犬の負傷について飼い犬用リードひもの製造物責任が認められた判決(名古屋高裁)
3年以上前になりますが、ペットの犬を車に同乗させていて交通事故で怪我をしたケースでの損害賠償に関する判決の記事を書いたことがあります。
→ 「同乗のペット犬の負傷に対する交通事故損害賠償判決」(08/11/10)
今回、交通事故ではありませんが、同様に、飼い犬の怪我についての損害賠償訴訟の判決を見つけましたのでご紹介します。上の判決と同じく名古屋高裁ですね。こっちは、飼い犬用ブレーキ付きひもの製造物責任が問題になった事案です。
名古屋高等裁判所平成23年10月13日判決(判例時報2138-57)
事案は、ブレーキ付きリードひもを使用して散歩させていた飼い犬が突然走り出し(別の犬のところへ行こうとしたようです。)、飼い主がひものブレーキボタンを押したが、リールが空回りしてブレーキがかからず、飼い主がリードを引っ張って犬の前進を阻止した際に犬がジャンプして後ろ向きに倒れ、両後ろ足に怪我を負ったというもののようです。
飼い主は、この飼い犬用のひもには、製造物責任法(PL法)3条の「欠陥」があったとして、このひもを輸入販売していた会社を被告として損害賠償の請求を行っていたものです。
この裁判の一審岐阜地裁(平成22年9月14日判決)は、「欠陥」はなかったとして飼い主の請求を棄却しました(原審判決も同じ判例時報に掲載されています。)。
本件の主要な争点は製造物責任法上の「欠陥」の有無で、原審と異なり、名古屋高裁は「欠陥」の存在を認定して、輸入販売会社の損害賠償責任を認めました。「欠陥」についての判断は判決を直接見てもらうことにして、ここでは、高裁判決が認容した損害額を取り上げます。
事案は違いますが、法律上、損害自体の考え方は冒頭の交通事故の場合と基本的には同じことになります。
本件では、飼い主は、犬の治療費等(42万7280円)、リードひもの代金(4680円)、飼い主の慰謝料(80万円)を請求しています。
判決では、このうち、治療費等については、ほぼ満額(42万5260円)を認め、リードひもについては、それまで3回使用していたとして半額の2340円を認めました。
そして、飼い主の慰謝料(精神的損害)については、「・・・・控訴人は、本件事故後、夫の協力を得ながら、歩行が困難になったタロウの面倒をみるとともに、これまでに、タロウのリハビリに必要な車椅子を四台製作していること、現在もタロウの両後ろ足には固定具が装着されていて、今後も、タロウの面倒をみていかなければならないこと、タロウは、控訴人夫婦の家族の一員として扱われてきていることが認められる」として、慰謝料額は30万円が相当である、と判断しています。
冒頭の交通事故の裁判では、飼い主の夫婦2名が原告となっており、こちらの高裁判決は、原告両名にそれぞれ20万円ずつの慰謝料(ただし、過失相殺有り)が認められています。
同種のペットの傷害についての損害賠償を考えるうえでは参考になる事件ですね。
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