今年6月の景品表示法改正
ぼちぼちと、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)の改正について書きたいと思います。
まず、今年6月6日に国会で可決成立した改正についてです。
先に言っておきますと、この今回の改正では景品表示法違反の不当表示について課徴金制度はまだ導入されていません。
今回の改正は、「不当景品類及び不当表示防止法等の一部を改正する等の法律」の可決成立という形で行われています(法律家でない一般の人は、ここのあたりは、スルーしてもらっていいところですが)。
この法律は、タイトルに「等」がついていますように、景品表示法の改正だけではなくて、他に、消費者安全法と独立行政法人国民生活センター法の改正も含まれています。法律の中身を見ると、3つの法律それぞれの一部改正が、1条、2条、3条に分けて書かれています。
そして、最後の4条に「政府の措置」として、
「第一条の規定(※川村注 景品表示法改正部分)により講じられる措置のほか、政府は、この法律の施行後一年以内に、課徴金に係る制度の整備について検討を加え、必要な措置を講ずるものとする。」
という規定が置かれています。
施行日については、既に決まっており(この点をご指摘いただきありがとうございました。)、改正自体の施行日は本年12月1日になっています。ただし、上記の4条についての施行日は7月2日(施行についての政令公布日)とされました。したがって、それから1年以内となると検討等の期間は最長でも来年7月までとなります。
つまり、今回の改正では課徴金制度の導入はされなかったものの、この4条によって、政府としては、遅くとも、来年中には課徴金制度の整備について検討および必要な措置(改正など)を行わなければならない、ということになります。この課徴金導入については、既に消費者委員会の答申が出ていますが、これについては、別記事で後日書きたいと思います。
さて、それでは、今回の改正で実際に改正されたのは、どういう点かというと、以下の通りです。ちょっと地味な部分の改正ですが、重要であろうと思います。
特に、5(2)の都道府県知事への権限委任に関しては、これまで都道府県では行えなかった事業者に対する措置命令を発することができるようになりますので、注目されます。ただ、これまでも都道府県には指示という権限がありましたが、都道府県によってはほとんど活用されていないところも多く、結局の所、人と予算がなければ執行できないことになりますので、実効性を持たせるためには財政など都道府県の執行体制の支援がなければ絵に描いた餅になる可能性もあります。
【今回の景品表示法改正の概要】
1 事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置
(1) 事業者は、自己の供給する商品等について、表示等により不当に顧客を誘引し、
一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害することのないよう、体制の整
備その他の必要な措置を講じなければならないこととされたこと。
(2) 内閣総理大臣は、事業者が講ずべき措置に関して、必要な指針を定めるととも
に、指針を定めようとするときは、事業所管大臣等に協議し、消費者委員会の意
見を聴かなければならないこととされたこと。(第7条関係)
2 指導及び助言
内閣総理大臣は、事業者が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を
図るため必要があると認めるときは、必要な指導及び助言ができることとされたこ
と。(第8条関係)
3 勧告及び公表
内閣総理大臣は、事業者が正当な理由がなくて講ずべき措置を講じていないと認
めるときは、表示等の管理上必要な措置を講ずべき旨を勧告できることとするとと
もに、当該事業者がその勧告に従わないときは、その旨を公表できることとされたこ
と。(第8条の2関係)
4適格消費者団体への情報提供
消費生活協力団体等は、適格消費者団体に対し、情報を提供できることとすると
ともに、適格消費者団体は、当該情報を差止請求権の適切な行使以外の目的のた
めに利用し、又は提供してはならないこととされたこと。(第10条関係)
5 権限の委任等
(1) 消費者庁長官は、緊急かつ重点的に不当な表示等に対処する必要があること等
の事情があるため、措置命令等を効果的に行う上で必要があると認めるときは、政
令で定めるところにより、報告の徴収等の権限を事業所管大臣等に委任できること
とされたこと。
(2) 消費者庁長官に委任された権限に属する事務の一部は、政令で定めるところによ
り、都道府県知事が行うこととすることができることとされたこと。(第12条関係)
6 関係者相互の連携
内閣総理大臣、関係行政機関の長、関係地方公共団体の長等は、必要な情報交
換その他相互の密接な連携の確保に努めることとされたこと。(第15条関係)
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