん、場合によっては、個人情報保護法による規制対象となることがあるかもしれませんが、それとは別の話です。

 景品表示法(に限らないのですが)は、今のようなインターネット社会や個人情報などのデータの価値が極めて重要な状況を想定して作られた規制ではありません。したがって、IT社会において、これらの法規制の解釈について、変更すべきなのか、変更すべきであるとすれば、解釈上あるいは運用上の変更で可能なのか、法改正といった立法的な解決をしなければならないのか、ということを考えなければなりません。

 ところで、公正取引委員会は、昨年12月17日に、「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」を公表しています。また、案の段階ですが、当ブログでも書いています。

 → 公取委報道発表資料

 → 「プラットフォームと消費者個人情報提供に関する独禁法ガイドライン案」 (2019/9/25) 

 ここでは、「取引の相手方(取引する相手方)」の考え方として、独禁法2条9項5号は、「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に」、「継続して取引する相手方」(同号イ及びロ)や「取引の相手方」(同号ハ)に対して,不利益を与える行為を優越的地位の濫用とし、「取引の相手方(取引する相手方)」には消費者も含まれる、ということを明確にしました。
 そして、個人情報等は、「消費者の属性、行動等、当該消費者個人と関係する全ての情報を含み、デジタル・プラットフォーム事業者の事業活動に利用されており、経済的価値を有する。消費者が、デジタル・プラットフォーム事業者が提供するサービスを利用する際に、その対価として自己の個人情報等を提供していると認められる場合は当然、消費者はデジタル・プラットフォーム事業者の「取引の相手方(取引する相手方)」に該当する、としました。つまり、法改正などの必要はなく、消費者も取引の相手方に含まれるし、金銭的には無償であっても、個人情報の提供は対価として経済的価値を有するという解釈を示したものです。

 これは、独禁法の規制する不公正な取引方法の中の「優越的地位濫用」についての考え方を公取委が示したものですが、景品表示法は、そもそも、独禁法上の不公正な取引方法規制の特例法として立法されたものであり、この問題について、これと異別に解釈する必要はないように思います。

 したがって、例えば、Twitterで、企業が、何らかの特典を与える条件として、フォローさせるなどの場合は、景品表示法上の規制、すなわち、不当表示規制や不当景品規制の適用があると解してもおかしくはないと思われます。ただ、不当景品の場合の取引対価の額とか、課徴金算定など(ここは上記の染谷論稿でも指摘されているところですが)、よくわからん問題は残りますが。

2020年7月 8日 (水)

マンション管理組合と消費者安全法についてのメモ

昨日、マンション向けの製品の問題について、あるメディア関係者と話をする機会があり、いつものようにマンション管理組合(以下、管理組合)消費者法の適用についてご説明をし、また、私なりの考えを述べていました。そういった問題については、このブログで何度か書いており、最近では、以下の記事になります。

→ 「消費生活センター、マンション管理組合など昨日記事の補足」 (2019/10/6

 要するに、そのマンションが個人の居住用マンション(分譲)であっても、管理組合は団体だから、消費者安全法の対象にならない、というのはおかしいでしょ、という内容です。これは、景品表示法についても同じような議論で、管理組合向けのセールスが、消費者(個人)向けの表示とは解釈できないのか、という話になるかと思います。

 で、昨日のメディア関係者にも、そういう話をしていたので、さきほどちょっと考えてたら、ん?と思ったので、メモ書きするつもりで、この記事を書いています。なので、文章を整理する余裕がないので、箇条書きですみません。間違ってたりする点が多々あるかもしれません。法律家等各位のご指導がいただければ幸いです。


  •  管理組合が法人でない場合、管理組合が契約当事者になるとしても、共有部分に関して、物品を購入したり、何かの工事をして設備が付加されたりした場合、その物品や設備は管理組合が所有するのではなく、区分所有者個人の共有になる。
  •  だとすれば、管理組合が形式的に介在するとしても、消費者問題を考えるうえでは、区分所有者個人が契約当事者と考えてよいのではないか。
  •  消費者契約法特定商取引法の文言を厳しく解するかどうかは置いておいて、上記のブログ記事にも書いたように、消費者安全法、さらに景品表示法の対象を考えるうえでは、そのほうが法律の趣旨から考えても適当なのではないか。
  •  実際に、消費者安全法に基づいて設置されている消費者安全調査委員会は、平成26年7月18日に、居住用マンションの機械式立体駐車場で発生した事故に関する事故等原因調査報告書を公表している。


  •  もちろん、管理組合が設置工事の契約をした立体駐車場(管理組合法人所有であろうと、区分所有者個人共有であろうと)を除外するわけではなかろうし、利用者が消費者個人であるため当然。
  •  もっとも、この消費者安全調査委員会の調査は、消費者安全法「生命身体事故等」を対象とするものであり、財産的被害(同法の「多数消費者財産被害事態」)は対象とはなっていない(ですよね)。
  •  「消費者事故等」の定義の同法2条5項3号は「虚偽の又は誇大な広告その他の消費者の利益を不当に害し、又は消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある行為であって、政令で定めるものが事業者により行われた事態 」である。
  •  消費者安全法施行令3条には、政令で定める行為の1号として「商品等又は役務について、虚偽の又は誇大な広告又は表示をすること。」とする。2号以下は、消費者契約に関するものであることが明記されているが、1号には、その限定文言がない。
  •  同法2条8項は、「多数消費者財産被害事態」の定義として、2条5項3号の事態のうち、「同号に定める行為に係る取引であって次の各号のいずれかに該当するものが事業者により行われることにより、多数の消費者の財産に被害を生じ、又は生じさせるおそれのあるものをいう」とし、1号が、「消費者の財産上の利益を侵害することとなる不当な取引であって、事業者が消費者に対して示す商品、役務、権利その他の取引の対象となるものの内容又は取引条件が実際のものと著しく異なるもの」、2号が「前号に掲げる取引のほか、消費者の財産上の利益を侵害することとなる不当な取引であって、政令で定めるもの」である(2号は未指定ですかね?)。
  •  すなわち、「多数消費者財産被害事態」とは、「商品等又は役務について、虚偽の又は誇大な広告その他の消費者の利益を不当に害し、又は消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある行為であって」、「商品等又は役務について、虚偽の又は誇大な広告又は表示をする」行為のうち、「消費者の財産上の利益を侵害することとなる不当な取引であって、事業者が消費者に対して示す商品、役務、権利その他の取引の対象となるものの内容又は取引条件が実際のものと著しく異なるものに該当する」行為が「事業者により行われることにより、多数の消費者の財産に被害を生じ、又は生じさせるおそれのあるもの」ということになる。
  •  「消費者の財産上の利益を侵害することとなる不当な取引」というのは、文言からしても、厳密にその「取引」にかかる契約の当事者が個人かどうかによるものである必要はない。
  •  とすれば、「多数の消費者の財産に被害(おそれを含む)を生じ」れば、対象となることとなる。実際に購入したマンションが複数あり、かつ、広く広告宣伝を繰り広げているというような事情があるのであれば、この多数要件は満たすのではないか。
  •  したがって、生命身体には影響を及ぼさないが、財産的被害が生じる物品をマンションに売りつける行為、たとえば、この装置を取り付ければ節電効果が高く、購入代金は数年で元が取れる、というセールストークで高価な節電器(照明器具でも、空調装置でも、通信設備でも、配管工事でもいい。)を売りつける行為を続けている業者がいたとすれば、個人である区分所有者もしくは居住者の財産的被害につながるのであるから、管理組合が契約当事者であったとしても、消費者安全法の規定(40条4項勧告、5項命令、38条1、3項公表等)による対応は可能ではないか。
  •  そして、景品表示法における消費者向けの表示というのも同様に考えればいいのではないか。

 なお、蛇足ですが(前にも書いたような気もします)、区分所有者ではなくて、ライバル(競業)業者が、不正競争防止法に基づいて、差止とか損害賠償を求めるような場合は、この議論は不要なんで、悪い業者が虚偽の広告で管理組合と契約をするため、自社の営業に影響がある、というまともな業者さんが闘おうという話があればよろしいんですが。

2020年7月 7日 (火)

消費者庁長官記者会見(次亜塩素酸水の空間噴霧などについて)

(本文の記者会見の翌週の7月8日の会見でも、次亜塩素酸水に関する質疑応答が出たので、後ろに追記を加えました。)

新型コロナウイルス対策にアルコールが不足していたため、次亜塩素酸水が有効か否かについて話題になっていたことについて、先日、当ブログで、関係省庁、機関(経済産業省、厚生労働省、消費者庁および製品評価技術基盤機構(NITE))による公表内容をご紹介しました。

→ 「次亜塩素酸水の新型コロナへの有効性についての関係省庁の公表」 (2020/6/27)

 これに関して、7月1日、伊藤消費者庁長官が記者会見で説明されており、メディアの記者からも質問が出て回答されたのですが、この内容が消費者庁サイトに公表されました。

→ 「伊藤消費者庁長官記者会見要旨(2020年7月1日)」 

 それほど、長い内容でもないので、(ほかのテーマのところも含めてね)興味のある皆さんには是非読んでいただきたいですが、いくつか紹介しておきます。

 読売新聞記者からの「次亜塩素酸水についてですが・・・事故情報データバンクを見ていると、3月末くらいからちらほら、噴霧したら目が痛くなったとか、そういった情報が挙がってきています。6月に入ってから、文部科学省は噴霧しないでくれというふうなことを各教育委員会に通知を出されたと思いますが、事故情報データバンクを見ると、噴霧しないでくれとか、手指に使ったとかっていうのもあったりするので、消費者庁としてそういった注意喚起ができなかったというか、しなかった理由があれば教えていただければと思います。」という質問に対して、
 長官は、「
次亜塩素酸水に限らず、空中噴霧自体は、もともとWHOを始めとして空間噴霧についてはお勧めしないということを言われておりましたので、それについては早いうちに幅広く申し上げた方が良かったかなという思いはありますが、一方で、次亜塩素酸水を含めて、その有効性等々について、ちょうどその検証が進められているところでしたので、それも併せて情報提供しないとやや分かりにくいところがあるのではないかということで、その結論を待って、併せて情報提供させていただいたということであります。できるだけ分かっていることについては早めに、正確にお伝えするように努めていきたいと思っております。」と答えており、本当は、もっと早く空間噴霧について問題を指摘したほうが良かったが、NITEの検証を待った、というような感じの回答になっています。

 また、フジテレビ記者から「次亜塩素酸水についてですが、一部の業界団体は空間噴霧について、NITEで実験していないのにお勧めしないと表記していることについて批判をしておりますが、それについての受け止めがあればよろしくお願いします。」との質問に対して、
 長官は、「空間噴霧については、WHO新型コロナウイルスに対する消毒に関する見解の中で、室内空間で日常的に物品等の表面に対する消毒剤の空間噴霧や、燻煙をすることは推奨されないと。また、消毒剤を人体に対して空間噴霧することは、いかなる状況であっても推奨されないと言っております。これは次亜塩素酸水ということに限らず、ほかのアルコールも含めて、消毒・除菌に係るもの一般に言われていることでございますので、そうした国際的な知見を踏まえて、厚生労働省では、消毒剤やその他ウイルスの量を減少させる物質について、目や皮膚に付着し吸い込むおそれのある場所での空間噴霧はお勧めしないというふうにしているところでありますので、私どもとしても3省庁連名でそういったチラシについて書かせていただいているということだと思っております。」と答えています。

 この6月の政府からの公表について、次亜塩素酸水について有効性が示された、と解釈するようなSNSなどでの投稿も見られますが(業者さんのステマかもしれませんけども)、前回の(上記)ブログで書いたように、あくまでも、(空間噴霧や手指消毒ではなく)ドアノブなど物の消毒に関して、適正濃度での適正な使い方を限定しているもので、家庭や学校、一般の事業所で使うことは困難な方法に限定して書かれており、もちろん、空間噴霧の有効性は全く認められていないものですので、ご注意ください。

 なお、医薬品等として承認されていない商品について、(空間噴霧を含め)人体に吹きかけて新型コロナを殺す、などという効能効果をうたって、セールスを行うことは薬機法(旧・薬事法)にも違反し、そういった販売行為をすることは犯罪に該当する可能性が高いです。もちろん、根拠のない広告、セールストークなどは、優良誤認表示として景品表示法に違反するものとして、措置命令課徴金納付命令の対象ともなります。消費者庁も、コロナ関連の商品についての不当表示などには目を光らしておられるようですので、製造、販売する事業者の方々も、くれぐれもご注意ください。加えて言えば、事業者としては、独占禁止法(欺まん的顧客誘引)やら不正競争防止法健康増進法などの問題もありますので、ちゃんとそういった方面の専門の弁護士に相談されたうえで営業されたほうがいいと思いますよ。

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