民法(債権法)大改正といわゆる「電子(消費者)契約法」
民法(債権法)の大改正となって、施行に向けて、私たち専門家も関連企業も、その勉強なり準備なりに迫られているところです。
昨日は、私が所属するNPO法人・消費者ネット関西の理事会にて、消費者問題と関連して概括的な勉強会を行いました。
今回の大改正によって、民法そのものだけではなく、当然ながら、民法の特別法など他の法令の内容にも大きな影響を与えることになります。そのための関連法の整備のために、 「民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」という法律(以下、整備法と略します。)も成立しておりまして、関連するたくさんの法律の改正の内容が定められています。
この整備法の規定には、いわゆる「電子契約法(電子消費者契約法)」と称されている法律も含まれています。この法律の正式名称は、 「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律」で全部でわずか4ヶ条のみの法律です。1条は趣旨、2条は定義で、中身的には、3条が民法95条(錯誤)の、4条が民法526条、527条(隔地者間の契約の成立時期等)について、それぞれ民法の規定の特例を定めている法律です。
上にも略称をカッコ書きで書いていますが、 「電子契約法」だと何だか大層な電子契約全般に関する基本法みたいな印象を受けますし、 「電子消費者契約法」も若干大層なうえに、3条は電子消費者契約を対象とするものであるのに対して、4条はそれに限らず広く電子契約に関するものですので、ちょっと誤解が生じることになります。私は、2つの法科大学院で、それぞれ消費者法と情報法の授業を担当しておりますので、この法律はどちらの授業でも取り上げるのですが、略称については、いつも言い訳をしながら使っていました。そういう印象を軽減するために、 「電子(消費者)契約特例法」という名称を使ったこともあります。
前置きが長くなりましたが、今回の民法(債権法)大改正に伴って、この法律がどうなるか、ということは、整備法298条に規定されていて、3条に関連しては、民法95条に関する改正がありますので、 「第95条ただし書き」 が 「第95条第3項」に、 「電子消費者契約の要素に錯誤があった場合であって、当該錯誤が」 が 「意思表示が同条第一項第一号に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであり、かつ、」 に変わります。前者は条文番号の変更に伴うものであり、後者は、これまでのいわゆる「要素」の錯誤の部分の表現が変わりましたので、それによるものです。
そして、4条については、民法における隔地者間の契約成立時期等が、改正により、従前の(意思表示の)発信主義が、到達主義(一般の契約成立の場合の原則)に変わるため、発信主義の例外を定めていた4条は不必要になりますので、削除となります。それに関連して、1条(趣旨)、2条(定義)の4条関連部分も削除されます。
また、法律の名称自体も、4条が削除されたことにより、 「電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律」と変わりますので、「電子消費者契約法」とか「電子消費者契約特例法」と略称してもおかしくないことになりました。
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