「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」(国土交通省)
先日(5月11日)、国土交通省が、 マンションの大規模修繕工事に関する実態調査の結果を公表しています。
→ 「マンション大規模修繕工事に関する実態調査を初めて実施」(国土交通省)
→ 「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」 (PDF・27頁になります。)
マンション大規模修繕工事の発注等において、施工会社の選定に際して、発注者であるマンション管理組合の利益と相反する立場に立つ設計コンサルタントの存在が指摘されているため、国土交通省が、マンション管理組合等の大規模修繕工事の発注等の適正な実施の参考となるよう、大規模修繕工事の金額、工事内訳及びその設計コンサルタント業務の実施内容に関する実態調査を実施したものです。 これにより、工事を発注しようとするマンション管理組合が、設計コンサルタントや施工会社から提出される見積り内容と本調査結果とを比較して事前に検討することにより、適正な工事の見積りかどうか検討する際の指標となる、とのことですね。
大規模修繕工事だけではなく、単発の上下水道関係の修繕工事や電力供給契約などで、通常より割高の料金を取られたり、全く効果のないような無意味な工事をさせられるなど、素人集団であるマンション管理組合から、区分所有者たちがせっかく貯めてきた大事な積立金を悪徳業者が巻き上げるような事例も聴きます。
※画像は2枚とも、「マンションの大規模修繕工事に関する実態調査について(概要)(PDF)」より
なお、国土交通省は、利益相反の例として、設計コンサルタントが、自分にバックマージンを支払う施工会社が受注できるように不適切な工作を行い、割高な工事費や、過剰な工事項目・仕様の設定等に基づく発注等を誘導するため、格安のコンサルタント料金で受託し、結果として、マンション管理組合に経済的な損失を及ぼす事態、というのをあげています。
この調査は、直近3年間に行われた大規模修繕工事944事例について、大規模修繕工事の「工事内訳」「工事金額」、設計コンサルタント業務の「業務内訳」「業務量」の分布を統計的に整理したもので、事前に検討した方がよい主なポイントとして、
- 工事内訳に過剰な工事項目・仕様の設定等がないか。
- 戸あたり、床面積あたりの工事金額が割高となっていないか。
- 設計コンサルタントの業務量(人・時間)が著しく低く抑えられていないか。特に業務量のウェートの多くを占める工事監理の業務量が低すぎないか。
があげられています。
また、昨年(平成29年)1月、国土交通省は、こういった大規模修繕工事等に関して、下記の相談窓口を紹介する通知を出していますので、ご参考まで。
私が実際に相談を受けた例としては、業者側の人間がマンションの一室を購入し、マンション管理組合の役員となって牛耳り、自分側の業者に割高で工事をさせる、というのがありました。区分所有者ら全体がきちんマンション管理組合を運営しておればいいのですが、マンション管理組合や自治会の活動は面倒だとか、無関心だとかの人が多いため、少数の役員にコントロールされてしまうのですね。しかも、中古のマンションは価格も安いですので、利得を見込める大規模修繕工事のためにマンションの一室を購入するくらいは簡単です。実際にこうなってしまうと、一部の区分所有者だけで闘うことは非常に困難になりますので、区分所有者みんなが意識を高くしないとマンション全体の価値が下がるということになります。
ところで、こういった工事などで、後で、悪徳業者に騙されたというような場合に、消費者契約法や特定商取引法などによる取消はできないのか、という問題があるのですが、長くなってしまいましたので、それは、後日に。
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投稿: 塚本みゆき | 2020年10月 5日 (月) 15時57分