非嫡出子相続差別規定撤廃の反対論の馬鹿馬鹿しさ
先日、最高裁で、現行民法が、非嫡出子の法定相続分を嫡出子の半分としていることが憲法違反との判断がなされたことはご存じの通りで、これにより、現在の国会で民法改正が検討されています。
ところが、自民党議員の中には、結構反対論者がおられるようです。もちろん、国会議員が立法に関していろいろな意見を持つことは悪くはないのですが、この非嫡出子規定が、日本の家族制度、法律婚制度を破壊するなどということを論拠にしていることについては、頭がクラクラしてきます。
どうも、このような反対論者は、非嫡出子を「婚外子」と言って、浮気による子供であることを前提にされているようなのです。もちろん、そういう場合もありますが、それだけではありません。事実婚、内縁などで子供を作った場合で、片方の親が不幸にも若くして亡くなり、その後再婚して入籍し、子供(嫡出子)を作ったというような場合もあります。この場合に、最初にできた非嫡出子に相続差別をすることが妥当でしょうか。最近は、夫婦別姓のために事実婚をする人も多くなってきましたが、そのように真面目に実質的に婚姻関係を結んでいる人でも、同様のことが生じます。
つまり、非嫡出子といっても、いろんなケースがあります。
そして、反対論者の言うような、浮気のケースのことだけを考えても、全く理由になりません。報道によれば、自民党の西田昌司参議院議員は「家族制度が崩壊してしまうんじゃないかと。このままこれを認めると、どんどん婚外子を作って家族を破壊していっても、その方に財産分与できるわけですよね」などとおっしゃっているようです。
この論理が正しいとすると、非嫡出子の相続分をゼロにすれば、浮気で子供を作ることが減るのでしょうか? 私は逆だと思います。浮気で婚外子を作ることを減らしたければ、財産を全部婚外子にやってしまうほうが余程効果的かもしれません(冗談ですよ、もちろん。)西田議員はどういうお考えでそういったお馬鹿な発言をなさっているんでしょうか。
だいいち、浮気をして、よそで子供を作る人が、相続分が多いとか少ないとかによって、行動を変えるのでしょうか?これも理解ができません。
「婚外子」を作って家族制度が破壊することがいけない、というのであれば、そのような浮気をした本人を姦通罪で罰するなどの不利益処分を負わせる形で、抑制すべきことであり、その結果、産まれた何の責任もない子供に不利益を負わせる必要があるでしょうか。そんなことで家族制度の破壊にブレーキがかかるのでしょうか。
また、仮に子供らの相続分を平等にしても、遺言により特定の子供に相続させることにすれば、遺留分制度による限度はあるにせよ、現在の規定である1/2の相続にさせることはできるわけです。
さらに、反対論者は、非嫡出子は親の面倒を見ずに、死後になって突然現れるかのように言いますが、これも現実にはいろいろです。最初の結婚で嫡出子がおり、離婚後、別の人と事実婚を続けていて非嫡出子がいるとすれば、非嫡出子が親の面倒を最後まで見ることが多いでしょうし、親の面倒を見るとか見ないとかの差は、嫡出子同士でも良く紛争の原因になっていることで、非嫡出子だから、どうだという問題ではありません。
この点で、同じ自民党の野田聖子議員が、自分は出生時には非嫡出子であったと発言されています。その後、両親が入籍して嫡出子となっているわけですが、この場合でも冒頭に述べたように、入籍する前に親のどちらかが死んでしまえば、ずっと非嫡出子だったわけです。
というわけで、国会議員におかれましては、さっさと民法改正を行っていただきたいと思います。もちろん、国会がこの改正を遅らせたとしても、最高裁の違憲判断が出た以上は、今後、裁判所を含めた法律実務では、この規定が違憲無効であることを当然の前提として進められることになるわけですが。
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