ZOZO社長のお年玉宣言と独禁法・景表法
新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。
昨年から、いろいろと話題の多い株式会社「ZOZO」代表取締役社長の前澤友作さんが1月5日に、前澤氏のTwitterアカウントをフォローして、RT(リツイート)してくれた人、100人に100万円をプレゼントすると宣言して、また話題になっています。総額1億円ですね。
これについて、景品表示法上、大丈夫なの、というネット上の声もあるようです。これについて、見ていきたいと思います。
まず、景品表示法上の「景品」の定義は、
①顧客を誘引するための手段として
②事業者が自己の供給する商品又は役務(サービス)の取引(不動産に関する取引を含む。)に付随して
③取引の相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益
であって、内閣総理大臣が指定するものをいうと定義されています。
ここでは、②の要件に関して2つ問題があって、「事業者が自己の・・・」とあるので、お金は会社であるZOZOではなく、社長個人の私財から個人として提供している、という点と、取引附随性はない、という点です。
前者については、法人と個人とはいえ、法人の営業活動に関して、オーナー社長が提供しているのだから、実質的には事業者が提供しているのと同一視できるのではないか、とみる余地はあるような感じはします。
後者については、このような、事業者の商品やサービスの購入取引とは全く無関係に誰でも応募し、当選する可能性がある形態のものは、「オープン懸賞」と呼ばれ、取引附随性がありませんので、本来、景品表示法の適用対象外のものです。
(【追記】ただ、フォローを条件としていますので、フォロワーのアカウントを収集するという行為、データ収集は取引に附随すると見られるのではないか、ということもできるような気もしますが、ここではひとまず置きます。)
ただし、かつて公正取引委員会(消費者庁設置前は景品表示法も所管)は、独占禁止法上の「不公正な取引方法」の指定として、「広告においてくじの方法等による経済上の利益の提供を申し出る場合の不公正な取引方法」という告示を出していました。
そして、その告示の運用基準(通達)に、「この告示に規定する「正常な商慣習に照らして過大な金銭、物品その他の経済上の利益」については、1000万円を超える額の経済上の利益はこれに該当するものとする。ただし、この範囲内で公正競争規約を締結している業種にあつては、当該公正競争規約の定めるところを参酌する。」(注:1000万円は平成8年改正後)とあり、要するに「オープン懸賞」の場合には、景品表示法ではなく、独占禁止法上、1000万円を超える賞金等が禁止されていたのです。
しかし、この「オープン懸賞」についての上限規制も、あんまり意味はないよね、ということで、平成18年に撤廃されました。したがって、現在、独占禁止法や景品表示法による規制はなくなっています。もっとも、本件は100万円なので、どっちにしても問題ないのですが。
ということで、冒頭の前澤氏の100万円提供は、独占禁止法や景品表示法による規制はない、ということに一応はなります。もっとも、独占禁止法上の別の規制(例えば、不公正な取引方法の欺まん的顧客誘引など)に該当するような場合は別ですし、上で書いたいくつかの点の評価によっては、「オープン懸賞」ではなく、「一般懸賞」として、景品表示法の対象とされる可能性も考えられなくもありません(この場合は、最高額は10万円なので、抵触してしまいます。)。
【追記】(1/7)
いろいろ考え直したこともあり、最初に投稿してから、補足などを加えています。初稿を読まれた方、ごめんなさい。
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