祭りくじと景品表示法
先日、youtubeで、いわゆるユーチューバーの方が、お祭りでの露店で、くじを引いて出た番号に応じて商品がもらえるという「祭りくじ」に、多額のお金をつぎ込んだが、高額の景品はまったく出なかった、という経緯を動画で公開したことがネット上で話題になっています。
これを法的に見れば、民事上は詐欺や錯誤で、取り消しや無効を主張して返金を請求できる、とか、刑事上は詐欺罪に当たる可能性がある、とか、いう話になります。当たる当たらないにかかわらず、賭博罪になるか否かという論点もありますね。
では、景品表示法の観点ではどうでしょうか。
くじの「景品」だから、景品表示法の景品規制の問題と思う人も多いかと思いますが、景品表示法上の「景品」は、「商品又は役務の取引に付随して相手方に提供する物品、金銭」などとなっており、くじの「景品」は、取引内容そのもので、「付随」するものではありませんので、景品表示法上の「景品」には該当しないことになります。このことは、以前、オンラインゲームでの「ガチャ」が問題となったときにも同様のことが言われました(ガチャ問題は、結局、カード合わせ告示に違反するということで「コンプガチャ」に限って違法、ということで、ひとまず収束しました。)。
したがって、不当景品規制の対象にはならないのですが、同様の事例として、雑誌社などが読者向けに懸賞企画をしたが、公表していた「景品」の内容通りに実施されなかったというケースで、景品表示法違反の措置命令が出たものがあります。(【追記】これは、次に書いているように、同じ景品表示法でも、不当景品(過大景品)の規制の話ではなくて、不当表示(有利誤認)に該当するとして、措置命令が出されたものです。)
平成25年8月20日の秋田書店に対する措置命令、平成27年3月13日の竹書房に対する措置命令、平成27年12月8日のアイアに対する措置命令で、いずれも不当景品ではなく、不当表示(有利誤認表示)として、措置命令が出されています。すなわち、公表した景品の内容や数量を消費者側が信じて、雑誌を購入するわけで、それが実際には公表内容を下回る景品の提供を行っていた、という点が、有利誤認表示とされているものです。
【追記】(4/5)
2013年に、当たりのないくじで逮捕された事件がありましたが、まだ、日経サイトに残っていました。(2013/7/29付日経)
→ 「当たりのないくじ引かせ詐欺容疑 大阪、露店アルバイト逮捕」
【追記】(4/5)
誤解があってはいけないので追記します。
祭りくじの場合とちがって雑誌の懸賞企画については、景品表示法上の「景品」に該当しますので、不当景品規制、すなわち、金額の規制が及びます。ただ、上記の雑誌の3事案は有利誤認表示が問題となっており、今回の祭りくじも同様ということになります。
念のため。
【追記】(4/6)
本文に書きました、ガチャが「景品」に該当しないことについての消費者庁の解説は、こちら。
なので、クレーンゲームの商品も取引の内容そのものですので、これについても景品表示法上の景品規制の対象とはなりません。ネット上で、これらについての誤解が広まっているようですが、ご注意ください。
【追記】(4/6)
ブログにアクセスした人によるTwitterなどのコメントを見ていると、何故か、景品表示法の問題ではない、というふうに解釈されている人が多いのですね。本文を読んでもらえばわかると思うのですが、景品表示法の「不当景品規制」の対象ではない、と書いた後に、景品表示法上の「不当表示規制」が問題となる、との趣旨で書いているのですけれども。。。。
また、「賭博罪に当たるか否かの論点」とは書いてますが、これについても、勝手に賭博罪にあたると書いてあると思い込んでる人もいますね。ネットでは、皆さん、深く考えずにさっと読んでそれぞれの印象で思い込むのでしょうね。
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コメント
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一般懸賞の例をご覧遊ばせ
投稿: 通りすがりのハイカラさん | 2017年4月17日 (月) 00時41分
コメントありがとうございました。
ただ、勉強していただきたいのですが、一般懸賞とは関係ないですよ。
投稿: 川村哲二 | 2017年4月17日 (月) 01時14分
一般懸賞は関係あるでしょ
「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準 に
「 (1) 抽せん券を用いる方法
(3) 商品のうち、一部のものにのみ景品類を添付し、購入の際には相手方がいずれに添
付されているかを判別できないようにしておく方法
(4) すべての商品に景品類を添付するが、その価額に差等があり、購入の際には相手方
がその価額を判別できないようにしておく方法 」
とありますので
景表法の景品とは
②事業者が自己の供給する商品又は役務(サービス)の取引(不動産に関する取引を含む。)に付随して
から
上記抽選方法を用いた付随した景品応募など聞いたことありませんからね
投稿: 永井 | 2017年7月24日 (月) 12時20分
コメントありがとうございます。
残念ながらご指摘は誤りです。前提たる景品表示法上の「景品」に当たらないのです。
投稿: 川村哲二 | 2017年7月24日 (月) 15時16分
つまり祭りのくじでは、1回当たり料金にかかわらずどんな高額なものを商品としても問題はないということでしょうか?
投稿: 永山 | 2017年7月25日 (火) 03時34分
一般に、景品とは、粗品、おまけ、賞品等を指すと考えられますが、景品表示法上の「景品類」とは、
(1)顧客を誘引するための手段として、
(2)事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する
(3)物品、金銭その他の経済上の利益
であり、景品類に該当する場合は、景品表示法に基づく景品規制が適用されます。
と有りますが祭くじは(1)に該当するのではないのでしょうか?
また景品を確率で買わせるが付随に該当しないと思いますが、くじ屋はハズレがないと謳っている以上あくまで確率を買わせるのでは無く、くじそのものに価値を与え買わせるのではないのでしょうか?
投稿: 良仁 | 2017年7月27日 (木) 00時00分
(1)だけに該当してもダメです。全部に該当しなければ。
また、確率とは関係がないです。取引付随性があるかないか、です。
投稿: 川村哲二 | 2017年7月27日 (木) 00時11分
検索をしているとこちらのページが出てきました。
1年も前の記事へのコメントなので意味の無いことかもしれませんが…。
また、この記事のみを拝読した感想です。
追記などにある、「この記事が景表法にあたらないという趣旨に誤解する人がいる」という点について。
「では、景品表示法の観点ではどうでしょうか。」という主題定義から、景表法上の「景品」の定義を挙げ、「不当景品」に当たらないことを結論付けました。
その後、別の出版社の事例を挙げて「不当表示」を提起されましたが、その事例と、テーマである祭りくじとの共通点の説明がなく、最終的に
『祭りくじは「不当表示」上の問題となる』
との帰結がありません。
これでは、単に出版社の例を紹介しただけ、という印象になります。
「不当景品」と「不当表示」の違いも、具体的に勉強しないと通常は知り得ない内容ですから、片方は当たらないがもう片方は当たると論ずるのであれば、この2点の明確な区別の上での具体説明の方が良かったかと思います。
ブログ表題として「仕事のメモ書き兼用」との記載もあるので、ご自身が理解される分にはなんら問題ないとも思うのですが、ブログへのアクセス者のツイッターなどから記事への意見を確認されるほど、一般閲覧者の反応をお気になさるのであれば、法律をあまり勉強されていない方が見た場合の理解への配慮もなされる方が良いのではないかと存じます。
僭越ながら。大変失礼いたしました。
投稿: 綽々 | 2018年8月16日 (木) 12時13分
お忙しいところ恐れ入ります。
くじの景品は先生のおっしゃる通り「取引内容そのもの」で景品表示法ではくくれないと…。
もし独自にくじを開発するなら上限はないのでしょうか?
宝くじは現金なので何か法律があったと思いますが…。
当選商品を例えば500万円相当のもので、くじを一回2万円でも法的には問題はないですか?
もしお時間がございましたらご教授ください。
投稿: | 2019年5月27日 (月) 15時23分
まつりくじは景品表示法に引っかかるんですか?引っかからないんですか?
景品表示法の「不当景品規制」には引っかからないのはわかりました。
そのあとの文面では祭りのくじにまったく関係のない懸賞商品のことしか書かれておらず、祭りくじが景品商品法に引っかかるかがわかりません。
あの文面では、引っかからないと捉えられても仕方ないと思いますが。
投稿: | 2020年9月27日 (日) 22時32分
「文章が読めない人がいる」ではなく、「文章の読めないアホにわかるように説明してやろう」にしたほうが受けがいいと思いますよ。
アホが勘違いしないコツは、最初に結論を言う。
これです。結論が一番目立つのが大事です。
ちなみに私も文章を読む気がないアホなので、コメント欄を斜め読みしてなんとなくで書いてます。
投稿: アホアホアホ太郎 | 2020年9月28日 (月) 11時46分