『危機管理広報の基本と実践』(浅見隆行弁護士・中央経済社)
偽装メニュー問題や最近のフォルクスワーゲン、東芝などの事件を持ち出すまでもなく、以前から、企業の不祥事などは跡を絶ちません。もちろん、企業ぐるみの故意的な不正行為などはあってはならないですが、うっかりミスや一部従業員の不正行為というのは、企業が努力していても、必ずしも完全には防げません。
したがって、不祥事発生防止の方策は充分に整えなくてはなりませんが、一方で、残念ながら、不祥事が発生した場合の対応も平常時から考えておく必要があります。不祥事が発生してから、泥縄的な対応をするようでは、火に油を注ぐような結果となって、ますます大きな問題となり、企業自身も経済的な損害や信用の損失が拡大することになりかねません。
大企業のみならず、理研のような研究機関や、SNS炎上事件の舞台となった飲食店なども同様ですが、不祥事後の対応が、結果的に組織の存亡に関わった事案もあることは御存じの通りです。
このような危機管理、リスクマネジメントの中で、現在は危機管理広報の役割も非常に大きなものとなっています。不祥事後のテレビや新聞、雑誌などのマスコミ対応、インターネットの掲示板やSNSでの情報伝達対応など、さまざまなことを考えておく必要があります。
私も、大企業から訴訟を提起され、新聞などに発表された事案で、相手方企業の代理人として、法的対応はもちろん、マスコミなどの広報対応にも関わりましたが、限られた時間の中で先の見通しを立てながら臨機応変に対応していくのは大変です。
テレビを見るほうは気楽ですが、突然起こった不祥事報道で、多くの報道陣の前でフラッシュをたかれ、テレビカメラで全国に報じられるという状況で、きちんと冷静に対応するというのは、いざ当事者になってみれば簡単なことではありません。それだけに、普段から、そういった場合の対応について考えておく必要があります。
そんな中、危機管理について詳しい浅見隆行弁護士が、危機管理広報についての実践的なマニュアル本を出版されました。
危機管理広報の基本と実践 (浅見隆行弁護士・中央経済社)
私も早速購入して目を通しましたが、記者会見のやり方やSNS対策などについて非常に具体的なノウハウがわかりやすく書かれています。
弁護士ももちろんですが、企業の管理部門、そして、経営者も読んでおかれることをお薦めします。特に昨今の各種の事案での記者会見その他を思い起こしながら読まれれば興味深いものとなると思います。
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