不当な訴訟提起として慰謝料請求を認容した判決(長野地裁伊那支部・平27.10.28.)
本日(29日)の毎日新聞朝刊に、訴訟提起が不当であるとして、反訴において原告に対する慰謝料請求を認容した判決が報じられています。
太陽光発電所:批判封じの提訴違法 反対住民が勝訴
※ 報道記事は、日数が経過するとリンク切れしますので、ご了承ください。
大規模太陽光発電所の建設計画への反対運動を行っていた男性を被告として、発電所設置会社(原告)が6000万円の損害賠償を求めていた訴訟で、裁判所は、この原告会社の損害賠償請求を認めず、逆に、被告男性側からの反訴の慰謝料請求につき50万円を認容したものです。
企業などが、その事業活動に反対したり批判したりする市民などに対して、恫喝的に提起する訴訟を「スラップ訴訟」といいますが、この判決は、原告会社の訴訟提起がそのような不当提訴であることを認めたようです。
スラップ訴訟としては、近年も、企業や団体が、反対活動を支援する弁護士個人を訴えるなどの事例があります。もちろん、行き過ぎた反対運動などで企業の信用毀損が生じたような場合には、企業としても損害賠償請求を行うこと自体は適法な選択肢としてあることは言うまでもありません。
しかし、住民運動などによる表現の自由、報道の自由を不当に抑制する目的の訴訟提起は本件のように不法行為となりえます。このような訴訟提起は当該被告のみならず、他の者の行動、言論などに対しても萎縮的に働きますし、また、仮に損害賠償請求が認められなくても、訴訟に対応するための時間や費用、精神的な負担は大きいものとなります。
以前、当ブログでも訴訟提起が不当として争われた事件について書いたことがありますが(スラップ訴訟ではありませんが)、その事件では、不当提訴とは認められず請求棄却となっています。
→ 「不当訴訟提起に対する損害賠償訴訟判決(請求棄却)」(2008.10.28)
実際には、その訴訟提起がスラップ訴訟といえるかどうかは、微妙な判断となることもあり、こういった判決は珍しいと思いますので、ご参考まで。
【追記】(2016/3/7)
「消費者法ニュース」106号に「スラップ訴訟」が特集され、上記の太陽光発電計画事件についても、取り上げられています。
→ 「消費者法ニュース106号(特集・スラップ訴訟の実態 ほか)」(2016.2.27)
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