「ビタミンでシミを洗い流す」石けんに対する不当表示措置命令
昨日(2/2)、消費者庁は、株式会社Xena(ジーナ・福岡市中央区)に対して、販売する「VCソープ」と称する石けんの表示について景品表示法に違反する行為(優良誤認表示および有利誤認表示)があったとして、措置命令を命じました。
普通は、優良誤認表示、有利誤認表示のどちらかの行為が対象となることがほとんどですが、たまに両方いわれることもあります(あの「スカスカおせち事件」も両方です → 「バードカフェおせち事件に関する措置命令及び要請(景品表示法・消費者庁)」 (2011/2/22))。
【優良誤認表示】
措置命令の対象となった優良誤認表示は、情報誌に掲載された石けんの広告において、
○ 「シミを『ビタミン洗顔』で洗い流しませんか?」
○ 「長年の肌悩み、あきらめる前に!」
○ 「あれ?またシミが・・・」
○ 「それにしても、ビタミンで洗うとは一体!?なんでも、長年しみついた悩みやくすみを、洗顔だけで洗い流すというのだ!」
○ 「このビタミン洗顔だからこそ、シミのもとメラニンを含む、古い角質まで洗い流せるんだとか!」
のような表示を行って、あたかも、この石けんを使用することによって、シミを解消又は軽減することができるかのように示す表示をしていた、というもの。
この表示について、消費者庁が「不実証広告制度」(景品表示法7条2項)に基づき、Xenaに対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社から資料が提出されましたが、それら資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかったため、優良誤認表示とみなされたものです。
この不実証広告制度において、資料提出が期限が定められますが、通常は15日ですので、新たに資料を集めたり、実験を行ったりするヒマがありませんので、事業者としては、この種の広告を行うのであれば、十分な資料を事前に揃えておく必要があります。また、この根拠資料としては、かなり客観的なものを求められます。詳しくは、消費者庁「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針」(不実証広告ガイドライン)をご覧下さい。このガイドラインに関する判決については、当ブログで書いてますし、 「実務に効く公正取引審決判例精選」(泉水文雄・長澤哲也編/有斐閣)に簡単にですが解説を書いています。
→ 当ブログ 「景表法・不実証広告規定に関する判決(東京高裁)」 (2010/11/14)
【有利誤認表示】
有利誤認表示のほうは、情報誌に掲載された石けんの広告において、
あたかも、その広告に記載した期限(約1ヶ月)までに対象商品を初めて購入した場合に限り、通常価格の半額で購入することができるかのように表示していたのですが、実際は、10ヶ月ほどの期間、初めて購入した場合に半額で購入できることとしていた、というもので、一年前に出された「アディーレ法律事務所事件」と同じタイプの不当表示です(※アディーレ事件について、当ブログで取り上げてなかったことに今気づきました。ちょうどブログ更新が途切れ途切れの期間だったからで、同業者を擁護しようと思ったわけでは決してございません。)。
【措置命令】
措置命令の概要は、以下の通りです。
- 上記表示は、対象商品の内容について、優良誤認表示、有利誤認表示であり、景品表示法に違反するものである旨を一般消費者に周知徹底すること。
- 再発防止策を講じて、これを役員及び従業員に周知徹底すること。
- 今後、表示の裏付けとなる合理的な根拠をあらかじめ有することなく、上記表示(優良誤認表示部分)と同様の表示を行わないこと。
- 上記表示(有利誤認部分)と同様の表示を行わないこと。
なお、先日、三菱自動車の不当表示事件では、課徴金納付命令が出されましたが、本件は平成27年の不当表示であり、景品表示法の課徴金制度の施行は平成28年4月からですので、本件はそもそも対象とならないものです。ただし、今後はこういった事案でも、要件さえ満たしておれば、課徴金の納付を命じられる可能性があるので、事業者は、これまで以上に消費者向けの表示、広告には十分な注意が必要です。
※ 景品表示法は最近の何度かの改正で、条文番号(第○条など)が動いています。ブログなどに記載されている条文番号は当時のものですので、御注意ください。
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