大規模小売業者等と納入業者との取引に関する実態調査報告書(公取委)
再来週、優越的地位濫用と下請法に関する研修の講師を務めるため、遅ればせながら、ジュリスト6月号を仕事の合間に読んでいます。
「【特集】優越的地位の濫用とは?――その現状と対策」です。
さて、そんな中、公正取引委員会が、昨日「大規模小売業者等と納入業者との取引に関する実態調査報告書」を公表しています。
→ 報告書概要(PDF)
→ 報告書本文(PDF)
これは、優越的地位の濫用が独占禁止法2条9項5号に法定化されて、20 条の6により新たに課徴金納付命令の対象とされ、公正取引委員会がガイドライン「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」を策定するなどしてきた中で、公正取引委員会が、取引の実態調査に加えて、優越ガイドラインの認知度や優越的地位の濫用となる行為類型とされている行為又は要請の実態について確認し、今後の適切な法運用に資するために調査を実施したものです。
調査対象の小売業者は、これまでの大規模小売業告示の規制対象となる大規模小売業者地だけではなく、地域一番店等の特定の地域において高い売上高を有し、取引の当事者間において購買力を発揮し得ると考えられる小売業者も含めた小売業者に対象を拡大しているとのことです。
なお本年5月16日に「ホテル・旅館と納入業者との取引に関する実態調査報告書」(PDF)も公表されています。
今回の調査内容は、大規模小売業者等と納入業者との取引について、優越ガイドラインにおいて、優越的地位の濫用となる行為類型として例示されている行為又は要請(「購入・利用強制」,「協賛金等の負担の要請」,「従業員等の派遣の要請」,「受領拒否」,「返品」,「支払遅延」,「減額」及び「取引の対価の一方的決定」)に沿って状況等を調査したものです。調査結果やその評価は報告書をご覧下さい。
調査結果を踏まえた公正取引委員会の対応として、次の点があげられています。
優越ガイドラインの認知度が特に低かった購買部門の一般社員を重点対象として業種別講習会を実施。認知度が相対的に低かった売上高100 億円未満の大規模小売業者等に対しては、当該講習会への積極的な参加を促すこととする。
大規模小売業者等が優越的地位の濫用を行うことのないようにするため、関係事業者団体に対して、本調査結果を報告するとともに、大規模小売業者等が問題点の解消に向けた自主的な取組を行えるよう、改めて優越ガイドライン及び大規模小売業告示の内容を傘下会員に周知徹底するなど、業界における取引公正化に向けた自主的な取組を要請する。
大規模小売業者等と納入業者との取引実態及び独占禁止法上問題となるおそれのある行為の把握に努めるとともに、仮に、優越的地位の濫用行為等独占禁止法に違反する疑いのある行為が認められる場合には、厳正に対処する。
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