ステマ規制に関する日弁連意見書と「昆虫表紙」マーケティング
日本弁護士連合会(日弁連)が2月16日に「ステルスマーケティングの規制に関する意見書」を出しています。
→ 日弁連サイト (報告書本文はこのページからリンクされたPDFへ)
詳しくは報告書を読んでいただきたいのですが、意見の趣旨は、次の通りです。
「不当景品類及び不当表示防止法第5条第3号に基づく内閣総理大臣の指定に、下記の指定を追加すべきである。
記
商品又は役務を推奨する表示であって次のいずれかに該当するもの
- 事業者が自ら表示しているにもかかわらず,第三者が表示しているかのように誤認させるもの
- 事業者が第三者をして表示を行わせるに当たり、金銭の支払その他の経済的利益を提供しているにもかかわらず、その事実を表示しないもの。
ただし、表示の内容又は態様からみて金銭の支払その他の経済的利益が提供されていることが明らかな場合を除く。」
つまり、いわゆるステルスマーケティング(ステマ)の広告・表示について、景品表示法が定める不当表示のうち、「優良誤認表示」「有利誤認表示」に並んで規定されている5条3号の「告示」に基づく不当表示に追加せよ、というものです。
この5条3号に基づく「告示」は現在、
商品の原産国に関する不当な表示
無果汁の清涼飲料水等についての表示
消費者信用の融資費用に関する不当な表示
おとり広告に関する表示
不動産のおとり広告に関する表示
有料老人ホームに関する不当な表示
の6つが出されており、これにステマに関する告示を追加しようということですね。
ステマについては、このブログでは何度も取り上げておりますが、日弁連が具体的な規制として、景品表示法改正による規制の意見を出したことは有意義であろうと思います。
ステマに少し関連して、もうひとつ面白い記事を見つけました。dot.という朝日新聞系のサイトに掲載された「「ジャポニカから虫が消えた」騒動は“つくられた”ものだった」という記事です。
一昨年末に、「ジャポニカ学習帳」の表紙から、昆虫の写真が消え、花の写真になっていた、と新聞で報じられ、その理由のひとつが「昆虫は気持ち悪いというクレームが増えたため」だった、ということで、主にネット上で論議がわき起こったものです。その後、この昆虫版は復刻され、すぐに売り切れた、ということでした。そして、今回の記事は、これにはコンサルタントによる仕掛けがあった、と紹介されています。
昆虫の表紙がその2年ほど前に廃止されていたのは間違いないようですが、これを聞いたコンサルタントのアイデアで、社長に取材に来た新聞記者にこの昆虫の表紙の話をして、それが記事になり、目論見が当たって広く議論となって、マーケティングとしてうまくいった、ということです。
これは、ステマとはいえないですし、虚偽の話をしたわけでもなく、直接、法的にどうこうということではないと思います。しかし、いわゆる「炎上マーケティング」的な宣伝活動であり、こういったマーケティングに不快感を持つ消費者も多いのではないかと思います。私は、このジャポニカ学習帳の件は記事で読む限りでは、特に問題があるとまでは考えませんけれども、同様の手法で、消費者が誤認するようなマーケティングが行われる可能性はあり、注意が必要ではないか、と思いますし、事業者も広告、マーケティングについてのコンプライアンスのチェックは十分に行ってほしいと思います。
もっとも以前からのファッション界などが流行やブームを作り出す、というのも同じようなものかもしれませんが。
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