AirbnbとAmazonの排他的取引の報道(独占禁止法)
独占禁止法に関連する米系企業の2つのニュースが続けて流れてきました。
1つは、いわゆる「民泊」の世界最大の紹介サイトを運営しているアメリカのIT企業「Airbnb」(エアビーアンドビー)が、民泊を行う国内の業者に対し、他の民泊紹介サイトに情報を掲載しないよう求めていたとして、公正取引委員会が、独占禁止法違反の疑いで、10月に日本法人Airbnb Japan(東京都)に立入検査をしていたことがわかった、というものです。
もう1つは、インターネット通販大手のAmazonが自社の人工知能(AI)スピーカー「Amazon Echo」(アマゾン エコー)を国内発表した11月8日以降、競合するLINEのAIスピーカー「clova wave」(クローバ ウェーブ)のAmazon内での販売を禁止したことがわかった、というものです。LINEはAmazon内に正式サイトを出店していて、このclova waveも販売していたのですが、Amazonの商品一覧から削除されたとのこと。
Airbnbの事案は、取引先である民泊業者に対して、ライバル業者と取引するな、という形であるのに対して、Amazonの事案は第三者への圧力ではなく、自社の通販サイトでの販売をできなくさせた、という形で、少し異なりますが、市場において強い支配力を持つ企業が、ライバル業者の事業を妨害する結果となる点では似ています。
Airbnbの事案については、公正取引委員会が立入検査を行ったのは、各社の報道では同社も認めているということですが、公正取引委員会は現段階では何らの公表を行っていないので、どういった疑いで調べているのかは明らかではありません。
「市場における有力な事業者が,例えば次のように,取引先事業者に対し自己又は自己と密接な関係にある事業者の競争者と取引しないよう拘束する条件を付けて取引する行為,取引先事業者に自己又は自己と密接な関係にある事業者の競争者との取引を拒絶させる行為,取引先事業者に対し自己又は自己と密接な関係にある事業者の商品と競争関係にある商品の取扱いを制限するよう拘束する条件を付けて取引する行為を行うことにより,市場閉鎖効果が生じる場合には,当該行為は不公正な取引方法に該当し,違法となる(一般指定2項(その他の取引拒絶),11項(排他条件付取引)又は12項(拘束条件付取引))。」
とされています。
Amazonの事案は、上記の通り、取引先事業者に対する行為ではないので、Airbnbの事案とは異なります。また、こちらは、現時点で公正取引委員会が動いたとかの事案ではありませんし、Amazonがどのような規制をかけたのかが明らかではありませんが、産経新聞の記事では、舟田政之立教大名誉教授が、独禁法違反の可能性もある、というコメントが出されていますね。
こちらのほうは、私的独占とか単独の取引拒絶(ボイコット)などが思い浮かぶのですが、AIスピーカーという新しい商品分野に関して、Amazonが後発で発売している状況であり、しかも、LINEは自社サイトを含め他の流通ルートでの販売は可能ですので、そこらあたりをどう考えるかでしょうか。
なお、Amazonによる販売禁止商品に関しては、Apple TVもAmazonで販売ができない状態が続いているようです(最近、和解したとかのようですが。)。
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