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2020年2月の記事

2020年2月18日 (火)

東京マラソン(一般参加)中止と参加料の不返金

 先日発行された「消費者法ニュース」1月号(№122)に、「海賊版ダウンロード対策問題の現状」という記事を書きました。もっとも、書いたのが12月初旬ですので、それ以降の改正作業動向は反映されていないのが残念ですが。


 ところで、昨日(2/17)、新型コロナウィルスの関係で、3月1日開催予定の東京マラソンが一般参加のレースについては中止となりました公式サイトのニュース。これによる参加料やチャリティ寄付金の返還がされないことが、話題になっています。

 私自身、参加予定だったマラソン大会が中止になったことが3回あります。台風で大会のちょっと前に由良川氾濫となった2004年と2013年の福知山マラソンと、当日の台風接近に伴う2017年の丹後ウルトラマラソンの3回です。一般に、台風などでマラソン大会などが中止になる場合は参加料の返金がされないことは普通ですが、大会により規約は異なるので、それを見ないといけません。2004年の時の記憶はないですが(返金なしじゃなかったかな。)、2013年の時は、送金料を引いて全額返金されました。このときの規約は「地震・風水害・降雪・事件・事故・疫病等による中止の場合 参加料返金の有無、額等についてはその都度主催者が判断し、決定します。」となっていて、9月の台風による洪水だったので(大会は1123日)、早めに判断できたからかな、と思います。2004年は10月の台風でしたね。2017年の丹後ウルトラは返金はなしで、特産品が送られてきました。

 今回の東京マラソンの規約は、「13. 積雪、大雨による増水、強風による建物等の損壊の発生、落雷や竜巻、コース周辺の建物から火災発生等によりコースが通行不能になった結果の中止の場合、関係当局より中止要請を受けた場合、日本国内における地震による中止の場合、Jアラート発令による中止の場合(戦争・テロを除く)は、参加料のみ返金いたします。なお、それ以外の大会中止の場合、返金はいたしません。」となっていて、今回の中止は「それ以外」とされて返金しないこととなったと思います。あくまでも想像ですが、返金となっている条件の場合は、イベント保険などの対象になっているのかな、とも思います(知らんけど)。

 だとすると、返金なしもやむを得ないのですが、こういった条項が有効か?ということも考えないといけません。

 消費者契約法8条とか10条の適用によって、規約の条項が無効となるか、という点を検討することになりますね。ただ、大会の直前の中止であって、大会に必要となる各種の経費の支出や契約は済んでいること、こういったマラソン大会では、参加料の収入は一部であって、スポンサーからの収入や税金などの公費の負担も大きいことも十分に考慮しなければならないので、単純ではありません。

 なお、判決例はないのではないかと思いますが、これまでにも、適格消費者団体などの消費者団体が、マラソンの参加規約の同種の条項について、消費者契約法違反ではないか、として申入活動をした事例がいくつかありますので、参考のために挙げておきます。

【追記】(2/18)

 申入事例(福岡マラソン)をひとつ追加しました。

【追記】(2/21)

 実は、私が抽選で当選して走るはずだった、2月23日開催予定の姫路城マラソンも中止になりました。記念Tシャツとかもろもろは送っていただけるようですが、参加料の返金はやはりありませんね。
 もう30年くらい前からの古手の市民ランナーとしては、別にそれでいいと思うのですよ。そう思わない方もたくさんおられることは理解してますが。

【追記】(3/18)

 東京オリンピックの中止の場合の返金問題について、次の記事に書きました。

 → 「オリンピック中止とチケット代金返金問題」 (3/18)

【追記】(5/27)

 申入事例(金沢マラソン、富山マラソン)を追加しました。

2020年2月11日 (火)

楽天への公取委立入検査(優越的地位濫用)

 しばらくブログの更新ができず、これが今年最初の更新となってしまいました。

 例のパイプテクターに関しては、最近になって東京メトロの車両(他社乗り入れ車両は除く)から広告が消えた、との報告がTwitterなどで見かけますね。東京メトロの広告媒体者としての責任について、昨年、ちらっと書いたことがありますが、同社もいろいろと考えたのでしょうか。

 → 「赤さび防止効果に関する日本技術士会千葉県支部の見解書」(2019/8/20)


 さて、昨日(2/10)、通販サイト国内大手の「楽天市場」を運営する楽天の本社に公正取引委員会が立入検査に入った、と報道されました。

 これは、楽天市場において、3980円以上を購入すれば送料を出店者負担で無料にする新制度を3月から導入するとしていることに関して、独占禁止法違反(優越的地位の濫用)の疑いがあるという理由のものです。

 以下、ちょっと長くなりますが、これまでの経過をまとめてみました。

 この立入調査の3日前の2月7日には、楽天が、「公正取引委員会からの調査開始及び調査への協力について」として、公正取引委員会から、送料無料制度について調査を開始した旨の連絡を正式に受領したことを公表しており、その中で、「・・法令上の問題はないものと考えていますが、公正取引委員会からの調査につきましては、全面的に協力してまいります。」としていました。

 そもそも、楽天は1年前の2019年1月に、この新しい送料無料制度を導入することを公表していました。ただ、この時点では、送料の負担を楽天と出店者のどちらが負担するかについては明確にしていなかったのですが、8月になって、送料無料ラインを3980円以上(税込)とすることを発表し、これが出店者負担となることが明らかになり、この規約の変更について、出店者の中から不満が出ていたものです。

 なお、昨年1月から、公正取引委員会は、「デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査」として、オンラインモール運営事業者の取引実態に関するアンケート調査などを実施しており、楽天を含むオンラインモールも調査対象となっていました。この調査については、4月に中間報告がまとめられ、10月には実態調査報告書として、公表されています。この中でも、運営事業者によって、規約が一方的に変更されたことがある、と回答した出店者がかなり多く(楽天は93.2%の高率)、規約の変更の中に不利益な内容があったとする回答も多くありました。

 このような楽天の送料無料の強行に対し、不満を持つ出店者の一部が、10月に「楽天ユニオン」という組合を結成し、反対署名を集めたり、「優越的地位の濫用」だとして公正取引委員会に調査を求めるなどの活動を行っていました。また、12月19日の朝日新聞では、楽天の送料無料の方針について、公正取引委員会楽天に「独占禁止法違反のおそれがある」と伝えていたことがわかった、と報じられています。

 しかし、楽天は、12月に、出店者に対して、当初予定通り送料無料を今年3月から実施することを通告しました。

 このように双方が対立した状況の中、今年1月22日、「楽天ユニオン」が、公正取引委員会に対し、独占禁止法に基づく排除措置命令を求める措置請求書と、店舗の署名を提出したようです。

 この日の記者会見において、記者からの質問に対し、公正取引委員会事務総長は、個別の案件については答えられないとしつつ、「自己の取引上の地位が、例えば、オンラインモール運営業者が出店者に対して優越していて、そういう場合に、不当に不利益を与えるようなやり方で取引条件を変更するという場合には、独占禁止法でいえば優越的地位の濫用に当たる可能性はある。」と答えています。

 また、報道によれば、2月5日の記者会見において、公正取引委員会杉本委員長は、この問題に関連し、一般論と断った上で「独占禁止法違反の疑いがあれば調査し、違反であれば厳正に対処する」と述べた、とのことです。

 こういった流れの中での昨日の立入検査ですが、これに対し、楽天は、立入検査があったことを認めたうえで、今後も調査に対して全面的に協力する、としつつ、送料見直しについては、現時点で予定通り実施する、としていると報じられています。

 立入検査があったばかりで、公正取引委員会が結論を出すのは、まだまだ先になると思います。けれども、GAFAをはじめとするプラットフォーム事業者については、プラットフォーム事業者の取引透明化法案など、国内外で、その問題点や規制の在り方についての検討が行われており、今回のような出店者との関係のほか、消費者との関係においても、さまざまな議論がなされているところですので、この案件は各方面から注目を集めることになりますね。

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