すぐ水没する子供用ライフジャケットに対する措置命令(東京都)
東京都は、12月17日、子供用ライフジャケット(救命胴衣)の浮力について、景品表示法に違反する不当表示(優良誤認表示)があったとして、株式会社ラムセス(大阪府東大阪市)に対し、措置命令を行いました。
→ 東京都報道発表
対象となった商品は、子供用ライフジャケット「ジュニア用フローティングベスト」(型番 ラムセス LJ-1007)で、商品の取扱説明書には、「もちろん、浮力については、運輸省「小型船舶安全規則」に定める、7.5キログラム/24時間(小児用は5キログラム)以上の性能を備えています。」と記載されており、あたかも、本件商品が、小型船舶安全規則に定める浮力を備えているかのように表示していました。
しかし、東京都が、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めましたが、同社は、期間内に資料を提出しませんでした。このため、優良誤認表示があったとみなされ(不実証広告制度)、以下のような措置命令が出されたものです。
〔命令の概要〕
- 事業者が行った表示は景品表示法に違反するものである旨を一般消費者に周知徹底すること。
- 再発防止策を講じて、これを役員及び従業員に周知徹底すること。
- 今後、同様の表示を行わないこと。
本件で問題なのは、単に、業者が根拠資料を提出できなかったため、不実証広告制度に基づいて不当表示が認定された、というだけではなくて、報道によれば、昨年、東京都が同社のジャケットに5キロの鉄片を取り付け、淡水に浮かべて実験したところ、開始20秒後に水没してしまったとされていて、この東京都の実験では、安全規則違反どころか、ほとんど役に立たない、という結果が出ているところです(東京都「子供用ライフジャケットの安全な使用に関する調査」〔平成31年3月〕参照〔PDF〕)。
景品表示法に基づく措置命令によって、今後同様の表示はできず(なので、小売店の在庫などはすぐに回収すべきです。)、事実上、同じ商品の販売は継続することが難しいと思います(本年8月には販売はやめたようです。)。ただ、既に消費者に販売された商品の回収が問題となります。しかし、景品表示法はあくまでも表示についての規制ですので、商品の安全に関して、販売済商品の回収までの命令はできません。
本件は、人命、特に子供の生命に係わることですので、当該事業者が自主的なリコールを行うべきことは当然です。また、消費者庁は、早急に東京都と連携、調査を行い、消費者安全法に基づく情報の公開、消費者に対する注意喚起などを行うべきですし、事業者に対しても必要な措置を行うべく勧告すべき事態かと思います。
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