村上春樹の新刊初版の大半を紀伊國屋が買い取った話
今日は、栃木県の鬼怒川での堤防決壊で大変な被害が出ました。私も一部はNHKのネット中継で見ましたが、1地域とはいえ、大津波を思い出させる状況でした。
他の被災地も含め、これ以上の被害拡大がないことを祈ります。
さて、今日、村上春樹氏の新刊エッセイが発売されましたが、これについて、大手の書店である紀伊國屋書店が、この本の初版10万部の内、約9割を買い取って流通させるという報道がなされています。Amazonに代表されるネット書店への対抗と見られています。
村上春樹 「職業としての小説家 」 (Switch library)
↑ これはAmazonへのリンクですが(笑)
見方によっては一種の買い占めになるのですが、それが独占禁止法上の問題にならないか、という点について、話題になっています。この点について、昨日付で、以下のように、籔内俊輔弁護士への取材記事が出ています。籔内さんは公正取引委員会にも任期付き公務員として職務をされた経験のある独占禁止法に詳しい弁護士さんです。
「紀伊国屋書店が「村上春樹本」初版の「9割」買い取り作戦――独禁法違反ではないか?」
ここでは、買い占め行為自体が全く独占禁止法上の問題にならないわけではなく、種々の事情によっては、不公正な取引方法の1つである拘束条件付き取引などに該当する可能性があるとされています。もちろん、ここでは、上記の紀伊國屋書店の実際の例が違法だと断定されているわけではありません。
こういった行為によって競争が制限される「取引分野(市場)」の範囲をどう考えるか(市場の画定)、というのが重要な要素になってくるわけですが、それを、ひろく書籍流通市場と見るのか、「村上春樹本」という狭い市場を考えるのか、はたまた、「職業としての小説家」という特定の本の流通市場と考えるか、によって違ってきます。村上春樹のような世界的にも人気の作家の場合は、そういった狭い市場も想定できないこともないでしょうが、実際に上記の行為で公正取引委員会が規制に乗り出すか、とされる可能性は極めて低いんじゃないかと私は思いますが、さてどうなるでしょうか。
もちろん、公正取引委員会も書籍流通市場全般については、興味は持っているとは思いますけど。
独占禁止法って難しいですよね。
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