ブログの告発記事が不法行為であると認められた判決(名古屋高裁)
またブログ更新が遅くなってしまいました。
裁判所サイトの下級裁判所判例集に、昨年末の名古屋高裁の控訴審判決が出ていました。
これはブロガーがブログに記載した内容につき、他人への誹謗中傷として不法行為に基づく損害賠償が認められるか、というものであり、原審の名古屋地裁半田支部は、公共の利害に関する事実に関する事実についてのもので、もっぱら公益をはかる目的で掲載され、かつ、その内容も真実に基づくものであったとして、ブロガーに対する請求を棄却していました。
ところが、今回の名古屋高裁の控訴審判決は、不法行為であるとして100万円の損害賠償を認めました。原告が産業廃棄物の保管場所として、被告(ブロガー)の住むマンションの隣地を利用(搬入、保管、搬出)していたことについてのトラブルに関するものなのですが、詳細は裁判所サイト掲載の判決文をご覧下さい。
結論としては、このブログ記事については、表現方法などからみて、もっぱら公益を図る目的で掲載されたとまで認めることはできず、かつ、本件表現が真実に基づくものとは認められないとして、一審とは逆の認定判断を行ったものです。
平成24年12月21日 名古屋高裁判決(損害賠償請求控訴事件)
名誉毀損に関する法律は、ちゃんと説明すると結構ややこしいうえ、刑法上の名誉毀損と、民事の不法行為としての名誉毀損とは異なるものの、微妙に関係してきて、一般の方に紹介するのはなかなか難しいところです。最近は、ブログの記事に関しても、名誉毀損が民事、刑事で争われている裁判があります。
ただ、ずっと以前にも当ブログで書いたことがありましたが、これらについて、「本当のこと(真実)を書くのだから構わない(違法にならない)。」と思っておられる方が結構おられます。しかし、名誉毀損は、必ずしも嘘のことで名誉を毀損する場合だけではなく、本当のことを書いた場合でも名誉毀損は成立しない訳ではありません。
例えば、仮に私が昔、何かの犯罪で捕まって刑務所に服役したことがあったとして(ないですが)、真実であるそのことを今は知らない近所の人に言いふらすと、いくら真実であっても名誉毀損が成立する可能性があります。ブログに限らず、掲示板や、Facebook、TwitterなどのSNSでも起こりうる話ですので、各種のトラブルについて告発目的でネットに発信しようとする場合であっても充分にお気を付け下さい。正義感に基づく場合であっても、民事上も刑事上も違法とされ、損害賠償を支払わなければならなかったり、犯罪として刑事上の責任を負う危険性があります。
« 井村屋「あずきバー」商標権判決 | トップページ | きたやまおさむ講演会行ってきました。 »
「ウェブログ・ココログ関連」カテゴリの記事
- ステマ規制の厳格化(韓国公取委)(2020.08.13)
- エディオン事件の公取委審決(独禁法)(2019.10.04)
- 改正民法(債権法)と「催告後の債務承認」(2018.02.14)
- web雑誌「国民生活」2018/1月号(国民生活センター)(2018.01.16)
- 2017年の当ブログ記事アクセスランキング(2018.01.04)
「パソコン・インターネット」カテゴリの記事
- 「ピークパフォーマンス」(野上麻理著)のご紹介(2022.02.27)
- 「弁護士法72条違反で」とは(2021.10.18)
- メルカリなどフリマへの出品と違法行為(2021.10.13)
- 「Web相談始めました」(2021.08.08)
- 個人情報保護法(令和2年改正法)新ガイドラインの公表(2021.08.03)
「裁判」カテゴリの記事
- 台風被害によるマラソン大会の中止と参加費の返金(2022.05.13)
- 「クレベリン」(大幸薬品)措置命令まとめ(2022.05.05)
- 不実証広告規制(景品表示法)を合憲とする最高裁判決(2022.03.09)
- 「判例による離婚原因の実務」中里和伸著(LABO)」(2022.01.08)
- 「Web相談始めました」(2021.08.08)
「法律」カテゴリの記事
- 台風被害によるマラソン大会の中止と参加費の返金(2022.05.13)
- 「クレベリン」(大幸薬品)措置命令まとめ(2022.05.05)
- 不実証広告規制(景品表示法)を合憲とする最高裁判決(2022.03.09)
- 「判例による離婚原因の実務」中里和伸著(LABO)」(2022.01.08)
- 「弁護士法72条違反で」とは(2021.10.18)
コメント