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2017年11月27日 (月)

「eスポーツと景品表示法」(白石忠志東大教授)を読んで

 eスポーツというのは、本来のスポーツ=運動競技とは異なり、コンピュータゲームによる競技の大会です。このeスポーツに関して、欧米では盛んに行われているのに、日本ではあまり開催されないのは、景品表示法の景品規制により、賞金の最高額が10万円と低額だから、という話を、最近、特にネット上で見ます。日経電子版でもそのような紹介があったようです(本年7月19日付)。

 この景品表示法の件は以前から言われてはいたのですが、カジノなどの研究者である木曽崇氏が、昨年、消費者庁に、この問題について意見照会したところ、消費者庁もこれを認めた、という話が一挙に拡がった、というところが現在の状況です。これについては、私も、若干、消費者庁の回答の内容の検討がなされないまま、結論だけが一人歩きをしている感じがしておりました。

 そして今回、この問題について、独占禁止法景品表示法などの研究者である白石忠志東京大学教授が、東京大学法科大学院ローレビュー(Vol.12 2017.11)に、 「eスポーツと景品表示法」という論説を掲載されました。この論説はネットで読むことができますので、詳しくはそちらをご覧下さい。ただ、景品表示法の景品規制の制度についての基礎知識がないと、ちょっと難しいかもしれません。

 白石教授は、冒頭で、「この問題に関する検討材料を提示しようとするものである。」とされ、景品規制の制度の紹介と趣旨の解説の後、上記の木曽崇氏による意見照会(法令適用事前確認手続)と消費者庁の回答の内容を踏まえて、eスポーツの大会を、大きく2つに分けて検討されています。ひとつは、 「一般ユーザー競技大会」の場合で、もうひとつが、 「一般ユーザー観戦大会」の場合です。前者は、一般の(普通の)ユーザーが競技者となることを中心とする大会で、後者が、有名選手らによる高度な大会で一般ユーザーは観戦することが中心である大会とされています。もちろん、白石教授も、この中間形態の大会があることは前提として、検討のための単純化したモデルを示されているものです。また、ここでは、ゲーム開発会社が大会を主催し、賞金も当該会社が提供することを前提とされています。

 そのうえで、従前の当局(公正取引委員会消費者庁)の関連する告示、運用基準等の紹介をされて、特に「一般ユーザー観戦大会」の場合は、 「顧客を誘引する手段として」(景品表示法2条3項)に該当しないと考えることができるのではないか、そして、 「一般ユーザー競技大会」の場合であっても、一定の要件を満たす場合には、同様に考えられるのではないか、と述べられています。

 「優等懸賞」 (単純なくじや抽選ではなく、特定の行為の優劣又は正誤によって景品類が提供される方式。)や、 懸賞の例外とされている「セールスコンテスト等」、また以前に規制が廃止された「オープン懸賞」などについての従前の考え方も丁寧に解説されており、eスポーツの賞金問題に関する議論が一人歩きしている現在の状況において、大変タイミングの良い素晴らしい論説かと思って、読みました。

【追記】(2018/4/5)

 続編を書きました。

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