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2020年3月の記事

2020年3月22日 (日)

飲食店口コミサイトの取引実態調査(公正取引委員会)

 公正取引委員会「飲食店ポータルサイトに関する取引実態調査について」を公表しました(3/18)。

 → 公正取引委員会報道発表資料

 これは、消費者が飲食店を検索する際に飲食店ポータルサイト(食べログやぐるなびなどのサイト)を利用するようになって、飲食店としても、そういった飲食店ポータルサイトとの取引はますます重要になり、その影響力が拡大しています。そういった中で、公正取引委員会は、最近力を入れているデジタル・プラットフォーム事業者分野の競争環境の整備の一環として、飲食店ポータルサイトをめぐる取引について、独占禁止法上問題となるおそれのある又は競争政策上望ましくない取引慣行等の有無を明らかにするため、実態調査を実施した、というものです。
 調査は、昨年4月から今年3月にかけて行われ、飲食店ポータルサイト事業者と全国の飲食店、サイト利用の消費者に対するアンケート調査、および、飲食店ポータルサイト事業者、飲食店、営業代理店、予約管理システム提供事業者に対するヒヤリングの形で実施されています。

 詳しくは、上記の公取委発表資料からリンクされている報告書本文やその概要(2枚物と13枚物の2種)を見ていただきたいですが、調査結果の主な内容としては、下記のようなものが記載されています。

(一方的な契約の変更)

  •   加盟店の約11%が一方的な契約内容の変更を受け、そのうち約69%が不利益を受けたとの回答。

(検索結果の表示順位)

  •  検索結果の表示順位については、低額な手数料のプランを契約する飲食店より、高額なプランを契約する飲食店を、より上位に表示。
  •  契約プランの金額の多寡によって、表示順位が上下するなど、検索結果の表示順位について、消費者の約89%はその決定方法を知らないサイトがあると回答。
  •  加盟店の約92%が検索結果の表示順位を上昇させたい一方、約32%が不満や疑問を感じると回答。

(店舗の評価〔評点〕)

  •  店舗の評価(評点)について、投稿された評価を参考に、独自のルール(アルゴリズム)を組み合わせることで算出。
  •  消費者の約83%が参考にしていると回答する一方、約91%が決定方法を知らないサイトがあると回答。
  •  加盟店の約94%が店舗の評価(評点)を上昇させたい一方、約32%が不満や疑問を感じると回答。
  •  飲食店ポータルサイトは、飲食店からの手数料が影響を与えることはないとしている。また、不正操作リスクから算出方法を全て公開することは難しいとの意見。

(飲食店舗情報の掲載や口コミ)

  •   飲食店舗情報や口コミについて、飲食店の約29%が無断で掲載され不利益を被った、そのうち約54%が削除・修正を求め、少なくとも約29%は削除・修正ができていないと回答。
  •  飲食店ポータルサイトからは、独自の基準を設定し削除等の対応を行っているが、投稿者の主観に基づく内容は掲載せざるを得ないとの意見。

(予約管理システムの利用制限)

  •  飲食店は飲食店ポータルサイトに予約可能な座席(予約在庫)を登録する必要。
  •  各サイトの予約システムは独立。複数のサイトに登録する場合、それぞれ手動で管理する必要。
  •  それらをまとめて自動管理できる予約管理システムについて、加盟店の約60%は、それを利用中又は過去に利用。しかし、そのうち約13%は、利用を控えるようサイトから求められ、約29%は実際に利用を控えた経験があると回答。
  •  また、飲食店の約68%、消費者の約79%は飲食店ポータルサイトと予約管理システムが連携した方がいいと回答。
  •  飲食店ポータルサイトからは、アクセス集中によるシステムへの負荷やAPIの開発リソースの負担があるとの意見。

(潜在的な競争者)

  •  消費者の約85%が、一般的な検索エンジンを使って、飲食店の情報にアクセス。
  •  一般的な検索エンジン提供事業者が、飲食店ポータルサイトと同様のサービスを提供する場合、潜在的な競争者となる。  

 そして、これらの事項について、報告書の中で、公正取引委員会は、独占禁止法上の考え方として、場合によっては、独占禁止法で禁止されている「優越的地位の濫用」、「拘束条件付取引」、「差別的取扱い」、「抱き合わせ販売」、「取引妨害」といった不公正な取引方法に該当するおそれがあるとし、さらに、ネット予約や一般的な検索エンジン事業者(Googleを念頭に置いていると思われます。)との関係のところでは、(競争を実質的に制限する場合)「私的独占」となるおそれがあることも指摘しています。

 今回の調査報告は、独占禁止法上の見地から公正取引委員会が行ったもので、主に飲食店ポータルサイト事業者と飲食店というBtoBの取引における問題点が取り上げられています。
 今回の調査でも消費者に対するアンケート調査は行われていますが、消費者に対する表示という面を直接に取り上げた報告とはなっていません。その観点からは、景品表示法による消費者庁の規制ということになるのですが、この視点では、もっぱら、飲食店などが、自分の評判を上げるためにステマ投稿(レビュー)をするというようなことの問題として扱われてきました。これらステマ問題については、当ブログで何度も取り上げているところですが、飲食店ポータルサイト関連では、これを参照ください。

 → 「やらせ業者によるグルメサイト「食べログ」投稿」 (2012/1/5)

 ただ、景品表示法は、自社が提供する商品やサービスに関する表示を規制するもので、いわゆるプラットフォーム事業者や広告業者、広告媒体者などによる不当な表示行為は景品表示法の対象になっていません。したがって、上記のような飲食店ポータルサイト事業者による不当な表示行為によって消費者(しかも無料の利用という点もハードルです。)が誤認するような場合に消費者庁による有効な対応策が取りづらいということになります。
 これは、プラットフォームに限らず、広告関係者の責任の問題全般に関係するところですが、何らかの対応が求められるところかと思います。
 なお、これに関連しますが、公正取引委員会は、「デジタル・プラットフォーマーに関する取引実態や利用状況についての情報提供窓口」をサイト上に設置していて、現在は、特にデジタル広告についての情報提供を事業者や消費者から広く受け付けている、とのことですので、ネット上で問題のある広告などの情報があれば、ご利用されればよろしいかと思います。

2020年3月18日 (水)

オリンピック中止とチケット代金返金問題

 新型コロナウイルス問題でバタバタしていることもあり、ブログの更新ができないままになっていました。

 この間、楽天市場の送料無料問題について、公正取引委員会緊急停止命令を申し立てたり、取り下げたりなどなど、いろいろと動いています。

 さて、コロナ関連では、オリンピックが中止か延期かというようなところで、もし中止となれば、観客の入場料はどうなるのか、というのも話題になっています。

 これについては、払い戻しは規約上できないのではないか、との報道がなされました(18日朝日)。

 この報道に対して、Twitterにて、高嶌英弘京都産業大教授が異論を唱えました。高嶌先生は、私も非常勤講師(情報法)として10年ばかり行っておりました京産大法科大学院でお世話になった民法、消費者法の専門家ですし、いくつかの消費者団体でもご一緒しております。高嶌先生は、報道で問題とされている規約の条項は損害賠償に関するものであり、チケットの代金の返還とは関係ない、というところを指摘されています。

 → 高嶌先生tweet

 また、知的財産や演劇等の公演関係に詳しい福井健策弁護士も、返金は必要ではないか、という方向での指摘をされています。

 → 東京五輪チケット、新型コロナで中止だと「払い戻し不可」?

 もっとも、規約全部を確認したうえでの結論かどうかはわかりませんので、そこは確認する必要があります。

 ところで、同じくコロナ関連で中止となった東京マラソンの一般参加の参加料について、前回(2月ですが)当ブログで扱いました。

 → 「東京マラソン(一般参加)中止と参加料の不返金」 (2/18)

 ここでは、参加料の返金は難しいという方向で書いております。となると、上の両先生の話と矛盾するではないか、と思われるかもしれませんが、よく読んでいただくと、問題となっている規約の条項は違うものであることがわかると思います。今回のオリンピックについての返金問題は、今後の中止か延期かという決断について結構大きな要素になるかもしれません。

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