景表法違反措置命令を受けた通販会社に対する製造メーカーの法的責任
本年3月23日、消費者庁は、有限会社ペルシャンオート(神奈川県厚木市)に対し、同社の販売する中古車の商品説明に景品表示法の規定する不当表示(優良誤認)があったとして措置命令を行っています。
→ 消費者庁公表資料(PDF)
これは、中古車17台について、同社がヤフオク!に出品した際に、商品説明の「修復歴」欄に「なし」と記載することにより、あたかも、当該中古自動車の車体の骨格部位に修復歴がないかのように示す表示をしていましたが、実際には、同社が別のオートオークションに出品した際の出品票には、車体の骨格部位に損傷があるもの又は修復されているものを示す記号が記載された修復歴があるものであった、というものです。
中古車販売についての優良誤認表示は、走行キロの偽装のケースも多いですが、これは修復歴隠しですね。
さて、ここのところ、広告表示関連の記事では見逃せない通販新聞ですが、今日はこのようなニュースを掲載していました。
→ ユーコー 措置命令巡りメーカー提訴も、「表示主体」巡る判断で企業間対立へ
当ブログでの紹介はしなかったのですが、今年1月26日、消費者庁が、通信販売業者の株式会社ユーコー(東京都豊島区)に対して、その販売する「PM2.5対応プラズマ空気清浄機」について、同社が新聞広告において、「PM2.5、花粉、ウイルス、ダニ、カビ対応」などと効果を示した上で「約21畳まで対応のハイパワーで広いリビングにもこれ1台でOK!」などと記載して、21畳の広さでも効果があるかのように宣伝した行為を、優良誤認表示として措置命令を出していました。
→ 消費者庁公表資料(PDF)
上記の通販新聞の記事はこの事案に関するもので、景品表示法での「表示主体」の問題を取り上げていますが、本件は、表示主体の判断の問題よりは、通販業者が不当表示の責任を問われた場合のメーカーの法的責任という観点の問題かと思います。かなり形は違いますが、シャンピニオンエキス事件と同様の問題ともいえなくもありませんね。
措置命令を受けたユーコーが、当該空気清浄機のメーカーである株式会社丸隆(東京都渋谷区)に対して訴訟提起を検討している、というもので、記事では明確ではありませんが、おそらくは、損害賠償請求訴訟でしょうね。
記事では、「ユーコーのケースは、制度導入前であり、金額も少額であるため課徴金の対象にはならない。だが、制度が始まれば、事業者間で対立に発展するリスクはより高まる。」と結んでいますが、その通りで、措置命令を受けただけでも、このケースの場合は返品対応や信用毀損などの企業損失を受けますし、課徴金の対象ともなれば、それに加えて多額の課徴金の負担という問題も出てきます。ですので、措置命令や課徴金納付命令を受けた表示主体事業者が、不当表示の元となった、その製造事業者や原材料製造販売事業者に対して、損害賠償請求を起こすというような事例は今後増えるのかもしれません。
おg
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