他人事ではない!「出版大崩壊 電子書籍の罠」(文春新書)
数日前から、「出版大崩壊 電子書籍の罠」(山田順 文春新書)を読んでいたのですが、今朝の通勤電車で読み終えました。
2年前に、同じ文春新書の「2011年新聞・テレビ消滅」(佐々木俊尚)を読んで、当ブログでご紹介したことがありましたが、もう、この2011年は来てしまいました。もちろん新聞もテレビも消滅はしていませんが、着実にその予言の方向に進んでいるようです。
→「2011年アナログ新聞も終了?(テレビだけじゃない!)」
(9/8/11)
冒頭の今回読んだ本も、デジタル化、電子書籍化に伴って、出版業界が崩壊していることが内容ですが、単に、従来の紙媒体の出版社の仕事がなくなって、これからは電子書籍出版に移行するだろうという良くあるパターンではなく、実はその電子出版自体も幻想であって、商売としては難しいとされています。
著者の山田順氏は、最近まで光文社におられた方で従来の出版業界を中から良くご存じの方ですので、単なる第三者的な評論ではなく、本書の内容は具体的かつ説得的です。出版業界だけではなく、現在でも華やかに見える音楽業界、ゲーム業界の実情も、現実には事業という面では、デジタル化によって大変な状況になってきているのがわかります。本の中にあった「低度情報化社会」という言葉は、問題の本質を突いた「目から鱗」の言葉だと思いました。いろんな意味でちょっと使いにくい言葉ではありますが。
今朝、第10章あたりから以降の、コンテンツ産業の現状と今後の世界に関するところを電車の中で読んでいると、何だか本当に身震いがしてきました。情報コンテンツ産業を広く捉えれば、私たちの業界も含まれてきますね。本書の内容は、決して対岸の火事ではないのだという思いにかられてきて、だんだんと背筋が冷たくなってきたのです。そういう意味では本書はホラーですらありました。
いや、弁護士業界はそうではないので、という理由はいくつも挙げられるでしょう。だけど、同じような理由は、新聞業界でも、出版業界でも挙げられていたはずです。おそらくは単に弁護士の増員の是非というようなレベルの話ではなく、そんなものは全て飲み込んでしまう「想定外の大津波」は既に自分の足元に迫っていることを感じさせられました。
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