「ガンが治る」飲料水の連鎖販売取引業者への業務停止命令(特商法)と電子治療器?に関する記事
昨日(11月24日)、消費者庁は、 「ナチュラルDNコラーゲン」と称する清涼飲料水を販売する連鎖販売業者であるフォーデイズ株式会社(東京都中央区)に対して、特定商取引法に基づく業務停止命令(6ヶ月)を行いました。連鎖販売取引に係る取引の一部(新規勧誘、申込受付及び契約締結)の停止を命じたものです。
「連鎖販売取引」とは、いわゆるマルチ商法のことで、特定商取引法において厳しい規制がなされています。ただし、本件に関しては、連鎖販売取引特有の規制に関するものではなく、一般的な訪問販売であっても同じことです。
また、あわせて、フォーデイズに対して、特定商取引法に基づいて、
- 商品購入者に対して、「本件商品を摂取することで、あたかも病気の治療若しくは予防又は症状の改善ができるかのように告げていたことがあるが、本件商品にはそのような効能はない。」旨を通知し、結果を消費者庁に報告すること。
- 特定商取引法違反行為の発生原因について、調査分析の上検証し、結果を消費者庁に報告すること。
- 再発防止策及びコンプライアンス体制について、消費者庁に報告すること。
を指示しています。
→ 消費者庁公表資料 (PDF)
今回、認定された違反行為は、氏名等不明示及び不実告知です。
具体的には、
- 連鎖販売取引をしようとする際に事前連絡なく自宅訪問し、勧誘に先立って、会社の名称、連鎖販売取引勧誘目的、商品の種類を明らかにしなかったこと(特定商取引法33条の2〔氏名等明治義務〕違反)
- 連鎖販売締結勧誘をするに際し、そのような効能がないのに「これを飲んだら目が治ります。」、「脳幹出血も改善します。」、「鬱っぽい気持ちになっているお母さんの状態も治り、絶対元気になるから。」、「多くの人の病気が治っているし、ガンが治った人もいる。」、「パーキンソン病が良くなって、デーサービスに行けるようになった。」、「杖なしでは歩けなかった人が、歩けるようになった。」、「血液検査の数値が改善された人もいる。」、「父は膀胱がんになったんだけど、治りました。」など、病気の治療、予防、症状の改善ができるかのように告げていたこと(特定商取引法34条1項1号〔不実告知〕違反)
というものです。
本件は、特定商取引法違反行為ということで業務停止という消費者庁の行政処分がなされましたが、根拠なく病気が治るというようなセールストークを行って消費者に商品を買わせるというのは、景品表示法違反(優良誤認表示)に該当して、措置命令や課徴金納付命令の対象となります。もちろん、医薬品ではない、ただの健康食品(飲料水)の販売に際して人体への効能効果をうたうことは、薬機法(旧薬事法)にも違反する行為であり、こちらは、刑罰の対象となる犯罪行為です。そして、当然のことながら、効果がないことを知りながら消費者を騙して商品を購入させることは、刑法上の詐欺罪に該当する犯罪です。本件では、相当の売上をあげているようですし、今回の特定商取引法による業務停止命令だけではなく、これらの法令を厳格に適用してほしいものです。特に、要件に該当するのであれば、課徴金納付命令を行って収益を取り上げてほしいですね。
さて、こういった効能効果を宣伝文句にして健康食品を売りつける詐欺的な商法については、これまで何度も当ブログで取り上げてきたところですが、上記の業務停止命令と同じ昨日、朝日新聞の長野剛記者が、電子治療器(?)に関して、このような記事を書かれています。
→ 「元大臣も称賛!? 「何でも治る」治療器の社長、根拠論文は「ない」」
withnews 長野 剛(朝日新聞記者)
詳しくは、リンク先の記事を読んでいただきたいですが、こちらは健康食品ではなく、医療機器のような機械です。医薬品と同じで、医療機器として認定されていない機械などの使用により身体への効能効果をうたうことは薬機法(旧薬事法)で禁止されていますので、記事の通りだとすれば、薬機法違反ということになろうかと思います。もちろん、根拠なしに効能効果をうたうことが景品表示法違反(優良誤認表示)にあたる可能性が高いことは上の事案と同様です。
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