「お試し価格」商法に対する差止請求訴訟提起(KCCN)
京都新聞が、適格消費者団体「NPO法人京都消費者契約ネットワーク」(KCCN)」が1月11日、健康食品通販会社「BRONX(ブロンクス)」(東京都)を相手に、ホームページ上の当該広告の差し止めを求めて、京都地裁に提訴した、と報じています。現時点で、KCCNの公式サイトに公表記事は出ていませんが(※公開されました。末尾【追記】参照)、この京都新聞の報道に拠りますと、定期購入なのに「お試し価格」などと銘打って、安く1回限りの購入だと誤認させる広告を掲載していたもので、これが景品表示法違反(不当表示)であるとして、同法に基づく消費者団体の差止請求訴訟を提起したものですね。
KCCNの主張は、健康食品の販売に際し、ホームページ上で特定のコースで購入する場合は「定価の7割引きの980円」と表示しているが、約款では5カ月間の購入を義務付けられており、最低でも支払総額が1万4100円になってしまうのに、この約款は小さい文字でページ下部の目にとまりにくい場所に記載されていて、一般消費者からは、単価980円で購入できると誤認させている、との内容のようで、景品表示法上の「有利誤認」の主張と思われます。
このような「お試し価格」商法は、上記会社だけではなく、全国的に健康食品や化粧品などの事業者が存在しており、消費者がホームページなどで、商品を通常価格より安い価格(「お試し価格」)で購入したところ、実際は定期購入契約だったというトラブルが急増していることについて、昨年(2016年)6月16日付で国民生活センターが報告書を公表しています。それによれば、相談件数は年々増加傾向にあり、2015年度の相談件数(5,620件)は、2011年度(520件)の10倍以上に増えているとのことです。
このような状況の下での上記KCCNの差止請求訴訟の提起ということになり、今後が注目されますが、ちょうど、昨年末に発刊された雑誌「国民生活研究(2016年12月)」(国民生活センター)にも関連の論考が出ています。この号の特集は「広告に関する消費者問題」で、この中の論文「インターネット広告に関する最近の法律問題」で森亮二弁護士が、ステルスマーケティング(ステマ)やインターネット広告のプライバシー問題などと併せて、この「お試し価格」商法についても述べています。
森弁護士の論文以外にも、この「国民生活研究(2016年12月)」は、広告問題や地方消費者行政などについて、重要な論文や報告等が掲載されており、以下に目次の抜粋を載せておきますので、興味のある方は是非ご一読ください。
「国民生活研究(2016年12月)」目次
特集「広告に関する消費者問題」
【特集に寄せて】広告をめぐる消費者問題と消費者関連法規
松本 恒雄 (独立行政法人国民生活センター理事長)
【論文】子どもに対する広告・マーケティングをめぐる新潮流
-日本におけるガイドラインの成立-
天野 恵美子(関東学院大学経済学部 准教授)
【論文】インターネット広告に関する最近の法律問題
森 亮二(弁護士)
【報告】JAROに寄せられた広告・表示に関する苦情と処理の概況
-平成27年度の実績から-
黒岩 達哉
(株式会社電通 総務局次長、公益社団法人日本広告審査機構 前審査部長)
【調査報告】全国都道府県における消費者行政の実態と課題
色川 卓男(静岡大学教育学部 教授)
梅田 智子(静岡大学教育学部 卒業生)
佐々木 愛矢(静岡大学教育学部 卒業生)
【制度紹介】フランス法におけるグループ訴権の導入
-金融分野における集団的損害回復制度の研究-
柴崎 暁(早稲田大学大学院経営管理研究科 教授)
丸山 千賀子(金城学院大学生活環境学部 教授)
【追記】(2017/1/15)
KCCNサイトに、訴状と差止請求書が公開されました。
→ KCCNサイト
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