法務省「無期刑受刑者の仮釈放の運用状況等について」(平成27年10月)
誤解の多い無期懲役刑の受刑者の仮釈放の実態については、過去に当ブログで2回書いています。
「「23年度犯罪白書のあらまし」と「無期懲役刑の仮釈放の実態」(法務省)」2011年12月1日
同様のデータの最新版を、本日、法務省が、「無期刑の執行状況及び無期刑受刑者に係る仮釈放の運用状況について」(平成27年10月)として公表しましたので、あらためて、ご紹介いたします。
平成17年から平成26年までの過去10年間における無期刑の執行状況及び無期刑受刑者に係る仮釈放の運用状況の資料が掲載されています。
この中に、在所期間が60年以上65年未満の受刑者が仮釈放の申請を出していて、不許可になっているという例があります。私が生まれる前の時代、若い時に重大犯罪を犯して、おそらく80歳を超えてずっと刑務所に暮らしておられるのでしょうね。
よく、無期懲役といっても10年くらいで仮釈放される、などという言説が出回ったりしますが、この10年間で在所期間20年未満で仮釈放された受刑者はいませんし、それより長くても、なかなか仮釈放が認められるものではないことがよくわかると思います。
平成26年末時点で刑事施設に収容されている無期刑受刑者1,842人のうち、在所期間10年未満の者は706人(38.3%,平均年齢49.5歳)、10年以上の者は1,136人(61.7%,平均年齢60.3歳)です。
10年以上の者の中には、在所期間40年以上50年未満の者が27人(平均年齢72.3歳)、50年以上の者が12人(平均年齢79.4歳)となっているのです。
その他、いくつかの数字を並べてみますと、
平成17年から平成26年までの間に
無期刑仮釈放者数は,延べ73人(最も多かった平成17年には13人、最も少なかった平成19年には3人)。
無期刑新仮釈放者の仮釈放時点における平均受刑在所期間は、平成17年には27年2月、平成22年には35年3月だったが、平成26年では31年4月。
10年間に刑事施設内で死亡した無期刑受刑者の数は合計154人。
26年末時点の無期刑受刑者は1,842人。
仮釈放の審理結果については、平成17年から平成26年までの間に無期刑受刑者に対する仮釈放審理が終結した合計209件のうち、仮釈放を許されたものが46件、許されなかったものが158件、仮釈放審理中に無期刑受刑者が死亡するなどして仮釈放許否の判断がなされないまま審理が終結したものが5件。
仮釈放を許された無期刑受刑者の審理終結時における在所期間は、平成17年には26.8年だったが、平成26年には31.8年。
もちろん、これは仮釈放が認められた受刑者についての在所期間の平均年数なので、無期懲役受刑者全体について仮釈放される平均在所期間ではありません。つまり、無期懲役になった人が平均31年で出て来るという意味ではありません。多くの仮釈放されない受刑者がいますので。
仮釈放を許された受刑者について見ると、在所期間20年未満で仮釈放を許されたものは0件で、20ー25で5件、25-30で9件、30ー35で25件、35-40で4件、40-45で2件、45-50で1件。
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