ユッケ食中毒事件とテレビ
焼肉チェーン店「焼肉酒家えびす」で提供されたユッケが原因と見られる食中毒事件は死者が複数出るなど被害が拡大しています。
この事件については、そもそも、生食用牛肉というものは流通していないとか、卸売り業者がユッケ用と説明していたとかいないとか、いろいろな問題が絡んでいるようで結構複雑なことになっています。ただ、いずれにせよ、生ものを出す以上は、調理現場が仕入れから調理、提供まで責任を持つべきことは当然ではないかと思います。私の場合はユッケは嫌いではないのですが、自分が信用できそうな店でしか注文しません。
事件の起きた焼肉チェーン会社の社長のお詫び会見の様子も話題になっています。
ある意味で正直な発言とはいえますが、それなりの企業の経営に責任を持つ者としては、リスク対応態勢ができていないように思えます。被害者、家族らの関係者やその他社会全体に対する謝罪をきちんとするとともに、今後の対応の説明、さらに自社の正当な主張の部分も世間に発信するということが、こういった記者会見では必要になるのですが、そういうことを理解して事前に会見内容を準備しておかなければいけません。でなければ、今回の会見のように(過去にもいろんな事件がありましたが)、かえって被害者や社会の反発をかって火に油を注ぐことになったり、今の時代、その映像がテレビやネット上で将来にわたって流されるという結果になってしまいます。
あれくらいの規模の会社であれば、死者まで出した重大事態への対応のためには、マスコミ対応を含めて、費用がかかっても危機管理の専門家に相談すべきところですが、本件ではどうだったのでしょうか。
また、食中毒事件の発生の直前の4月18日夜放映の日本テレビ「人生が変わる1分間の深イイ話」という番組の中で、この焼肉チェーンが紹介され、激安なのに高級店なみの接客などと、この店の営業内容を称賛する内容であったようです。
→ MSN産経ニュース
→ JCASTニュース
(報道サイトは期間が経過するとリンクが切れるかもしれません)
この番組では、ユッケを紹介したわけではないようですし、今回の事件の法的責任ということは問題にならないかもしれませんが、少なくとも、優良な店であるとして番組が推奨している形式で紹介しているわけですから、番組制作サイドの問題は考えざるを得ません。
以前、雑誌「現代消費者法」№6に書いたことなのですが(→ 現代消費者法 No.6 Amazon・これも推奨広告(^^;) )、広告の体裁はとらないけれども、実際には広告を目的とした商品推奨の記事を載せたり、テレビやラジオの放送番組として放映されるといったこともよく見られます。受け手側は、マスコミによる客観的な記事や出演者の個人的な実体験に基づく推奨などと感じられやすく、また、広告主、広告媒体もその効果を期待している点で問題は少なくありません。マスコミ自体の信頼性を背景にして、好感度が高い芸能人や信頼ある出演者が、情報番組などで商品等を推奨する場合には、従来論じられてきた広告媒体者や広告塔の責任とは少し角度は違うのかもしれませんが、同様の問題が生じるようにも考えられますね。
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