ステマ行為と不正競争防止法による偽装表示防止規定(13号)の適用について
【追記(2022/09/16】: 不正競争防止法2条1項13号は、その後の改正で、現在は同項20号になっていますのでご注意ください。
先日、知的財産法の島並神戸大教授から、twitterにて ステルス・マーケティング(ステマ)行為に対する不正競争防止法の偽装表示禁止規定(2条1項13号)の適用可能性について示唆いただきました。
ここでも何度かステマについては書いていますが、景品表示法や刑法、民法といったところが主で、不正競争防止法については検討していませんでした。ということで、ちょっと、論点整理的に書いてみました。よくわからないところもあり、深く検討しているわけでもありませんので、全くの勘違いの部分もあるかもしれません。おかしな所はご指摘いただければ幸いです。
13号の規定は、
「商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を提供する行為 」
となっています。よく、食肉などの産地偽装の場合にこの規定が使われます。
まず、景品表示法は、一般消費者に対する表示についての規制ですが、不競法は消費者に対する表示に限られませんので、事業者間取引における表示など対象は拡がります。
また、景品表示法の違反行為については、消費者庁の措置命令や都道府県知事の指示という行政の処分が出されますが、不当表示行為そのものには刑事罰もありません(措置命令違反などの刑罰はあります。)。また、基本的には民事的な請求権の規定はありません。ただ、不当表示行為については、適格消費者団体による差止請求権は認められています。
これに対して不競法違反行為については、民事的に差止請求権、損害賠償請求権が認められますし、刑事罰(13号違反については21条2項1号、5号)もあります。
その意味では、不競法のほうが、民事的、刑事的な制裁が広く認められることになります。
ただ、不競法の差止請求や損害賠償請求が認められるのは、違反行為によって営業上の利益を侵害された(される恐れのある)事業者についてですので、一般消費者や消費者団体からの権利行使はできないことになります(拡大すべきとの議論はあります。)。
そして、ステマ行為についての適用の場面で問題となるのは、ブロガーなどの第三者がステマ行為を行っている場合、不競法に基づいて、その第三者に対して、差止請求(3条)や損害賠償請求(4条)が認められるかという点です。景品表示法でも、行政処分の対象は当該事業者に限られますので、直接に不当表示を行ったブロガーなどに対して措置命令などは出せないことになっています。
不競法上の差止請求や損害賠償請求の相手方については、代表者個人や役員などの不正競争行為の直接行為者が含まれるかについては議論があるようです。裁判例では、厳格に解されているようですので、その考え方であれば、ブロガーなどの第三者は含まれないということになりますね。ただ、そうだとすると、不正競争行為者に対する刑罰規定の対象者との関係や両罰規定(22条)との関係がよくわからない感じです(すみません、あまり深く考えていません。)。
もっとも、行為者の行為自体が、民法上の不法行為(709条)に該当すれば、それは別論ということになります。この場合には、広告媒介者や広告塔の責任と同じ問題になってきそうですね。
景品表示法での「著しく優良(有利)」と示す表示と、上記の不競法13号の「誤認させるような表示」との間に違いがあるかどうかについては検討が必要ですね。上記の通り表示の対象者も異なりますし、保護法益も異なりますので。ただ、実際の適用上では、あまり差がないかもしれません。
以上、書きっぱなし、という感じですが、機会があればもう少し検討したいと思います。
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