1社当たり過去最高課徴金(ワイヤーハーネス談合)
昨日(1/19)、公正取引委員会は、自動車メーカーが発注する自動車用ワイヤーハーネスや関連製品の見積り合わせの参加業者らに対して、独占禁止法3条(不当な取引制限の禁止)に違反する行為を行っていたとして、排除措置命令及び課徴金納付命令を行っています。
→ 公取委サイト報道発表資料(PDF)
公正取引委員会によれば、自動車用ワイヤーハーネスは、オーディオ,エアバッグ等の自動車内の各装置類を作動させるために電気及び信号の伝送を担う電気回路に用いられるものであり、自動車の神経・血管に例えられるものであり、自動車用ワイヤーハーネスの関連製品は、自動車用ワイヤーハーネスに一定量を超える過剰な電流が流れた場合に電流を遮断して自動車を保護する機能等を有する配線器具である、とのことです。
対象となった違反行為企業と課徴金額は以下のとおりです(課徴金額合計128億9167万円)。矢崎総業の約96億円は、1社当たりの課徴金額では過去最高額とのことですね。
矢崎総業株式会社(96億 713万円)、住友電気工業株式会社(21億 222万円)、株式会社フジクラ(11億8232万円)、古河電気工業株式会社(0)
古河電工が課徴金ゼロなのは、自主申告による課徴金減免制度の適用の結果ですが、本件では、他の企業も一部について同制度の適用がなされています。詳しくは、 → 課徴金減免事業者一覧
この談合事件は、2年前の平成22年2月に、米国司法省、欧州委員会などととほぼ同時期に調査を開始したものとのことで、日本での立入検査時の報道については、当ブログでも取り上げています。
なお、今朝の日経の報道ではアメリカでは古河電工は司法取引に応じて2億ドルを支払い、現地日本人社員3人が収監されたとされています。
→ 「自動車部品メーカーに対する日米欧の独禁当局の協調調査か?」(10/2/25)
【追記】(1/31)
アメリカの司法省は1月30日、矢崎総業とデンソーが、この価格カルテルで有罪を認め、総額5億4800万ドル(約420億円)の罰金を支払うことになったと発表した、と報道されています。また、矢崎総業の当時の現地法人の日本人幹部4人の1年3カ月から2年の禁錮刑も受け入れた、とのことです。
【追記】(3/27)
アメリカの司法省は3月26日、デンソー日本人幹部が司法取引に応じて温度調整機器の価格操作などの罪を認め、約1年の禁錮刑と2万ドル(約166万円)の罰金支払いに同意したと発表した、と報道されています。また、デンソーも3月5日に有罪を認め、7800万ドルの罰金支払いに同意した、とのこと。
この報道では、既に矢崎総業が4億7000万ドル、古河電気工業が2億ドルの罰金支払いに同意している、となっていますので、デンソーと矢崎の罰金を合計すると、上記1月31日付の追記記載の両社の罰金総額に符合しますね。
(4/24)【追記】
時事が、アメリカ司法省が4月23日、フジクラがこの価格カルテル事件で有罪を認め、2000万ドルの罰金を支払う司法取引に同意したと発表した、と報じています。
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日本の公正取引委員会が取り締まっているのは、国内企業しかも中堅中小ばかりで、欧米企業は一切取り締まっていません。 一昨年、私も公正取引委員会の調査を受けた時、『日本の公取は内弁慶の国家権力だ』と言ったら、30代と思われる調査官は、『若手は外資もやろうといっているが、幹部連中が「それをやったら政治マター、国際マターになる」と言って腰が引けている』と苦々しくいっていました。 日本の公取にも外資をどんどん取り締まって、国際収支黒字に貢献してほしいところです。
投稿: 永崎士道 | 2012年7月25日 (水) 08時56分