医薬品ネット販売規制違法訴訟の上告審判決(最高裁)
ケンコーコムとウェルネットの2社が、医薬品のネット販売を規制する薬事法の省令は違法であるとして、国を被告として、販売権利の確認を求める訴えを起こしていた訴訟の最高裁判決が先程言い渡されました。
判決は、省令による規制を無効とした控訴審判決を支持して、上告を認めなかったものです。
もっとも、最高裁第2小法廷はこの上告審において口頭弁論を開かずに判決期日を指定していたため、民事訴訟法上、国側の上告を認めないことはわかっていましたので、結論的には予想どおりです。
この事件の東京高等裁判所の控訴審判決については、当ブログでも取り上げていますので、これまでの状況はそちらをご覧下さい。1審の東京地裁は原告2社側の請求を認めなかったのですが、控訴審において東京高裁は、薬事法にネット販売の禁止が明示されず、薬事法がネット販売一律禁止まで省令に委ねていないと判断して、省令による規制を違法としました。
→ 「医薬品ネット販売規制行政訴訟で原告側主張を認める逆転判決(東京高裁)」(12/4/26)
判決の詳細がまだわかりませんので、それを見てからでないと最高裁の判断内容についてコメントできませんが、公表後、別記事で書きたいと思います。
しかし、上告を認めなかった理由が控訴審判決での理由のままだとすると、上記ブログ記事(4/27追記部分)でも指摘したように、ネット販売規制自体が違法や違憲とされたわけではありませんので、その判断理由を前提とする限りは、省令での規制ではなく、薬事法自体を国会で改正して禁止、規制の規定を盛り込めば、規制方法としては問題がないとする考え方も可能になりそうです。
現に、判決前の今朝のサンケイの報道によれば、政府は今回の判決に対応するため、ネット販売規制のための薬事法改正の方針を固めた、とのことです。この場合は、医薬品のネット販売の可否について国会で審議がされることになります。
医薬品のネット販売がどのように国民の健康に影響するのか、仮にそういった安全面についての問題があるとして、全面禁止が妥当なのか、安全面を考慮した必要限度の規制をしたうえでネット販売自体は認めるのか、引き続き注視すべき問題ですね。
【追記】 最高裁サイトに判決文が掲載されましたので、追加記事を書きました。
« 「インターネット上の取引と『カード合わせ』に関するQ&A」(消費者庁) | トップページ | 【速報】医薬品ネット販売規制違法訴訟上告審判決(最高裁) »
「パソコン・インターネット」カテゴリの記事
- 「食べログ」東京地裁判決と公取委実態調査報告書(2022.06.16)
- スシロー「おとり広告」で措置命令(景表法)(2022.06.09)
- 「ピークパフォーマンス」(野上麻理著)のご紹介(2022.02.27)
- 「弁護士法72条違反で」とは(2021.10.18)
- メルカリなどフリマへの出品と違法行為(2021.10.13)
「裁判」カテゴリの記事
- 「食べログ」東京地裁判決と公取委実態調査報告書(2022.06.16)
- ドライヤーの広告に関する差止訴訟(ダイソンvsパナソニック)(2022.06.12)
- 台風被害によるマラソン大会の中止と参加費の返金(2022.05.13)
- 「クレベリン」(大幸薬品)措置命令まとめ(2022.05.05)
- 不実証広告規制(景品表示法)を合憲とする最高裁判決(2022.03.09)
「法律」カテゴリの記事
- 「食べログ」東京地裁判決と公取委実態調査報告書(2022.06.16)
- ドライヤーの広告に関する差止訴訟(ダイソンvsパナソニック)(2022.06.12)
- スシロー「おとり広告」で措置命令(景表法)(2022.06.09)
- 台風被害によるマラソン大会の中止と参加費の返金(2022.05.13)
- 「クレベリン」(大幸薬品)措置命令まとめ(2022.05.05)
« 「インターネット上の取引と『カード合わせ』に関するQ&A」(消費者庁) | トップページ | 【速報】医薬品ネット販売規制違法訴訟上告審判決(最高裁) »
コメント