「人材と競争政策に関する検討会」(公取委)報告書の公表
注目されていた公正取引委員会「人材と競争政策に関する検討会」の報告書が本日公表されました。
→ 「人材と競争政策に関する検討会」報告書について (公正取引委員会サイト)
報告書は本文が47頁となっており、上のリンク先からPDFファイルにリンクしています。
(「報告書概要」 公取委サイトより)
まだ、公表されたばかりで、読み込めてませんが、ひとまず一部を抜粋しておきます。
まず、労働法と独占禁止法との関係については、
「・・・・1947年の独占禁止法立法時には,「人が自分の勤労を提供することは,事業ではない」として,労働者の労働は独占禁止法2条1項の「事業」に含まれないとの解釈がなされ,公正取引委員会は,これらを踏まえて独占禁止法を運用してきた。 しかし,前記第1の1〔1~5頁〕のとおり,就労形態が多様化する中で,独占禁止法上も労働法上も解決すべき法的問題が生じてきている。さらに,近年,労働契約以外の契約形態によって役務提供を行っている者であっても,労働組合法上の「労働者」に当たると判断される事例も生じている。このように労働契約を結んでいなくとも「労働者」と判断される者が,独占禁止法上の事業者にも当たることも考えられる。 以上のことを踏まえると,労働者は当然に独占禁止法上の事業者には当たらないと考えることは適切ではなく,今後は,問題となる行為が同法上の事業者により行われたものであるのかどうかを個々に検討する必要がある。同様に,独占禁止法上の「取引」についても,その該当の有無を,取引の類型ごとに一律に整理するのではなく,独占禁止法上禁止されている行為(後記第5〔15~22頁〕又は第6〔22~44頁〕の行為)に該当する行為が行われていると認められる場合に,その行為のなされている取引が独占禁止法上の「取引」に該当するかどうかを個々に検討することが適切である。そして,労働法と独占禁止法の双方の適用が考えられる場合,それらの適用関係について検討する必要がある。 そもそも独占禁止法立法時に前記のとおり労働者の労働は「事業」に含まれないとの解釈が採られたのは,使用者に対して弱い立場にある労働者保護のため,憲法の規定に基づき労働組合法,労働基準法を始めとする各種の労働法制が制定されたことを踏まえたものであった。この意義自体は現在も変わらないことからすれば,独占禁止法立法時に「労働者」として主に想定されていたと考えられる伝統的な労働者,典型的には「労働基準法上の労働者」は,独占禁止法上の事業者には当たらず,そのような労働者による行為は現在においても独占禁止法の問題とはならないと考えられる。加えて,労働法制により規律されている分野については,行為主体が使用者であるか労働者・労働者団体であるかにかかわらず,原則として,独占禁止法上の問題とはならないと解することが適当と考えられる。例えば,労働組合と使用者の間の集団的労働関係における労働組合法に基づく労働組合の行為がこのような場合に当たる。使用者の行為についても同様であり,労働組合法に基づく労働組合の行為に対する同法に基づく集団的労働関係法上の使用者の行為も,原則として独占禁止法上の問題とはならないと解される。また,労働基準法,労働契約法等により規律される労働者と使用者の間の個別的労働関係における労働者(下記囲み部分参照)に対する使用者の行為(就業規則の作成を含む。)も同様である。ただし,これらの制度の趣旨を逸脱する場合等の例外的な場合には,独占禁止法の適用が考えられる。」 |
そして、スポーツ選手や芸能人の契約に関する独占禁止法の適用に関しては、以下のような記載がありました。
「例えば,スポーツ分野においては,複数のクラブチームが共同することで初めてプロリーグという一つの事業が成立する場合があるが,そのとき,複数のクラブチームが共同して選手の移籍を制限する行為はプロリーグの魅力を高めることを通じて消費者に対して提供するサービスの水準を維持・向上させる目的から行われているとの主張がある。 これは,人材獲得市場における競争は阻害されるものの商品・サービス市場における競争は促進され,またこれを通じて人材獲得市場における競争も促進されるという主張と考えられる。そのような移籍制限行為が当該目的の実現に不可欠であるのか,商品・サービス市場での競争促進効果(消費者利益の向上等)の程度や,それが人材獲得市場での競争阻害効果を上回るものであるか,といった点も含めて総合的に考慮した上で判断されることになる。また,目的に比べてその手段が相当か,同様の目的を達成する手段としてより競争制限的でない他の手段は存在しないのかといった内容,手段の相当性の有無も考慮の上で判断される。」 「例えば,芸能事務所やクラブチームが特定の者と一定期間の専属契約を締結し,その者の市場における価値の創造・拡大に資する(例えば,新人芸能人や新人選手の育成)とともに,その芸能人や選手の肖像等を芸能事務所等や本人以外の第三者が利用する取引の円滑化を図る場合があるが(後記脚注86参照),そのような事情の有無も含めて考慮した上で判断される。育成費用の回収を目的とする場合の具体的な考え方は,前記第5の3〔17~20頁〕の育成費用を回収する目的である場合と同じである。 「役務提供者が今後事実上移籍・転職ができなくなるほどの程度である場合,その不利益の程度は相当大きい。 |
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