鈴木正朝教授講演と「公安テロ情報流出事件」国賠訴訟事件
今夜(5/16)、大阪弁護士会で、鈴木正朝新潟大学法科大学院教授の個人情報保護法に関する講演がありました。鈴木教授は、これまでも個人情報保護法の不備について辛口の評価をされる先生ですし、Twitterやfacebookなどネット上でも歯に衣着せぬ発言を積極的にされておられますので、大変楽しみに出席させていただきました。
今日も期待通り個人情報保護法や現在検討されている共通番号制度について、心地よく批判され、2時間の講演は大変興味深いものでした。その中でも、その情報だけでは特定の個人を識別できない商品購入情報であっても(したがって、個人情報保護法の対象となる個人情報とならないが)、それを入手した者が簡単に個人と結びつけることが可能であり、ネットワーク広告のターゲットとなりうるという点は、広告表示問題について関心のある私にとって、特に興味を惹かれました。
ところで、個人情報の問題としては、SONYの個人情報大量流出事件があったところですが、今日(5/16)14名の国内在住のイスラム教徒が原告となり、東京都(警視庁)、国(警察庁及び国家公安委員会)を相手に、東京地裁に国家賠償請求訴訟を提起しています。
原告弁護団によれば、警視庁、警察庁及び国家公安委員会が、人権を侵害する態様で被害者らの個人情報を収集し、収集した個人情報を正当な理由無く保管し、かかる個人情報を漏洩させ、さらに、漏洩後に適切な損害拡大防止措置を執らなかったことを理由として、被害者らに生じた損害を賠償するよう求めたというもので、訴訟での損害賠償請求額は総額1億5400万円(一人あたり1100万円)となっています。警視庁が作成したとみられる国際テロの捜査資料がインターネット上に流出したという事件ですね。
この裁判提起に関しては各社の報道もありますが、弁護団(公安テロ情報流出被害弁護団:団長・梓澤和幸弁護士)のwebサイトに今回の訴訟提起やこれまでの経過について詳しい内容が掲載されています。
私たちが原告弁護団として行ったヤフー個人情報流出事件などと異なるところは、警察、公安の捜査情報であり、テロの関与者かと疑われる可能性のある情報が現実に広くネット上などに流出したという、まさに「機微(センシティブ)情報」の現実の流出という点があります。この裁判の今後の推移は注目ですね。
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