実業団陸上の移籍禁止規程と独占禁止法
本日、NHKが、日本実業団陸上競技連合に対して、公正取引委員会が、独占禁止法違反のおそれがあるとして調査を始めた、と報じています。
日本実業団陸上競技連合の規程では、所属チームの承諾なく別チームに移籍した選手は無期限で大会に出場できないとされているようで、この規程が問題とされています。
このようなスポーツ選手と独占禁止法の問題が「人材と競争政策に関する検討会」報告書において検討されていることについては、当ブログで何回かご紹介しているところです。
→ 「人材と競争政策に関する検討会」(公取委)報告書の公表 (2018/2/15)
→ 「ラグビー トップリーグの移籍制限 公正取引委員会が調査」との報道(独禁法)
(2017/7/16)
同様の移籍制限のルールは他競技にも以前からあり、上記の公正取引委員会の動きの中で、既にラグビーのトップリーグやバレーボールのVリーグなどは規程を廃止しています。こういった展開は、時代の流れというコメントが報道の中にあり、私もその通りだと思います。ただし、最近急に出始めた問題かというと、そうでもないようで、同じく実業団陸上に関して20年前のこんな記事を見つけました。
「監督・コーチの解任で揺れる ワコール陸上部 実業団規定 問題点浮き彫り」 (1998/9/21 京都新聞)
ここで、既に、独占禁止法違反の問題が指摘されたうえで、「制定当時と現在ではスポーツをめぐる環境は大きく変化している。」、「日本のスポーツ界全体が、選手側の権利も考慮した規程や規則への改変を迫られているのではないか。」と結ばれています。なお、この事案は、その後、和解にて終了したようです。
【追記】(12/22)
12月21日、公正取引委員会は、webサイト上に、「スポーツ分野における移籍制限ルールの実態に関する情報提供のお願いについて」というのを公表しています。
「人材と競争政策に関する検討会」報告書には、「移籍・転職」に係る取決めについて、「複数の発注者(使用者)が共同して役務提供者の移籍・転職を制限する内容を取り決めること(それに類する行為も含む。)は、独占禁止法上問題となる場合がある。」としつつ、「複数のクラブチームからなるプロリーグが提供するサービスの水準を維持・向上させる目的で行われる場合、そのことも考慮の上で、独占禁止法上の判断がなされる。」等とされており、この点、スポーツ分野では、例えば、陸上競技分野では、前所属先の了承が得られない限り、移籍した選手の選手登録が無期限に認められないとのルールが存在することが確認された、としています。
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