「月刊住職」1月号の法律関係記事を読んで
当ブログの昨年秋の記事「位置情報とソーシャルゲームの法律問題」(2016/11/17)で、少しだけ触れました雑誌「月刊住職」(興山舎)ですが、バックナンバーを見てもらえばわかるように、記事のかなりの部分は法律関連の記事となっています。
宗教関係の雑誌なのにと思うのですが、考えてみれば、仏教寺院全体が対象なので、同じ仏教とはいえども各宗派の個別の宗教的な記事は、横断的なものを除いては扱いにくいでしょうから、寺院経営の一般実務的な話題が多くなり、必然的に法律関係記事のシェアが大きいということかもしれません。当該雑誌自体も「寺院住職実務情報誌」と称しています。
最新の2017年1月号も、法律に関連する記事としては、
「全日本仏教会の前会長の住職が「PL教団の教祖になれる」と吹聴して逮捕された真相」
「寺院が長年占有していれば国が国有地だと主張しても勝訴できる」
「葬送を怠る者や新たな葬法に法律(刑法)は機能し得るか(1)」
「寺院に預けられた少年に体罰したと批判された自称寺院住職の何が問題か」
「すでに施行されているマイナンバーの何が問題か」
「今こそ宗教と法律の問題新講座〔36〕寺院のすべてが個人情報保護法管理下におかれる法改正」
など満載ですし、毎号連載されている法律相談の今月号の質問は、
「責任役員会の決議でも実印捺印の議事録がなければ無効なのか」
「菩提寺には通用しないのを予め告知せず生前戒名を売るのは詐欺か」
というものです。
他にも、「注目高まる「ビットコイン」はお寺でも使えるのか」などといった面白そうな記事がありますね。
上記の記事のうち最初の、住職が逮捕された、というのは、昨年12月に住職らが大阪地検特捜部に背任などの疑いで逮捕、起訴されたという最近の事件に関するものです。早い取材だなぁというのが一番の感想ですね。
上から2番目の寺院の土地占有による国有地の時効取得、というのは、私たちが司法試験受験時代に民法の論点のひとつとして勉強した「公物の時効取得」の問題です。弁護士になってから、そういう問題に当たったことは残念ながらありませんでしたが。
「寺院のすべてが個人情報保護法管理下におかれる法改正」(櫻井圀郎)という記事は、今般の個人情報保護法改正全面施行の時点では、これまでの小規模事業者の適用除外の規定が撤廃されることから、小さな寺院であっても個人情報取扱事業者となることを踏まえて、改正法(政令等含む)の説明を中心に書かれているものです(次回以降に続くようです。)。
ただ、この中の「個人情報」の定義の説明で、「したがって、寺院で扱う「檀信徒の情報」は「個人情報」に当たりますが、「過去帳」で扱う「故人の情報」は「個人情報」に該当しません。」とあります。確かに死亡した「故人」は「個人情報」の本人たりえませんが、その家族、子孫らの生存している個人とその「故人」の情報が結びつけられている場合は、全体の情報(例えば、私の亡父に関する情報)としては、生存者(私)の「個人情報」となりますので、現存する檀家の先祖の過去帳記載の情報であれば、「個人情報保護法」の適用外としてしまうことはできないことは多いと思います。
マイナンバーの記事は、寺院実務に即したものかと期待しましたが、マイナンバー制度を批判的見地から危険性を指摘しているものでした。
宗教法人関連の事案の法律問題を検討したいときには、ここのバックナンバーも調査しておいたほうがよさそうですね。
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