マスクの上限価格指示行為(独占禁止法)
ブログの更新が1ヶ月ほど停まってしまいました。この1ヶ月で、我々の周りの世界はガラッと変わってしまったようですね。
新型コロナウイルス感染対策のため、マスクの買い占め、品不足、が問題となっています。なるべく必要な人、特に医療や福祉、子育てに携わる方々に優先していただきたいと思いますので、私は、不織布マスク(本来は使い捨てマスク)を洗って何度か使い回しています。
このマスク再利用につき、京都女子大名誉教授の小波秀雄先生が説明してくださっています。私もこれを参考にして、洗剤を溶かした水(湯)に付け置いてます(その後の熱湯かけはしておりません。)
また、小波先生は、これに関連して、アルコールがなくても、一般的な石けんや洗剤による手洗いで、新型コロナウイルスは死ぬ(正確には不活化)、ということも書かれています。ご参考にしてください。
→ 「「コロナウイルス」はなぜ石けんや洗剤で殺されるのか—高校化学のレベルで解説」
さて、品不足のマスクの価格が上がっていることについて、公正取引委員会は、昨日(4月23日)、webサイトにおいて、新型コロナウイルスの感染拡大が進む中で小売価格が暴騰しているマスクのような商品について、こういった状況の中、メーカーなどが小売業者に対して一定の価格以下で販売するよう指示する行為は、独占禁止法上の問題とはならない、という見解を公表しました。
独占禁止法の規制する「不公正な取引方法」の中に、「再販売価格の拘束」(再販売価格維持行為)というのがあり、一般的に、メーカーなどが、商品を販売する取引先に対して、一定の値段より安く売ってはいけない、というような強制行為を行うことは禁止されています。普通は、ブランドイメージ維持などの安売り規制が問題となるので、価格の拘束としては、下限価格が問題となることがほとんどですが、上限価格以上で売るな、という拘束も、小売業者など取引先に対して、自由な価格決定を拘束することになり、同じく、「再販売価格の拘束」に該当することになってしまいます。
今回の公表は、現在の特殊な状況下でマスクの高額販売が問題となっている折りから、公正取引委員会が、今の状況の下で、メーカー等が小売業者に対して一定の価格以下で販売するよう指示する行為は、通常、当該商品の購入に関して消費者の利益となり、正当な理由があると認められるので、独占禁止法上問題とはならない、と表明したものです。
なお、公正取引委員会は、一定の価格以下で販売するよう指示することによって、かえって商品の小売価格の上昇を招くような場合には、正当な理由があるとは認められない、ことも付言しています。現行の小売価格より、高い価格を上限価格とすることによって、小売価格の上昇を誘導する場合でしょうね。
いずれにしろ、こういう特別な状況というのは、早く終わってほしいですね。
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