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2020年6月の記事

2020年6月30日 (火)

大阪公立大学の英語名称「University of Osaka」

 先日、大阪府立大学大阪市立大学を統合して2022年春に開学する大学名が「大阪公立大学」と発表されました。それ自体は問題は少ないと思うのですが(個人的には、もっといい名前にしたらいいのに、と強く思うのですが、それはそれとして)、この大阪公立大学の英語名を「University of Osaka」とするとされたことが、国立の大阪大学英語の正式名である「OSAKA UNIVERSITY」と混乱するのではないかと、問題になっています。

 この問題について、大阪大学は6月26日に、総長名で、大変驚いている、と表明し、大阪公立大学の英語名称は、大阪大学の英語名称と酷似しており、「今後、受験生や本学の学生・卒業生をはじめ、一般市民の皆様、特に海外の研究者、学生に大きな混乱を招き、世界にはばたく両大学の未来にとって非常に大きな障害となることは必至です。そのような事態にならないよう憂慮しておりましたが、結果として、双方の間で意見交換が行われないまま決定がなされたことは誠に残念でなりません。」として、配慮をお願いしたい、としました。

→ 大阪大学「公立大学法人大阪が設置する新大学の英語名称について」

 そして、大阪大学は、6月29日、「大阪公立大学の英語名称とされる「University of Osaka」は、すでに海外等で大阪大学の名称として広く使用されている実態があり、本学を表すものとして一般的です。今後も、英語名称の「University of Osaka」大阪公立大学を示すものとしてではなく、大阪大学と認識されると思われますので、多くの関係者の皆様に無用の混乱を招くことのないよう、引き続き、改めて大阪公立大学の英語名称を再考いただくことを強く申し入れる所存です。」と、海外での従来の使用事例を掲げたうえで、重ねて表明しています。

→ 大阪大学「「University of Osaka」が大阪大学の英語名称として使用されている実態」

 これに対して、大阪府の吉村知事は、混乱は招かない、として英語名称は変更しないとコメントしている模様です。

 私は大阪大学の出身ですが、身びいきとかでなくて、この英語名称は、特に国内外の外国人の皆さんに混乱を招くことが明らかであり、これから名称を決める大阪公立大学側が、この英語名称に固執する理由はよくわかりません。

 なお、このような学校名称の類似についての裁判例としては、青山学院大学の事件があります(東京地判平成13年7月19日)。これは、不正競争防止法に基づいて、「呉青山学院中学校」の名称の差止と損害賠償を求めた裁判で、判決では名称の差止を認めました。

 また、同様の紛争としては、京都造形芸術大学(私立)が名称を京都芸術大学に変更したことに対し、京都市立芸術大学が混乱を招くとして名称差止を求めて提訴しており、現在、大阪地裁で審理がなされています。

 大阪公立大学側が方針を変えないのであれば、大阪大学としては、同様に不正競争防止法に基づいて訴訟を提起すべきだと私は思います。大学の威信とかどうとかではなく、今後、多くの人たちに混乱を招く結果となるからです。

2020年6月27日 (土)

次亜塩素酸水の新型コロナへの有効性についての関係省庁の公表

 新型コロナウイルス(以下、コロナと略します)に関して、これまであまり一般には聞きなれない「次亜塩素酸水」の有効性が話題になっていました。単なる拭き掃除とか、手指消毒だけでなく、空間噴霧とかの話まで出ていて、学校や飲食店などでの噴霧の是非も問題になりました。
 この問題はちゃんと分けて考えないといけないので(次亜塩素酸水に限りませんが)、整理する必要があります。
 次亜塩素酸水が、コロナの不活性化に有効なのか、仮に有効として、どういう濃度で、どういう使い方をすれば有効なのか。さらに、そもそも、「次亜塩素酸水」として販売されている商品にそれだけの濃度があるのか、また、これはかなり不安定な物質なのだが、保存状態はどうなのか。使い方として、手指消毒とか、空間噴霧は有効なのか、また、安全なのか。どうも、次亜塩素酸水として提供されている「水」には、そのあたりの表示がされていないことも多いようです。
 というところなので、単純に議論してもしゃあないかな、と科学素人の私でも思うわけです。
 その他に、次亜塩素酸水次亜塩素酸ナトリウムの違いという問題もありますが、ここでは省いて、あくまでも、次亜塩素酸水に絞ります。

 で、昨日(6/26)の経済産業省、厚生労働省、消費者庁および製品評価技術基盤機構(NITE)の公表について書こうと思いますが、全部きっちり書くと長くなるので、ひとまず、結論を書きます。

  1. 次亜塩素酸水で、ドアノブなどの物を拭く場合に一定の濃度以上のものであれば、有効ではある、ただし、あらかじめ、汚れをきれいに落としてから(そうでないと、次亜塩素酸水が有機物に反応して分解してしまう)、かなりヒタヒタ状態とか流水状態で使用する必要がある。
  2. NITEは、手指消毒や空間噴霧についての安全性の検証は行っていないし、効果についても何も言ってない。
  3. NITEの公表を踏まえた、経済産業省、厚生労働省、消費者庁の本日の公表では、空間噴霧について推奨しないことを明言している。

 ということで、本日の政府の発表内容(当然、皆さんですり合わせた結果と思われます)では、次亜塩素酸水の手指消毒とか空間噴霧については、お勧めしませんということが公式発表になります。Twitterなどを見ると、業界ヨイッショ!のアカウントでは、次亜塩素酸水の有効性が認められた、みたいなことを書いておられますが、上記のような政府の公表をちゃんとみれば、少なくとも、空間噴霧や手指消毒については、そうではないことは明らか過ぎる話になります。一部のマスコミの見出しが「有効性を認める」みたいになっていることをいいことに書いておられるのですが、困ったものですね。

 なお、物を洗浄する場合も、上の通りなんで、わざわざ次亜塩素酸水をジャブジャブと使わなくても、どうせ、あらかじめ汚れをきっちりと除かないといけないのならば、家庭用洗剤、食器洗剤などで、対象物をきっちりと拭き取ることをすれば、次亜塩素酸水が登場するまでもなく、OKということになるかと思います。

 もちろん、次亜塩素酸水については、これまで有効な使用法がされていたわけで、次亜塩素酸水が駄目というわけではありませんが、コロナ対策として、一般の家庭や学校が空間噴霧などで使うものではないと思います。

 なお、化学工業事業者の業界新聞と思える化学工業日報の社説(6月24日)【社説】「「次亜塩素酸水の効果」報道の危うさ」を見つけました。当然ながら業界に向けたメディアですが、ここでも、次亜塩素酸水についての一般的な擁護はされておりますが、ここでさえも、空間噴霧については否定しておられます。

消費者庁「消毒や除菌効果をうたう商品は、目的に合ったものを、正しく選びましょう。」

厚生労働省Q&A

 関係事業者の方々を含めて、真摯な反論であれば、勉強させていただきますので、よろしくお願いします。

 

2020年6月25日 (木)

「独禁法務の実践知」(長澤哲也著 有斐閣)

 長澤哲也弁護士から近刊のご著書「独禁法務の実践知」(有斐閣)をご恵贈いただきました。ありがとうございます。
 長澤弁護士は、独占禁止法などの企業法務を専門とする企業法務実務家として著名な弁護士で、独占禁止法に関する著書、論文も多くかかれています。

 この本は、独占禁止法に関する実務的な解説書なのですが、はしがきに「独禁法に定められた違反類型ごとに解説するのではなく,戦略を立案する企業の視点から,問題となる行為を再構築している。」と書かれているように、独占禁止法について、私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法などといった体系を順番に解説するのではなく、競争者との協調的取引、取引先間の競争阻害、競合的活動の一方的制限、第三者に対する排他的拘束、競争者に対する取引拒絶等、有利な取引条件による顧客の獲得、顧客による合理的選択の阻害、取引先に対する不利益行為という企業の行為の面に着目した体系になっています。

 これは、当ブログでも紹介したことのある長澤弁護士の「優越的地位濫用規制と下請法の解説と分析(第3版)」(商事法務)が、独占禁止法優越的地位濫用規制下請法の規制を横断的に行為類型ごとに解説するという構成であったものを、独占禁止法全体に拡げた書物ということができると思います。

 消費者問題的視点からすると、「顧客による合理的選択の阻害」の章が気になるので、そこから見てみたのですが、独占禁止法欺まん的顧客誘引とともに、景品表示法不正競争防止法による規制についても、もちろん触れられております。また、最近大きな問題となっているデジタル・プラットフォームに関しても各所で取り上げられており、最新の独占禁止法の状況を反映しているという点でも魅力的な本になっています。

 広く企業法務に携われる実務家の方にはお勧めできる1冊です。

 まったく蛇足ですが、「じっせんち」って、かな漢変換すると、「十センチ」になりますね(笑)

2020年6月21日 (日)

「花粉を水に変えるマスク」DR.C社に課徴金納付命令(景表法)

 最近の新型コロナウイルス感染問題でのマスク騒動で、すっかり忘れられていたかもしれませんが、昨年7月に消費者庁から不当表示(優良誤認)として景品表示法に基づいて措置命令が出されていた「花粉を水に変えるマスク」について、このマスクを宣伝・販売していたDR.C医薬株式会社に対して、一昨日(6/19)、消費者庁課徴金納付命令を出し、857万円課徴金の支払いを命じました。

 → 消費者庁公表資料

 昨年の措置命令は、DR.C社を含む計4社のマスクの表示について出されたものですが、詳しくは、その当時に書いた次のブログ記事やそのリンク先をご覧下さい。

 → 「「花粉を水に変える」など光触媒マスクに対する措置命令(景表法)」 (2019/7/4)

 景品表示法課徴金は、対象期間の各商品の売上高に3%をかけた金額になりますので、857万円の課徴金ということは、計算すると、対象期間である平成30年1月1日から令和元年10月12日までの約1年9ヶ月間の売上高は約2億8600万円になるのではないかと思います(計算違いがあればお教え下さい。)。著名な人気歌舞伎役者を使ったあれだけの規模の宣伝広告をしていた割には少ないような気がしました(マスク市場の規模については、全くの素人なんで、単なる個人の感想です。)。

 なお、昨年の措置命令が出された4社のうち、大正製薬については、消費者庁に対して、この措置命令が不当だとして、現在係争中(審査請求)です。大正製薬は、DR.C社の宣伝とは異なり、「花粉を水に変える」とは表現していませんので、ご注意ください(各社の表示の概要は上記の昨年のブログに書いています。)。

 他の2社について、今回、課徴金納付命令が出されなかった理由は公表されていませんが、課徴金は、計算した結果150万円未満となった場合には課せられませんので、売上が低かったのかもしれません。



2020年6月10日 (水)

「八ッ橋」の創業年表示をめぐる訴訟の判決

 有名な京都の銘菓「八ッ橋」の老舗業者「井筒八ッ橋本舗」が、創業年を元禄2年(1689年)と表示している別の老舗業者「聖護院八ッ橋総本店」に対して、そのような根拠はないとして、表示の差し止めと損害賠償を求めた裁判で、本日、京都地方裁判所が請求を棄却する判決を言い渡しました。

 報道によれば、判決は、「京都では『生八つ橋』など歴史が新しい菓子もよく売れており、歴史の古さは必ずしも消費行動を左右するとはいえない。問題とされた表示も江戸時代に創業したようであるとの認識をもたらす程度のものにすぎず、消費者の誤解を招くとはいえない」とし、創業時期についても、「すべてにわたり誤りであるという確実な証拠はない。誤った説明で八ッ橋全体の信用性を失わせるとまで認めることはできない」としたようです。

 この裁判の提起が報じられた時に、当ブログも、原告業者の請求の根拠である不正競争防止法の規定について書いておりますので、興味のある方はご覧ください。

 → 「八ツ橋」老舗の創業年表示についての訴訟(不正競争防止法)」 (2018/6/5)

 なお、原告「井筒八ッ橋」は、控訴を検討するとのことです。

 知財関連の判決ですので、近いうちに公開されるのではないでしょうか。その時には、また追記等するかもしれません。

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