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2017年1月24日 (火)

広告も消費者契約法上の「勧誘」に含まれるとの新判断(最高裁)

 本日、消費者契約法に関する重要な最高裁判決(平成29年1月24日 第三小法廷判決)が出されました。

判決文はこちら(裁判所サイト)

 これは、適格消費者団体である京都消費者契約ネットワーク(KCCN)が、サン・クロレラ販売株式会社に対して、「日本クロレラ療法研究会」が作成名義の新聞折込チラシを配布することが、景品表示法の優良誤認表示および消費者契約法の不実告知に該当するものとして、チラシの配布の差止等を求めた消費者団体訴訟ですが、この訴訟の上告審判決です。

【追記】(2/27) 「文化通信」(2/13)掲載の拙稿を、文化通信社の承諾を得て転載しました。)
 → 【コラム3】クロレラチラシ配布差止訴訟最高裁判決が広告に与える影響

 この訴訟の控訴審判決までの経緯は、当ブログでも書いておりますので、そちらをご覧いただきたいのですが、消費者契約法における「勧誘」要件についての重要判断です。

  → 「クロレラチラシ配布差止請求事件の控訴審判決」 (2016/3/4)

 消費者契約の締結について勧誘をするに際して、クロレラの本件広告チラシを配布する行為が、「消費者契約の締結について勧誘をするに際し」ての(法12条1項、2項)、不実告知行為(法4条1項1号)を行うことに当たるか否かについての争点で、これについて控訴審判決(大阪高裁)は否定しました。

 「勧誘」には、不特定多数の消費者に向けて行う働きかけは含まれず、そのような広告は「勧誘」に当たるとは認められない、とする考え方は、この控訴審判決のみならず、消費者庁など行政側の見解でした。

 しかし、同様の特定商取引法上の「勧誘」要件と共に、広告が該当しないとの解釈には批判も多く、昨年の日本消費者法学会第9回大会「広告と消費者法」でも鹿野菜穂子慶應大教授もそのような限定をすべきではないと強調されておりました。私もその通りだと思いますし、先週1月18日に大阪弁護士会でNPO消費者ネット関西の消費者法ゼミで広告・表示について講演した際にも、その点をお話ししていたばかりです。

 今回の判決では後記の通り残念ながらKCCNによる上告は棄却されています。しかし、判決では、この「勧誘」要件について、これまで行政が、含まれないとしていた「広告」も「勧誘」に含まれうることを明らかにしました。

 今回の判決では、控訴審判決の判断は是認できない、として、以下の理由を挙げています。

「法は,消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み,消費者の利益の擁護を図ること等を目的として(1条),事業者等が消費者契約の締結について勧誘をするに際し,重要事項について事実と異なることを告げるなど消費者の意思形成に不当な影響を与える一定の行為をしたことにより,消費者が誤認するなどして消費者契約の申込み又は承諾の意思表示をした場合には,当該消費者はこれを取り消すことができることとしている(4条1項から3項まで,5条)。そして,法は,消費者の被害の発生又は拡大を防止するため,事業者等が消費者契約の締結について勧誘をするに際し,上記行為を現に行い又は行うおそれがあるなどの一定の要件を満たす場合には,適格消費者団体が事業者等に対し上記行為の差止め等を求めることができることとしている(12条1項及び2項)。」 

「上記各規定にいう「勧誘」について法に定義規定は置かれていないところ,例えば,事業者が,その記載内容全体から判断して消費者が当該事業者の商品等の内容や取引条件その他これらの取引に関する事項を具体的に認識し得るような新聞広告により不特定多数の消費者に向けて働きかけを行うときは,当該働きかけが個別の消費者の意思形成に直接影響を与えることもあり得るから,事業者等が不特定多数の消費者に向けて働きかけを行う場合を上記各規定にいう「勧誘」に当たらないとしてその適用対象から一律に除外することは,上記の法の趣旨目的に照らし相当とはいい難い。」

として、

「本件チラシの配布が不特定多数の消費者に向けて行う働きかけであることを理由に法12条1項及び2項にいう「勧誘」に当たるとは認められないとした原審の判断には,法令の解釈適用を誤った違法がある。」

と結論づけたのです。

 ただ、控訴審判決と同様に、「本件チラシの配布について上記各項にいう「現に行い又は行うおそれがある」ということはできない」として、結論的には、上告棄却となりました。

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