「中小事業者の保護と消費者法 ─ドロップシッピング、提携リース、フランチャイズ、 不動産サブリースをめぐって─ 」(近畿弁護士会連合会・大阪弁護士会編)
消費者契約法や特定商取引法など、いわゆる消費者法、消費者保護法による規制、救済というのは、企業(事業者)対一般市民(消費者)の取引(B to C 取引)に関して適用されるのが原則で、事業者対事業者(B to B 取引)には適用されません。
しかし、現実の社会では、詐欺的な悪質商法を含めて、中小事業者がそのターゲットになる場合も少なくありません。悪徳業者によっては、消費者保護法による、クーリングオフや契約取り消しなどの効果を避けるため、あえて零細事業者を狙うこともあるようです。たとえば、消火器を売りつけるとか、電話器のリースなどで以前から見られる形態です。少し前になりますが、「節電器」というものを売りつけた詐欺商法も全国的に展開されましたね。
そのような場合には、全く消費者法が使えないということでいいのか、という点に関しては、以前から問題にされていたことですが、昨年の近畿弁護士会連合会大会のシンポジウムでは、「中小事業者の保護と消費者法~契約弱者の救済にむけて~」をテーマとして開催され、その内容がこのたび書籍として発行されました。
中小事業者の保護と消費者法
─ドロップシッピング、提携リース、フランチャイズ、
不動産サブリースをめぐって─
近畿弁護士会連合会・大阪弁護士会編・民事法研究会発行
本書の内容は以下の通りです。
第1編 中小事業者の保護と消費者法の実務
第1章 事業者間取引と消費者法
第2章 特定商取引法による救済と限界
第3章 提携リース被害の現状と課題
第4章 フランチャイズ契約の問題分析
第5章 不動産サブリース問題の現状と課題
第2編 パネルディスカッション「中小事業者の保護と消費者法」
第3編 契約弱者としての中小事業者の保護の拡充を求める決議
第4編 資料
私自身は出版に関与していませんが、私も所属している大阪弁護士会消費者保護委員会の多くのメンバーなどの力を結集した本です。あまり類書はないと思いますので、実務家、研究者、消費者問題・中小企業問題専門家の方々には役立つ内容だと思います。ちなみに、資料編最初のドロップシッピング判決は、うちの弁護団が獲得したものですね。
« とある株主提案議案と「消費者情報」6月号(特集「美容医療サービスのトラブル) | トップページ | 平成24年司法試験短答式試験結果発表(法務省) »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 「ピークパフォーマンス」(野上麻理著)のご紹介(2022.02.27)
- 「判例による離婚原因の実務」中里和伸著(LABO)」(2022.01.08)
- 「消費者法ニュース」7月号・消費者法白書(2021.08.02)
- 「悲劇の世界遺産 ダークツーリズムから見た世界」(井出明著 文春新書)(2021.06.08)
- 独占禁止法・下請法関係の書籍2題(2021.05.31)
「法律」カテゴリの記事
- 「食べログ」東京地裁判決と公取委実態調査報告書(2022.06.16)
- ドライヤーの広告に関する差止訴訟(ダイソンvsパナソニック)(2022.06.12)
- スシロー「おとり広告」で措置命令(景表法)(2022.06.09)
- 台風被害によるマラソン大会の中止と参加費の返金(2022.05.13)
- 「クレベリン」(大幸薬品)措置命令まとめ(2022.05.05)
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 「中小事業者の保護と消費者法 ─ドロップシッピング、提携リース、フランチャイズ、 不動産サブリースをめぐって─ 」(近畿弁護士会連合会・大阪弁護士会編):
« とある株主提案議案と「消費者情報」6月号(特集「美容医療サービスのトラブル) | トップページ | 平成24年司法試験短答式試験結果発表(法務省) »
コメント