山陽マルナカに対する排除措置命令・課徴金納付命令(公取委)
独占禁止法に関連して、本日、公正取引委員会から2つの重要な報道発表がなされています。
一つは、「独占禁止法に関する相談事例集(平成22年度)」の公表ですが、こちらは今日は置いておきます(まだ読めてない)。
もうひとつが、既に事前報道されていた事件ですが、岡山県を中心にスーパーを展開する(株)山陽マルナカ(岡山市)に対する排除措置命令・課徴金納付命令(2億2216万円)が出されたというものです。これについては、先日、当ブログでも少し触れました。
→ 「優越的地位濫用に対する初の課徴金(公取委)」(6/2)
山陽マルナカが、独占禁止法2条9項5号(優越的地位の濫用)に該当する「不公正な取引方法」を行っていたというものです。
→ 公取委サイト 報道発表資料(PDF)
※ 排除措置命令はあるのですが、課徴金納付命令はここでは公表されてませんね。
先日も書きましたように、最近の改正で、これまで課徴金の対象になっていなかった「不公正な取引方法」についても、優越的地位の濫用を含むいくつかの行為類型については、課徴金の対象となり、本件がその第一号となったものです。なお、優越的地位の濫用が課徴金の対象となるについては、過去の処分歴は要件になっていませんが、山陽マルナカは、以前にも納入業者に対する優越的地位の濫用事案で排除措置命令を受けています(平成13年(勧)第3号審決)。
【違反行為の概要】
山陽マルナカは、遅くとも平成19年1月以降、取引上の地位が自社に対して劣っている納入業者(以下「特定納入業者」)に対して、次の行為を行っていた。
- 新規開店、全面改装、棚替え等に際し、これらを実施する店舗に商品を納入する特定納入業者に対し、当該特定納入業者が納入する商品以外の商品を含む当該店舗の商品について、当該特定納入業者の従業員等が有する技術又は能力を要しない商品の移動、陳列、補充、接客等の作業を行わせるため、あらかじめ当該特定納入業者との間でその従業員等の派遣の条件について合意することなく、かつ、派遣のために通常必要な費用を自社が負担することなく、当該特定納入業者の従業員等を派遣させていた。
- 新規開店又は自社が主催する「こども将棋大会」若しくは「レディーステニス大会」と称する催事等の実施に際し、特定納入業者に対し,当該特定納入業者の納入する商品の販売促進効果等の利益がない又は当該利益を超える負担となるにもかかわらず、金銭を提供させていた。
- 自社の食品課が取り扱っている商品(以下「食品課商品」)のうち、自社が独自に定めた「見切り基準」と称する販売期限を経過したものについて、当該食品課商品を納入した特定納入業者に対し、当該特定納入業者の責めに帰すべき事由がないなどにもかかわらず、当該食品課商品を返品していた。
ア 食品課商品のうち、季節商品の販売時期の終了等に伴う商品の入替えを理由として割引販売を行うこととしたものについて、当該食品課商品を納入した特定納入業者に対し、当該特定納入業者の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず、当該食品課商品の仕入価格に50パーセントを乗じて得た額に相当する額を当該特定納入業者に支払うべき代金の額から減じていた。
イ 食品課商品又は自社の日配品課が取り扱っている商品(以下「日配品課商品」)のうち、全面改装に伴う在庫整理を理由として割引販売を行うこととしたものについて、当該食品課商品又は当該日配品課商品を納入した特定納入業者に対し、当該特定納入業者の責めに帰すべき事由がないにもかかわらず、当該割引販売において割引した額に相当する額等を、当該特定納入業者に支払うべき代金の額から減じていた。- クリスマスケーキ等のクリスマス関連商品(以下「クリスマス関連商品」)の販売に際し、仕入担当者から、特定納入業者に対し、懇親会において申込用紙を配付し最低購入数量を示した上でその場で注文するよう指示する又は特定納入業者ごとに購入数量を示す方法により、クリスマス関連商品を購入させていた。
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コメント
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私は食品メーカーの営業経験者です。大手コンビニ7-11のナナコキャンペーン。商品の登録の代償としてキャンペーン費用を納入金額ベースで払わされます。もちろん異を唱えれば採用してもらえません。その他大手スーパーも担当しましたが、無償応援、関係のない商品の購買、担当者の引っ越しの手伝いまで違反行為はたくさんあります。とにかくその取引先のファミリーにならなければ商品の扱い高は上がらないのが実情です。マルナカだけでなく他の量販店もどんどん課徴金納付命令が下ることが正義だと考えます。消費者の味方のふりをしている量販店、実際に消費者に貢献しているのはメーカーの値引き納品なのだ。
投稿: ジャスティス | 2011年7月 8日 (金) 13時44分
2番目にコメントいただいた方のは申し訳ありませんが、削除いたしますね。匿名だからといって、何を公開してもいいわけではありませんね。告発するならば、匿名ではなく、それなりの覚悟でお願いします。
投稿: 川村 | 2011年8月 2日 (火) 00時11分